星になったヒーロー 作:日暮 蛍
黒い精子達が合体し、黄金精子を遥かに凌駕するほどのパワーアップを遂げた怪人、白金精子。
凶人はキングが何故、脅威となる怪人の誕生を阻止しようとしなかったのか疑問に思ったが、すぐに理由を考えるのをやめた。自分があれこれ考えても意味はないという結論に至ったからだ。
それよりも、凶人は白金精子の方をじっと見て、意を決して空気を読まず手を挙げた。
「キング。お願いがあります。」
「なんだ?」
「そちらの...すみません貴方、そこのキラキラ輝いてる貴方。お名前はなんというのでしょうか?」
「白金精子と言います。」
「ご丁寧にどうもありがとうございます。ご存知とは思いますが、私は凶人といいます。」
「そんな事より、なんなんですか。早くしなさい。」
「これは失礼を。」
これから死闘を繰り広げるには気の緩む会話に童帝やアトミック侍達は呆れている。
「それでですね、お願いというのはですね。」
そこで区切り、凶人は無表情を崩して微笑んだ。
「白金精子の相手を私に譲って欲しいのです。」
その発言を聞いた皆が驚く。
後はキングに任せればいいこの状況下で、凶人は白金精子と戦う事を申し入れてきた。
「なん、何を言ってるんですか凶人さん!!」
突然の申し出に動揺して叫ぶ童帝。
「いや、分かってはいるんですよ。キングに任せた方が早く済むというのは。それでも、やっぱり。我慢出来ません! 見てくださいあのキラキラ。絶対に強いですよあの方。きっと私をぐっちゃぐちゃ殺してくれます!」
笑顔で目を輝かせる凶人に、童帝は頭を抱えた。
「おい鬼サイボーグ! どうにかアイツを説得出来ねぇのか!?」
「おい凶人! 無謀だ止まれ!!」
「ごめんねジェノス君! いや、鬼サイボーグ! ちょっと、いやかなり無理!!」
「無理だそうだ。」
「諦めるの早ぇよ!!」
「いくら言って聞かないんだアイツは。」
皆、凶人を止めようとするが凶人は止まる気が一切無い。
「ふざけないでください。」
白金精子は冷たく言い放つ。
「何故わざわざあなたの願いを聞かなければいけないんですか。キングを始末した後、あなた達全員殺してやりますので少しは待ちなさい。」
白金精子の言い分に、凶人は落ち込む様子を見せる。
「そう、ですね。最強のヒーローと戦うなら万全の状態でやりたいですよね。」
引き下がりそうな凶人にジェノス達はほっと一安心する。
「でも、1つだけ。1つだけ質問に答えてくれませんか白金精子。答えてくれたら私、ちゃんと待ちますので。」
「...なんですかいったい。」
不機嫌な態度を隠さず、それでも律儀に凶人の質問に答えようとする白金精子。
そんな白金精子に対して凶人は笑顔で短鞭を取り出し、手のひらに1回軽く打ちつけ乾いた音を響かせる。
「自分が洗脳されて、攻撃されて、肉壁にされる姿を見て、どう感じました?」
やらかしやがったこいつ! 煽りやがったこいつ!! ブチ切れるに決まってるだろこいつ!!!
皆、凶人のとんでもない発言に顔を青くする。
「...気が変わりました。キングの前にあなたを殺しましょう。お望み通りに。」
案の定、白金精子はドスの効いた声を出し憤怒の表情を浮かべ凶人を睨みつける。
突き刺さるほどの殺気を向けられて、凶人は心底嬉しそうに笑い白金精子へと近づく。
「キング。そういうわけですので、白金精子の相手は私が貰います。水の怪人の方はお任せしますね。」
皆を置いてきぼりに話がどんどん進んでいく。
「上に行きましょう。邪魔が入らないように。」
「いいでしょう。あなたを粉砕し血の雨を降らせてやりましょう。」
凶人は白金精子の目前で立ち止まり、お互いそのまま無言で視線を交わす。
そして、2人揃って大量の瓦礫を巻き込んで空高くへと跳び上がっていった。