僕は探す!   作:T氏@pixiv

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22 安心を探す

(『...そうかもしれないね。』)

 

週明け、登校する私は先週の乾先輩の言葉が頭によぎっていた。

 

肯定でもなければ否定もしない...このなんともいえない返答が、喉に何かが引っかかっているような気分にさせる。

 

「はぁ、また月曜が始まっちまったなぁ~。」

 

「いちばん辛いよなぁ...」

 

休日明けであるため学校へ向かう生徒たちのテンションはやはり低い。

 

...かく言う私も憂鬱に感じている。

 

順番を抜かされたり、弁当の中がごちゃごちゃになったり、ロッカーに他人の南京錠がかかっていたり...度重なる出来事によるものだろうか。

 

「はぁ...」

 

下足室に辿り着き、自分のロッカーの前に立つ。

 

昨日みたいに南京錠をかけられておらず、開けてみると問題なさそうに見える。

 

上靴の中を確認しても特に何も入ってなかった。

 

「ねぇ...」

 

「ほら、昨日の...」

 

...やはり南京錠の件で私は少し悪目立ちしているのかもしれないな。

 

下足室から去る際の視線に少し気後れしながらも、教室へ向かう。

 

「この子、結構かわいいよね!」

 

「うんうん!」

 

「どっちかと言うと私はね...」

 

教室に入るといつも挨拶してくれるクラスメイト達は皆で楽しく話し合っている。

 

会話に夢中なのか私に気づいてなさそうだな...

 

「でさ、この」

 

「おはよう、皆。」

 

「...」

 

私が声を掛けた瞬間、まるで先生に見つかったかのように会話が途切れる。

 

...いったい皆どうしたんだ?

 

「あ、うん...」

 

「おはよう...」

 

いつも元気よく声を掛けてくれた彼女たちの挨拶にどこかよそよそしい。

 

こちらに向けるクラスメイトの視線もどこか揺れていた。

 

「どうしたんだ?皆、何かあったのか?」

 

「ううん、特に何もないよ...」

 

「...そういえば私、宿題終わってないや!」

 

「トイレ行ってこうかな。」

 

集まって話していた彼女等は皆、散っていく。

 

...私のせいなのか?

 

「私...」

 

声を掛けようとしたが、皆自分のことに集中し始めた様子に拒絶感を覚えた。

 

 

 

「ねぇ、坂上さん?」

 

「あなたは...」

 

休み時間の間、予習をしている私に誰かが声を掛けてくる。

 

顔を上げて見ると、藤さんが積まれた多くのノートを抱えてこちらにやってきた。

 

「!?...それ、このクラスの提出物じゃない。」

 

それを彼女は私の机の上へドンっと降ろす。

 

「えぇ、そうよ。」

 

「もうちょっと丁寧に置くべきだ。」

 

...彼女には掃除の件であまりいい印象がない。

 

「それはごめんと言っておくわ。」

 

山積みのノートを2つに分ける。

 

「一人だと重いから一緒に運んでくれないかしら?」

 

「あぁ、構わない。」

 

どこか不敵な笑みを浮かべる藤さんに思わず顔を強張らせるが、クラス全体に関わること

だ。

 

断る理由がない。

 

片方の積まれたノートを抱えて、彼女と共に教室を出る。

 

「...ねぇ、あんた何かしゃべる内容ないの?」

 

「しゃべる?」

 

「そう...と言っても真面目なあなたに話す内容も思い浮かぶはずないか。」

 

人に頼んでおいていったい何なのだろう...私の席に雑に置いたのも含めて私が嫌いなの

か。

 

「...一昨日と昨日、掃除に来なかったがどんな用事だったんだ?」

 

「用事?そんなのどうでもいいじゃん。それよりも」

 

前を歩いていた彼女が急に立ち止まる。

 

「いきなり立ち止まってどうした?...ぶつかる所だったぞ。」

 

「あんたと仲良くしている子たちさぁ、最近避けてるでしょ?」

 

振り返ってこちらの顔を覗き込んでくる。

 

「...それがどうした?」

 

「どうしたもなにも...お友達に冷たくされるのって悲しくならない?」

 

逆撫でするようなことを...

 

「何が言いたいんだ?」

 

「...あなた、彼女たちにいじめられているよ?」

 

...え?

 

そんなはずはない。

 

(「ごめん、坂上さん...今日は一緒に食べれない。」)

 

あれは彼女たちに用事があって一緒に食べられなかっただけだ!

 

(「あ、うん...」)

 

(「おはよう...」)

 

今朝のものだって私がただ話題に乗れないだけ...

 

「あ、フジ!先生があんたに用があるって!」

 

「分かった!」

 

突如、抱えていたノートの山が重くなり、耐えられず膝を崩す。

 

「あちゃあ~...いきなりノートを載せた私もだけど、落とすほどじゃなかったよね。」

 

廊下に散乱するノート。

 

彼女は呼ばれた声の方へ走っていく。

 

「私呼ばれたから後はよろしく。」

 

ノートを踏みはしなかったが、走り去る勢いでその角に当たり、何冊かが大きく滑って

いった

 

そして、彼女は階段を駆け下りて消えていった。

 

いじめ...いや、あれは藤さんが勝手にそういっているだけだ。

 

「ちょっと、あれ大惨事じゃん。」

 

「すっげー散らばってんなぁ。」

 

そうだ、早くノートを片付けないと...

 

四つん這いになりながら、散らばったノートを拾っていく。

 

見ている外野はコソコソとつぶやきながらただそんな私を見ているだけ。」

 

...だれも手なんて差し伸べない。

 

いや、差し伸べるほどでもないことなのかもしれない。

 

「はい、坂上さん。」

 

私の目の前にノート数冊が差し出される。

 

床に向けていた顔を上に向けると、天使のような白髪の青年が屈んでいた。

 

「乾...先輩?」

 

昨日のロッカーでお世話になった乾先輩だった。

 

「すごいノートの量だけど一人で運ぶのは難しそうだね...僕も手伝うよ。」

 

そう言いながら先輩は散らばったノートを一冊一冊拾うものの、その動きは結構早い。

 

...いけない。これは私が頼まれたものだ。

 

「これは私が頼まれたものだ。先輩に迷惑は」

 

「さすがに女の子一人が必死に拾っている様子見たら放っておけないし...これを一人で

持っていくつもりだったの?」

 

本来は藤さんと一緒に運ぶものだったが...

 

「あぁ、少し無理をしている気がするが、頼める相手もいなくてな。」

 

「そうなんだ...これで全部かな?」

 

「あぁ...これで全部だ。」

 

回収した山積みのノートを彼は抱える。

 

「じゃあ、職員室に持っていこうか。」

 

「いや、大丈夫だ。先輩も用事があるだろう?」

 

「いいよいいよ、ちょうど僕も暇だったからさ。」

 

結局、先輩の厚意に甘える事になってしまった。

 

「私のものより量が多い気がするが...申し訳ないな。」

 

「気にする必要はないよ。それに男子は女子より軽そうなものを運んでいたら恥ずかしい

しね。」

 

 

 

HRも終わり、放課後を伝えるチャイムが鳴り響く。

 

「今日もやっと終わったぁ~!」

 

「早く部活行かねーと!」

 

教室にはもう数人ほどしか残っていない。

 

...結局、今日もクラスメイトと昼ごはんを食べることはできなかった。

 

(「...あなた、彼女たちにいじめられているよ?」)

 

藤さんのあの発言...冷静に考えれば違うような気がする。

 

それに途中で仕事を放り出すような彼女を信用してどうするんだ。

 

...それよりも早くこれを完成させないとな。

 

私は懐から白い画用紙を取り出す。

 

「はぁ...いざ描くとなるとどうしたものか。」

 

選挙のポスターは1年の頃でも見ていたが、いざ描く側になると困ったもの。

 

たまにイラストやスローガンに惹きつけられるが、自分にそういった才能はないため自信

がない。

 

...とりあえず、描くしかないか。

 

メモ帳に思いつく限りのスローガンとイラストを描いていく。

 

「学校施設の汚れを無くす...」

 

トイレや教室が綺麗になること自体に反対はなさそうだが、掃除が増えることに抵抗があ

りそうだな...

 

「文化祭の開催期間を倍にします...」

 

...受けはいいと思うが、私のやりたいこととはまた違う。

 

イラストも軽くパッパッと描くが平凡の域を出ない。

 

首を傾げ、メモ帳を睨む。

 

よくよく考えると、こうして自分が率先して作るのは母の誕生日プレゼント以来なものだな...

 

「...坂上さん。」

 

「宮沢さん。」

 

彼女は声を掛けてくれるクラスメイトの一人。

 

いつも本を片手に穏やかな笑顔で話す彼女だが、今朝やお昼の時と同様にどこか暗い影を落としている。

 

「何かあったのか?」

 

「はい...私、今日は空き教室の清掃が担当になっていたんですが、他の担当の人が来られなくなってしまって...」

 

「遠慮することはない。手伝うよ。」

 

先週の私と同じ状況...このデジャブに嫌な予感がするものの気にせず、宮沢さんの後を

ついていく。

 

「...ごめ...い」

 

この気まずい空気の最中、背中を向ける彼女は何かつぶやく。

 

「どうしたんだ?」

 

「いえ!...ところで、選挙の方は順調ですか?」

 

順調かどうかか...

 

「それがポスターに関して苦戦していてな...スローガンはともかく、絵は上手ではない

から苦戦している。」

 

「やっぱり大変ですよね...あ、空き教室はここです。」

 

どこのクラスとも書いていない本当の空き教室。

 

この時間でも部活の人達がいないことから、授業以外は滅多に使わないのだろう。

 

...しかし、なんだかちょっと臭いな。

 

「!?」

 

「...なんだこれは。」

 

扉を開いて中に入る私と宮沢さん。

 

机の上の飲みかけのパックや菓子袋はまだ見かけるが...明らかにわざと机の数十席に多

量のごみがぶちまけられていた。

 

「ひどい...」

 

「...こんな量、どっから取ってきているんだ。」

 

教室内のごみ箱はほぼ満タンな上に明らかに容量が少ない。

 

「こんなこと...うっ...」

 

「宮沢さん?」

 

顔を背けていて様子が分かりにくいが、調子が悪そうに見える。

 

「うっ...私、雑巾取ってきます!」

 

「宮沢さん!?」

 

彼女は教室を出て、走り去っていた。

 

...とりあえず、目の前のごみを一か所に固めてごみ袋に詰めていくしかないな。

 

 

 

「うっ...私、雑巾取ってきます!」

 

空き教室から出て走り去っていく女子学生。

 

「おっと!?」

 

顔を伏せながら走っていたためか、ちょうど曲がり角の陰で見ていた僕にぶつかる。

 

「ご、ごめんなさい!?」

 

「...」

 

頭を下げた後、すぐに走っていく。

 

「うっ...ごめんなさい...」

 

階段を下る彼女がそう呟きながら消えていった。

 

...彼女は加担させられている。

 

帝都の悪徳な文官や大臣は軍人を使って反乱分子である民を殺す。

 

藤を含めたいじめの首謀者たちは坂上さんの友人を使って彼女を追い詰める。

 

こう思うと帝都だろうが、この国だろうが本質は変わらない。

 

「結構量が多いな...」

 

健気に掃除に励む坂上さん。

 

......こんなに一生懸命やっているのに。

 

そんなことを考えながら、彼女が求めるであろう雑巾とバケツを取りに足を動かす。

 

帝都でもそうだった。

 

立場の強い人間が、自分より弱い人間を利用する。

 

こんな恵まれた場所でも、やっぱり同じ。

 

......革命後の革命軍が興した国はどうなっているんだろう、ナジェンダさん。

 

「坂上さん、掃除手伝うよ。」

 

 

 

深夜、それは多くの人々が寝静まった時間。

 

一部はLEDで照らされた街で活動する者もいるが、一般人はほとんど家にいる。

 

「今...が、変な外国の...」

 

それが郊外であればより静けさが増し、うろつくものもより極端な者になってくる。

 

(殺し屋にしてはナンセンスな時間帯と場所を選ぶものだな...)

 

深夜徘徊をしている配信者とすれ違う初老の男、ロヴロ・ブロフスキは殺し屋を育てて斡

旋する仲介業者である。

 

(ここで例の悪人を裁くと言われる殺し屋と会えるとは思えんが...)

 

彼が足を止めた場所は神社。

 

鳥居の先には椚ヶ丘の旧校舎ほどではないが、長い階段が続いている。

 

携帯を開いたロヴロ。

 

そこには都市伝説のサイトに書かれた文章が載ってあった。

 

(丑三つ時に一人で鳥居をくぐるもの、悪人を裁く悪魔がささやく...なんとも馬鹿々々し

いものだ。)

 

鼻で笑いながらも携帯を閉じるロヴロ。

 

周りを見回しながらも瞬きをしてから鳥居をくぐる。

 

(急には来ないだろう...)

 

鳥居をくぐった後、しばらくそのまま待つ。

 

数分...さらに数十分ほどそのまま立ち尽くすものの、一向に噂の通りの現象は起きな

い。

 

(噂を信じるのはさすがに愚かか。)

 

瞳を一瞬閉じた後、鳥居の外へ出る。

 

そよ風がロヴロを横切った。

 

それと同時にロヴロは背後に注意を向ける。

 

『天や国が裁けない悪への復讐...それをお前は望むか?』

 

(...どういうことだ?先ほどまで気配まで微塵もなかったはずだが。)

 

背後から耳元で囁く声。

 

ロヴロの表情に緊張が走るも、ナイフを取り出す本能を理性で抑え込んだ。

 

「...そうだ。」

 

返答しながら振り返るも、鳥居と階段しかそこにはない。

 

(気配をかすかに感じる...それも目の前に。)

 

目を凝らすものの無駄だと察するロヴロ。

 

『...場所を変える。』

 

(...移動するようだな。)

 

突如、腹部に何か接触したのかと思えば、足から地が離れる。

 

(!?...担がれているのか!)

 

すぐにナイフを袖から取り出そうと仕掛けを動かす。

 

『叫ぶと下を噛むぞ。』

 

「うっ!?」

 

ロヴロはいきなり重力が強くなったような感覚に襲われる。

 

それと同時に袖から出したナイフは離れ、金属音を響かせながら地面と衝突する。

 

(飛んでいる!?)

 

視界に映る地面が大きく広がり、神社全体までも見えた。

 

ただ、その後は大地が狭まっていく。

 

(いや、あの殺せんせーとは違い、飛んでいるのではなく跳躍しているようだな...)

 

結局、運ばれるまま知らない地まで連れていかれるのであった。

 

「そろそろ着いたということか?」

 

静止したかと思えば、体をゆっくりと降ろされる。

 

『手荒な真似をして悪いな。』

 

(こんどは森林...というよりこの東京という土地を考えるならどこか公園か緑地なのだろ

うか。)

 

地に足がついた後、自分を抱えて移動していた存在の気配がいつの間にかロヴロの目の前

の木の背後へと移る。

 

『訳あって姿を見せられないが...構わないな。』

 

(わざわざ木の裏に回ってこう言っているのなら、今は姿を晒している...ということ

か。)

 

「...あぁ。」

 

『では...あんたの殺したい相手を聞かせてもらおうか。』

 

 

 

「...というわけだ。」

 

透明化を解除して木の陰から依頼人の話を聞いている。

 

この人...殺したい相手の話をしているわりには淡々としている?

 

というより、最初からこの人にはどこか違和感があった。

 

鳥居をくぐる前からそうだ。

 

僕が木の上から様子を見ていたが、彼が来る前に鳥居周辺で待ち伏せしている者が複数人いた。

 

最初は都市伝説を一目見ようと陰に隠れているだけかと思っていたけど...

 

「どうした?」

 

『...あぁ、大丈夫。それよりも標的(ターゲット)についての情報は他にないか?』

 

この依頼人が鳥居に来たときもそうだ。

 

雰囲気がこう...一般人よりも僕たちナイトレイドとか暗殺者に似た感じがする。

 

「標的の詳細はこちらの資料にまとめておいた...」

 

それに鳥居を通った後と去る直前...あの瞬きは少し不自然だった。

 

加えて、彼を抱えた後に飛び上がった後も普通に受け入れている...

 

「助かる...ありがたく受け取ろう。」

 

再びインクルシオを装着して透明化し、男の手に持つ書類を受け取る。

 

...この人の顔、どこかで見たことある気がする。

 

(『最高の....、そう呼べるのは...にたったひとり。』)

 

なんだ...これ。

 

この人と会った事...ないはず。

 

「どうした?君が透明ではこちらがどう反応していいのか見当がつかないのだが...」

 

『悪い...』

 

怪訝な様子で見てるな...それもそうか。

 

坂上さんのことも含めて、ちょっと...疲れているのかもしれない。

 

「とりあえず、依頼は以上だ。前金として」

 

『少し待ってくれ。』

 

「どうした?」

 

前金?...まだ成功も何もしていないが。

 

『報酬は成功してからもらうし、暗殺をするかどうかはこちらが裏どりをとってから

だ。』

 

「...ほう、裏どりか。」

 

どこか意外そうに笑みを浮かべるその姿は油断できない。

 

『俺のところはそういう決まりを課している...すぐに殺したいと思うかもしれないが、4

日後にまた伝える。』

 

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