個性が発現したけど、個性が使えない。そんな主人公が緑谷によって個性の方法が分かったが、まさかのキスによるコピーで…
個性を解明しながら、ヒーローを目指す物語。
「君の個性は、個性因子だね。」
「は?」
病院で、個性の確認をしてもらっているときにおかしなことを言われた。
個性とは、中国の光る赤子が生まれてから、人間に備わった新しい器官であり、特殊な力を使うことができるものである。
個性因子と言われる器官が人間にはあって、その因子によってできることが変わるらしい。
お母さんの個性は、【伸縮腕】。腕を伸ばすことができる個性だ。リビングにいる俺をひっぱたりするときに使っている。
お父さんの個性は、【生骨】。自分の体を骨に変えて、骨を作成できる個性。使っているところは見たことないけど、自慢話をするお父さんの話で聞いたことがある。たしか、骨折しても、すぐ直せるとか言ってた。
だから、僕も腕を伸ばせたり、骨を作れる個性が発言するとお母さんから聞いていた。
隣で聞いているお母さんも、不思議そうな顔で頭が剥げている医者の顔を見ている。
「分かりやすくいうとだね。個性があるのは、足の関節の数から分かってるのね。だけど、個性が検討つかなかったのよ。だから、個性を判別できるヒーローを呼んでね、見てもらったわけ。そうしたら、びっくり、個性因子を持っていることが個性だって分かったのよ。おじいちゃんもびっくりなのよ。」
「ということは、息子は個性因子がある無個性ということですか?」
「んー。そうとも限らないのよ。個性因子があるってことは、個性が発現しているってことだから、何かしらの力に目覚めているはずなのね。異形型とか姿が変わるから分かりやすい。炎とか出すのも本人が自覚できるのね。だから、自覚ができていないけど、個性因子に関わる力があるはずなんだけどね。それが何かは分からないわけだね。」
「まぁー。危険な個性じゃなかっただけで儲けものと思うのがいいかもね。普通には過ごせるわけだしね。ありがたいと思うことも大切だよ。」
「いえ、ありがとうございます。」
お母さんは、嬉しそうでもないけど、悲しそうでもない顔をしている。
結局、僕の個性は何だったのだろう。
おはげの医者は、教えてくれなかったし。
お母さんに聞いてみるか。
「お母さん、僕の個性って何だったの?」
「うーん、個性因子があるから、個性はあると思うよ。けどまだ、目覚めてないのかもね。大きくなったら、すごい力に目覚めるかもしれないから、好き嫌いせずご飯食べたら分かるかもね。」
「?」
お母さんにも分からないらしい。とりあえずご飯を食べて大きくなったら、いつか僕の個性も起きるかも知れないということが分かった。
その日から、僕は好き嫌いをやめて、ご飯を食べたが、いまだに個性は覚醒しなかった。
あれから、大きくなって中学生になった。
背も伸び、最低限の身長を手に入れたが、個性はまだ発現していなった。
あれから、周りのみんなは個性を発現させて、見せびらかしたり、使いたくなって先生を困らせる人が多くなったが、自分の個性は使えないままだった。周りの人に無個性と言われることもあったが、個性因子があるからまだ覚醒してないと言い続けることにした。
僕は中学2年生を終えて、3年生になった。
高校をどこにするか決めないといけない時期になってしまったが、個性の内容が分からないからヒーロー科はやめたらと先生に言われてしまった。まだ、覚醒してないだけだからと中学2年生のときは、言い張ったが、そろそろ中二病も終えて、現実を見ないといけなくなった。
さすがに、個性がない無個性ってのはまずいと。
そして、無個性のままだと、ヒーローにはなれないと。
オールマイトというトップヒーローを始めとした、個性を使うことが許された職業をヒーローという。
僕も含めて、ほとんどの子供たちがトップヒーローを目指して、ヒーロー科を受けるのが今の時代だ。
だからこそ、僕もヒーロー科を志願したいのだけど…
「いや、無個性の君にはヒーロー科は無理だって。しかも、雄英って。学力、体力、個性。すべてが優秀でやっと入れるところだぞ。緑谷と同じでやめとけって。爆豪ぐらい優秀じゃないと受からないから。」
「先生!でも個性がもし、覚醒したときにヒーローなってたらと思ってからじゃ遅いんですって!」
「覚醒してもだよ。そこから、使いこなすには10年以上も時間がいるのよ。みんなは君が覚醒するまでにしっかりと育てている個性。同じ土俵にも立つことができないよ。」
「先生の個性も伸びる手のくせに!」
「関係ない!人見!とりあえず再提出だ。もう少しまともな高校で頼む。」
そういった、先生は職員室から僕を追い出した。
「くっそ~、先生のいうことまともすぎて、どうすればいい」
「個性を発現してるのに使い方が分からないやつなんて僕だけだろ」
「本当に何だよ。個性因子って。」
個性因子。指を伸ばすなら、指に個性因子がある。
本来はできないことをするための器官である個性因子。使い方は自ずと分かるはずなのに、中学校までなって分からない。
エンデヴァーみたいな強いヒーローを目指して、体力トレーニングだけは続けているが、身長も高くない160台。個性はなし。筋力も鍛えている人止まり。本当にどうやって、ヒーロー科を合格しようか。
筋トレをもっと激しくして、マッチョにでもなるか?マッチョになってヒーローになれるなら、高校生はみんなマッチョだよな。力だけじゃヒーローにはなれない。誰でも分かる常識だ。
「そういうや、緑谷も雄英志望何だな。でも無個性だよなあいつ。どうやって、合格しようとしてるんだろう。学力は良かったから、普通科志望なのか?でも、何かノートにまとめるぐらいのヒーローオタクだったよな。今はクラスが違うから分からないが、ちょっと聞いてみるか?」
学力が優秀なオタク。緑色のモサモサ髪。爆豪にいじめられているやつ。僕の緑谷のイメージはそんな感じ。運動はあまりできない方だったと思うが、頑張っているなら、一緒に頑張りたい。無謀な雄英志望の仲間としてな。
そうと決まれば、緑谷の教室まで行くか。
「緑谷いますか?」
「緑谷?もう帰ったよ。」「爆豪にいじられてたよな。」
「まぁ、雄英のヒーロー科に記念受験をするって言ったらな」
「まぁ、仕方ないよね」
緑谷のことを聞くとそんな返答と教室の会話が聞こえてきた。記念受験。確かに、有名すぎるほど、有名な雄英高校では、記念受験をする人はいる。しかし、緑谷は記念受験だろうか。あいつの性格なら、できないけど捨てきれないからとヒーロー科を志望していると思う。少なくとも、落ちるために受験しているわけではないはずだ。ヒーローオタクがヒーローを愚弄するようなことを考えないだろう。
少しだけむっとしてしまった。この教室の空気に。自分ができることがないことは去年同じクラスだった時に分かった。同じ無個性と思われている僕が何を言ったところで変わることはないだろう。むしろ僕まで、言われる対象になるだろう。だけどさ、それを許す人がヒーローになれるのかと考えたら、答えは一つだよね。
「教えてくれてありがとな!だけど、緑谷が本気で目指してるなら、笑うべきじゃないと思う!無個性でも頑張りたいと思う気持ちは本物だろうからさ!落ちるかも知れなくても、クラスメイトなら応援するべきじゃね!友達でもないから知らないけどさ!!急にごめん!言いたくなった!ほんと、ありがとう!」
「何だったんだ、あいつ。」「あいつも無個性だろ。共感でもしたのか?」
「でも、確かに頑張ろうとしているのを笑うのもかっこ悪いかな」
「だな。俺たちもヒーロー目指して、練習しようか」
「そうだね」
めっちゃ恥ずかったけど、これでいいはずだ。あー緊張したし、顔が熱い。
後悔はないけど、僕も頑張らないと自分を慰めただけになるからな。
緑谷や爆豪とは、ライバルだけど、僕も頑張らないと!
で、緑谷どこだ!
あれから、緑谷を探し回りながら、ランニングをしたが家に帰るまで、緑谷が見つかることはなかった。
商店街で敵の騒動があったらしい。しかも、爆豪が関わったらしい。何でも、ヴィランに捕まって暴れたとか。
さすが爆豪。ただではやられない男。
そんな爆豪を昼休みに見つけた。
昨日のことを聞こうと思ったが、機嫌が最高潮で悪そうだった。おそらく、色んな人に聞かれて、怒り爆発したのだろう。触らぬ地雷の精神で、僕は話かけるのをやめて緑谷を探した。
教室を見ると、ハンドグリップをきゅきゅとしながら、ご飯を食べる緑谷の姿が。
超真剣な表情で、ご飯を食べながら、握っている。めっちゃシュールでおもしろ。
「緑谷!ちょっと話いい?」
「ん!?ゴホッ!何かな、人見さん。」
「緑谷ってさ。雄英受けるんだろ。無個性なのにすごいなって思ってさ。僕も実質無個性だからさ、雄英に向けてやってるトレーニングを共有したくてさ。どんなことしてるのか気になって!」
「んー。ごめん、トレーニングはある人から指導してもらってて、できる限り言わない約束だから…ごめんね、人見さん」
「そっかー、仕方ないか。」
緑谷は、指導する人を見つけて、トレーニングをしているらしい。
確かに、地元のヒーローに鍛えてもらうということも可能なのか。こんど、教えてくれるヒーローでも探してみるか。そういえば、緑谷って確か、個性オタクだったよな。ヒーローの個性をノートにびっしりまとめてる。なら、聞いてみるか、僕の個性のこと。
「なー緑谷。」
「えっと、何かな人見さん」
「僕の個性は【個性因子】って言うんだけど、使い方が全然分からなくてさ。名前だけ分かってる状態なんだ。緑谷、この個性の能力とかって分かったりしない?ヒーローの知能でさ!」
「えっと、個性因子?体の中にある個性を使うための器官じゃなくて?」
「そう、違うらしいのよ。個性として、個性因子なのよ」
「うーん、個性を使うための因子が個性名の個性。普通に考えたら、個性因子があるってことだけど、それなら、違う個性が発現しているはずだし、個性の使い方だって分かるはずだよね。個性が個性因子ということは、個性因子に干渉ができたり、個性因子を作ることができる個性?そんな個性が可能なのだろうか。物を作る個性やサイコキネシスで見えないものや触れていないものを触る個性は存在する。このクラスにも眼鏡をかけて人がサイコキネシスの個性だったはずだ。それ以外の可能性はないだろうか。例えば、他の個性因子に共鳴して、同じ個性が使えるとか。でも、同じ個性を使うことができる個性は存在するのかな。これは調べてみないと確証が得られないぞ。個性というものが、人間の機能の拡張のはずなら、必ずできることがあるはずだ。普段の行動では発現しない個性。普段の生活の中では使うことが絶対にない条件。どのような行動が個性を発現するための条件なのかを調べることができれば、個性因子という個性も使うことができるんじゃないかな。そういえば個性を調べる個性を持ったヒーローがいたはずだ。確か、プッシーキャッツのラグドールというヒーローが・・・ブツブツ」
緑谷がトリップしてしまった。おーい。返事が返ってこない。オタクのようだ。
なんて、言ってる場合じゃないな。本当に緑谷が帰ってこなくなってしまった。
なんか、個性を作るや共鳴とか聞こえたけど、そんなことあるのか?
あとは、普段の生活ではしない行為が個性を発現する条件?
んー範囲が広すぎて分からないな。
緑谷にありがとうと伝えたが返事が返ってこないので、メモでありがとうと伝えて、教室に帰ることにした。
緑谷の教室の人たちすまない。聞いてしまったのが悪かったな。
教室を出るとき、怨嗟の目でこちらをにらむ生徒がいた気がした。
家に帰った、放課後。
筋トレをしながら、今日のことを考えていた。
共鳴に作る、それから、普段の生活では発現しない。
確かに親の個性は骨を作る個性だ。なら、僕の個性が個性因子を作る個性でもおかしくはない、のか?
作ったところで、どうやって使うのか分からないのが現状なのだがどうしたものだろうか?
「優星~ただいま~」
お母さんが帰ってきたようだ。リビングに向かうと買い物をした袋をテーブルにおいて、お手伝いをするように手招きをしている。
「分かったから、ちょっと待って。今行くから。」
「優星はいつも優しくて、しっかり者で助かるは~。お兄ちゃんをしてくれててお母さんは安心~」
「僕としては、お母さんはもう少ししっかりしてほしいな~」
「無理だよ~お母さんなのよ~」
「そういえば、最近キスってしてない気がするな~」
「いつからの最近!子供ってか、幼稚園前ぐらいからしてないよ!水星と知星が生まれてから、そっちにしてたでしょ!あとお父さんとして、そういうの!」
「えー反抗期~。お母さんは今、優星としたいのだけど~」
「絶対にいやだね。」
「そ~なの~。あっ!卵落としちゃった。」
「何やってるの母さん!」
「いまだ!えいっ」
「は?!!」
お母さんはキス魔である。妹と弟が生まれてからというもの、身代わりができた僕がされることがなかったが、スキを見て、もしくは、ドジをしたときに、狙ってくる。お父さんもキスで射抜かれたらしい。
そんな、お母さんの被害が10年ぶりぐらいに僕に来てしまった。じゃねーよ。嫌だよ。お母さんにキスされる中学生なんて!今までは弟を身代わりにしてたのに!クッソ僕のファーストキスが!ノーカンだよねこれは。ノーカンだよね!
「ちょっと母さん、息子のファーストキスを奪わないでよ!彼女になる人のために取ってたのに!」
「ほら、お母さんとお父さんのキスは無効っていうから大丈夫よ~、なんならもう一回する?」
「しないよ!」
本当にどうしてくれるんだ!高校になったら、彼女を作って、デートして、青春いっぱいな高校生活を送る予定だったのに!
「あら~腕が伸びてるよ~雄星。ちゃんと戻さないといけないのよ。」
「話をそらさないでよ!母さん!今、息子の大切なファーストキスの話を…え。まって今何て」
お母さんから聞こえたおかしなことを確認するために、ゆっくりと確かめる。
右腕と左腕が伸びている。くにょくにょとうねっている。15年間見たことがないような動きと長さになった自分の腕を見ながら、緑谷の発現を思い返していた。
(個性因子に共鳴する。)
(普段ではありえない個性を発動する条件)
「ま…マジかよ…」
僕は、ニコニコしているお母さんの横で、今年一番の驚きの顔と、キスが発動条件なのかよと絶望の顔をしていたと思う。
キスすることで、相手の個性をコピーする個性。
それが、僕の個性の正体だった。
(どうやってヒーローになるのよ、これ…)
これは、僕が、最高のヒーローになるために、いろんな人にキスをして、変態なヒーローと呼ばれてしまうまでの物語。