北陸と山形はそんなに離れていないけど、隣同士ではないので、何故同じ意味で同じ言葉が使われているのか、私なりに解釈して話にしてみました。
生徒会選挙を間近に控えた頃。北陸三人娘は先輩に頼まれて廊下の壁に生徒会選挙のポスターを貼っていた。
その内の一枚のポスターを見て、ひまりは呟いた。
加賀ひまり「あっ、ちょっとそこ“かたがっとる”よ」
それを聞いた北陸娘達はこう返す。
黒部りつ「あー、かたがってるね」
越前和花「本当だ、少しかたがってますね」
だが、北陸娘以外の反応はこうだ。
一般生徒A「肩がる?」
一般生徒B「かたがってるって、なに?」
? 「えっ、“かたがってる”は“かたがってる”でしょ?」
一般生徒『えっ?』
ひまり「えっ?」
りつ「えっ?」
和花「えっ?」
? 「えっ?」
Tips.かたがる=傾いてる(北陸共通の方言……?)
ひまりが生徒会選挙のポスターを貼り直した後の事。
“かたがる”が通じた生徒が集まった。
ひまり「かたがるって方言なんだね……」
和花「標準語かと思ってました」
りつ「わたしも……」
? 「東京だと通じないんだね、かたがるって……」
石川県出身の加賀ひまり、富山県出身の黒部りつ、福井県出身の越前和花。そして、いつもの北陸出身3人組に交ざる、見知らぬ誰か。
でも言葉が通じた仲間だからと、ひまりは積極的に声をかける。
ひまり「あ、隣のクラスの人だよね? えっと……」
? 「あっ、私、鳥海光希です。よろしく」
北陸三人娘『よろしくー』
ひまり「ねえねえ、鳥海さんって、石川の人?」
りつ「いや、富山でしょ」
和花「いえいえ福井ですよ」
方言が通じるという事は北陸の仲間だ。そう思って言ってみれば──。
光希「えっと……私、山形県出身なんだけど」
北陸三人娘『…………えええええ──────!?』
ひまり「待って待って。えっ、山形ってどこだっけ?」
りつ「富山の隣にもないし……」
和花「福井の隣にもありませんよ」
ひまり「えっ、じゃあ山形ってどこに……」
光希「そうだよね……山形って有名じゃないよね……クラスの子も秋田の下は新潟だって言ってたし…………」ズーン
北陸三人娘『お、落ち込んでる……』
Tips.自分も進学先で、秋田の下は新潟と言われました。
和花「(秋田の下、ってことは……)えっと、山形って東北地方ですよね? という事は米どころで、美味しいお米とかが採れますよね」
光希「……ふふふ、その通り。鳥海山の栄養豊富な水が流れ込む庄内平野は、美味しいお米が育つんだ。『雪若丸』も『つや姫』も美味しいし、『はえぬき』は冷めても味が落ちないから、全国チェーンのコンビニとかで売ってるおにぎりやお弁当とかに使われてるんだよ」
北陸三人娘「き、急に元気になった……」
Tips.正確には、はえぬきと他の米をブレンドしたおにぎりだそうです。(過去ネット情報)
ひまり「あの、鳥海さんって北陸に住んでたの?」
光希「ううん、進学で東京に来るまでずっと山形にいたよ」
りつ「じゃあ何で北陸の方言がわかるの?」
光希「えっと……なんでだろうね?」
和花「ご両親のどちらかが北陸の出身ということは?」
光希「どっちも山形生まれ山形育ちだよ」
ひまり「そうなの?!」
ひまり達は地元の言葉を色々言ってみるが、北陸の方言は光希にはほとんど通じない様子。
ひまり「う~ん、なんで“かたがる”が通じるんだろう?」
光希「……あの、加賀さん達って、北陸出身なんだよね?」
ひまり「そうだよ。それが、どうしたの?」
光希「……もしかしたらだけど、北前船の影響かなぁ?」ウデクミー
ひまり「北前船?」
りつ「北前船って、確か北陸を回ってた船だっけ?」
和花「北陸だけじゃなくて、日本海側の本州沿岸から北海道まで行ってたんですよ」
りつ「あっ、そうなんだ」テレテレ
ひまり「ってことは、北前船って山形にも行ってたの?」
光希「もちろん。というか、山形は北前船の発祥の1つなんだよ」
ひまり「えっ、そうなの!?」ハツミミー
光希「山形に最上川っていう大きな川があるんだけど、その周辺に江戸幕府の領地があったの。そこの年貢米を江戸に運ぶ為に、幕府が日本海沿岸の湊と航路を整備したんだ。最上川の河口には良い湊があったからね。それが北前船のきっかけになったんだって」
和花「なるほど、たくさんの荷物を一度にたくさん運ぶのは、船が一番ですからね」
光希「多分なんだけど、船に積んだ荷物が“かたがってたら”大変な事が起きるよね? だから北陸だけじゃなくて、私の地元みたいに北前船が行った場所の人は“かたがる”が通じるようになったんじゃないかな?」
りつ「確かに。船で荷物がかたがったら大変だ」
和花「湊の縁ってことですね。北陸だけじゃなく、日本海の人達は皆かたがったら危ない! って認識してたかもしれないんですねぇ」
ひまり「なにそれ、面白い!」
そう言って笑い合い、地方は違えど、同じ言葉を共有する者だと仲を深めることになった。
こうして北陸娘の友達に、遠くて身近な仲間が増えたのであった。
おまけ
北陸の方言が通じるか実験中
りつ「これはどう? “きときと”」
光希「あー、なんか聞いたことある」
りつ「えっ、本当? (嬉)」
光希「確か小学生の時に死んじゃったひいばあちゃんが言ってたような……」
りつ「えっ、あっ、そうなんだ……」(気まず……)
光希「なんかね、きときとすんな! って、よく言われたなぁ」
りつ「えっ? それ、どういう意味で言ってたの?」
Tips.きときと∶富山弁で新鮮な。
光希「? 確か、はしゃいでいたら言われてたね。落ち着きなさいとか、はしゃがないでとか、そういう意味だと思うけど」
りつ「……富山だとそんな風に使わないけど」
光希「えっ、そうなの?!」
りつ「なんでそんな使い方になったんだろ?」
光希「……なんでだろうね?」
ちゃんちゃん♪