「まさかあそこまで効き目のある飲み物だったとは・・・」
黒い缶を1週間で飲みきってしまった。
そのおかげか仕事を確かに想定よりも早く終わった。
それ故に
「今日から宜しくお願いします、士道さん。」
「風雅でいいわ、これまでも、そしてこれからも同僚なのだから。」
「因みに何故、海辺で集合なんですかね?」
レントの目の前には波打つ砂浜に立つ紫の髪に黄色のメッシュが入った、三本の刀を持った女性がいた。
士道風雅、かつての帝国で王室護衛の隊長を務めていた方だ。
直接、声を掛けた事は無かったがその姿は何度も見ていた。
王室といってもソナタ様の親衛隊だったからだ。
「それより、このシドウに剣を教わりたいとは穏やかじゃないわね。
その言葉の意味はおわかりなのかしら?」
「・・・はい、分かっています。」
当時の風雅さんに剣を教わりたいと具申する人は少なくなかった。
だが、最後までその剣を修めたという人もいなかった。
噂は噂を呼び、生きては帰れない
「シドウは姫達に剣を教えてやってくれと頼まれたからだけど、貴方の理由を聞かせてもらえる?
何故、貴方は剣を習いたいのか。」
風雅は鋭い視線をレントに向ける。
その視線は厳しいものであったが、優しさも含まれている様な気がした。
「・・・明確に実力不足だと思ったからです。
騎士達を見て私も騎士を名乗るには、カノン様を守るには何もかもが足りないと思ったのです。」
叢裂との模擬戦、O-RANGEでの喧嘩、そして旅団の戦闘を見た事がある。
そのどれもに自分の実力が足りていなかった。
そのまま主人たちの横に並んでいける、とは口が裂けても言えない。
「そして、風雅さんを頼ると決めたのは、私の知る中で一番
二刀一閃の叢裂、重機を扱うO-RANGE、銃火器を使用するオッター貿易。
どれも指南しようとも魔剣と相性が悪い。
「刀剣を操る風雅さんに指南をお願いしようと思います、宜しくお願いします!」
頭を下げ、誠意を見せる。
それを見た風雅は深く息を吐いた。
「最初に言ったけど風雅でいいわ。」
「・・・申し訳ございません。」
「ふっ、本当にすぐ謝るのね。」
ついの言葉に顔が赤くなるのを感じる。
「最初に言っておくけれども、断るつもりなんて無いのよ。
貴方がどれ程罪深くても、シドウの教えをこちらから打ち切ることなんて無いわ。
シドウの剣が広がる、それ即ち士道の誇りだもの。」
おわかりかしら、と微笑みながら木剣を投げる。
砂浜に刺さったそれを引き抜き、構えるよう促される。
「それにしても・・・」
風雅とレントはただただ打ち合っていた。
騎士たちでは無く普通の人間の訓練スピードの風景。
風雅は腕試し、実力を測る為にゆっくりから始めていた。
「貴方、目は良い方なのかしら?」
しかし、その速度は徐々に速度を早まっていた。
それにはレントが起因としていた。
風雅が打ち込む度に後手後手に回っていたが、数度打てば打たれる場所に先んじて防ぐ。
また数度打てば不格好な反撃が返ってきて、また数度打てば徐々にその重さを増していた。
風雅はその数十度の打ち合いで既に要因を見切っていた。
ただの真似、と断じるには様になり過ぎていた。
「戦闘経験は少ない方だと聞いていたのだけれど。」
レントはその言葉に以前も聞き覚えがあると思いついた。
「本当に第一人類史にいた頃は基礎的な素振りぐらいしかしていなかったですよ。」
その言葉に風雅は引っかかりを覚えた。
つまり、その後・・・
風雅は既にソナタから彼の人生の顛末を聞いていた。
当然、《左腕》にも。
「・・・ふぅ、ウォーミングアップもこれぐらいでいいかしら。
ここから実戦編よ。」
そう言うと風雅は木剣を砂浜に刺した。
「実戦?」
「そうよ、姫達の任務について行きたいのでしょう?
なら実戦を知っていて損は無いはずよ。」
そう言うと
「あ、お待ちください!」
レントは遅れて入っていくのだった。
「ど、どこまで行くのですか、風雅さん。」
「風雅」
「・・・風雅、こんな所まで進んで大丈夫なのですか。」
レントの心配を他所にどんどん進んでいく風雅。
刀を3本差しているにも関わらず木が密集する場所で一度も引っかかる事もない。
「大丈夫かは分からないわ。
二つ程言えるのは、一応ねという事。
そしてそれを今から確かめに行くという事、おわかりかしら。」
つまり、風雅はこの先に何かがあるという疑念を持って進んでいる。
「・・・風雅はここを知っているのですか?」
最初から疑問ではあった。
ソナタ様から訓練場所として指定されたのがGARDEN外の海。
そして、先程から妙な確信と他人事のように話される現状。
そして・・・
「あぁ、見つけたわ。」
風雅は足を止めた。
目的の物を見つけたようだ。
レントも見つけた物を見ようと足を進める。
「此処が何処か?
教えてあげるわ。」
それは宝石のようだった。
「ここは嘗て、カノンを含めた陛下一行が『十戒』と名乗る
だが宝石にしてはビキビキと音を立てて現在進行形で成長している。
「そしてその『十戒』のせいでここら一帯は疑似神域となり、未だ余波は残っている。」
そして、何より。
「この余波が続く限り、こうして
その結晶体から
「・・・コレは・・・何なのですか。」
レントは恐怖を覚えていた。
かの部屋で来る日も来る日も斬り続けた。
その存在が目の前にまた現れたのだから。
「あの結晶体は?」
レントの質問に風雅は指差しで答えた。
「貴方の
レントは思わず左腕の義手を触った。
コレの大元が目の前の結晶だと信じれなかったからだ。
「さ、貴方に任務を与えるわ。」
風雅は気にする様子も無く言葉を発する。
「狩りよ、この森に点在する種子体を破壊するの。
もちろん穏やかじゃないわ、木々によって視界不良の中で天使達が襲ってくるもの。」
その言葉に天使達がこちらを見つけたようで、身震いと共に咆哮を上げた。
「もちろん、任務の隊長は貴方よ。
そして隊員はシドウ、故にフォローには回ってあげる。
安心なさい、メイズママには連絡を入れてあるから不死だけど治療ぐらいはしてくれるわ。」
穏やかじゃないけれど、と言っている間に天使達が迫ってくる。
レントは急かされるかのように左腕から魔剣を引き抜く。
そして、
「起きなさい、
風雅も鞘から一振、刀を引き抜く。
それは《魔剣デュランダル》に似た黒の刀身。
その一刀を取り出すと、
斬っ、、
「はい?」
目の前の天使と種子体が全て一刀両断された。
後ろには風雅が《振り抜いた姿》で止まっていた。
振りかぶりの音すら無かったのにだ。
風雅は体を起こし、
「今日の目標はコレを出来るまでね♪」
「・・・はい?」
地獄だった。
森の奥底にはうじゃうじゃと種子体が発生していた。
それはもう大量に。
風雅はまるでゴキブリね、と言っていたがそんな事考える余裕すら無かった。
「貴方、目が良いではないのね。」
風雅は結果としてそんな事を言ってきた。
「
それ故に初見が弱い、そして研鑽の先の技が出来ないのだわ。」
任務完了と同時にへたれ混んでしまったレントとは裏腹に未だ消化不良といった風雅。
そして、天使を処理すると同時にこちらを観察する暇もあった。
やはり、経験が違う。
「貴方、叢裂の剣を初見で弾いたそうね。」
「え!?」
驚いた、それはまだ右も左も分からなかった時の出来事。
まだ誰にも話した事も無いのに。
「ふふ、叢裂がはしゃいで周りに吹聴していたらしいわ。
あの子、色んな意味で純粋だから。」
「な、なるほど。」
純粋、確かにあの子はその言葉が似合う少女だった。
「それを聞いた同じ騎士団の斬も貴方を賞賛していたわ。
あの八積楓を一人で押さえたって。」
「いや、あれは・・・なぜかあの人が暴走したと言うか・・・」
全て誤解で、ほとんど偶然で、防いだのは本当で。
「なら、
もう1つ、貴方の武勇伝を増やしてみる気はないかしら?」
風雅が
「・・・嘘でしょう?」
「別に本気って訳でもないわ、突然って訳でもない。
当初から予定していた訓練の最終段階よ。」
そういうと風雅はポケットから携帯端末を取り出し、通話をかける。
コールがなっている最中に不穏な事を、穏やかじゃない事を言い放った。
「貴方もシドウも不死だけど・・・・・・・・・・・・
そういうと電話か繋がったようで端末を耳に当てる。
「陛下?予定していた通り、
『承認するよ、頑張ってね。』
その言葉を皮切りに風雅の存在感が跳ね上がった。
「・・・っ!??」
圧迫される、気配が、重い、空気が、舌が、乾く、私、俺は
「
風雅はそれでも淡々と言い放つ。
「落ち着いて、貴方はそんなグズな弱虫じゃないでしょう?
早く立って構えなさい、最終試験の説明をするから。」
少し言葉使いが悪くなった風雅にも気づかないレントは震えながらも魔剣を杖にして立ち上がる。
「良い子ね♪」
なんとか立ち上がり前を見るとオーラのせいか、風雅の肌が薄黒くなっている。
「風雅、その顔や肌は?」
風雅は指摘され、思い出したかのような笑いを見せる。
「あぁこれ?大丈夫、一時的よ。
BLADEといって
簡単に言えば強くなる魔法よ。」
レントは訝しげな目線を送ると、風雅は咳払いを一つ。
「軌道修正や天使に対抗する為にGARDENが生み出した技術で、
そうすれば魂は活性化して本質が天使や魔剣に近づくの。」
「魔剣・・・に?」
「あぁ、安全性は考慮してるらしいから安心して頂戴♪
副作用としてネジが少し飛んで頭が軽くなる事かしら。
安心して♪ブレイドラインは比較的マシだから。」
何を安心・・・いや、カノン様がそうならないならマシか。
「最終段階は貴方のBLADEの発現、測定。
説明してあげるから構えなさい♪」
そう言われ魔剣を使う為に構える。
魔剣を足元に刺し、手を添える。
運命様に教わった魔剣使いの構え方らしい。
「魔剣を一度抑えなさい、魔剣自体が持つ魔力で上手く供給出来ていないわ。
貴方も陛下の騎士、認証を得ているなら魔力を感じるはず。」
目を閉じる、確かに空間上に力を感じる。
魔剣を抑える、身体に巡るのを感じる。
「それを自身の身体に貯めていくイメージよ。
形は自然と作られていくわ。」
剣、魔力、形、自分には
私は旅団に着いていかなかった愚か者だ。
それでも一度見た事がある。
形を、剣に、収束。
「・・・綺麗ね、素敵だわ♪」
「・・・・・・あげま、あげれませんからね。」
・・・そうだった、当時でも刀剣マニアの側面を持っていた人だった。
今もこの魔剣の見る目が変わっている。
それはそうだろう、
「それを互いに向けて撃ち合うの。
それを持って訓練終了とします。」
風雅の言葉が終わり、剣を後方に構える。
「貴方の思うままに振りなさい。」
「・・・はい。」
レントも上段に構える。
その時、見えた右腕は薄黒くなっていた。
「数多の祈りはこの刃に集う、千年の願いは成就する・・・」
「これはいつか見たまばゆき牙!星の光すらも抱く夜!」
「《士道天瞑流 弌式《風紕凛花【鳴】》》!!」
「《我流:エルスタニア流真魔剣技 暗き潜底に辿り着きし第一夜《天牙連斬閃》》!!」
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「・・・・・・まさかカノンちゃんと同じ技を繰り出してくるとは思わなかったわね。」
荒れた地、惨状を見てふと零れた。
・・・これはシドウのBLADEの所為じゃない、あの魔剣の力の結晶だ。
「・・・妬けちゃうわ。」
妬ける、焦がれる、これ程の力を持ちながら使い方を未だに把握しきっていない。
真の極致まで至るならどんな彼になるのだろうか。
「・・・ダメね、これは彼の不幸の結果。
それを羨ましがるなんて罪深いわね・・・」
その時近くの、今は遠くなった草むらから人が出てきた。
「やあ、訓練は終わったかな?」
「御無沙汰しています。」
運命と斬が現れた。
「ええ終了よ。
もっとも、受講者がこうも潰れてしまっては元も子も無いけれどね。」
レントは技を打つや否や気絶してしまった。
初めてで加減関係なく打ったのだろう。
・・・打てと言ったのはシドウだけど♪
「では、俺が医療部に運びます。
風雅さんもしっかり休んでください。」
「ええありがとう。
・・・ねぇ、陛下、斬。」
思わず呼び止めた。
「全部見ていたのよね。」
聞きたい事が出来た、あったからだ。
「まぁね。」
「はい。」
「感想を頂けないかしら。」
「・・・彼は成長するよ、これからが楽しみだね。」
「彼の所見については以上かしら。」
陛下は首を傾げる、罪深い様子は無い。
「貴方はどうかしら、士道としての感想でもいいわ。」
「・・・俺の直感でいいなら。」
言葉を切ると、彼はレントを睨む。
「彼は危険です。
実力不足がって話じゃない、もっと根底のものが害となりそうな・・・そんな気がします。」
斬は一見冷たく、振ったように見えるが心配する目をしている。
それは彼がまた士道であるが故にだった。
「俺たちは剣であり、剣であるように教えられました。
だが、この人は剣である為に人である事を忘れる・・・忘れようとしている。」
そう言うと斬は運命に向き直る。
「剥き身の刀が独り歩きしようとしています。
・・・刀で済めばいいのですが。」
「・・・ありがとう、参考にするよ。」
斬は一礼だけ返して、レントを抱えたまま羽織を翻した。
「・・・・・・あ。」
「どうしたのかしら、陛下。」
運命が指差す先には魔剣が刺さっていた。
「レントの忘れ物だね、私が後で届けておくよ。」
「・・・シドウの戦利品として貰ってはダメかしら?」
「ダメだよ!?」
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プロットはあれどその通りにいくとは限らない。
評価感想お待ちしております。