ソードアート・オンライン CHOSE the start Over 作:鉄血
───朝。
目覚めた私達は宿屋の一角に集まっていた。
「もうあのキリトってヤツが二層の転移門開いているよな?それじゃ俺達も早速第二層に行こうぜ!」
「そうですね。私達も《救世の剣士》について色々と調べないといけないですし」
今回、第一層の迷宮区から上がるのは無しだ。あの時、どういう理由か知らないが、《イルファング・ザ・コボルドロード》が迷宮区に再びリポップしていた。
安全の面を考えて今回はそのまま第ニ層へと向かおうと考えている。
「つっても、キリトをどう探すつもりだ?闇雲に探すだけじゃ時間の無駄になるぞ?」
そう聞いてくるユーリに私は言った。
「まずは第二層最大の街《ウルバス》に行くつもり。そこなら人も沢山いるから情報も集まるはず。もし、いないならアルゴに頼むつもりだけど・・・」
「アイツもアイツで今は表に出られないだろうしな。それは最終手段だ」
「そうだね。私もそれが良いと思う」
アルゴもまた私達と同じベータテスター。しかも攻略組からは嘘の情報を流した人物として悪く言われている。ほとぼりが収まるまでは連絡をしない方が良いだろう。
「ところで気になってたんだけどさ・・・」
「あん?なんだよ?」
ザッシュがユーリに対して腰につけている剣帯を見て言った。
「ユーリって昨日まで両手剣だったよな?なんで曲剣を装備しているんだ?」
「うん。私も聞きたいな」
それは私も気になっていた。私の知る限り、彼はずっと両手剣を使っていた筈。それなのにどうして?
そんな私達の疑問にユーリは頭を描きながら答える。
「パーティに両手剣持ちが二人いると、連携しずらいだろ?だったら俺が身軽になってダメージディーラーとして戦えばお前等の負担も大分楽になる筈だ。パーティのバランスだよ。バランス」
「まあ、ユーリがそれで良いなら構わねえけど・・・」
ザッシュはそう言って自身に納得させた。
「ユーリがそう決めたのなら、私は何も言わないよ。じゃあ、さっそく行こう。ウルバスへ!」
「おう!」
「ああ!」
◇◇◇◇◇
第二層───主街区《 ウルバス》
《ウルバス》へと転移した私達はその街を見た。
「うおー!でっけぇ!」
興奮するザッシュに私は苦笑する。
「第二層の主街区だからね。街もかなり大きいよ」
「しっかし・・・ここが《ウルバス》か。街やNPCを見る限り、中東をモチーフにしてんだな」
「新しい層に来たって感じがするよな!」
物珍しそうに辺りを見渡す二人に私は言った。
「それじゃ早速、キリトさんを探そう。広い街だから自力で探すのは大変だけど・・・どこから行く?」
「情報収集なら宿屋だろ!泊まってる可能性もあるし、まずはそっから攻めようぜ!」
そう言うザッシュにユーリも頷いた。
「俺も異議なし。じゃ、早速いこうぜ。二人共」
「そうだね。行ってみよう」
そうして私達は宿屋へと向かった。だが───
「・・・あんまりプレイヤーがいないよな」
「・・・そう上手くいくわけねえか。こりゃあ、地道に聞き込むしかねえってことか」
宿屋の中を見て落胆する二人に対し、私は広間を見渡す。
確かここには
そう思いながら見渡して見ると、宿屋の二階から誰かが降りてくる。赤いケープに栗色の髪。そして腰には細身のレイピア。
───いた。
目的の人物が降りてくるのを見て、私はユーリに言った。
「ユーリ。あそこの人」
「ん?どうした?」
私の指差す方へユーリは視線を向ける。
そしてアスナさんを見て、彼は思い出したかのように呟いた。
「アイツは・・・確か、攻略戦の時、キリトと組んでた奴だったよな?」
「うん。キリトさんが《アスナ》って呼ばれてた」
そう言う私達にザッシュも彼女を見て頷いた。
「ああ、間違いない。めっちゃ強かったし覚えてる。アイツならキリトの事を知ってるかも知れない。聞いてみようぜ!」
「可能性的にそれが一番だな。イオリ、頼んだぜ」
「うん、任せて」
私はそう答えてからアスナさんに近づいた。
そして彼女に声をかける。
「あの、アスナさんですね?攻略戦に参加してた・・・」
そう挨拶をすると、彼女は私達を見て驚いた顔を作る。
「・・・あれ?あなた達は確か・・・」
どうやら覚えていたようだ。
「・・・覚えていてくれたですね」
「ええ。そっちの人があの時、皆の前でキリト君を庇ってくれてたから。あの後、ちょっと気になっていたんです」
「だって、ユーリ。貴方の事、覚えてくれてたみたい」
「ソイツはどーも」
そう答えるユーリに私は言った。
「突然声をかけてすみません。もし知ってたら教えて欲しいんですけど、キリトさんが何処にいるかわかりますか?」
キリトという名を聞いてアスナは真剣な顔になる。
「彼に何の用ですか・・・?」
そう言う彼女にユーリは言った。
「聞きたい事があるんだよ。あるクエストについてな」
「クエスト・・・ですか?」
困惑する彼女に私は頷いた。
「はい・・・そのクエストをクリアしないと、もしかしたら百層攻略前にみんな死んでしまうかもしれないんです」
私の説明を聞いてアスナさんは驚いた顔を作った後、私達に言った。
「詳しく事情を教えてください」
「分かりました」
そう言う彼女に私は一から《救世の剣士》について説明する。
聖域と呼ばれる場所で伝説の武器を集めなければならないこと。そうしなければ死の神が訪れてアインクラッドが崩壊するかも知れないこと。そして私が見た──ユーリが死ぬ姿の事も。
それらを聞いてアスナさんは驚いたような顔をしながら私達に言った。
「そんな強制的なクエストが・・・?」
「ほっといたらマジでやばいかもしれない。だから俺らは情報を集めてるんだ」
「俺もイオリの言う通りになるなら死ぬみたいだしな」
そう言うザッシュとユーリにアスナさんは少し考えるような仕草をした後、一度頷きながら口を開いた。
「確かに、キリトくんならなにか知ってるかも知れない」
「だから会って話がしたいんです!」
そう言う私に、アスナさんは言った。
「彼は東の荒野で《トレンブリング・オックス》を狩っているはずです」
居場所を教えてくれたアスナさんに私は頭を下げた。
「ありがとうございます!」
頭を下げる私にアスナさんは言った。
「でも彼、結構気難しい性格をしてるから、教えてくれるかどうか・・・」
「その時はその時さ。教えてくれてサンキューな」
そう言うユーリにアスナは言った。
「貴方も・・・あの時、キリト君の味方になってくれてありがとうございます。彼もきっと、貴方を悪く思われて欲しくないからあんな事を・・・」
そう言う彼女にユーリは口を開く。
「アイツはアイツなりに考えて、俺達を守ろうとした。アイツがやった事を俺は否定するつもりはねえよ。どうなるかぐらい、アイツも分かっていただろうしな」
「そう、ですね」
表情を暗くするアスナにユーリは笑う。
「暗い顔すんな。俺はアイツが他のプレイヤーに何と言われようが、アイツの味方だ。お前も影でアイツを支えてやればいい。そうだろ?」
「・・・そうかもしれません。ありがとうございます」
「礼を言われるようなことはしてねえよ」
「それでもです。ユーリさんも、無事でいてください」
「おう」
そう言ってアスナさんとの会話が終わったユーリは振り返る。
「それじゃあ、いこうぜ。その《トレンブリング・オックス》ていうヤツがいる東の荒野にな」
「うん。行こう」
私達の次に向かう場所が決まった。