「やめろォ!」をつい口走ってしまうサスケ疾風伝   作:久し振りにオレオ食べようと思ったら高い

3 / 3
相対

 

 「暁」の拠点の階段にて。

 相棒を失い一人歩む干柿鬼鮫の前に、空間が歪むようにして男が現れた。

 

 渦巻の仮面を被った男、トビである。

 

 「……おや、トビですか」

 

 鬼鮫は名の通り鮫のような鋭い歯をのぞかせ冷ややかな視線を向けた。

 

 いつもなら「鬼鮫先輩〜!」とふざけた声を出すはずのトビだったが、今日に限っては、恐ろしいほどに重く、低い声で話し始める。

 

 「これでもう、俺とお前の間に遮るものはなくなった。……約束通り、俺の素顔を見せるとしよう、鬼鮫」

 

 「……?」

 

 トビが仮面に手をかける。

 

 (ついに、正体を明かす気になりましたか。ふざけた新入りのフリをするのも、もしかするとイタチさんを警戒してのことだったのかもしれないですねぇ……)

 

 鬼鮫は静かに呼吸を整え、その瞬間を待った。

 

 闇の中で、ゆっくりと仮面が外されていく。

 

 そこから現れるのは、世界を絶望に陥れるに足る、禍々しくも圧倒的な『うちはマダラ』の威厳に満ちた素顔……

 

 ……のはずだった。

 

 しかし、仮面の下から現れたのは、ピンク色の、妙にツルッとした、どこか弱々しい耳をした、見たこともない謎の生命体の顔だった。

 この世界には存在しないはずの、異世界の住人。

 

 「………………」

 

 鬼鮫はピクリとも動かず、ただ静かにその異形を見つめた。

 あまりにも未知のビジュアル。

 

 鬼鮫も、そして実はトビ本人でさえも、これが「ピグレット」というキャラクターであることは全く知らない。

 

 重苦しい沈黙が部屋を支配する。

 

 トビは、自分が世界最強の黒幕「うちはマダラ」のオーラを全開にしているつもりなので、ドスの利いた声のまま、ピ◯レットの顔をキリッと引き締めているつもりで語りかけた。

 

 「どうした、鬼鮫。俺だ。かつて君の前に現れた、あの男だよ……。この『月の眼計画』の真の支配者の顔を忘れたわけではあるまい」

 

 つぶらな瞳。

 頼りない鼻。

 全体的に、どうしようもなくピンク色。

 その顔から放たれる、重厚すぎるマダラボイス。

 

 鬼鮫は、持ち前の冷静な分析力で目の前の状況を処理しようとした。

 イタチを失った直後のこのタイミングで、なぜこの男は、こんなにも弱そうで、かつ凄じくシュールな姿を晒しているのか。

 だが、鬼鮫はどこまでも大人だった。

 動揺を一切表に出さず、ただ静かに、引き気味のトーンでこう告げた。

 

 「……トビ。いえ、マダラさんか何か知りませんが、そんな顔をされるとお身体に障りますよ冗談抜きで」

 

 「えっ」

 

 「その、なんと言いますか……全体的にピンク色で、ひどく健康状態が悪そうでしたよ。耳も妙に薄っぺらいですし、何より忍としての生命力が微塵も感じられません。あまり無理をなさらない方がいい。そのようなお姿で、世界を滅ぼすなどと大口を叩かれても、こちらとしては反応に困るのです」

 「そういうの、サスケくんにやってください」

 

 「……」

 

 鬼鮫はトビの言い訳を冷酷に遮った。

 

 「これから『暁』に引き込む予定の、あの多感なサスケくんなら、もしかしたら『これが……うちはの闇の力……!』などと勝手に深読みして怯えてくれるかもしれません。ですが私にはそういうのちょっと処理しきれませんので」

 

 鬼鮫がそう突き放すと、トビは酷く哀愁を漂わせガックリと肩を落とした。

 

 「……サスケには、もうやった」

 

 「は?」

 

 鬼鮫は思わず聞き返した。

 

 「イタチが死んだあと、天照の罠をギリギリで避けた直後だ。『俺の正体を教えてやる』と言って、真っ先にサスケの前でこの仮面を外したんだ」

 

 「……で、サスケくんの反応はどうだったのですか?」

 

 トビは遠い目をしながら、あの時のサスケの、底冷えするほど冷淡なリアクションを思い出した。

 

 「『大蛇丸の実験の失敗作か。くだらん』の一言で済ませやがった。」

 

 「それはサスケくんの驚異的なスルースキルを褒めるべきですね」

 

 鬼鮫はため息をついた。

 

 サスケにやって大滑りしたネタを、今度は自分に持ってきたのかと思うと、少しだけ哀れみすら湧いてくる。

 

 「では、サスケくんにも通用しなかったわけですし、本当にお大事に。後でまた会いましょう」

 

 鬼鮫は丁寧に一礼すると、今度こそ一度も後ろを振り返ることなく、静かな足取りで横を去って行った。

 

◎

 

 そして、トビと鬼鮫は何事もなかったかのように再び合流し、サスケ含む「鷹」の4人と対峙し緊迫した作戦会議が重厚なマダラボイスによって進められていた。

 

 しかし、サスケの心境は、周囲が思っているような「復讐の炎」とは少し違う、別の理由で極限状態にあった。

 

 実は、イタチが死んだ直後、トビはサスケの前で一度だけ仮面を外していた。

 

 その時に見せられたのは、世界を滅ぼす「うちはマダラ」の素顔……ではなく異世界の謎のピンクの小動物、あの「◯グレット」の顔だった。

 

 イタチ戦の疲労と寝起きが重なっていたため、脳が完全にバグっていた。

 当時のサスケは、『大蛇丸の実験の失敗作か。くだらん』と極めて冷淡に一蹴したのだが、それは決して『何を見ても動じないうちはのクールさ』などではなく、単に寝ぼけていて状況がミリも理解できていなかっただけだった。

 

 しっかり目が覚めた今、サスケの脳裏には、あの頼りない鼻とつぶらな瞳のピンクの顔が鮮明にフラッシュバックしていた。

 

 (あれは一体何だったんだ……。今思えば大蛇丸の実験体にしては、あまりにも戦闘に向いていないビジュアルだった……。イタチ……うちはの闇とは、あんな気色悪いピンク野郎なのか……?)

 

 サスケは必死にポーカーフェイスを維持し、平静を装っている。

 

 一方、トビの横に控えている水月、香燐、重吾の3人は、仮面越しのトビしか見ていないため、彼の素顔をまだ知らない。

 

 「お前たちが八尾を狩るなら、我々『暁』は木ノ葉の九尾を狩る。失敗は許されんぞ、いいな?サスケ」

 

 そう言い、トビが空間を歪ませて消え去ろうとした、まさにその時である。

 

 「終わった?ならちょっといいですかね、鬼鮫先輩?」

 

 水月がニヤリと笑い、背中の「首切り包丁」を引き抜いた。

 

 ターゲットは、鬼鮫の持つ「大刀・鮫肌」。水月は猛然と鬼鮫の脳天がけて斬りかかった。

 

 だが、その刃が届くより早く、消えかけていたトビが凄じいスピードで二人の間に割り込んだ。

 

 なんとトビは、水月の全力の一撃を、己の「右腕一本」だけで完璧に受け止めてみせた。

 

 これには仕掛けた水月も驚愕し、冷や汗を流す。

 

 「こ、こいつ……首切り包丁を腕だけで……!?」

 

 「躾がなっていないぞ、サスケ」

 

 トビの右腕は傷一つついていない。まさに人外じみた圧倒的な黒幕の力。

 

 しかし、その圧倒的な強さを見せつけられた鬼鮫は、持ち前の冷静なトーンで、トビの右腕をじっと見つめながらボソッと呟いた。

 

 「……トビ。いえ、マダラさんか何か知りませんが、そんな無理な受け止め方をされると……お身体に障りますよ」

 

 「えっ」

 

 トビの威厳に満ちた空気が、一瞬で素に戻った。

 

 「その腕、明らかに普通の肉体ではありませんね。パキパキと変な音がしています。いくらあなたが『うちはマダラ』だからといって、そのような無茶をしては健康に良くない。お大事に」

 

 「いや、鬼鮫…これは白ゼツの肉体素材でできてるから大丈夫なんだが」

 

 せっかく格好よく刀を受け止めたのに、ガチのトーンで体調を心配され、トビはひどく困惑した。

 

 ……と、その時。

 

 水月の全力の斬撃を腕一本で受け止めた際の、凄まじい風圧のせいだろうか。

 

 トビの渦巻の仮面を固定していた紐が、わずかに緩んでしまった。

 

 「……あ」

 

 トビが小さく声を漏らす。

 

 首切り包丁を片腕で抑え込んでいるため、両手で仮面を抑えることができない。

 

 トビは慌てて空いている方の手で仮面を押さえたが、不格好に紐が緩んだせいで、動くたびに仮面が重力で「ちょこちょこ」と下へズレそうになる。

 

 それを防ごうとトビが首を振るたび、仮面の下から、あの健康状態の悪そうなピンク色の皮膚が、じわじわと、そしてチラチラと周囲の視界に映り込み始めた。

 

 サスケの視界に、あの忌まわしきピンク色の輪郭が、最悪のタイミングでフラッシュバックする。

 

 (しまっ……! あいつ、仮面が外れかかっているのか……!?)

 

 仮面の隙間から、物理的な限界で今にも露出しそうな、あのつぶらな瞳と頼りない鼻。

 

 今ここで物理的な事故によってあのピンクの顔が完全露出されたら、自分達のスタイリッシュな復讐劇の威厳は締まりのないものになる。

 

 水月あたりは「え? 何その色……」と呟きかけており、もう時間がない。

 

 サスケの額に、ドッと大量の冷や汗が流れた。

 

 これ以上のノイズは、サスケの繊細な情緒が処理しきれない。

 

 トビの仮面がさらにグラリと傾いたその瞬間、サスケは前髪を激しく震わせ、今にも肺が破れんばかりの勢いで口を開いた。

 

 「(や、め、ろォ……!)」

 

 まだ声にはなっていない。

 

 しかし、サスケの魂は既に「やめろォ!」と言いかけていた。

 

 だが、ピンクの生命体が白日の下に晒されるその刹那、サスケは限界を迎えた心労のあまり、叫ぶよりも早くゼツの手から「暁のコート」を力任せにひったくった。

 

 「お前ら!チンタラするな!行くぞッ!!!」

 

 サスケは悲痛なまでの大声で全体の空気を強引に遮ると、トビの顔を一切見ないようにして、猛烈な勢いで踵を返した。

 

 「目的地は雷の国、雲隠れの里だ……!! 一刻も早くここを離れる……!! 水月、お前もさっさと来い!!!」

 

 「えっ、あ、うん……?………サスケの奴、なんだよちょっとじゃれただけじゃんか……」

 

 サスケのただ事ではない取り乱し方と切迫感に、水月も香燐も重吾も恐怖を覚え、トビの顔の確認どころではなくなった。

 

 「あ、おい! サスケ! 待て、まだ話が……!仕方ねーな…アイツ……」

 

 香燐も怯えながらではあるが、そのまま飛び出し、重吾は武人の如く無言でついて行った。

 

 トビが片手で仮面を押さえている間に、鷹のメンバーは二度と振り返らず場を去って行った。

 

 残されたトビは、ようやく両手で仮面を元の位置にしっかりとハメ直すと、ぽつんと立ち尽くす。

 静まり返った石造りの会議室で、彼は隣のゼツにボソッと呟いた。

 

 「……サスケの奴、めちゃくちゃ焦って逃げていったけど……やはり俺のこの圧倒的な力から放たれる『うちはの闇の気配』を察知して、恐怖のあまり叫びそうになってたのか……?」

 「なら『サスケを手懐けた』も同然だ。」

 

 「いや……あれは多分『頼むからその不審なピンクの顔を俺の部下に見せないでくれ』っていう、ただの心労だよ、オビト……」

 

 こうして世界の破滅を目論む黒幕の威厳は、不慮の仮面トラブルと、サスケの限界を突破した心労によって、消え去りつつあった。

 

◎

 

 一方、夜の木ノ葉隠れの里。

 街灯の下のベンチで、ナルトは一人、ガタガタと震えていた。

 

 その手には、コンビニで買ったばかりの「2つに割れるソーダ味のアイス」が握られている。

 

 師匠である自来也の死。

 

 ポタ…ポタ…とナルトの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

 それと同時に手の体温で温められたアイスが、無情にもドロドロと地面に溶け落ちていく。

 

 ナルトはただ声もなくうつむき、絶望のどん底にいた。

 

 その時、暗闇から足音もなくうみのイルカが歩み寄ってきた。

 

 イルカは何も言わず、すっとナルトの前に座り掛け正面から相対した。

 

 静まり返る夜の公園。張り詰めた空気。ナルトは涙を拭うことすら忘れ、ただ膝の上のアイスを見つめている。

 

 その時だった。

 

 パキッ!!!

 

 静寂を切り裂くように、アイスが力任せに折れる音が響き渡った。

 

 イルカがナルトが自分のお小遣いで買ったはずのアイスをガッシリと掴み、真っ二つ……ではなく、明らかに「8:2」の圧倒的な不均等さで強引にへし折ったのだ。

 

 イルカは、全体の8割を占める巨大な方のアイスを掲げ力強く言い放った。

 

 「お前はあの三忍自来也様が認めた優秀な弟子なんだからな」

 

 そう言うや否やイルカはその大盛りサイズのアイスを豪快に口へと放り込み、シャリシャリと音を立てて一瞬で完食した。

 

 「…………」

 

 ナルトは声が出なかった。奪われたアイスの圧倒的な質量差に絶句していた。

 

 するとイルカはナルトの手元に残った「2割の、木の棒がほとんど剥き出しになった寂しい破片」へとじっと視線を落とした。そして、再び力強く言い放つ。

 

 「お前はあの三忍自来也様が認めた優秀な弟子なんだからな」

 

 イルカはそのままナルトの手からその2割の破片すらも奪い取りパクッと口に入れて食べ終えてしまった。ナルトの手にはついに何も残らなかった。

 

 呆然とするナルト。そんなナルトの様子を見たイルカはフッと優しい笑みを浮かべ更に言った。

 

 「お前はあの三忍自来也様が認めた優秀な弟子んだからな」

 

 そう言ってイルカが懐から取り出したのは、なんと自腹で買ってきた新しいソーダ味のアイスだった。

 

 「…………!」

 

 ナルトは無言のまま、パッと顔を輝かせた。やっぱりイルカ先生は自分のことを考えて、代わりのアイスを用意してくれていたのだ。ナルトの顔に、今日初めての温かい笑顔が戻る。

 

 しかし、次の瞬間だった。

 

 「お前はあの三忍自来也様が認めた優秀な弟子なんだからな」

 

 イルカはそう言いながら手にした自腹アイスをナルトに渡すことなく、『袋ごと』豪快に丸ごとパクリと食べてしまった。

 

 「…………」

 

 あまりの暴挙に、ナルトの笑顔が完全にフリーズする。

 

 イルカは満足げにアイスを咀嚼していたが、ふと自分の手元に残った木の棒に視線を落とした。そこには黒い文字で『あたり』と書かれている。

 

 その文字を見た瞬間、イルカは何も言わず瞬時に4代目火影の『瞬身の術』の如く、その場から消え去った。コンビニへもう1本交換しに行ったのである。

 

 夜の風が吹き抜けるベンチ。

 

 すべてのアイスを奪われ、完全に一人取り残されたナルトは、誰もいない暗闇を見つめながら、ぽつりと呟いた。

 

 「イルカ先生……」

 

 その呟きには、悲しみではなく、底知れない困惑が満ち満ちていた。

 

◎

 

 雷の国、天雲峡。

 

 サスケ率いる「鷹」の4人は目的のターゲットである八尾の人柱力、キラービーと相対していた。

 

 サスケの胃は、まだキリキリと痛んでいた。

 

 アジトで見た、あの脳裏に焼き付いて離れないトビのピンク色の『ピグ◯ット顔』。精神的ダメージを引きずったままであるが、サスケは心の中で強く誓っていた。

 

 (ここからは本来の俺の復讐劇に戻す……。これ以上、俺の戦いを汚されてたまるか……!)

 

 サスケは草薙の剣を抜き放ち、冷徹な瞳でキラービーを見据えた。

 

 しかし、目の前に立つ巨漢の忍、キラービーは、おもむろに奇妙なステップを踏み始め、手帳を取り出してペンを走らせ始めた。

 

 「♪おいちゃん、今いいラップ思いついた、バカヤローコノヤロー!」

 

 「え……?」

 

 サスケの動きがピタリと止まる。

 

 「♪俺の名前は『キラービー』! 韻を踏むのが俺の『ホビー』! お前の瞳は写輪『眼』? だけど俺には『頑』として通用せん! イェア!」

 

 激しい身振りと共に放たれる、あまりにも本格的なラッパー口調。

 

 その場に、信じられないほどシュールな静寂が流れた。

 

 水月が首切り包丁を肩に担ぎながら、引きつった笑いを浮かべる。

 

 「ねぇサスケ……何あいつ。戦う前に急に歌い始めたんだけど。雲隠れの忍って、みんなあんなにファンキーなの?」

 

 「え……?」

 

 サスケの口から漏れるのは、戸惑いの声だけだった。アジトでのピンクのトラウマから抜け出した直後に、今度は目の前でヒップホップが始まっている。脳の処理が完全に追いつかない。

 

 だが、サスケはうちはの天才だ。

 

 必死にポーカーフェイスを維持し、冷酷なトーンで言い放った。

 

 「……ただの狂言回しか。くだらねぇ……水月、重吾、行くぞ」

 

 サスケの合図で、水月と重吾が同時にキラービーへ飛び掛かる。

 

 しかし、キラービーの実力は本物だった。彼は瞬時に7本の刀を全身の関節に挟み込むという、奇妙極まりない構えをとった。

 

 「♪七本の刃でダン『シング』! お前らの命をハン『ティング』! ウェーア!」

 

 アクロバティックに回転しながら放たれる変幻自在の斬撃。水月の首切り包丁は弾き飛ばされ、重吾も一撃で吹き飛ばされる。格の違いを見せつける圧倒的な強さ。

 

 だが、強ければ強いほどキラービーのラッパー口調のキレも増していく。

 

 「♪オウフ! 雑魚ども一蹴、これぞ俺の『暴威』! 次はお前だ、前髪ツンツンうちはの『ボーイ』! バカヤローコノヤロー!」

 

 キラービーは7本の刀をパシャパシャと鳴らしながら、サスケに向かって激しく挑発のステップを踏み始めた。

 

 「え……?」

 

 サスケはまたしても絶句した。

 

 7本の刀を関節に挟んで踊っている巨漢。その動きの激しいノイズはかつてトビが仮面をちょこちょこと動かしてピンク色の皮膚をチラつかせていたあの悪夢の光景と完全にマッチしていた。

 

 (頭、痛ぇ……。なぜだ……なぜ誰も彼も普通に戦わねぇんだよ……!)

 

 サスケは形勢を立て直すためうちはの高等忍術である火遁を繰り出そうと印を結ぶ。

 

 しかしキラービーはそれをラッパー特有のハンドサインで煽り散らす。

 

 「♪火遁の術とかマジで『古ぇ』! 俺の雷のスピードに『ブルぇ』! イェア!」

 

 「え……? ブルぇ…?」

 

 聞き慣れない謎のラッパー業界用語に、サスケの印を結ぶ指がピキッと硬直した。

 

 横では香燐が眼鏡をガタガタ震わせながら絶望的な表情で呟いている。

 

 「な、なんだよあのノリ……! 漂う空気が信じられないくらい寒いのに、凄まじく強大な八尾のチャクラ……使いこなしてやがる…!?」

 

 トビのピンク顔、鬼鮫の介護、そして目の前で全力でヒップホップを踊りながら迫ってくる八尾の人柱力。

 

 アジトから続くシュールシチュエーションの連続波に、サスケのこう見えても以外に繊細な情緒はすでに限界を迎えていた。

 

 キラービーが7本の刀をギラつかせながら、さらに距離を詰めてくる。

 

 「♪さぁ俺のラップ『かっこ悪い』なんて言わせねェァ! お前のスタイリッシュ『(笑)』な復讐劇、ここで終了!」

 

 その瞬間、サスケの脳内で何かがブツリと激しく切れた。

 

 もうスタイリッシュを気取る余裕など、どこにも残されていなかった。

 

 サスケは草薙の剣をその場に放り投げ、両手を頭に当てて、大地を揺るがすほどの魂の叫びを解禁した。

 

 「もうやめろォ!!!」

 

 天雲峡の谷間に、サスケの悲痛すぎる絶叫がこだました。

 





キラービーさんのシーンナルトスじゃないけど入れちゃった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS転生者「不死鳥は 再び墓地より 舞い戻る」(作者:ししゃしょしぇい)(原作:遊戯王)

前世で愛用していた紙(ヲー)が、なんか神(ラー)になっていた件。▼なにコレ、めっちゃ使いたいんですけど。▼でも原作には関わりたくないんですけど。▼そんな矛盾した欲求を抱えたコミュ障TS転生者が、アニメ遊戯王ZEXAL世界で「平穏な生活」を目指す話。▼なお、秒で失敗した模様。


総合評価:13495/評価:8.79/短編:4話/更新日時:2026年08月21日(金) 20:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>