メスガキ強化人間に煽られすぎて夜しか眠れない 作:さかなかさ
翌日になった。巨乳中佐がジト目で俺を睨んでいる。なんで?? おっぱいは魅力的だけど、ギレン派にがっつり入るわけにはいかない。
「エーリヒ。君は私という…っ、魅力的な女を袖にしたんだぞ。……私は君とプライベートでも、……その、関係を深めたいと思っているんだ」
「何人に同じことを言ったんですか? 若くして中佐になるって、そういうことでしょう?」
「なっ、お前っ人を、そんなふしだらだと…! そんなこと、」
中佐は、俺の言葉に思った以上に動揺していた。男と寝て地位を得たくせに変なところで初心だ。処女でもあるまいし。
「フラナガン機関への出向は受けます。ですが、俺はギレン総帥にもキシリア少将にも与しません。それと、俺は中佐を信用していました。人間として尊敬できると思っていましたよ。…脅しで言うことを聞かせようとするまでは」
どうやら俺はもう派閥抗争に巻き込まれているらしい。軍を辞めたら殺されるってマジ?? 多分中佐が余計なことしたからだと思うんですけど……
確かこの人ってジオン名家出身のお嬢様だったな。くだらない政治ゲームに巻き込みやがって。
仕方がないので、フラナガン機関に出向します。
しました。俺を迎えるのは、白衣姿の糸目女だ。長い前髪は分厚く、眉は隠れている。袖もダボダボで手が隠れている。そんなんじゃ実験できないだろうが……
「やあ、僕はフラナガン機関補佐研究員のリリアナだ。階級は少佐相当官。君の上司に当たる。よろしく頼むよ。エーリヒくん」
「こちらこそよろしくお願いします」
よろしくしたいわけがない。人間ぶっ殺し人体実験機関と仲良くしたい奴おりゅ??
「さて、早速だが君に被検体を見せよう。君にはハンドラーとして、問題のある強化人間の運用をしてもらう。候補は3匹。失礼、3人だ」
まずメリアナが見せてきたのは、両腕や露出している肌の至る所に傷痕が見える少年だった。がっつり拘束され、保護室に入れられている。
「蟲だ。虫が、むしが、ムシが俺の皮膚を上ってくる。うう。そこの奴、早く虫を取ってくれ……」
いや、ヤバいな。どうしろと??
「彼には、試作品であるマイクロサイコミュを埋め込んだ。結果としてはご覧の有様だが、処分するには勿体ない。エーリヒ君であれば、使えるんじゃないか?」
「モビルスーツ乗りは兵士です。兵士には正常な判断力が必要となります。彼に、それは考えにくい」
「ん〜。じゃあダメだ。維持するのにもコストが掛かるし後で廃棄しておくよ」
おおブッダよ寝ているのですか…?
「二人目は、彼女だ」
まず持った印象は臭いだ。すっげぇクサい。
「彼女に入浴習慣はない。あとはそうだな。異常に記憶力良く情報端末を常に弄っている。何をやっているかは分からん。謎の言葉の羅列を打ち込んでいるんだ」
「あの子をどうしろと? 俺をなんだと思っているんですか??」
「有能なパイロットだな。そしてギレン派の強化人間のリクルーターだ。強化人間に否定的なギレン派の中では珍しいよ」
俺を見つけた少女が、不思議そうな顔になる。黒い髪は伸ばしっぱなしになっておりギトギトしている。元は白かっただろう病衣も茶色く変色している。
「……刻。あなたが神様?? 刻の向こうから来たんだ」
ククロと名乗った少女は、自分の打ち込んだ言葉の羅列こそ刻に迫るための鍵だと語った。へ、へぇ……そうなんですか……
そして、垢に塗れた手で俺の手を握った。
――あ〜、ニュータイプの音を〜!
「あなたが刻なんですかね…?? 世界の向こうからの観測者さん。転生者さんなんですか……へぇ〜面白いな〜」
なんで分かるんだよ……
「ククロのチカラは、エーリヒ様に使ってもらうためにあったんですね。分かっちゃいました」
分からなくて良いよ。やめて。
「……エーリヒ・ベルグが命じる。風呂に入れククロ!」
「えっ……」
「ククロ。お前は不潔だ。俺は道具は清潔に保ちたい」
「……はい。分かりました。ククロは風呂に入ります」
よし!
リリアナが、手を叩いている。萌え袖白衣でも拍手出来るんだ。
「いや〜。エーリヒくん。君はハンドラーとして素晴らしい才能を持っているね。よく分からないけど、アレが素直に風呂に入るし、普通に喋っているよ。驚いたな」
「はは。たまたまですよ」
疑われているけど、これはたまたまだ。そう。たまたま。
「次、次行きましょう」
「いや、ククロで良いんじゃないかな? 最後のアレは厄介だし処分しておくよ」
「いやいや、人命は大事ですよ。ほら、行きましょう」
――そこには、メスガキがいた。赤いリボンで括られた金髪ツインテールに、生意気そうなツリ目。ニマニマとこちらを見る顔は、自らの優位性を確立しているようだった。
「あれ〜。おばさん来たんだ〜♡ 良い年して萌え袖とか恥ずかしくないの。白衣姿で子ども殺してるとか頭おかしい〜。こんなことしてても未来がないのに、フラナガン博士のおちんちんしゃぶったんでしょ〜。キモ〜♡」
リリアナが動きを止める。まさか、図星なのか…? なるほど。これはメスガキだ。
そして、少女と目が合うと時間が引き延ばされる。ニュータイプの感応だろう。
「お兄さんは前髪スカスカ♡、英雄ぶってる……ッ、サラミス5隻沈めてる…!? えっ、こんな、はっ??」
固まるメスガキ。固まる理由あるか?
「ま、まぁ。お兄さんは少しはやるみたいですね♡ まぁ、認めます。ガチのエースじゃないですか? なんでこんなところに???」
「俺は、もう戦争に参加しないんだ。もう嫌なんだ。人を殺すのも殺されるのも」
「メンタルよわよわ〜♡ 転生者のくせにギレン・ザビの台頭を見逃して罪悪感を覚えてるとかキモ〜♡ 自分を全能とか無敵だと思っているの?
……お兄さんはそうやって葛藤して生きてきたんでしょ? ……それって、お兄さんがとっても優しいってことじゃない?」
俺が優しいだと? 俺は単なるどうしょうもない臆病者で卑怯者だ。
「そんな優しいお兄さんに提案です♡ お兄さんさ、メイを救ってくれる?」
「……そもそもどうしてお前は処分されそうなんだ?」
「えぇ〜? 分かんないの〜?」
「分からん」
「…他人の心を覗いて、酷い言葉で傷付けることがそんなに悪いこと!? メイだってパパから殴られたり酷いことを言われたりしたもん!!!
だから大人はみんな嫌い。でも、お兄さんは違う。自分が何もせずに戦争を止められなかったこと、ジオンがコロニーを落としたことに傷付いてる。とても優しい人。こうやって心が通じ合って分かり合えるなんて初めて!!!」
おっとメンヘラメスガキモドキだ。使えそうだし頷いておくか。これがクェス・パラヤを受け入れたシャアの気持ちなのかもしれない。
そもそもニュータイプの感応で分かり合えるわけないだろ? ニュータイプも感応もニューロンの見せる幻に過ぎない。
霧が晴れるようにニュータイプの感応が終わる。
「終わったか」
「お兄さん♡ メイのこと上手く使ってね♡ そっちの萌え袖キショキショビッチおばさんはいらない。死ね売女」
火の玉ストレート過ぎるな。こんなのでどうやって人間社会を生き抜こうと思ったのだろうか? 人間社会に適応出来なかったから処分されそうになっているのだろうけど。
「調子に乗るなよ。ヒトモドキが…! あーこほん。さて、 エーリヒくん。君には2匹の強化人間を鍛えて欲しい。君の元上司にもこのことは伝えてある。
連邦から
…………???? マジ?? え? 早くない?? シャアは?? は??