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同じようなものとまでは行かなくとも、同じような規模の家があったら、そこに住んでみたい。そう思いながらカメハウスの周りをうろつくリューベのことを、すっかり完全修理が完了したスカウターを着けた女と、グラサンをかけたファンキー老人、そして小柄な豚と浮かんでいるネコのような何かが、カメハウスの窓から見続けている。
「結局、何しに来たんだよ、あいつ」
「さあ…部品渡して『さっさとそれ直せ』って……これで見る限りヤムチャたちは全員無事なようだし…でも肝心なこと全然答えてくれないし」
「何をするでもなく、ずっとうろうろしてますよ…?」
砂浜を歩く音、さざなみの音、日が沈みつつある空の色。彼女らには普通でも、どれもリューベにとっては美しく心地良い。水の色に空と雲の色に至るまで、その星での「普通」と割り切っても、生理的な反応からして変なモノはやはり変なのだ。
「むうぅ………っ」
「亀仙人様?」
夕日の景色を肴に、カメハウスに来る途中に買ってきた蒸留酒を瓶から直飲みするリューベを神妙な顔で見続けるは、亀仙人こと武天老師。
彼は、プーアルの声が聞こえないほど、リューベの鍛えに鍛え抜かれた肉体に関心が行っているようであった。
しかし、その目線が本当に見ている所に気付いた女ブルマは、真横のツルツルの頭を引っ叩いた。
「このスケベジジイ…!」
「なあっ…!? す、すまん、つい…し、しかしじゃの…」
「まあ実際スゴいぜ…」
好物のハイレグレオタードと褐色肌が際どさを醸し出しているせいで、相手がサイヤ人であることを抜きにして、つい豊かなヒップを眺めてしまったようである。
同じスケベ仲間のウーロンも一部賛成していた。相手があの恐ろしいサイヤ人でなければ。
一部始終聴こえているが、聴こえていないふりをしてひとしきり歩き回ったリューベは、何もない「平和なひととき」というものがとても良いものだと感じながら、空になった瓶を掌で弄びながらカメハウスへ近付いた。
「悪いな、場所と時間を借りちまった」
「ほ、ほんとよ……ただお酒飲んで歩き回るだけって…」
「では場所代がわりに聞かせてくれんか? サイヤ人なのは分かるが、いったいお主は何者なんじゃ? 危険な雰囲気がほとんど感じられんのだが…」
窓から顔を出して興味津々な面々に、リューベは少し思慮を巡らせてから答えた。
「アタシはリューベ。賞金稼ぎのサイヤ人さ。安心しな。地球に賞金首は一人も居ねえから」
「賞金稼ぎとな……し、侵略などはせんのか?」
「お断りだ。アタシはそんなゴミクズがやるような低俗な仕事はしねえ主義なんだ。殺しは生け捕りよりもかなり高く金を払ってもらうしな」
「結構しっかりとしたポリシーを持ってるのね…戦闘民族ってぐらいだから、戦えれば何でもいいのかと思ってたわ」
なるほど、サイヤ人は地球でもその認識かと内心頷いたリューベは、本腰を入れて話をするべく入室の可否を訊ね、許可のもと、ソファにどっしりと座り込んだ。
「肩が邪魔だな」
「おわっ」
リューベがそう言って胴体の鎧を脱いで足元に置くと、彼女の肉体の実態がほとんど露わになった。
豊満なバストとヒップへの感想はスケベの二人に任せるとして、まず驚かされるのはその全体的な「分厚さ」。女とは思えないほど肩は丸く、四肢も隆々としており、胴の筋肉群も厚手らしいインナー越しに分かってしまうほどの凹凸具合だ。
「な、なんて身体してるのよ…」
「これがサイヤ人の女というものなのか…!?」
「止せよ、偶々こう育っただけだぜ」
「けどよ、自信あるんじゃねえの?」
「まあな、女の武器は涙だけじゃねえしな」
「サイヤ人もそれ言うんだ…」
ポンポンとああ言えばこう言う、そう言えばどう言う。話が弾み始めたことで、リューベはもう少し話してやることにした。
「よーし、何でも聞きな…おっと、アタシ個人の事に関しては名前とスリーサイズ以外は詮索無用で頼むぜ。機密保持ってもんがある」
「わ、分かったわ……でも何から聞こうかしら…」
「す、スリーサイズを教えてくれんか!!」
亀仙人のブッコミに、彼以外の全員がズッコケた。リューベは「確かに聞いちゃ駄目とは言ってねえけどさぁ…!」と、芯が通り過ぎているスケベ根性を見上げながら座り直した。
「じ、爺さんあんたね…!!」
「ま、まあまあ、聞いちゃ駄目とは言われとらんし…せっかくじゃから、な?」
「は、ははは…長生きするぜ爺さん。じゃあ長命の薬として教えてやるか。99、67、97だ」
「むほーっ…!!」
「はあっ………」
心底呆れた様子のブルマを見て、リューベは亀仙人とやらは普段からこの調子なのだろうと察した。ちらりとテレビ台を見やり、奥の方へ目を凝らすと、普通の映画作品らしいものに混じって、ピンクなものがこっそりと入っていた。
「…………長生きするのは大変結構良いことなんだけどよ、今何歳だ…?」
「ええっと……330歳は行ってたわよね?」
「いいーっ…!? 妖怪ジジイじゃねえか…!!」
「ほっほっほっほ……わしはこう見えても仙人様じゃぞ…今や弟子達に抜かれはしたが、かつては武術の神とも呼ばれたんじゃ」
「へえーっ……かつての地球最強か…」
再びスカウターで亀仙人の戦闘力を測る。実測値はあまり高くないが、地球人の平均的な戦闘力からすれば、神と呼ばれても文句はないだろう。
そして、クリリンやヤムチャ達が見せた数値の乱高下も考えれば、目の前のスケベジジイも同様の技術を持つに違いないと、リューベは亀仙人を侮ることはしなかった。
加えて「亀」に「武術の神」と来た。背中に「亀」の字を背負っていたヤムチャとクリリンが亀仙人の言う弟子達で、亀仙人が今の彼らの基礎を築いたのであろう。
「……良い弟子を持ったな、爺さん。アタシもひやりとした程だ」
「そ、そうか…直接戦ったんじゃったな……酷く傷ついてはおらんか?」
「ちょっと肘入れたりしたが、後遺症が出たりは無いはずだぜ。天津飯ってやつには少し強めにやっちまったが…多分、大丈夫だ」
「……そうか。それなら安心じゃわい…!」
「何、結構痛めつけたと思われてる? 二、三発入れた程度だから本当に安心しろよ」
「ヤムチャも無事よね!?」
「ああ。結構頑張ってたぜ……」
(もしかしてアイツが彼氏か?)
誰がどうしたこうしたと語るうち、ブルマが一つの話題を切り出した。
「ねえ、いきなりだけど……いいかしら?」
「なんだ?」
「地球に今、二人組のサイヤ人が近付いてきているの。ラディッツってサイヤ人の言葉からだと、一年後。今から約半年にやってくるの。あんた、何か情報持ってたりしない?」
「………うーーーん」
二人組のサイヤ人。それが「フリーザ軍」のサイヤ人であることは確定事項であり、生き残りが語ろうとしないが故に素性は不明に近くも、裏社会では有名だ。
そのサイヤ人の一人の戦闘力は、「一万を超えている」という噂だけが裏社会を流れていたが、それ以上の事は何も出てこない。
だが、その噂だけでも、リューベがフリーザ軍から逃げ続ける理由の一つにはなった。軍から脱走し、追手を何度か倒して楯突いている以上、そのサイヤ人がリューベを同族として勧誘してくる可能性は低いからだ。
十数秒の思考の末、語れる情報を脳味噌の奥から引き摺り出したリューベが口を開いた。
「知ってる……という範疇は、分からないな。確証がもてねえから、ヤムチャやクリリン達には『知らねえ』といったがよ…」
「ど、どうしてよ」
「生き残りが何も言わねえからだ。恐ろしいのか、そもそも理解を拒むのか、言葉にするべく思い出す事すらはばかられる程なのか……」
リューベの真剣な語り口に、ブルマ達は何も言わず静かに耳を傾ける。
「アタシは賞金稼ぎとして、カタギと裏社会の両方で仕事をしてきたが、そのサイヤ人についてはほとんど何も聞いたことが無い。それにアタシは、昔から噂だけのソイツらを避けて仕事をしてきた……その二人組のどちらかは…アタシが逆立ちしても勝てないだろうからな。出会せば確実に殺されるのが分かってんなら、そもそも近付かないのが一番なのは分かるだろ?」
「………そうね」
古い友人が赴いた昔の危険な戦いを思い出しながら、ブルマは頷いた。そして同時に皆は、確実に強くなりつつあるヤムチャやクリリン達すら軽くあしらったリューベが、逆立ちしても勝てないと評するほどのその謎多きサイヤ人達の恐ろしさに、その表情を曇らせた。
「じゃあ、ヤムチャ達がどんだけ凄い修行をしてきても、無駄だってのかよ?」
「ウーロン…!」
「だって、こいつに敵わなかったのに、半年後にやってくるサイヤ人とヤムチャ達がマトモに戦えると思うのかよ…!?」
「これ!! よさんかウーロン!!」
怒気を含んだ亀仙人の声に、ブルマやウーロン達だけでなく、リューベも驚いて少し跳ねた。
「あと半年の猶予の中で、彼等がどれだけ強くなって下界に帰ってくるのかは想像もつかんが……このリューベという大きな壁を目の当たりにして、今以上に厳しい修行を願っているに違いないわい…!!」
「そ、そうかぁ…」
「…………ふふふ」
案外コロッと地球に肩入れすることになるかもしれないと、リューベは微笑んだ。自分がただの噂だけで最初から立とうともしていない土俵に向かおうとする戦士たちが、この田舎星には居る。
気合の入った連中は好きだ。そう思うと共に、自分が嫌いな人間のタイプには、自分も含まれていたことを改めて認識し、余計にヤムチャやピッコロ達を馬鹿にすることはできないな、と心の中で強く恥じた。
リューベの微笑みに気付いたブルマは、少し覗き込むように問い掛ける。
「どうしたのよ?」
「……いいや、なんでもねえ」
鎧を抱えて立ち上がると、そのまま玄関へと歩んでいく。意外と長く話し込んでいたのか夜になっているが、星空もまた良いものだと感じながら振り向いた。
「だいぶ長居しちまった、帰るぜ。悪いが大っぴらにアンタらのお友達と肩を並べちまうと、あとが面倒くせえ。残りの半年のうちにアタシも色々と考えてやるが、お友達の方を期待してやれよ」
「…そうよね。地球の問題だものね…」
「うむ……」
「まあ、可能だったら情報を持ってくるぐらいはしてやるよ……金を取るのはなまぐさ過ぎるな……そのときに酒を奢ってくれりゃ、それでいい」
「ほ、ほんとよね? あとから嘘でーす、なんて無いわよね…!?」
「ばっかオマエ、嘘ばかし言ってたら仕事にならねえよ」
こちとら信用と信頼が命なんだ、と付け加えて鎧を着直す。
超質ラバーの鎧の締め付けはやはり落ち着くが、地球ではもう少し洒落っ気を出したほうが良いな、とも思いつつあった。
「それじゃあな。アンタらも精々頑張りな…」
返答を待たず飛び去っていくリューベの背を見送ったカメハウスの面々。唐突に現れて去っていった思わぬ来訪者への驚きがまだ残る中で、ブルマは天界で修行を続けているであろうヤムチャ達を想った。
そして、皆の中にはもう一人の戦士がいた。
その戦士の名は「孫悟空」。ピッコロと共にラディッツを倒した地球最強の武闘家は、天国でどのような修行を経て、この世に帰ってくるのか。既に集められて隠されているドラゴンボールも、その時を待ち望むかのように光を脈動させている。
一方のリューベは、既に地球から飛び立っていた。僅かな時間を過ごした古巣の事をよく知る者に出会う為に。
「まだ出るかな……番号変わってなきゃいいんだけど」
コックピットのシートの上から手を伸ばし、通信用コンソールのテンキーを叩く。音声ケーブルをスカウターに繋ぎ、応答を待つ。
「出ろよ出ろよ………出たっ!!」
画面に映し出された赤い顔と、長い頭。はたして何族といったか。フリーザ軍でも多く見る面ではあったが、苦労が滲む老け気味の目は見間違えようがない。
「久し振りだな、リューベ。お前が連絡を寄越してくるときは大抵ろくでもない時だ」
「そう言わないでよガルツさん。どんな話でもみんな五体満足で済んでるじゃないか?」
「ハハハ…言ってろ。そのうち痛い目を見るぞ〜!!」
骨に響く野太い声で朗らかに話す。リューベが困った時の年長者の知恵袋として選んだのは、元フリーザ軍の上級兵士「ガルツ」であった。
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Z戦士らが絡まない話は結構考えているんですが、話の流れとして自然に接続できるかは現状かなり悩ましいところです。