サブタイトルは投稿主の願望です。本編の題材にはなりますが、登場するプロデューサーの発言ではございません。もう一度言いますがあくまで投稿主の発言です。
投稿主の性癖上、ヤンデレ属性が強めになっている可能性があります。
そのためR15タグと残酷描写タグが付いています。
全てでは無いですが苦手な方は自衛をお願いします。
学マスの二次創作を別で執筆中なのですが、あまりにその作品内では消化出来なさそうなネタが生えてくるのでこちらで消化させてください。
※執筆中の二次創作はそのうち投稿されます
※投稿主が藤田Pのため、冬のHIFの内容は含まれていないはずです。最初は担当で攻略させてくださいなんでもしますから!
※逆に言えば冬のHIF前までの内容を含むということです。お気をつけて。
・秦谷美鈴
・花海佑芽
・倉本千奈
・秦谷P
・花海P
・Daトレーナー
基本的に書き殴っておりますので誤字報告はどんどんお願いします、
N.I.A.クリア後くらいの温度感ですわ!
欲望を込めて書きました。キャラの理解度、解釈は完全に独自です。
「そろそろですかね……」
仕事用のノートパソコンの隅に無機質に映し出されている数字を見てため息をつく。12:40と表示したそれは、約束の時間を40分も過ぎたことを示していた。
今日は自身の担当アイドルである、秦谷美鈴と新曲の打ち合わせを予定していたのだが。
「今日はどこでお昼寝しているのでしょうか。」
打ち合わせに大遅刻しているアイドルを怒るでもなく、心配するでもなく。呆れた声色で独り言を零してしまう。
一応これでもN.I.A.で着実にランキングを上げているアイドルのプロデューサーであり、もっと心配するべ気なのだろうが。彼女が面倒なことに巻き込まれる、ましてや面倒事に首を突っ込むことなど想像ができない。
来ないものはどうしようもなく、緊急性の高い打ち合わせでも無いので別の仕事を順に片していく。
今日も今日とてトレーナー陣からの苦情の連絡が届くが全て流す。
仕方ないだろう。今日は雲ひとつ無い晴天なのだから。
気付けば画面に映し出された数字は13:40となっている。昼休憩を終えたアイドル科の生徒達は各々営業やレッスンを再開しているだろう。
そんな普遍的な事を考えていると、誰もいない廊下から足音が聞こえてくる。この時間に俺がいる教室に来るのは……大体あさり先生か秦谷さんだ。
今日はあさり先生は授業をしているはず。つまりこの足音は……
「おはようございます。プロデューサー。」
予想通り扉を開け入ってきたのは俺の担当アイドルである、秦谷さんだった。悪びれもなく挨拶をし、まっすぐこちらへ向かってくる。
「おはようございます秦谷さん。本日は12:00に来てくださいとお伝えしたと思うのですが。」
「ふふ、そうでしたでしょうか。であれば、申し訳ございません。あまりに日差しが心地よかったもので。」
天使とも悪魔ともとれる柔らかい笑みを浮かべる秦谷さん。もしわざと遅れたのであれば悪魔だな。
「まぁ良しとします。せっかく来ていただいたのですし、今から打ち合わせを始めましょう。」
「はい。いいですよ。ところで……」
彼女の柔らかい笑みは一瞬で消え、開かれた瞼から吸い込まれそうな瞳が現れる。
「?」
「先程、わたし以外の人のことを考えていませんでしたか?」
「足音が聞こえたので秦谷さんが来たのかなと考えてましたよ。それまでは仕事のことを考えてました。」
「そうでしたか。それなら、何も問題はありませんね。」
俺の返答に秦谷さんは満足そうに笑い、隣の椅子に腰掛ける。
最近の秦谷さんは事ある毎に聞いてくる。今更秦谷さんの事を考えてる余裕などないとわかって欲しいのだが。
廊下を通った人影に目を向けただけでも浮気判定。
雑談中に他の女性を例に出しただけで浮気判定。
終いには考えていただけで浮気判定だ。
嘘を言っても勘づかれるので、都合の悪いことは伏せた上で本当のことを伝えるようにしている。
信頼関係は築けていると言っていいのだろうか。
そもそも何故分かるのだろうか……?
新曲の打ち合わせも無事終わったので、書類をまとめていく。
「プロデューサー。打ち合わせをしたあとではありますが、始まる時にレッスンに向かわせれば間に合ったのではないでしょうか?」
「約束しましたからね。曇りの日は必ずレッスンをすると。それ以外は強制しませんよ。もちろん行ってくれるのであれば嬉しいですし、なんなら今からでも少しは出れるのでは。」
俺の返答に満足そうに微笑む。結局この後もレッスンには行かないのだろうが、定期的に聞いてくるのはなぜなのだろうか。
「もし、プロデューサーから何かご褒美が貰えるのであれば、今から参加してきますよ。」
「そのご褒美は俺が指定してもよろしいのでしょうか?」
俺の本能がこのご褒美の手綱だけは絶対に握らないといけない。そう叫んでいる。だが、ご褒美と言っても何を渡したらレッスンに出る価値があると思って貰えるのだろうか……
「えぇ。構いませんよ。でももし叶えていただけるのなら……」
「合鍵は渡しませんよ。」
「まあ。酷い。渡していただければ、晴れの日でもレッスンを受けるかもしれないのに。」
「それでは、晴れ、雨の日1回レッスンをする毎に、1日お世話券を進呈するのはどうでしょうか。」
合鍵がダメなら1日お世話。マシな提案に見えるがどちらにせよ俺のプライベートは無くなると言っていい。俺がレッスンに行けと言う=お世話してください
ということになってしまわないか。
「それも却下です。家に入れろということでしょう?気軽に俺のプライベートを侵さないでください。ご褒美は考えておきますが、俺のプライベートに関する物以外で欲しいものがあれば教えてくださいね。」
「まあ残念。釣れないお方ですね。」
何度繰り広げたか分からない攻防を経て、時計が15:00になったことを知らせる。
「もうこんな時間。次の授業は佑芽さん達と約束していますので。行ってきますね。」
「はい。頑張ってきてください。」
珍しく自分からレッスンに行くと言い出し、教室を出る。
佑芽さんや倉本さんにはお礼を言いたい。
さて、、、ご褒美は何にしようか。
秦谷さんが帰ってくるのはレッスンが終わる16:00以降。それまでに用意出来るものとなると限られるが……。
今回は見送って次のご褒美を大きな物にするのもいいかもしれない。
頭が回らなくなってきた。30分ほど仮眠を取ろう……
教室の隅に置かれた仮眠用のマットレスを取り出し、横たわる。
秦谷さんが戻ってくる前に……起きないと……
────────────────────────────
「ああああ!!!!美鈴ちゃん来た!!!」
レッスン室に入ると、すぐに大きな声で出迎えられる。
眠気も吹き飛んでしまいそうな声の主は、同じクラスの花海佑芽さん。
「もう、レッスンの時間になってもお姿が見当たりませんでしたから、来ないのかと思ってしまいましたわ!」
「申し訳ございません。プロデューサーと、つい長話をしてしまいました。」
佑芽さんと一緒に駆け寄ってきたのは倉本千奈さん。今日はこの3人でダンスレッスンを受ける約束をしていたのだ。
「花海が今日は絶対来ますよ!!!!なんて啖呵をきるもんだからどのくらいで来るかと思えば、案外早かったじゃないか。」
「はい。最近はずっと晴れていましたから。たまには身体を動かさないと。」
「たまにじゃなくて毎回来てくれた方が嬉しいんだが……まぁ、全員集まったことだし準備運動から始めるぞー。」
〜ダンスレッスン終了後〜
「よし。今日はここまで。全員水分補給は怠らぬように。」
「ありがとうございました!!!!!!!!」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました。」
レッスンを終え、ダンストレーナーがレッスン室を出る。
今日のレッスンはこれで終わりなので、世間話をし始める。
「そういえば花海さん!この前お借りした漫画、とっってもドキドキしましたわ〜!」
キャーッと頬に両手を当てる千奈。普段と変わらない何気無いやり取りだが、何故か今日は口を挟んでいた。
「どんな漫画を読んでいたのですか?」
「えーっとね!今回貸したのは学園ラブコメなんだけどねー!」
「ヒロインのお方が、主人公の男の子を自分の物だと証明するために、眠っている間に……き、キスマークを付けちゃったんですわ〜〜!」
「そのキスマークを見ちゃった別のヒロインがね〜!」
「この先の展開がもう楽しみで……!」
興奮気味に語り始める同級生を他所に、疑問符を1つ浮かべる。
「キスマークとは口紅の痕のようなものなのでしょうか?」
「う〜〜〜んどう説明したらいいか分からないんだけど……漫画では傷みたいになってたかな??」
「噛んでるような描写がありましたから、もしかしたら傷痕なのかもしれませんわ。」
興味深い話を聞いてしまいました。戻って調べてみましょう。
「ありがとうございます。佑芽さん、千奈さん。戻って調べてみます。」
「?。どういたしましてっ!」
「先程の秦谷さんのお顔……ちょっと怖かったですわ……」
1日のカリキュラムが終わり、人気の少ない廊下を1人で歩く。
スマホを片手に向かうのは、今もプロデューサーが仕事しているであろう教室。きっと彼の事だからなにかご褒美を用意してくれているはず。
「〜♪」
お目当ての記事を見つけ、上機嫌で教室へ。
レッスンの疲れもあってかいつもより重く感じる扉を開ける。
「プロデューサー。ただいま戻りました。」
普段なら仕事の片手間に「お疲れ様です。」と迎えてくれる声があるはずが、今日は無い。
当たり前だったことが無いことに寂しさを感じつつ教室へ入ると、机の視覚になっているマットレスの上でプロデューサーが寝息を立てていた。
傍で揺れ続けるスマホを見るに、アラームの設定を間違えてしまったのだろう。
「珍しいですね。あなたがこんなミスをするなんて。」
わたしが望んだことをなんでも叶えてしまう魔法使いのような彼だが、その裏で途方もない努力をしてくれている。
最近も忙しくて寝る時間が取れていなかったのだろう。
「何度もお昼寝のお誘いをして、断られていましたのに。」
プロデューサーの寝顔を見ながら、ふと思う。こんなに無防備なことはあっただろうか?マットレスは小さいが、添い寝をするくらいなら……
「いけませんね。添い寝なんて誰かに見られてしまったら、大変です。」
自分たちに割り当てたれた教室とはいえ、ここは学校。わきまえた行動をしなければ。こういうのはいずれ……。
「今日はこのままにして……あっご褒美を貰っていませんね。起こすべきでしょうか。」
ふと、レッスン前の会話を思い出す。ご褒美は考えておきますが、俺のプライベートに関するもの以外で欲しいものがあれば……
プライベートに関するもの以外。ということはつまり。
「ご褒美、いただきますね。プロデューサー。」
ネクタイを解き、シャツのボタンを空ける。
関係の無い方にバレて噂になっては大変なので、スーツで隠せる部位へ。
「はむ……♡」
────────────────────────────
気が付けば教室には茜色の夕陽が差し込み、スマホの画面は16:40を表示する。同時に目に入った通知欄には秦谷さんからのメッセージが表示されていた。
”起こすのも忍びなかったので、お先に帰宅させていただきますね。今日のご褒美はもういただきましたので、ご心配なく。”
どうやら完全に熟睡していたらしい。それだけ疲労が溜まっていたということか。あまり秦谷さんに強く言えなくなるな。
「ちょっと待てよ?」
悪寒がしたのでもう一度メッセージを確認する。
”ご褒美はもういただきましたので”
何を持ってかれた?すぐに鞄の中身を確認するが、漁られた形跡は全くない。だが秦谷さんのことだ。合鍵を作りに行っている可能性もある。
”ご褒美は何をいただいたんですか?合鍵を作ったりしていませんよね?”
急いで秦谷さんにメッセージを送信。程なくして秦谷さんから返信が来る。
”秘密です。物はいただいてませんよ。あと、ご褒美は次からも同じものをいただければと。”
明日問いたださねばならないらしい。だが今日のところは帰宅した方が良さそうだ。自身の休息プランを見直さないと。
また秦谷さんに隙を見せてしまってはどうなるか分からない。
「今日は完全に油断していたな……」
荷物をまとめ、教室に鍵をかける。今日は真っ直ぐ帰ろう。
「あら。秦谷さんのプロデューサーくん。お疲れ様です。」
「お疲れ様です。あさり先生。」
「ここは学校だからいいですが、ネクタイはちゃんと締めてくださいね?」
「あぁ、すみません。」
先程仮眠を取った時に緩めたのだっけか。覚えていないがネクタイを1度締め直す。
「ずいぶんお疲れのようですね。何かあれば、すぐ相談するんですよ?」
「休息も仕事の内ですから。今日はしっかり休んでくださいね!秦谷さんのプロデューサーの君には余計なお世話かもしれませんが。」
「はい。少しのんびりしてきます。」
帰宅後────
ご飯も食べたし、風呂に入ろうか。
服を脱ぎ、ふと洗面台を見ると鎖骨あたりに小さな赤い痕ができていた。
「こんな所に傷が?何かぶつけたっけ……。」
意識すると少しヒリヒリとする感じはあるが、特別痛い訳でもないので様子を見ることにした。
次の日────
「それで秦谷さん。昨日貰ったご褒美はなんだったのですか?」
隣のパイプ椅子で目を閉じている彼女に問いかける。
「ふふ。気付いていないのなら、良いのではないでしょうか。」
「言う事を聞かない担当アイドルが、やる気を出しているんですから。」
「そういう問題ではありません。勝手に貰っているとはいえ、実は準備しないといけないものだった。なんてこと俺が許せませんし、何よりプロデュースに関わることなので。」
やはり流そうとしてくる。がこれに関しては譲ってはいけない。最低限の手綱は握らなければ。じっっと彼女を顔を見つめる。
「そんなに見つめないでください。恥ずかしいです。」
「はぐらかさないでください。言うまで目を離しませんよ。」
「そこまでして言わせたいのですか?仕方のない人ですね。」
冗談で照れているのか分からないが、ほのかに赤みがかった顔はそっぽを向いてしまう。
「……一緒に、お昼寝しただけです。」
「お昼寝、ですか……まさか添い寝を?」
「どうでしょう。あのマットレスでは、かなり密着しないといけませんね。」
ただでさえ寝不足気味で体調が優れないというのに、胃が痛くなってきた。
「添い寝はしてないと信じています。が本当にご褒美がそれで良いのでしょうか?」
「はい。あなたがわたしのお誘いに乗ってくれたことなんて、片手で数えられるくらいですから。わたしはあなたの隣がいいんです。」
そうはっきり言われてしまうと小恥ずかしくなってしまう。まぁ最近は俺も休めていないし、こんなことでやる気を出してくれるのなら良いのかもしれない。
「分かりました。レッスンを頑張る度に秦谷さんと一緒にのんびりしにいきましょう。これだけでは俺が納得しないので、時折何かしら用意させていただきますが。」
「交渉成立ですね。次のお昼寝、楽しみにしてます。」
渋々であるがご褒美を了承すると、年相応の笑顔を向けてくれた。そんなに嬉しかったのか。俺が了承する気はないと知っていて誘っていると思っていたが、実は気にしていたのかもしれない。
「では、授業に行って参ります。」
「はい。頑張ってください、俺もそろそろ行くか。」
教室を出て二手に分かれ、授業へ向かった。
────それからというもの。
秦谷さんは曇りの日以外もそこそこレッスンに行くようになった。その度俺は秦谷さんと教室や校庭のベンチでのんびりする。
最初のうちは隣でノートPCを使用していたのだが、もたれ掛かる秦谷さんに
「駄目ですよプロデューサー。わたしとサボる約束でしたよね。パソコンを見てはいけません。見るならわたしを見てください。」
なんて言われてからはもうスマホだけポケットに入れてぼーっとしている。
1度秦谷さんに寝ているところを見られてしまったからか、秦谷さんと一緒にうたた寝することも少なくない。
以前より秦谷さんがレッスンに出るようになってトレーナー陣からもお褒めの言葉を頂いている。担当がレッスンに出ているだけなんだが。
最初のうちは一緒にサボっているところを目撃されたらどうしたものか……と考えていたのだが。学園の人達からは珍しいな程度にしか思われていないらしい。どうなっているんだ俺たちの印象。
たまたま出会った月村さんからも「美鈴、ちょっと気を許し過ぎじゃない?」と言われていたが俺もそうだと思う。もたれかかったまま寝るんじゃない。
それはそれとして、最近気になることがある。秦谷さんとお昼寝するようになってから、明らかに体調は良くなった。のだが。
鎖骨辺りの傷が増え続けている。最初にあった傷がそろそろ消えると思っていたら、次の日に1つ。また次の日に2つと増えていった。
今はまだスーツで隠せる範囲なのだが。
「これを見られたらどんな顔をされるか……。」
治らないものは仕方が無い。痛みが出るようなら病院に行こう。
────────────────────────────
プロデューサーが一緒にお昼寝をしてくれるようになってから数日が経ちました。心なしか以前より気を許していただけているような気もします。
隣でうたた寝をする彼からすれば担当アイドルと過ごすだけの時間かもしれませんが、わたしにとってはとても大切な時間になってしまった。
今日も2人以外だれもいない教室で、また彼のネクタイを緩め、シャツのボタンを外す。
「はむ♡」
いつのまにか沢山の痕ができていましたが、鈍感プロデューサーは未だに気付いていないようです。
それはつまり誰にも脱がされていない。浮気していないという事なのですが、全く気付かれないというのも面白くありません。
「少しいたずらをしてみましょうか。」
いつもなら鎖骨あたりにキスマークをつけるだけで済ませているが、今日はもう少し。強めに痕を残す、
「かぷ……♡」
────────────────────────────
今日は髪を切りに言った。プロデューサーたるもの身だしなみは常に整えておかねばならない。
ただ美容師さんに、「彼女さんおられるんですか?」と聞かれた時は困った。どこをどう見て言っているのだろうか。普通にいないですよ。と答えたら、「もしかしてモテてたりします?」なんて。
今日はおかしな日だな。
「お、秦谷Pじゃん!最近は担当とも随分仲がよろしいようで?」
「花海P。そんな茶化すなよ……」
教室へ向かっていると、花海佑芽さんのPと出会う。仲は良いのだが、業務上あまり会うことが少ない。
「いや〜お前と秦谷さんがピッタリくっついて座ってる目撃情報が沢山あるんだぜ?友人としては気になるわけよ。」
肘で横腹をつついてくる。その件に関しては何も言えないので適当にはぐらかす。
「それは秦谷さんが望んだから……レッスンの頻度を増やすご褒美に……って。」
「ほ〜ん。でもなんか満更でもなさそうな感じじゃん?……お前右耳だけ赤くね?」
「右耳だけ?そんな馬鹿な。」
「いや赤いな。なんか噛まれた痕になってんじゃん。誰に噛まれたん?」
「いや、噛まれた覚えなんてないけど……まさか。」
スマホのカメラで両耳を撮る。見比べてみると一目瞭然に赤い。
最近はそもそも秦谷さんとずっと行動しているし、彼女が隣でうたた寝することも多い。その時に付けられたのなら納得もいくが……
さっきの美容院で彼女がいるか聞かれたのも耳に噛み跡があったからだとしたら。最近増えている鎖骨の赤い痕だって。
「ちょっと確認しないといけないことが。」
「おう。お前も愛されてんね〜。お互い頑張ろうな。」
花海Pと別れ、足早に教室へと向かう。背後で”プ〜ロデュ〜サ〜〜〜!!!”という聞き覚えのある声と共に鈍い音が聞こえたな。うん、お互い頑張ろう。
きっとまだこの時間には到着してないだろうが、問い詰めなければならないことができた。
教室に着くと、予想とは裏腹に鍵が空いていた。先に誰か来ているということだろう。重いドアを空けると、椅子に座ったままうとうとしている秦谷さんが目に入る。
「おはようございます。秦谷さん。今日はお早いですね。」
「ん……。ふわあ。おはようございます。プロデューサー。そんな怖い顔をして、一体どうされたのでしょう。」
「どうしたもこうも、秦谷さんなら俺が何が言いたいか分かっているとも思うのですが。」
「まあ。見当もつきませんね?そんなことより、プロデューサーより早く教室に来た担当アイドルを褒めるべきではないでしょうか。」
席を立った秦谷さんがずいっと近付いてきた。これは、確実にわざと言っている。
「この学校において担当アイドルがプロデューサーより早く来ることが珍しい方がおかしいですからね。それより話題を逸らさないでください。見当が付かないなら直接言いますが、俺の耳になにかしましたよね?」
一瞬キョトンとしたと思えば、くすくすと笑い始める。こちらを見つめる紫の瞳が妖しく光ったような気がした。
「流石に気付かれてしまいましたか。はい、キスマーク、というものを。」
「キスマーク……いつの間にやっていたんですか?」
「プロデューサーとお昼寝している時です。”ご褒美”をいただいただけですよ?」
一緒にお昼寝をする。というのは建前で、どうやら本命はこっちだったらしい。
「鎖骨辺りにもたくさん付けたのに、プロデューサーはいけずですね。」
「そういうものがあるのは知っていますが、付けられたことはありませんでしたから。」
秦谷さんは俺の返答に満足そうな笑みを浮かべ、俺の鎖骨を服の上から指でなぞる。
あれ、キスマークは確かカップルがやり合うものではなかったか……?
「秦谷さんは何故キスマークを?」
「プロデューサーはたくさんの女性に囲まれていますから、浮気出来ないようちゃんとわたしの物だと証明しなければなりません。」
「まだ浮気すると思われてるんですか?」
「まあ、極月学園でのこと、忘れたとは言わせませんよ?」
「返す言葉もございません。」
あれは情報を引き出したかっただけなのだが、彼女にとっては浮気は浮気。それ以外の何でもない。以降女性とのコミュニケーションは気にするようにしているのだが……
事実、キスマークを大量に付けられているということはまだ配慮が足りないのだろうか。
「ふふ。反省してくださいね?」
「はい。」
「でも、ついにバレてしまいました。もうプロデューサーは一緒にお昼寝をしてくれないかもしれません。」
確実に俺に聞こえる大きさで残念そうに声を漏らす。わざとらしいと言えばそうだが、案外本気で言っている感じもする。
「……お昼寝は続けましょう。今後もレッスンに出ていただきたいですし、俺も習慣になってきていますから。」
「本当ですか?ふふ、嬉しいです。それでしたら、可愛い担当アイドルからのキスマークも一緒にいかがでしょう。」
「……服で隠れる範囲なら。」
完全にのせられた気もしなくは無いが、文字通り可愛い担当アイドルのためだ。見えない範囲で独占される分にはなんの問題もないだろう。
悪魔との契約を交わし、今週のレッスンメニューについて話し合う。また明日からも秦谷さんと頑張ろう。
────数日後
「はむ……」
晴れた日の昼下がり。外は快晴だと言うのに、今日も今日とて教室でお昼寝タイム。
「かぷ……」
今日はパイプ椅子で休息していたのだが、何故か秦谷さんが膝に乗っている。こちらを向いて。
「秦谷さん」
「んむ……♡」
「秦谷さん」
先程から鎖骨あたりや首筋に口や歯を立て続けられている。全く返事もしてくれない。
「秦谷さん。ひとつ聞いても良いでしょうか」
「ん……なんでしょうか?」
唾液が俺と秦谷さんの間で糸を引く。彼女の表情を見るにまだ辞めるつもりはないらしい。
「許可したのは俺かもしれませんが、やりすぎでは……?流石に首は隠せないと思います。」
「絆創膏で隠れる大きさだと思いますよ?」
大きさは問題ではなく……数が多い。怪我と思われるかもしれないがいっそ包帯を巻いた方がいいレベルだ。担当アイドルにキスマークを付けられているなど周りに知られたら大変だ。
しかし、今も尚首筋に噛み付いている彼女を見るとこれ以上好き勝手させるのは不味いのではという思いが込み上げてくる。少し分からせた方がいいか……?
「秦谷さん、こちらを向いてください。」
「……?なんでしょんむ!?」
浮気しないようにキスマークをつける?浮気する気は毛頭無いと分からせてやればいいと、彼女の口を口で塞ぐ。完全に硬直してしまい、静かな時間が流れていた……のだが。
「失礼します!!!美鈴ちゃんいます……か……」
ノックも無しにバタン!という音と共に花海佑芽さんが入ってきた。プロデューサーとその膝の上に乗るアイドルは、彼女を迎える為の口を塞ぎあっており。
「…………あ゛っ゛」
「……ぷはっ、花海さんこれはッ」
脳の処理がようやく追いつき、秦谷さんの顔を遠ざけ弁解をしようとする……がそこにもう彼女の姿は無かった。一つだけ分かったのは全力ダッシュで遠ざかりながら「千奈ちゃぁぁぁぁぁん!!!!美鈴ちゃんと美鈴ちゃんのプロデューサーがぁぁぁぁぁ!!!!」と叫んでいる事だ。
「秦谷さんどいてください!花海さんを追いかけないと!」
「むぅ。プロデューサーは、、、酷い方です。こんなことをしておいて、他の女性を追いかけようとするなんて。」
焦っている俺とは裏腹に恍惚としていた秦谷さんは少し頬を膨らませ、俺の膝から降りるどころか、胸に顔を埋めてしまう。
「秦谷……さん?」
予想外の反応にまたもや思考が停止する。普段の秦谷さんなら「まあ。殿方とするのは初めてでしたのに……これは、引退後も責任をとっていただかないと。」とでも言ってきそうなものなのだが。
そんなことを考えている暇はない。俺は秦谷さんにキスマークを大量に付けられた結果なのかとんでもないことをして。
そのとんでもないことを見られた。
「……これは、詰みですかね。」
数分後、俺は職員室に呼ばれることになるのだが、心ここに在らずとなった俺は顔を埋めたまま動かない秦谷さんの頭を撫で続けていた。
────数日後
俺がしでかしたことを考えれば即刻退学も有り得たのだが、秦谷さん本人の意思と、N.I.A.での活躍を鑑みて厳重注意だけで済んだ。
学園長は「はみ出す時はちゃんとするんじゃぞ」なんて言っていたような。はみ出すってなんだ……?
一応俺と秦谷さんがキスしていた件については、額を合わせて熱を測っている所を目撃した、で何とか通したらしい。キスマークは……包帯で隠す事にしている。
秦谷さんはというと。
「プロデューサー。今よろしいでしょうか。」
「なんでしょうか?」
「そろそろ痕が消えてしまう頃かと。」
有無を言わさず膝に乗ってくる。あの一件以来しおらしくなったかと思えば、以前よりも明らかに拘束が強くなっていた。
「先日付けたばかりですよ。簡単には消えませんのでご安心ください。」
「まあ。簡単には消えないと言っておいて。あなたはわたしの前から簡単に消えるところでしたよ?」
かなり根に持たれているらしく、今ではレッスンなど関係なく痕を付けられている。常に包帯を付けているので察している生徒も少なくないだろう。
秦谷さんを一番星にする前に退学にならないようにしないとな……うっ
「かぷ……♡」
なんか、書いてみたら思ったより純愛でしたね。
もっとヤンデレ要素強めても良かったなと。ヤンデレ要素強めのSSも書きたいですね。