アグネスタキオンと冬月、あと提督兼トレーナー 作:AIのタンクもどき
しとしとと静かな秋雨がトレセン学園の地面を濡らしている。灰色の雲に覆われた空からは絶え間なく冷たい滴が降り注ぎ、敷地内のアスファルトに無数の小さな波紋を描き出していた。
そんな雨の中、一本のビニール傘をさして、静かに歩道を進む冬月の姿があった。すれ違う僅かな生徒たちからは『例の白い髪の人』として、どこか遠巻きに怪訝な視線を向けられている。だが、本人はいつものように一切気にする風もなく、ただ淡々と歩みを進めていた。
その時、冬月が何かを感じ取った。
「……?何か居るな」
冬月が足を止め、傘を少し傾けて視線を落とす。濡れた植込みの隙間に縮こまっていたのは、迷い込んできたのであろう小さな仔猫だった。その仔猫はすっかり雨に濡れており、身体を細かく震わせながら、小さな声で弱々しく鳴いていた。
「そんなところに居ては、体温が下がってしまうぞ」
冬月はまっすぐと、それでいてどこか優しい眼差しで仔猫を見つめながら腰を落とすと、濡れないように自身の傘をそっとその頭上へと差し掛けた。そして、華奢な指先で、仔猫の湿った頭を優しく撫でてやる。雨水が防がれ、冬月の手の温もりを感じたのか、仔猫は少しだけ安心したようにその指に身体を擦り寄せてきた。
「さて……このままここに放置しておくわけにもいかないが、トレーナー室へ連れていくのも……どうしたものか」
冬月が対応に悩んでいた、まさにその瞬間だった。水飛沫を激しく撥ね上げ、雨のカーテンを文字通り直線的に切り裂いて、一人のウマ娘が突進してきた。
「かわいいニャンコ!雨に濡れて寒そうです。保護しなければ!」
現れたのは、無類の猫好きでもあるカルストンライトオだった。彼女は雨など一切気に留めず、爆速で冬月の目の前へと滑り込み、仔猫へと両手を伸ばした。
「私が今すぐ最高に暖かい部屋で保護してタオルで拭いてミルクを飲ませてあげようと思うのですが、連れて行っていいですか。いいですね!」
ライトオは返答を待つつもりなどなかった。冬月が僅かに口を開きかけた瞬間、ライトオは極めて鮮やかな手つきで、自らの胸元へ仔猫をひょいと大切そうに抱き上げた。
「では失礼します!」
ライトオは再び雨の中を一本の矢のようになって爆走し、進路上の水溜まりを激しく四散させながら、視界の彼方へと一瞬で消え去っていった。
「……」
後に残された冬月は、ぽつんと静かな雨音の中に佇んでいた。そっと立ち上がって傘の位置を元に戻すと、ふっと息を吐き出す。
「……まぁ、彼女は猫が好きだと聞いたし、後は任せても問題ないだろう」