ユミアの転生旦那さんのアラディス開拓記 作:開拓!開拓!!開拓!!!
私が初めてテンセイ・サイキョウ(天聖斎京)君と顔を合わせたのは六歳の頃。
お母さんが家の地下室のお母さんのアトリエの倉庫で面白い物を見つけたと言って見せてくれた超遠距離通信機のモニター越しだった。
当時の私はまだ錬金術のことも何も知らなくて、ただお母さんが絶対に内緒だからね。という約束だけは覚えていた。
この時、お母さんとサイキョウ君のお母さん達の間で私とサイキョウ君の結婚の話が出ていた一年くらい前に教えてもらった。
サイキョウ君の国では錬金術は禁忌でもない技術で、サイキョウ君はとんでもなく優秀だけど。
優秀過ぎて家を出ないと跡継ぎ問題で揉めるのが分かっていた。
そんなところにすごく遠い親戚の私の家と連絡が取れ、かつての血族が苦境に立たされていると聞いて、お母さんたちは色々と話し合った結果。
私とサイキョウ君を合わせてみて、良さそうなら婿入りさせる話になったらしい。
もの凄い遠いユーステラに婿入りさせるってサイキョウ君とサイキョウ君の実家にメリットがあるのかな? と思ったけど。
こっちにはアラディス大陸がある。そして、禁忌の土地として人の手が殆ど入っていない。
サイキョウ君もアラディス大陸の調査をしたいと言っていたし。サイキョウ君の実家もアラディス大陸はかつての故郷。
調べれば色々とメリットもあるし。
当初の予定では時間は掛かるけれど、サイキョウ君の実家が主体となりユーステラとサイキョウ君の母国で貿易も考えていたようだ。
遠方の国だから、多少問題はあるみたいだけれど。サイキョウ君が作った高速船はユーステラの船よりもはるかに速い。
そういうことで、私と結婚するのは問題なかった。
なにより、私もサイキョウ君も仲良くなれた。
正直、自分が錬金術師の家系だと聞いても子供の頃は分からなかったけど、徐々に大きくなっていくうちに、大変なことだと気づいた。
それに周囲の同性の友達と話していると、錬金術師の家庭の自分が将来結婚できるのかな? と不安になった。お母さんとお父さんは上手くいった例らしいけど。
じゃあ、自分の時はどうだろうか?
お母さん達みたいに、仲良く結婚生活できるだろうか? と考えてかなり難しいなって思えた。
サイキョウ君と出会えたのは本当に良かった。
移動とか下準備で他の子よりは結婚が遅れたけれど、それでもやっとサイキョウ君とこれから一緒に暮らしていけると思った矢先にマナ災害が起こった。
マナ災害の後はサイキョウ君が居なかったらお母さんは死んでいたと思う。
それに私も、もっとひどい取り調べを受けていたと思う。
マナ災害のこともあるだろうけど、ユーステラでの禁忌の錬金術という存在は周囲の人達にとって恐怖の塊なのかもしれない。
私を怒鳴りつけたり、地面に押さえつけた騎士達の表情を冷静に思いだしてみると、多かれ少なかれ怯えていたように思う。
とにかく、お母さんがマナ災害の被害を抑えるために錬金術を限界まで使った結果、生活の補佐が必要になっって。
危険なユーステラには暮らしていけないとなった私達はサイキョウ君の提案で思い切ってアラディス大陸に移住した。
「まずは簡易的な拠点を作ろうか」
サイキョウ君の作ったドールと言う巨大な鉄の巨人。ロボットと言うらしいけど。
私とお母さんの二人をちょっと無理やりだけどコックピットに入って。
三人乗りでアラディス大陸まで移動。
空の旅はドールの操縦席から見る外の世界は本当に凄かった。空を飛ぶって凄いなぁって。
「拠点、うんそうだね。家は大事」
アラディス大陸に到着して直ぐにサイキョウ君はそう言って、沿岸部を開拓し始めた。
簡易的な家は直ぐに出来た。
「鉄は節約したいから、石の建築だけどな。それと木材も組み合わせてっと」
サイキョウ君が建築している姿はとても不思議な光景だった。
緑色の土台や壁の形の光がサイキョウ君の前に現れて、サイキョウ君が「この辺かな」と呟きながら、軽く手を振ると。
その場に土台や壁がドン、ドンと現れる。
数分で頑丈な三階建ての家と家の周囲を取り囲む防壁が完成した。
更に警備として低温ポッドというアイテムから、バリオニクスという小型のドラゴンを呼び出して周囲に配置した。
サイキョウ君が言うには、ドラゴンではないみたいだけど。
周辺で確認したドラゴンよりも強そうだ。
「先ずは電気が欲しいから、浅瀬も開拓してバシロサウルスが泳げるようにして。ユーステラの船舶がこの辺に上陸できない様に防衛施設を作る」
電気って? と思ったら、マナランプや街灯に使うマナに似た物と言われた。
どう説明したらいいのか悩んでいたけれど。雷と言われて直ぐに分かった。
私達はマナがエネルギーとして使えたから気にしていなかったけれど。
他にも生活に使えるエネルギーってあるんだね。
この辺も国が違うからなのかな?
アラディス大陸に来てから、生活が変わった。
お母さんとサイキョウ君の三人で食事をして。お母さんと一緒に掃除や洗濯をする。
サイキョウ君とサイキョウ君が呼び出した召喚モンスター(サイキョウ君が便宜上、そう言って良いと言われた)達は開拓を頑張ってくれている。
私も何か手伝いと思っていたら、「畑の手入れ手伝ってくれるか」とサイキョウ君に言われて今は野菜と薬草を育てている。
夕方には仕事終えて、ズシン、ズシンと足音を鳴らしてみんなが帰ってくる。
大きな岩を引っ張った緑色の竜。確か絆石という特別な石から呼び出した巨大な竜、リオレイア。
それとあっちでのそのそ動いている岩のヘビみたいな生き物は、イワーク。
畑を作る時に地面を掘ってくれた。あの子はポケットモンスターというモンスターだったはず。
サイキョウ君が呼び出せるモンスターは、ポケモン、恐竜、モンハンだったかな?
恐竜とモンハンのドラゴン達の見極めが難しいけど、そのうち慣れると言われた。
夕飯を食べ終えた後は、少しの間だけ。
サイキョウ君と二人きりになる。
「それじゃ、よろしくお願いします。先生」
「先生は言い過ぎじゃないか?」
サイキョウ君に頼んで、私も錬金術を学ぶことにした。
本当なら、婚約者同士もう少し甘いというか、なんと言うか、婚約の時間とかを作るべきなのかもしれないけど。
状況が状況だし、焦る必要はないよってサイキョウ君が言ってくれた。
私は甘えてばかりだなぁ。
「じゃあ、先ずは基本から」
「はい」
素材の加工。怪我をした時の為の薬や攻撃用のアイテム。
自分が身に着ける武具の知識。
錬金術は思った以上に幅が広かった。
けれど、とても楽しく感じる。
「フラミィも修理できるようになるといいな」
「サイキョウ君が無事だった家を掘り返して地下ごと持ってきてくれたおかげで、資料はあるから頑張るね」
「ああ、応援しているぞ」
時折リビングで座っているお母さんの様子を確認しながら、私はサイキョウ君に錬金術を教わった。
ユーステラの騎士達から私達を守る為に怒って騎士達を殴り倒していた時は怖かったけど。
今では全然怖くなくなった。
怒っていたのも私達の為だったわけだし。
本当にサイキョウ君が居てくれてよかった。
周辺の開拓が進んでいる。
数日で家と家の周囲の防壁だけだったのだが。
今では大型のモンスター達が通れる大まかな道、畑。
採集してきた金属鉱石を溶かす小さな炉を沢山設置したり、素材を一時保存する為のボックスなどが置かれた施設が作られた。
海岸の一部も利用して、防壁を作り、水生のモンスターじゃないや、恐竜も休めるようになった。
バシロサウルスという大人しそうな大きな生物は原油っていう物と似たような物を生み出すと聞いた。
原油を加工してガソリンにすることで、発電機が動くって言っていた。
後日、マナを利用したランプよりも明るい光に私は驚くことになった。
発電機と照明ってすごい。
それといつの間にかアイルーって言う小さなネコ達が増えていた。
「この子達がいれば、ユミアも楽になるかなって」
「思ったよりも力持ちですね」
私くらいの高さの大きなタルを何でもないように運んでる姿を見るとかなり驚いたけど。
お母さんの生活の補助をアイルー達がしてくれるようになって、私もサイキョウ君の手伝いが出来るようになった。
と言っても、私が出来るのは採取や畑の手伝い。錬金術だ。
一応、アラディス大陸には魔物がいるから、戦闘訓練も受けている。
ユーステラでマナ災害を起こした。
サイキョウ君がトカゲ頭と呼んでいる敵のこともあるから、頑張っているけれど。
ぜ、全然勝てる気がしない。サイキョウ君が強すぎる。
と言うか、実弾を木刀で弾くのは反則だと思う。木材なのに傷一つ付いてないって。
訓練で私に実弾使わせるのはどうかと思ったけど、今はもうそういうものだと思ってしまえるようになってしまった。
私の婚約者が非常識すぎる。
日常生活が戻ってきた気がする。
お母さんは昔のように私に話しかけてくれたり、笑いかけてはくれない。
無表情で無言。
ただ、生活の記憶があるのか。生活習慣なのか。ぼーっとしながらもゆっくりとだけど、生活をしようとする。
私はお母さんの生活の補助をする。
話しかけても反応が無い。
最初は泣きそうになった。ううん、泣いたけど。
サイキョウ君が諦めずに声をかけ続ければいい。普段通りに。
と率先して、お母さんにおはようございます。と挨拶したり。ただいまと言ってくれたり。
サイキョウ君曰く。
「確か、記憶って身体にも残っているって話があるんだ」
「どういうこと?」
「ぜん、いや昔……大昔の記録なんだけど。心臓移植って言う治療法があったんだ。植物状態になった人の心臓を他の心臓が悪い人のと交換する治療法」
他人の心臓を自分の心臓と取り換えるって、昔の錬金術師って凄いことしていたんだと、本当に驚いたけど。
サイキョウ君の話だと、心臓移植された人が突然今まで触ったことのなかった楽器を弾きたくなって引いてみたら、いきなり演奏することが出来た。
って話だった。
後で心臓移植された人が楽器が得意な人だったと分かって、記憶は頭、脳以外にも残るのではないかって。話らしい。
だから、人間の力は人が思うよりすごいから、私のことを覚えているのかもしれないから、諦めるなって。サイキョウ君は私を励ましてくれた。
私も普段通りお母さんと接する。
何も反応が返ってこないのは無いのが辛いけど。
今はサイキョウ君もいる。
サイキョウ君の呼び出したモンスター達も居る。モンスター達は怖い顔しているけど。
結構人懐っこくて、すっかり慣れてしまった。
「じゃあ、今日はアマタイト鉱を中心に採取すればいいの?」
「ああ、俺は少し遠く見て回って、地図を作るつもりだ」
「分かった。素材の回収をは任せてね」
アルゲンタヴィスのアンに乗って、私はアンキロサウルスのキロをアンに足で掴んでもらって。それと護衛のオトモアイルーのアメリアを肩に乗せ。比較的、近くの鉱石が取れる場所を目指した。
「アンの背中に乗って空を移動するの本当に楽」
バッサバッサとアンの羽ばたく音を聞きながら、私は前までの生活では想像も出来ないことが当たり前になったなぁと思いながら、日々を過ごしていった。