気高くない女のサイヤ人   作:イゴマル

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ちょいと長ったらしく喋り過ぎな気がしますが、彼女ら、彼らなりの解釈だったりです。そして、ちょいと進めたくて焦ってるところもありますが、ご容赦を。

誤字報告、本当に助かっております。編集時にあっち行っちゃこっち行っちゃで飛び飛びになるなどして、チェック漏れや表現の変え忘れがあったりするので……
 読み返しやAIによるチェックも増やしていきます。(校閲にAIを使ってる場合って、どういう扱いになるんでしょう。)


第六話:頼れる男の頭は長い

 

 宇宙に点在する歓楽の星の一つ、惑星バッカス。リューベとその知り合い達の行きつけの酒場は、宇宙港から出て数分の商業地区にあった。

 

 その小洒落た酒場の客は、皆戦士や労働者だが、そこに日々の疲れを癒やすべくやってくる客は皆、賑わいを見せながらも場を弁える者たちばかりである。

 頭が輝いている店主が揃えた安酒と銘酒の数々と、酒場としてはとても静かであるところが、リューベの行きつけの理由の一つだ。

 

 そして、八つあるカウンター席の右から三つ目が彼女の定位置だ。頑丈なスツールに腰掛けたリューベの右隣には、皺の深い顔でリューベを見下ろしながら、偉丈夫ガルツが座った。

 

 賑わうガルツのチームの面々たちを背に静かに座り続けていた二人は、酒が来た頃にようやく、口を開いて話を始めた。

 

「それで……フリーザ軍のサイヤ人について知りたいのだったな」

 

「うん、元フリーザ軍上級兵士なら知ってると思ってね」

 

 背後の賑わいなど気にしない様子の、カウンター席で隣り合うリューベとガルツ。かなり歳が離れた元部下と元上司の関係だが、今や同等の戦友である。

 琥珀色の酒を揺らすガルツの横で、リューベは口の中で酒を転がしていた。十年前と変わらない顔をほんのちょっとばかし羨みながら、口を開いた。

 

「今になってどうした? 軍に居た頃には耳も貸さなかったくせになぁ」

 

「なあに、アタシのやり方じゃ損ばかりになりそうでね……年長者の説教を頂きに来たのさ」

 

「ははぁ。どうやらまた、ただ話を聞くだけでは済まんようだな。とうとうツケが回ってきたのではないか?」

 

「うちじゃツケを作らねえくせになあ」

 

「ちぇっ、おやじまで口挟むのかい?」

 

 ムスッとして、琥珀色の酒をぐいと口に含む。それに続いて、ガルツもその酒のスモーキーな風味を味わった。何度か飲んだ事がある酒だったが、他人と飲むのはそこそこ久しぶりで新鮮に感じられる。

 呑み込んで一息吐いたガルツは、つまみのナッツをポリ、と一つ食べてから話し始めた。

 

「フリーザ軍のサイヤ人なあ……そうだな、名前と実力は知っているが、何しろ十年ほど昔だ…果たしてアテになるかは全く分からんぞ?」

 

「いや、助かるよ。知らないよりは何千倍もマシだからね」

 

「分かった。ならさっさと話そう。そいつらはフリーザ軍『第一軍』に居た連中だな……お前が入ってくる二年前だったか、その時は俺もまだ『惑星フリーザNo.79』務めでなあ…懐かしい」

 

「総本山じゃねえか……すまねえ、いきなり話が逸れるけどガルツさんよ、もしかして相当エリートコースだったんじゃねえのか?」

 

「おお。フリーザの直属部隊候補にもされてたが……同郷の若いの……何と言ったかな。ああ、アプールだ。ソイツがやかましくて仕方なくてな……顔も見たくなくなったから異動を申し出て、第三軍に行った訳だが……」

 

 その時から少し歳を感じていたからな、と付け加えたガルツは少しだけ自嘲気味に笑い、肩越しに後ろを指差した。

 

「ダーリマン、ジョナ、サンガル、オウキ、トメロ……お前が居た時から変わってないだろう? 俺が第一軍の頃からまるごと引っ連れてきたんだ」

 

「ま、まるごと…よく許されたもんだなぁ」

 

 フリーザ軍上級兵士ガルツ。当時「ガルツ小隊」を率いて星に高値を付けて回っていた彼は、フリーザ軍の一大拠点「惑星フリーザNo.79」に居たのだ。今の彼のチームの面子は、その頃から変わっていない。

 約十二年の付き合いの中で初めてガルツの昔話を聞いたリューベは、酒の味を忘れるほどに聞き入っていたが、ガルツが指を弾いたのをきっかけに、後ろからガルツの方へ視線を戻した。

 

「まあ、その頃から奴等は居たな……デカいハゲ一人と、デコっぱち二人……よく聞けよ。名前を言うからな。ラディッツ、ナッパ、ベジータだ」

 

「ナッパ、ベジータ……ん、ベジータ…?」

 

 サイヤ人の故郷の名前ぐらいは、いくら知らぬ存ぜぬ我関せずを貫こうとしてきたリューベですら知るところであった。

 ナッツを三つ四つ口の中に放り込んで咀嚼しながら、何処を見るでもなく前を向いた彼女の横で、ガルツは小さく数度頷いた。

 

「やはり引っ掛かるか。そのベジータってサイヤ人はな、サイヤ人の正当な王子、ベジータ王子その人だ……」

 

「なんとまあ、そんなヤツが一兵士とはとんでもないなあ…」

 

 惑星ベジータのサイヤ人の王、ベジータ王の息子のベジータ王子。一度にあんまり口に出していると訳がわからなくなりそうな文言に舌を出して、なんとも微妙な顔をしたリューベは、地球にいた骸のラディッツの事を問うてみた。

 

「そういやあさ、アタシはそのラディッツってサイヤ人の事を、ある星で知ったんだ。ソイツはその星でくたばってたんだけど、ラディッツの事を知ってるかい?」

 

 吹き出しかけた酒を苦しそうに飲み込んだガルツは口元を拭い、驚いた顔を向けた。

 

「なんと、ラディッツが……元々あいつだけは大した事無いと思っていたが、死んでいたか……口だけは達者なクソガキだった。おお、おお。どんどん思い出してきたぞ。俺の小隊に文句をつけてきた事もあったなあ。そうか、死んだか! ざまあみろだ、ぁあっはっはっはっは……」

 

「えぇー…嫌い過ぎでしょうよ…」

 

 急に笑い出した隊長に何事かと、ガルツの隊員たちはカウンター席の方を見やるが、何も心配はいらない様子だと見るや、また雑談に戻っていく。

 

 リューベは、ガルツの口からあれよあれよとボロクソに言われまくるラディッツに、少し憐れみを感じた。死者を愚弄する趣味は彼女と彼のどちらにもないが、流石に良いところ無しにも程があり、彼女は素で引いた。

 

 それは、性格も悪ければ大して強くもなく、格上の威を借る「ド」が付くチンピラ、自身が敵わぬ強い相手には逃げると来た。そのくせ態度だけはデカいのだから、ラディッツを好く者はほぼ居なかったという。

 

 もうかなり良い歳になってしまったガルツが、ここまで悪口を並べ立てるのだから、そうとう腹に据えていたようである。

 

 ガルツが悪口をまくしたてるところを久しぶりに見たリューベは、口をキュッと結んで数度頷き、ラディッツを自分なりに解釈してから問うた。

 

「自分でやり返しゃよかったのに。やんなかったのかい?」

 

「んん? ああ、そりゃやめといたな。あんなガキ、骨の一本や二本へし折ってやっても良かったが、ラディッツが腰巾着をやってるベジータはフリーザのお気に入りだったし、何よりベジータは昔から俺より強かったからな、流石に目を付けられたくはなかった」

 

「ガルツさんより強いって……戦闘力は?」

 

「当時にして最低でも1万……今は2万近いかもしれんな。昔からほぼ敵無しだった奴が戦いの中で成長できてるのかは分からんが、お前では逆立ちして勝てるかどうか分からんな」

 

「……とんでもねっ」

 

 リューベはここに来て、初めて少し酒が不味く感じた。しかし同時に、予想の範疇の中にあったことに安堵した。フリーザ軍の精鋭部隊の予想から大きく外れている訳ではなかったからだ。

 だが、彼女はその戦闘力に内心頭を抱えた。地球の連中がいくら鍛錬を重ねたところで、桁違いの強さに対抗出来るとは全く思えなかったのだ。

 

 助ける義理のないはずの星。しかし失えば自身の今後に大きな損害を被る。自らの保身を取るか、危険を犯してでも僅かな可能性に賭けるか。金だけ失うギャンブルとは違う「もう一回」が利かない賭けは、彼女にとって最も嫌な状況であった。

 

 改めてガルツの顔を横から見上げたリューベは、彼の表情にしわが深くなるのが見えた。

 

「…ボロクソに言ってみたが、圧倒的な格上が味方に居る以上、ラディッツは卑屈にならざるを得んかったのかもしれんな。10倍近い戦闘力を持つ者が居るんだ、自分が苦労して倒そうとはまるきり思わんだろう」

 

「そりゃあ、そうかもなあ」

 

「…ところで聞くが、ラディッツが死んだ星は……生きている星か?」

 

 ガルツの問いに、グラスを口に着けていたリューベは黙って頷き、ガルツは「ふむ、ふむ…」と呟き、指を弾いて話を促した。

 

「地球って星、知ってるかい? 青くて綺麗な星なんだけど」

 

「ああ、田舎星だと聞き及んでいるが。居住適性だけは高く、文明レベルや資源の観点からフリーザ軍でも全く価値が見出されてなかった星だな。ラディッツはそんなところに何の用で来たんだ?」

 

「さあ? ああ、もしかしたら知ってたかもな……聞いてくればよかったな。でもアタシには関係ないだろうなあ…………ガルツさん、推測でしかないし、長くなるけど良いかい?」

 

「む、付き合おうか」

 

 姿勢を変えて話を聞く姿勢となったガルツに、リューベは少し顔を近づけて話し始めた。

 

「地球は確かに文明レベルも低くて戦闘力もゴミみたいなもんだけど、居住性の高さから値が付くことは確かだ……もしかするとラディッツは実績作りの為に地球に来たんじゃないか、とアタシは思うんだ」

 

「ほう、それはどうしてだ?」

 

「ガルツさんのラディッツの評価を基準とするなら、多分ラディッツは、ベジータとナッパとやらの存在ありきになりつつあったのかもしれない。プライド高かったんだろうし、見下されっぱなしは癪だろうし、自分がどうなってるのか分からない程能天気でもないだろうし?」

 

「まあ、そうだな」

 

「とするなら、その二人が居なくても星は落とせる、という事実を作りに来たとも考えられるぜ。高値が付いて売れさえすれば、上は相手のレベルの低さなんて気にしないだろうし、部隊のスコアも上がる。流石にその二人も悪くは言わないだろ?」

 

 強敵を任せるなど、足を引っ張り続けたことで仲間内からの評価も下がっていたのなら、少しでもそれを回復させようと努めるものだ。部隊のスコアは任務報酬にも色が付く理由の一つだ。制圧した星が高く売れれば、付与される評価スコアは高い物となるからだ。

 

「ふむ……そこにラディッツ本人の感情を上乗せさせてもらうと……自分だけの力による圧倒的な勝利を久々に味わえる絶好の機会だった、とも考えられるな。格上二人に任せた上での勝利ばかりで、恐らくラディッツ本人の戦績に、満足の行く白星は殆ど無かったのかもしれん」

 

「かもねえ……まあ、そのゴミと思ってた星の連中にブチ殺されて黒星で終わったのは、何とも可哀想なもんじゃないか?」

 

「違いない。だが気になるな。地球人の戦闘レベルは近海の星々を見てもかなり低い筈だ。それこそ戦闘力一桁から二桁ちょっと……一応はフリーザ軍で通用する戦闘力だったラディッツが、どうやって死んだ…?」

 

 ガルツがその疑問を抱くのは当然のことだ。吹けば飛ぶような民族が住む星と軽んじられ、フリーザ軍にすら無視されていた星で如何にしてラディッツが死んだのか。リューベはピッコロやクリリン達の事を思い出しながら語り始めた。

 

「地球に来て早々、アタシはラディッツのポッドの残骸の近くでラディッツのホトケを見つけてたんだけど、鳩尾にファンレス扇風機みたいな大穴が空いてたぜ」

 

「なんと……ただの死に方ではないな」

 

 訝りながらグラスに残った酒を飲み干したガルツが、店主を呼んでもう一杯注いでもらうと、リューベもそれに続いてグラスを空にして注いでもらう。彼女は琥珀色の水面を見つめながら話を続けた。

 

「その技を放った張本人と、あとそのお仲間かな…少しやりあってきたよ」

 

「なんと。金にならんと拳も握らないお前がか」

 

「ああ。聞いて驚いてよ、ラディッツをぶっ殺したのはナメック人さ」

 

「ほう、ナメック人が地球にか…なかなか興味深いが置いておこう。他はどうだった?」

 

「ナメック人程じゃないけど、あの手この手、そこらのチンピラなんかよりやるよ。でも、そのナッパとベジータって連中には、多分勝てないな…」

 

「ナメック人が居てもか?」

 

「そうだなぁ……連中は、地球にやってくる二人組に備えてのトレーニング中ってことだったけど、ラディッツの時は恐らくもっと戦闘力は低かったし、ナメック人もそうだった筈……ラディッツを殺したであろう技は溜めが長すぎたし、サシでやれたとは思えない」

 

「つまり、ラディッツとの戦いの時に『もう一人居た』と見ているのか?」

 

「つい今さっきその考えに至ったところだよ。ちょいと省くけど、アタシが戦った地球人達じゃ無理だ。ラディッツの時に既に、ナメック人と同レベルの奴がもう一人居なきゃ話にならねえんだ…」

 

「むむっ、なるほど、よく考えたもんだ……」

 

 やたらくそ長ったらしい話をして、喋り疲れたリューベは酒を飲み干して、直後に頼んだビールと氷水が届くと、水をすぐさま飲み始めた。

 

 その横で、自分の斜め前の虚空に視線を泳がせながら、ガルツはポリポリとナッツを噛んで考え事に耽っていた。

 リューベの話がすべて本当なら、地球の戦士たちとサイヤ人二人組の戦力差はあまりにも隔絶している。助けが欲しいのなら「頼む」と言ってくれれば済む話であるが、リューベはただ「教えてくれ」と言ってきた。

 

 そもそも、なぜリューベは地球なぞに立ち寄ったのか。賞金首が逃げ込んだという話もなく、手首の端末の画面を開き、ずらりと照会しても何もない。ガルツは落ち着いた様子のリューベに問を飛ばした。

 

「少し尋ねるぞ?」

 

「良いよ」

 

「なぜ地球なんかに立ち寄った?」

 

「休暇だよ。近頃フリーザ軍の勢力拡大が著しいだろ。金もだいぶ貯まったし、少しの間身を隠してゆっくりしてしまおうと思ってさ……」

 

「なるほど、そこで選んだ地球は、サイヤ人がロックオン済み、というわけか」

 

「そういう事…普段のアタシなら冗談じゃねえって即サヨナラだけど、今回ばかりはちょっと考えるよ。何せ、物凄く綺麗な青い海で泳げそうなんだ……赤とか緑とか、へんな着色料ぶち撒けたみたいな色してなくて、ちょっと泣きそうなくらい綺麗なんだ」

 

「ふぅむ………なるほど。サイヤ人とは戦いたくないが、休暇先にピッタリな地球には無事で居てほしい……ぁはははは、そりゃあ悩ましいな」

 

 笑うガルツの横で、リューベは赤らんできた顔の表情をどんどん曇らせていた。大ジョッキの半分を飲んだところで顔を伏せると、かなり沈んだ声で話し始めた。

 

「……アタシさ、戦わずして逃げる奴らの事を嫌ってきたのに、よくよく考えたらリングに上がってるか否かの違いなだけで、結局はソイツらと全く同じなんだよな」

 

「…ふむ?」

 

「金にならなきゃ戦わない、得しないから相手しない……相手の前に立ってから逃げ出すやつの事だけを考えてて、自分の振る舞いなんかサッパリ見てなかったなーって、このクソ面倒くさい状況になって初めて省みたんだよ」

 

「まあ、そうだな。ダブスタのケツデカ女とは囁かれてたぞ」

 

「ああそうだよ。最初から会敵してなけりゃ関係ないだろって、他人に押し付けてたのは間違いねえ。今だって、このままどっか別の星を見つけて逃げちまいてえくらいだ……」

 

「…本当か?」

 

 左腕を枕にしながら、くたりとした様子で答える。

 

「…………本当だよ。ガラにも無く助けてやりてえ気はある。でもボランティアでやりたくねえってケチな気持ちもあれば、勝てない戦いに行きたくねえ臆病な気持ちもある。全部アタシの本心だよ。でも、どれに従えばいいのか、ずっと危険を避け続けてきたアタシには決められない」

 

 そう言って体を起こし、ビールの残りの半分を一気飲みしたリューベがまた腕枕に顔を伏せると、ガルツは指を弾いて店主を呼んだ。

 

「オヤジ、俺の奢りで、リューベに特別きっつーい酒を頼む。珍しくしおらしいんでな、火をつけてやってくれ」

 

「あいよ」

 

 快諾した店主が棚から取ったのは青い瓶の「ブリーズ・サファイヤー」。その突き抜けるような爽やかな風味と共に、酒豪すら「気付け薬」と扱う程の度数の高さを誇る酒。綴りミスをよく疑われる事でも有名だ。

 

「…ほら、顔を起こせ」

 

「……ブリーズ・サファイヤーかい」

 

「ちょっとしおらしいお前にはちょいど良い気付け薬だ。さ、ショット一発決めろ」

 

 バシッと背中を叩かれたリューベは体を起こし、ジョッキを退けてからショットグラスを手に取った。

 青い瓶から注がれた、濃縮ミント水溶液のような鮮やかなエメラルドグリーンの酒。名前に偽りありと思いながら、リューベはそれを飲み干した。

 

 直後、スパイスや香草のとんでもない清涼感が内側から引っ叩いた。それに続いてとんでもないアルコールが口と喉を灼こうとする。香り付けした消毒液を飲んだのかとも一瞬思いながら、リューベはカウンターテーブルを数度掌で叩いた。

 

「…っ!! ごれ゛何度だっげ!?」

 

「えーーーーと? 85度だな」

 

 流石に割って飲ませてくれ、と苦笑いしながら頭を傾けるリューベ。その仕草だけでも、少し元気が出たと見たガルツは、残っていたつまみを流し込んで食べ、いきなり立ち上がった。

 

「急にどうしたんだよガルツさん?」

 

「ちょっと野暮用に付き合ってもらうぞ。オヤジ、席はそのままで頼むよ」

 

「おう」

 

 ガルツは少しその場でリューベを待たせると、後ろでずっとワイワイやっていた仲間たちに話し掛けた。

 

「少し出てくる。すぐ戻るから、あまり羽目を外しすぎるなよ」

 

「分かってるよ隊長」

 

 ダーリマンが快く答えると、それに合わせて他の仲間もサムズアップで応える。全員かなり出来上がっているが、水が用意してあるなど、備えてはあるようだ。

 

「さて、行こうかリューベ」

 

「あ、ああ…」

 

 外へ出るなり空を飛び、市街地を離れてリューベを連れてきたのは、涼しい風が吹くだけの、無人の荒野だった。

 

 

 

 誰も居ない場所で戦士二人。リューベは少し酒が回りつつある頭で、いくつか意味する事の一つを察していた。

 

「…やり合おうって事かい?」

 

「ああ、そうだ。悩んでいられる余裕を持てる強さが、お前にまだあるのか俺が確かめてやる。どうせ格下ばかり相手していたのはラディッツもお前も同じことだろう…!!」

 

 ガルツが構えると同時に、リューベも腰を落とし構える。そして互いのスカウターがサーチ機能で戦闘力を測ると、リューベは数値を見て冷や汗を滲ませながら、ひとつ口笛を吹いた。

 

「ヒューッ……また強くなってるじゃねえかよ……」

 

「ふふ、歳は食ったが悪いもんは食わず、トレーニングは継続中だぞ。お前も戦闘力は落としていないようだが、動きはどうかな…!」

 

 皺の多い顔で微笑むガルツをスカウター越しに見据えるリューベ。そのレンズに表示された数値は、リューベを超える「1万3000」。対するガルツのスカウターに表示された数値は「9000」である。

 

 酔っ払いかけている二人はしばし睨み合ったが、ガルツが指の骨を鳴らした瞬間、その睨み合いは終わった。

 

「イヤーッ!!」

 

「むへえっ!?」

 

 開幕、体ごとの豪快な投擲によって襲い来たのは、なんと195cmのガルツの身の丈ほどもある、巨大なエネルギー手裏剣。敵の大部隊をまるごとぶつ切りにせしめたとされる、ガルツの得意技である。

 

「殺す気かよ!!」

 

「これぐらいやらんと、お前は本気を出さんだろう!! イヤーッ!!」

 

 電ノコと見紛うばかりの高速回転で飛来する、2枚の大手裏剣。リューベが回避した隙を狙い、ガラ空きの腹へと重い蹴りが刺さる。

 

「ぶぁはっ…!!」

 

「せっかく良いガソリンを入れてやったんだ、動いてもらわねばな!!」

 

 蹴り飛ばされたリューベは空中で体勢を立て直しながら、ブーメランのように戻ってきた二枚の大手裏剣を体をひねり回避する。

 地を数メートル滑り止まったリューベは、駆け出しながら両掌から真紅の気弾をショットガンのように放ち、ガルツへと接近していく。

 

「むっ…!」

 

 狙った場所へ収束するように飛んでいく散弾を放つリューベの技だ。ガルツは手裏剣を操るのを止め、飛来する気弾を弾き反らしつつ回避していくが、気弾はどんどん増える一方である。

 

「食らえっ!!」

 

 飽和攻撃で生じたガルツの隙に向けて、伸ばした二指から高速の気弾が放たれる。見た目に似合わず高密度の気弾はガルツの防御を崩し、そこへ無数の気弾が襲った。

 

「ぬううっ…!! 相変わらずとんでもないエネルギー量だ…」

 

「!」

 

 煙を振り払ったガルツは、気弾をリューベの足元に放ちながら突っ込んだ。煙に包まれたリューベの右頬を容赦なくガルツの拳が打ち据えたが、リューベは負けじと踏ん張った。

 彼女のお返しのアッパーカットが、地に降りてきたガルツの腹に刺さるが、即座に肘打ちがリューベの頭を叩く。

 

 そこから全力の打ち合いが始まった。しかしいざ高速の技の応酬となると、お互いにクリティカルヒットと言える感触が出なくなった。

 

「くうっ…!! いい歳してよお…!」

 

「はははは……戦闘力は上がったようだが、やはり鋭さが落ちとるな……やはりここで打ち合って正解だったな。今のお前には、いざという時の非情さが足らん…!」

 

「何…?」

 

「賞金稼ぎとして相手を生かすのは結構だが、今のお前の拳は、殺すしか無いクズにも手心を加えかねないな。それに、相手が格上なら格上のままと放っておくのも、悪い癖だ。少しは鍛えないか…!」

 

「め、めんどくせえ…!!」

 

 その言葉が聞こえたのか否か、ガルツの攻撃は苛烈となった。そして、リューベとガルツのハードな組手は長く続いてしまい、3時間も経ってしまっていた。

 

 流石に心配になり、酒場から一人で様子を見に来たトメロは、ちょうどスカウターに反応がある荒野へと飛んできた。

 

「まったく、年寄が若い娘捕まえて何しようってんだい? お〜い、ガルツ! リューベ!」

 

 荒野のど真ん中でぶっ倒れているリューベを見下ろす、少し肩の装甲が壊れた姿のガルツが、トメロに気付いて見上げてくる。

 トメロは少し不機嫌な顔でそばに降り立ち、ガルツの頭を引っ叩いた。

 

「3時間も何してたんだい!! ダーリマン達もうぶっ潰れちゃってるよ!」

 

「い、いやあスマン、トメロ……」

 

 チームの紅一点はいまや赤色巨星。年増ながらグンバツな彼女の気の強さに逆らえるメンバーは居ない。

 すっかり目を回してボロボロなリューベを確かめると、トメロはその体を担いだ。

 

「何したかは後で聞くけど、とりあえず運んでおくからね。奢ってもらう話で来たのに、奢ってくれる本人をボコボコにしてどうすんだい! まったく、ボケてきたんじゃあるまいね…!」

 

「わ、悪いって言ってるじゃないか……」

 

「もう、良いよ。こいつがそんなこと気にしないのはわかってるからね……」

 

 酒場へ戻る道中、目を覚ましたリューベは自分が誰に担がれているのかを把握すると、トメロに向けて話し掛けた。

 

「なあ、トメロさん……」

 

「もうお目覚めかい? タフだねぇーサイヤ人は」

 

「……アタシ、ちょいとガルツさんに鍛え直してもらうことにしたよ。ちゃいとやる気が出てきた……」

 

「そうなのかい? どんな話をしてたかは聞かないよ、好きにしな……ガルツがサイヤ人を鍛えられるか分かったもんじゃないけどね!」

 

 バツが悪そうな顔で黙りこくったガルツの方をちらりと見てから、黙って担がれていくリューベ。

 

 その後、少し席を外したかと思えばやたら長引き、女を痛めつけて帰ってきたとトメロに言いふらされたガルツは、チームメンバーと店主がこっそり用意していた罰ゲームで口の中をヒリヒリにされた。

 

 店のソファに沈みながら、土や砂に汚れた顔や手足をを拭うリューベは、久し振りに強くなろうと思った自分の顔を鏡で見据え、「頑張れよ」と呟くのだった。

 

 




 ◆キャラクター紹介コーナー その2◆

名前「ガルツ」
身長;195cm
体重:100kg
性別:男
種族:不明(アプールと同族)
戦闘力:13,000

 元フリーザ軍上級兵士の歴戦の猛者。「ガルツ隊」を率いて迅速な制圧で数多の星に高値を付けてきた。
 第三軍で気怠そうにしていたリューベの面倒を見ており、彼女がフリーザ軍として働いていた時期の殆どは彼の下であった。

 上級兵士でありながら、フリーザ軍のやり方に入隊以前から不満を持ち続けており、故郷の徴兵によって無理矢理フリーザ軍に入らされ、故郷の家業を継げなかったことを気にし続けている。

 また、必要最低限の殺傷と破壊に留め、対象惑星の戦意を完全に削いで避難と脱出を優先させるなど、フリーザ軍の残虐なやり方に可能な限り抵抗し続けていたが、星が美麗な故に高く売れるという皮肉な状態であった。

 当時のチーム丸ごとフリーザ軍を脱退しており、現在は研究者や隊商の護衛を行う傭兵団として気ままにやっている。今は50代後半のようであるが、戦闘力は衰えていない。

 名前の由来はアプール(りんご)つながりで「つがる」。

地の文とセリフの間隔などは、読みやすいでしょうか? 修正する場合、どのようにすべきでしょうか?

  • 読みにくい
  • 読みやすい
  • 地の文・セリフを纏める
  • 地の文を纏め、セリフは纏めない
  • セリフを纏め、地の文はそのまま
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