元殺し屋がバイオ事件に巻き込まれる話   作:オッパッピー

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本日二度目の投稿。


Chapter6 革命のエチュード Part2

 次郎は曲がり角の手前まで進むと、壁から僅かに顔を出して先を覗き込んだ。

 

 一人の男が道路を塞ぎ、周囲を確認している。

 

 暗部の工作員だった。

 

 迂回できる道はない。

 

 この先へ進むには、どうしてもこの道を通らなければならない。

 

 工作員はこちらにはまだ気づいていない。

 

 次郎は状況を確認する。

 

「……仕方ないな」

 

 次郎はその場から飛び出した。

 

 その瞬間、工作員が次郎の姿に気づいた。

 

 視線が交わる。

 

 暗部の工作員がアサルトライフルを構えた。

 

 次の瞬間――。

 

 銃声が響いた。

 

 銃弾が次郎へ向かって飛来する。

 

 次郎は身体を僅かに傾けた。

 

 銃弾が頬の横を通り過ぎる。

 

 続けざまに放たれる銃弾。

 

 次郎はそれらを次々と躱していく。

 

 だが、すべてを避けているわけではない。

 

 飛来する銃弾の軌道を見極め、トマホークを振るう。

 

 銃弾そのものを切断するのではない。

 

 側面を僅かに当てることで、軌道を逸らしていた。

 

 暗部の工作員が驚愕する。

 

 次郎はその隙を見逃さず、一気に距離を詰める。

 

 工作員が絶叫しながら後退して銃口を向け直す。

 

 だが、間に合わない。

 

 次郎のトマホークが振り抜かれ、刃が工作員の首を捉える。

 

 工作員はその場に崩れ落ちた。

 

 次郎は周囲を確認する。

 

 新たな敵の姿はない。

 

 しかし、次郎は淡々と指示を出す。

 

「音を響かせすぎた」

 

「奴らが来ない内に移動しよう」 

 

 そして、倒した工作員のアサルトライフルを回収した。

 

 次郎はそれをエレンへ渡す。

 

「これはエレンが使ってくれ」

 

「分かったわ」

 

 エレンはアサルトライフルを受け取ると、手早く状態を確認した。

 

 扱いに迷う様子はない。

 

 四人は再び移動を開始した。

 

 しばらく進んだところで、カルロスが口を開いた。

 

「なあ、ジロー」

 

「何だ?」

 

「さっきのアレ、どうやってやった?」

 

「銃弾を避けたり、トマホークで軌道を逸らしたり、漫画みたいな事してただろ」

 

「……ああ」

 

「何か特殊な技術でもあるのか?」

 

「技術ってほどのものじゃない」

 

「じゃあ、何だ?」

 

「動体視力と反射神経が良すぎるだけだ」

 

「それだけ?」

 

「ああ。撃つ直前の動きと、銃口の向きがはっきりと見える」

 

「だから、どこへ飛んでくるのかを、ある程度予測できる」

 

「それで避けてるのか」

 

「そういうことだ」

 

 次郎の説明にカルロスは呆れたように息を吐いた。

 

「いや、それを『それだけ』とは普通言わねえんだよ」

 

「今の俺にとっては、それが普通だからな」

 

 次郎は苦笑する。

 

「……なるほど」

 

「やっぱり、とんでもない奴だな」

 

「真似できそうにないから、俺は普通に銃を使うことにするぜ」

 

「ああ。その方が確実だ」

 

 それから四人は、慎重に進んだ。

 

 目的地へ近づくにつれて、暗部の工作員の姿が増えていく。

 

 進路を塞いでいない工作員は、できる限り避けて進む。

 

 どうしても避けられない場合だけ、次郎が先頭に立って素早く排除していった。

 

 途中ではゾンビの群れにも遭遇した。

 

 こちらも可能な限り戦闘を避け、別の道へ回る。

 

 それでも進路を塞がれた時には、次郎がトマホークで道を切り開き、カルロスがアサルトライフルで援護する。

 

 あさみは拳銃を使い、確実に敵を仕留めていった。

 

 エレンもまた、手にしたアサルトライフルで敵を撃ち抜いていく。

 

 その動きに躊躇はなかった。

 

 銃を扱うことにも、人を撃つ覚悟にも既に迷いはない。

 

 エレンは周囲を警戒しながら、ノートPCで周囲の情報を確認する。

 

 やがて、目的地が見えてきた。

 

 国会議事堂近くに設けられた、臨時の政府防衛拠点。

 

 周囲には自衛隊と警察、そして暗部の工作員が配置されている。

 

 厳重な警備だった。

 

「……すごい警備ね」

 

 エレンが小さく呟く。

 

「紫藤がいる場所だ。これくらいは当然だろうな」

 

 カルロスが周囲を確認する。

 

「正面から入るのは無理だな」

 

「ああ」

 

 次郎も周囲を見渡す。

 

 監視カメラ。

 

 警備兵。

 

 検問。

 

 正面からの侵入は不可能に近い。

 

 四人は建物の陰に身を隠しながら、侵入できそうな場所を探した。

 

 その時だった。

 

 次郎が古い石垣に目を留めた。

 

 周囲には雑草が生い茂っている。

 

 だが、一部分だけ不自然に草が密集していた。

 

 次郎が近づき、草を払う。

 

 そこには古びた金属製の蓋があった。

 

「……これは」

 

 次郎が蓋を開ける。

 

 地下へ続く階段が現れた。

 

「地下道?」

 

 カルロスが覗き込む。

 

「ああ。昔の避難経路だ」

 

「知ってるのか?」

 

「昔、似たような場所を使ったことがある」

 

 次郎は階段を見下ろした。

 

「見た目からして、昭和の頃に造られたものだろう。今は使われていないはずだ」

 

 

 四人は地下施設の奥へ進んでいった。

 

 そこには、古い書類や備品が保管されている。

 

 見たところ、使われなくなった地下資料保管庫だった。

 

 しかし、そこには現在の政府拠点へ続く階段は見当たらなかった。

 

 三人が室内を調べ始める。

 

 次郎は壁際を調べ、カルロスは棚の裏を確認する。

 

 あさみは床や壁を調べながら、隠し扉がないか確認していく。

 

「階段がないな」

 

 カルロスが周囲を見渡す。

 

「ああ」

 

 次郎も壁を調べる。

 

「地下から上へ通じる道がない」

 

 次郎は周囲を見渡した。

 

「そんな筈はない」

 

「必ずどこかにあるはずだ」

 

 あさみが壁を軽く叩きながら確認する。

 

「見たところ、扉らしいものもありませんね」

 

 その一方で、エレンは部屋の中を見渡していた。

 

 そして、部屋の隅に置かれた一台のピアノに目を留める。

 

 古びたピアノだった。

 

 長い間使われていないようで、表面には薄く埃が積もっている。

 

 だが――。

 

 譜面台には、一枚の楽譜が置かれていた。

 

 エレンがピアノへ近づく。

 

「……月光?」

 

 楽譜には、ベートーヴェンの『月光』がセットされていた。

 

 エレンは楽譜とピアノを交互に見つめる。

 

 こんな場所にピアノがある。

 

 しかも、楽譜まで置かれている。

 

 何となく気になった。

 

 エレンは椅子を引き、腰を下ろす。

 

 その様子に次郎が気づいた。

 

「エレン?」

 

「……」

 

 エレンは楽譜を確認しながら、演奏する準備を始める。

 

「おい、今はそんな事をしている暇はないだろう」

 

 次郎が言うが、エレンは少しだけ振り返った。

 

「ごめんなさい。でもちょっと気になるの」

 

 そう言って、エレンは鍵盤へ指を置いた。

 

 そして、『月光』を弾き始める。

 

 静かな旋律が、地下室に響き渡る。

 

 次郎、カルロス、あさみは手を止め、エレンの演奏を見ていた。

 

 そして――。

 

 最後の音が響き、エレンが演奏を終えた。

 

 その瞬間だった。

 

 ガコンッ。

 

 部屋の奥から、低い音が響いた。

 

「……何?」

 

 エレンが顔を上げる。

 

 次郎たちも音のした方向へ振り向いた。

 

 すると、壁の一部がゆっくりと横へ動いていく。

 

 その奥から、上へ続く階段が姿を現した。

 

「隠し階段……」

 

 カルロスが呟く。

 

 あさみも階段を見上げる。

 

「まさか、ピアノが仕掛けだったなんて……」

 

 エレンが立ち上がり、階段を見つめる。

 

「偶然だけど、上手く行って良かったわ」

 

 次郎が階段へ近づく。

 

 壁の奥には、政府拠点へ続く古い階段が隠されていた。

 

「これなら上へ行けるな」

 

 次郎が振り返る。

 

「エレン、どこに繋がっているか分かるか?」

 

 エレンはノートPCを開き、現在の施設の図面を確認する。

 

「この位置からだと……政府拠点の東側に出るはずよ」

 

 あさみが階段の先を見つめる。

 

「正面から入るより安全に行けそうですね」

 

「ああ」

 

 次郎が頷く。

 

「分かった。行こう」

 

 四人は隠し階段へ足を踏み入れた。

 

 現在の政府拠点へ向かって、階段を上っていく。

 

 そこからは、さらに慎重な行動が必要だった。

 

 警備兵の位置を確認し、必要であれば気絶させ、監視カメラの死角を選んで進む。

 

 エレンがノートPCを確認しながら、先の状況を伝える。

 

「この先を進めば、紫藤のいる区画へ繋がるわ」

 

「行こう」

 

 次郎の言葉に、三人が続く。

 

 四人は足音を抑えながら、政府拠点の奥へ進んでいった。

 

――Chapter6・完――

 

 




日本の暗部が張り巡らせた謀略の網を破り、ついに首謀者・紫藤一郎の元へと辿り着いた次郎たち。
しかし、追い詰められた権力者が縋ったのは、狂気の力だった。
交わされる戦火と謀略の果てに、真の「英雄」として祭り上げられるのは誰なのか。
次回、Chapter 7『巨人』。

サブタイトルは半分ネタですが、エレンの名前にはちゃんとした意味があります。
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