「そうか……うぬこそが、王にふさわしい」
「王になんかなりたくねえよ」
桜色の髪に白い鱗のようなマフラーをつけた青年のその言葉を最後に、竜王アクノロギアは消滅した。
しかし、アクノロギアはそれでも終われなかった。
「何だ……これは」
次に目覚めた時、アクノロギアは燃え盛る村、その上を飛び交うドラゴンの群を背にして立ち尽くしていた。
それは間違いなく、アクノロギアが滅竜の道に歩み始めた最初の場所、竜への怒りと憎悪を募らせた場所だった。
(時を遡ったのか?黒魔道士の魔法か?時の魔力を喰らった弊害か?何にせよ、我は始まりへと立ち戻ったのか)
理由はどうあれ、過去に立ち戻ったアクノロギアは右手で顔を押さえる。
「ククク、クハハハハ!!」
アクノロギアは真っ黒な空を見上げ、高笑いをして踵を返し、その両手には暗黒のエネルギーが宿る。
その心には、自らが王だと認めた桜色の髪の青年の言葉が宿っていた。
【本物のドラゴンはなぁ、強くて気高くて……優しいんだ】
その言葉を胸に、アクノロギアは行動を開始する。
「クハハハハ!!そうか、そうだったのか!我は真なる竜王を見定めた!故に、我は憎しみに囚われ暴虐の限りを尽くす貴様等『紛い物』を滅殺する!」
こうして、いずれ竜王に至る滅竜の道が、再び始まった。
それからアクノロギアは人間を生贄として求める者、趣味趣向で人間を殺す者、強くて気高く、優しい竜以外の全てを滅殺し続けた。
それはかつての暴走に近いものではなく、明確な意志として、炎竜王の様な強く、気高く、優しい竜を嘲笑う悪しき竜を殺す。
怒りを忘れた訳ではない、憎悪を捨て去った訳ではない、ただ、己が認めた王の在り方と己の在り方を重ね、新たな道を歩む事を決めた1人と人間として、悪しき紛い物の竜を殺す。怒りの矛先を見定めたのだ。
そして、竜王祭の日を迎える。
殺す竜を見定めたとは言え、前世の記憶と経験と殺した竜の多さゆえに、結局アクノロギアは竜化を免れなかった。そして、竜王となった魔竜アクノロギアは炎竜王イグニールの元へ舞い降りた。
『貴様は……アクノロギア』
「顔を合わせたのはこれが初のはずだがな」
『人間を滅ぼそうとする竜を殺して回り、竜へと変じた元人間、話は聞き及んでいた』
「そうか」
イグニールの背後にはかつて戦った桜髪の青年の面影がある少年がいた。
「ナツ・ドラグニル」
『何が目的だ!』
「そう気負う必要は無い炎竜王。悪しき紛い物の竜は全て滅した、我が滅した。これからは人間の時代」
『……』
「我は見定めたのだ。未来の竜王を」
アクノロギアは人の姿で少年のナツに近づいて行く。
「強くなれ、小僧。仲間と共に我を打ち破った彼の竜王のように」
ナツはそう言ったアクノロギアを見上げ、呆然としていた。
アクノロギアが去った後、イグニールにさっきの人間は何なのか聞いたナツは次会った時は絶対に勝負すると心に決めた。
悪しき竜を滅ぼした最強の竜王、そしてナツはそんな最強の竜が認めた竜王の後継者。それを聞いたナツは闘志を燃やし滅竜魔法の練習に精を出すのだった。
それから400年が経った現在、竜王祭以降ほとんど動きが無かったアクノロギアが再び動き出す。
1周目アクノロギア
全ての竜に怒りと憎悪を向け、全てを破壊しようとする悲しきモンスター
2週目アクノロギア
本物の竜ではない、悪しき紛い物の竜に怒りと憎悪を向け、未来の竜王に期待する暴走機関車