【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
トレセン学園 トレーナー室
『それでは!チームポリマの初練習を開始します!!』
ライス『わぁ……』ぱちぱちぱち……
トラン『トレちゃん、トレちゃん……初練習はいいけど……』
ライス(……トレちゃん……)
トラン『トレーナー室ですんの?』
『ふふふ……まぁ、そう焦りなさんな……』
『スズカさん、“例の物”を配ってくれたまえ……』
スズカ『ふふっ……はい、トレーナーさん』
ライス&トラン『?』
スズカ『はい、ライスちゃん』さっ
ライス『ありがとうございま……』
スズカ『トランちゃんも……』さっ
トラン『んん?……ノート……?』
ライス『しゅっ……!?』【ライス&片桐トレの交換日記☆ノート】
トラン『なっ……!?』【トラン&片桐トレの交換日記☆ノート】
『ふふんっ……』
(過去の反省を生かして、今回は♡やなくてちゃ~んと、☆にしたで!)
(まずは担当との信頼と絆を深める!ろっぺいさんの教え、片桐!守ってますよ!!)
ライス『……』
トラン『……』
二人の視線が、ノートの表紙から片桐へ戻る
『あ、あれ?』
ライス『……』
トラン『……』
二人の視線が、片桐とノートの表紙を往復する
スズカ『ふふっ……まあ、最初はこうなるわよね……』
ライス『……た……』
『た?』
ライス『楽しそう!』✨
トラン『マッ!?』
『……!!』パァー✨
ライス『トレーナーさんと、交換日記……!これ、絵とか描いてもいいの?』
『も、もちろん!絵でも詩でもなんでもいいよ!』
ライス『やったぁ♪じゃあ、ライスいっぱい書くね!』
『う、うん……ぐすっ』
(ええ娘や……)
スズカ『よかったですね♪トレーナーさん』
『……うん……』
トラン『……ウチは、パースッ!』
『な゛っ!!』
トラン『だって~……今時ノートに手書きって……しかも交換日記……』
『……う』
トラン『アナログすぎじゃない?』
『……昭和の男なので……』しゅん……
スズカ『でもね、意外とやってみると面白いわよ?トランちゃん』
(“意外と”……なんだ……)しゅん……
トラン『ふ~む……』
スズカ『たま~に……新しい発見もあるし』
(たま~に……なんだ……)しゅん……
トラン『まぁ、スズカさんがそこまで言うなら……』
『お!』
トラン『けど、このノートには書かないよん』
『がーーーんっ』
トラン『だって、効率悪いもん……スマホ使ってやればよくね?』
『そ、それは……そう……カモ』
トラン『あとで、アプリ送るからそれでやろ?トレちゃん♪』
『……アプリ……いいだろう!許可します!』
トラン『じゃ、そういうことでぇ』
スズカ『よかったですね♪』
『では!続いて!改めて二人の走りを見せてもらおう!』
『いざ!トレーニングコースへ!』
ライス『はい!』
トラン『OK~』
・・・・・・
トレセン学園 トレーニングコース
ザーーーーーーーーーーッ
一同『……』
『……何?……この大雨……』
スズカ『天気予報は晴れのはずだったのに……』
トラン『……なんか……府中市上空にだけ、分厚い雨雲があるみたい……』ポチポチ……
ライス『……ぅぅ』
ライス『ごめんなさいっ!!』
一同『!?』
ライス『きっとライスのせいだから……』シュン……
ライス『ライスがいるとみんなを不幸にしちゃうから……』シュン……
『そ、そんなことないよ!たまたまだよ!たまたま!』
トラン『そそ、そうそう! 最近の異常気象でゲリラ豪雨とか珍しくないし!』
スズカ『そ、そうよ!たまたま、たまたまライスちゃんが雨女だっただけよ』
ライス『!』
トラン&片桐『あ』
スズカ『え?』
ライス『ライスが雨女なせいで……ダメな子で、ごめんなさぁ~い……えぇ~ん』
『スズカさん!その言い方は違うかも!』耳打ち
スズカ『え?え? 私!ライスちゃんを慰めようと思って……』
トラン『……ダメだ、こりゃ……』
ライス『うええぇ~ん……ごめんなさぁ~いぃ……』
スズカ『えっと……ち、違うのよ ライスちゃん!だ、だから泣かないで……』
『そ、そうだよ!ライス 雨なんてただの水だよ も、もう走っちゃおうぜ!』
トラン『……』
トラン『体育館いこ』
『え?』
トラン『コースじゃなくても走りは見れるでしょん?』
『そ……それは、そうだね』
・・・・・・
トレセン学園 体育館
『……40mシャトルラン?』
スズカ『よしよし』なでなで
ライス『……ぅぅ』
トラン『そうそう♪ウマ娘用のシャトルラン』
『あの、ドレミファソラシド~♪で、折り返すやつ?』
トラン『うん、人間用は20mだけど、ウマ娘用は40mでやるんよ』
『……うぇ……聞いただけで、吐きそうなんですが?』
トラン『ウマ娘に20mは短すぎるんだぜぇ?トレちゃん』
『ウマ娘恐るべし……』
スズカ『……大丈夫?走れそう?』
ライス『うん、ライス走る!』
『お!ライス~偉いな~よしよし』なでなで
ライス『えへへ……////』
『じゃ、やってみよっか!』
ライス『はい!』
トラン『トレちゃん、これ!』ポイッ
『っ!……っと』キャッチ!
トラン『ウチのスマホ、再生ボタン押せばメロディ流れるから』
『了解!』
『じゃあ、いくぞぉ』
『よーい……』
ライス『……』
トラン『……』
『スタート!』
ライス『!』ダッ……
トラン『!』ダッ……
ド~~レ~~ミ~~ファ~~ソ~~ラ~~シ~~ド~~♪
・・・・・・
ドレミファソラシド……♪
『……』
(これ……いつ終わるの……?)
ライス『はぁっ!』キュッ!ダッダッダッ……
トラン『うりゃっ!』キュッ!ダッダッダッ……
・・・・・・
ドレミファソラシド……♪ドレミファソラシド……♪←すでにMAX速度
『……』
トラン『ふにゃ~……さすがに限、界……ぜぇ……ぜぇ……』バタッ
スズカ『ふふっ……お疲れ様♪』
ライス『はっ!はっ!はっ!』キュッ!ダッダッダッ……
『……マジでいつ終わるの……?』
(さすがにスタミナはライスシャワーに分があるか……ってかステイヤーやしな)
(トランもかなりがんばってたが……まだ走りが……幼い……ん?)
『じーーーーっ……』
トラン『水ちょ~だぁ~い……スズカさぁ~ん……ぜぇ……ぜぇ……』
スズカ『はい、はい……ふふ』
(トランに……違和感?……いや、なんかいつもと違うような……?)
ドレミファソ……プツッ
『へ?』
ライス『ふぇっ!?』
折り返すタイミングを失ったライスが、そのまま壁へ突っ込んでいく
『あ!ライスッ!!』
ライス『え?』びったーん!
スズカ『きゃあっ!ライスちゃん!』
トラン『!』
『かべに……』
ライス『ふぎゅっ!……い、いったぁ~い……ぅぅ』
スズカ『だ、大丈夫!?』
トラン『ごめん、ごめん 先にスマホのスタミナが切れちったみたい……』
ライス『……だ、大丈夫、れす……』
『スマホのスタミナに勝つ、ライス……恐るべし……』
スズカ『痛いの痛いの……とんでけぇ~っ♪』なでなで……
トラン『とんでけ、とんでけぇ……』なでなで……
ライス『ぅぅ……』
・・・・・・
トレーニングルーム
『続いては、トレーニングマシンを使って筋力測定をします!』
ライス『き、筋力測定……』
トラン『おっ!ウチの出番だねぇ~♪』
『使うのは、ウマ娘用レッグプレス!このプレートを両脚で押し出して……』
トラン『負荷を上げながら、限界値を測る感じ?』
『……説明、取られた』
トラン『説明書、読んどいたほうがいいよん♪トレちゃん』
『読みました!』
スズカ『トレーナーさん、ずっと説明書を持ったままですよ』
『……念のためです!』
トラン『トレちゃんだいじょぶ~?』
『まずはライスから!最初は軽い負荷だから、ゆっくり押してみて』
ライス『う、うん……!』
ライス『んっ……!』
グググ……ガコン!
『よし!もう一回!』
ライス『んんっ……!』
ググッ……ガコン!
『少し負荷を上げるよ』
ライス『うん……!』
ガチャン……
ライス『んんんんっ……!』プルプル……
グググ……
ライス『ふぇぇ~……』
ガコン……
『はい、そこまで!』
ライス『ご、ごめんなさい……あんまり、押せなくて……』
『謝ることじゃないよ、え~っと、測定結果は……』
ペラッ……
(同年代のウマ娘の平均より、やや下……小柄なライスなら、こんなもんか)
『今の筋力がわかっただけでも十分!これから少しずつ鍛えていこう』
ライス『……うん!ライス、がんばるね!』✨
『では、次!トラン!』
トラン『ほ~い♪』
ストン……
『最初は、ライスと同じ負荷から……』
トラン『んっ!』
ガコン!
『……軽かった?』
トラン『全然♪ もっと上げちゃっていいよん』
『じゃあ……これくらいで』
ガチャン……
トラン『ふんっ!』
グググッ……ガコン!
ライス『わぁ……!トランさん、すごい……』
トラン『ふっふ~ん♪』
『まだ余裕ありそうだな……もうひとつ、上げるよ』
ガチャン……
トラン『んんっ……!』
ググググッ……
ガコン!
トラン『どんなもんよ!』✨
『おぉ~!すごいな、トラン!』
トラン『ま~ね~♪ これでもパワーには、ちょ~っち自信あるんだ~』
『測定結果は……』
ペラッ……
『えっ!?パワーだけなら、もうデビューできるくらいあるぞ!』
トラン『マ?』
『マ!』
トラン『ふ~ん……そっか、そっか~♪』ニヤニヤ……
『嬉しそうだな』
トラン『そりゃ~初日から褒められたら、悪い気はしないっしょ♪』
ライス『トランさん、すごいね!』
トラン『おコメさんも、これから鍛えりゃいいじゃん♪』
ライス『……うん!』
『おコメさん……?』
トラン『ん?どしたの?』
『トラン、おコメさんって……?』
トラン『ウチがライスさんにつけたあだ名だよ』
ライス『そうなの、トランさんがライスにあだ名付けてくれたの!』
ライス『ライスだから……お米、それでおコメさん♪』
トラン『おコメさん……可愛くない?……ニヒヒ』
『ちょっと……いいかも♡』
(さすがのコミュ力強者のトランやな……見習おう……)
『よし!これで今日の測定は全部終了!初トレ、お疲れさまでした!』
ライス『ありがとうございました!』
トラン『おつかれちゃ~ん♪』
スズカ『二人とも、お疲れさまでした』
『じゃあ、トレーナー室に戻って、今日の記録をまとめようか』
・・・・・・
トレーナー室
『……』カタカタカタ……PCで今後のトレーニングメニューを模索中……
スズカ『えっと……』カタカタ……PCに本日の記録入力中……
トラン『……ふむり、ふむり……』カタカタカタカタ……PCでなにやら作業中……
ライス『……~♪』カキカキ……交換日記記載中……
トラン『よしっ!トレちゃん……スマホ貸してぇ』
『ん?……はい、どーぞ』さっ
トラン『サンキュー♪……これを……』スマホをPCに繋げてなにやらしてる
トラン『……』カタカタカタ……
『……』
トラン『……よし!OK~♪……ほい、トレちゃん』さっ
『……ん』
トラン『トレちゃんのスマホに、交換日記のアプリ入れといたから』
『ん?……あぁ、これか……』
トラン『ウチの自作アプリだよん♪』
『え!?マジで!……すごいな』
トラン『っていっても、既存のアプリを使いやすくいじっただけだけどね』
『いや、それでも……たいしたもんだよ』
トラン『ははっ……褒めても何もでないよ?』
『はは……それは残念』
トラン『じゃ、ウチは帰るね~、お疲れさま~』てくてく……
『はい、お疲れさん』
スズカ『お疲れさま』
ライス『……♪』カキカキ……
(ライス……あんなに集中して書いてくれてる……ジーーン)
・・・・・・
ライス『ん……おしまいっ♪』
ライス『あれ?トランさんは……?』
スズカ『ふふっ……ライスちゃんが日記書いてる間に先に帰ったわよ』
ライス『え!? そうなんだ……ライス全然気づかなかった……』
ライス『ト、トレーナーさん、これ……』さっ
『うん、ありがとう』
ライス『ライス、初めてだから書きすぎちゃった……かもだけど……』
『いくらでも書いていいんだよ!』
ライス『う……うん!それじゃあ……ライスも帰るね』
『はい、お疲れ様でした』
ライス『お疲れ様でした!』ペコッ
スズカ『お疲れ様』
ガラガラッ……バタン
『……』
スズカ『……』カタカタカタ……
『……じーっ……』
片桐の視線が、手元の交換日記へ落ちる
(ライス&片桐トレの交換日記☆……)
(キターーーーー(゚∀゚)ーーーーーッ!!)
(落ち着け!落ち着くんや……まだ、まだ読んだらアカン!)
スズカ『……』カタカタ……
(そう……この部屋にはまだスズカが残っとる……いまここで!)
(“萌え狂う”わけにはいかんのや!!)
『……ウズウズ』そわそわ……
スズカ『……』カタカタ……
『……ウズウズ』そわそわ……そわそわ……
スズカ『……どうしたんですか?トレーナーさん、そんなそわそわして……?』カタカタ……
『ぺぎゃっ!?……いや!全然そわそわなんてしてませんよ?通常営業ですよ?』
スズカ『……じーっ……』
『……ニコニコ』
スズカ『……』カタカタ……
『……』
(あぶない、あぶない いや、別に悪い事しとるわけやないんやけど……)
(なんか……気まずいやん?)
スズカ『……読まないんですか?ライスちゃんの交換日記☆?』カタカタ……
『ぷげらっ!!?』
スズカ『……』
『え、あぁ……う、うん、まだ他にやることあるから……後にしようかなぁ~って』
スズカ『……そうですか……』カタカタ……
『……』
(なになに!?この無言のプレッシャー? スズカさん、機嫌悪いんかな?)
『……』チラッチラッ……
スズカ『……』カタカタ……
『す……スズカさんは、まだ記録入力かかりそ?』
スズカ『入力は終わったんですけど……』カタカタ……
『……』
スズカ『ちょっと、調べたいことがあるので……』カタカタ……
『そ、そっかぁ~……』
スズカ『……』カタカタ……
『……』
スズカ『帰った方がいいですか?』ニコッ
『!』
『いや!全然、そんな…… ゆ、ゆっくりしてってくださいっ!!』
スズカ『……フン』カタカタ……
『……』
(怒ってる!なんか怒ってるって!!……なんで……?)
『……』
(と、とりあえず……ワシもトレーニングメニュー考えよ……)
『……』カタカタカタ……
スズカ『……』カタカタ……
・・・・・・
二人分のキーボードの音だけが、しばらくトレーナー室に続く
『……』カタカタカタ……
スズカ『……』カタカタ……
『……ん?』
『スズカ、時間大丈夫か?』
スズカ『あら?ホント……もうこんな時間……』
『門限ギリギリになっちゃうぞ』
スズカ『はい、じゃあここまでにしてお先に失礼しますね、トレーナーさん』
『うん、おつかれ』
スズカ『お疲れ様でした』
ガラガラッ……バタン
『……』
『……』
『……』
『ひゃっほーーーーー……』飛び上がる
ガラッ!
スズカ『……』
『!』
『……ぁ』
スズカ『……じーっ……』
『……』
スズカ『……』てくてく……
『……ぁぅ』
スズカ『……』パシッ 自分のデスクからスマホを取る
『……ぁ……ぁぅ、ぁぅ』
スズカ『……』てくてく……
ガラッ……バタンッ!
『あうっ!!』
『……』チーン……
(見られた……終わった……ワシのトレーナーとしての威厳が……)ガクッ
スマホ『ポロン♪』
『ん?LANE?』
『……』ピッ
スズカ【私の時もそんなにハシャいでたんですか?】
(う゛……こ、これは……もしかして……やきもち……?)
『えっと……』 ポチポチ……
・・・・・・
スズカ『……ムスー』てくてく……
スマホ『ポロン♪』
スズカ『!』さっ……ピッ
トレーナーさん【スズカとの交換日記は俺の宝物です】
スズカ(……トレーナーさん……)
スズカはスマホを胸元へ引き寄せる
スズカ『ふふっ……』
スズカ『……しょうがないわね』
スズカ『……~♪』ルンルン……
◇◇◇
翌日 トレーニングコース
タッタッタッタッタッ……
ライス『ハァ……ハァ……ハァ……!』タッタッタッタッ……
『ライス!そのまま、最後までフォーム崩さずに!』
ライス『はいっ!』
タッタッタッタッタッ……
『……』ピッ ストップウォッチを止める
ライス『ハァ……ハァ……ど、どう……でしたか?』
『うん……走りは素晴らしい』
ライス『!』
『フォームも綺麗だし、ペース配分も悪くない……前に見た時の印象通りだ』
ライス『よかったぁ……』ほっ……
『ただ……』
ライス『!』ビクッ
『……』
ライス『ご、ごめんなさい!ライス、何か……』
『いやいや!謝ることじゃないから!』
『タイムもデビュー前のウマ娘としては平均以上に出てるし、悪いところがあるわけじゃないんだ』
ライス『そう……なの?』
『うん……ただ、なんだろうな……』
(走りは綺麗……悪いところも、特に見当たらん……)
(せやのに……なにか物足りん……)
『……』
スズカ『トレーナーさん?』
『あぁ、いや……とりあえずライスは休憩してて』
ライス『う、うん……』
『次はトランだな』
トラン『ほ~い♪』
・・・・・・
『そういえば、トラン』
トラン『ん~?』
『トランは、芝とダート……どっちを走りたいんだ?』
トラン『ん~~……』
『……』
トラン『やっぱ、クラシックが一番ゾクゾクするっしょ?』
『なるほど……』
トラン『ま、ダートも嫌いじゃないけどねぇ~』
『じゃあ、とりあえず今日は芝を走ってみようか』
トラン『りょ~かい♪』
『まずは1人で1周、全力で走ってみてくれ』
トラン『おっけ~……んじゃ、いってきま~す♪』
・・・・・・
トラン『……ふっ!』ダッ!
ダダダダダッ!
『!』
(速い!スタートから一気に出た!)
(昨日の測定通り……パワーは十分!)
トラン『……っ!』ダダダダッ……
(コース取りも上手い……迷いがない)
(さすが、レースを見るのが好きなだけあって、どう走れば無駄がないか分かっとるんやな……)
スズカ『力強い走りですね』
『あぁ……だけど……』
トラン『……っ!』ダダダダッ……
『……』
(フォームがまだ固まってない……上半身も少しブレてる……)
(力はある、知識もある……けど、全体的にまだ粗削りで……)
『……幼い?』
(!)
(昨日の違和感!)
『……』
(弱々しいんやない……この子は、まだ……)
トラン『……っ!』ダダダダッ……
(まだ、身体も走りも出来上がってない……)
(本格化が……来てないんや!)
『……』
(なんで……分かる?)
(見ただけで……トランの本格化は、まだずっと先やって……)
(理屈やない……けど、はっきり分かる……)
トラン『……っしょ!』ダッ!
『!』ピッ
トラン『はぁ……はぁ……どうよ、トレちゃん?』
『トラン……』
トラン『ん?』
『トラン、まだ本格化を迎えてないな』
トラン『……』
片桐は、返事を待ってトランの顔をうかがう
トラン『へぇ~……』
『え?』
トラン『トレちゃん、そんなことも分かんの?』
『……たぶん』
トラン『いやいや、たぶんて……』
『いや、俺もなんで分かるのか……よく分かんないんだけど……』
トラン『ふ~ん……ま、いっか♪』
『軽っ……』
トラン『ウチもまだまだってことでしょ?なら、これから伸びるってことじゃん♪』
『……そういうことだな』
トラン『そゆこと、そゆこと~♪』
『よし……じゃあ、今度は二人で走ってみようか』
ライス『え?ライスとトランさんで?』
『うん、相手がいる時の走りも見てみたい』
トラン『おっ、いきなり模擬レース?いいじゃん♪』
『トランは逃げ、ライスは少し後ろの先行ポジションから……二人とも、自分の走りを崩さない程度でな』
トラン『逃げ切りね……りょ~かい♪』
ライス『……はい!』
・・・・・・
スズカ『それでは、位置について……』
トラン『……』
ライス『……』
スズカ『よーい……』
パンッ!
トラン『……ふっ!』ダッ!
ライス『……っ!』ダッ!
ダダダダダッ!
『やっぱりトランの方が出足は速い!』
トラン『……♪』ダダダダッ……
(迷いなく先頭……力で一気に押し切るつもりか)
ライス『……っ、……っ』タッタッタッタッ……
(ライスはトランから2バ身後ろ……)
(焦って追いかけずに、自分のペースを守ってる……)
スズカ『綺麗な先行ですね』
『あぁ……』
トラン『……っ!』ダダダダッ……
ライス『……っ、……っ』タッタッタッタッ……
『……』
(距離が……少しずつ縮まってる)
トラン『……ん?』チラッ
ライス『……』タッタッタッタッ……
トラン『……ニヒヒ』
トラン『いいじゃん……おコメさん!』ダッ!
ライス『!』
トラン『……っ!』ダダダダッ!
ライス『……っ!』タッタッタッタッ!
『トランがペースを上げた!』
スズカ『ライスちゃんも離されていません!』
ライス『……っ、……っ!』
ライスの視線が、まっすぐトランの背中を捉える
『!』
(ライスの表情が変わった……!?)
(さっき1人で走ってた時とは違う……!)
トラン『……っ!』ダダダダッ!
ライス『……負け……ないっ!』ダッ!
『!』
ライス『ライスも……負けたくないっ!』ダダダダッ!
(これや!)
(この子は、優しい……誰かを押しのけて前へ出ることすら、怖がってしまうくらいに……)
(けど、その優しい胸の奥に……誰にも負けたくないっていう、強い“闘争心”を秘めてる!)
トラン『……っ!』
ライス『……っ!』ダダダダッ!
トラン『マジかっ……!』
ライス『……っ!』グンッ!
『ライス!そのまま行けぇ!』
ライス『はいっ!!』
ダダダダダッ!
ライス『……っ!』ダッ!
トラン『くっ……!』ダッ!
ライスの背中が、一気にトランを引き離す
『……』ピッ!
・・・・・・
ライス『ハァ……ハァ……ハァ……』
トラン『はぁ……はぁ……いや~……負けた、負けたぁ~』
ライス『ト、トランさん……ごめんなさい!』
トラン『なんで謝んのさ?』
ライス『だって、ライス……途中から絶対に負けたくないって……』
トラン『レースなんだから、それでいいっしょ♪』
ライス『……』
トラン『それにしても、おコメさん……後ろから静か~に近づいてくんの、ちょっと怖いねぇ……』
ライス『ご、ごめんなさい!』
トラン『いや、だから褒めてんの!』
スズカ『ふふっ……』
『……よし!』
ライス『?』
トラン『ん?』
『二人の今後のトレーニング方針、決まったぞ』
ライス『ホント?』
『うん、ライスはデビューを目指して……ここからは基礎トレーニングを続けながら……』
『並走も増やして実戦を意識した本格的なトレーニングに入る』
ライス『……はい!ライス、頑張ります!』
『ただ、無理は絶対にしないこと……身体に少しでも違和感があったら、すぐに俺に言うんだぞ』
ライス『うん、分かりました!』
『トランは、まだ本格化が先だ……今は焦って負荷をかけるより、基礎体力とフォームをしっかり作っていこう』
トラン『基礎トレかぁ~……地味だねぇ』
『退屈しないメニューは考えるから』
トラン『なら、いっか♪』
『その十分すぎるパワーを、ちゃんと走りに活かせるようになったら……トランはもっと速くなる』
トラン『……そっか、そっかぁ~♪』ニヤニヤ……
『だから、今は急がずに土台作り……これでいこう』
トラン『りょ~かい、トレちゃん♪』
『よし……今日はこの後、ライスは軽めの走り込み』
『トランはフォームを確認しながら基礎トレな』
ライス『はい!』
トラン『ほ~い♪』
スズカ『……』
『ん?どうした、スズカ?』
スズカ『トレーナーさんが……トレーナーみたい……』
『スズカさん、トレーナーさんはトレーナーなんですよ?』
スズカ『そうなんですけど』
『はは……俺も成長したんだよ』
(……)
(……課題は……ライスの闘争心をどうやって目覚めさせるか、やな……)
◇◇◇
数日後 トレーニングコース
ライス『ハァ……ハァ……トレーナーさん!』
『どうだった?』
ライス『うん!さっきより、ずっと走りやすかった!』
『ホント?』
ライス『コーナーで身体が外に引っぱられなくなったの!』
『うん、フォームもだいぶ安定してたよ』
ライス『トレーナーさんに教えてもらったとおりにしたら、スーッて曲がれたの!』
『それは、ライスがすぐに直せたからだよ』
ライス『でも、教えてくれたのはトレーナーさんだから……』
ライス『トレーナーさん、ありがとうございます!』ニコッ
『……うん!よく頑張ったな、ライス!』なでなで……
ライス『えへへ……////』
『お?』ちらっ
スズカ『トランちゃん、もう少し肩の力を抜いて』
トラン『でもさぁ、逃げなら最初からガツンと行った方が、逃げっぽくない?』
スズカ『前に出ることだけが、逃げじゃないのよ』
トラン『ほう?』
スズカ『最後まで先頭を譲らないために、自分が一番走りやすいリズムで……』
スズカ『ペースを作ることが一番大切なんです』
トラン『おぉ~……さすが逃げの先輩、説得力あるぅ~♪』
『トラン!次は最初の200mを抑えて、そこから少しずつペースを上げてみよう!』
トラン『りょ~かい!』
スズカ『それでは、もう一度いきましょ』
トラン『よーし……今度こそスズカ先生を唸らせてやりますかぁ~♪』
スズカ『はい、がんばって!』
トラン『……ふっ!』ダッ!
ダダダダダッ……
スズカ『……!』
『おっ……』
(言われたとおり、最初の力みを抑えた)
(ライスもトランもホンマに飲み込みが早いな……)
(トランとスズカは、同じ“逃げ”脚質……)
(今のトランには、スズカから学べることが多い)
(それに、誰かに教えることは……トレーナーを目指すスズカの勉強にもなる)
(せやから、基礎トレ中心のトランはスズカに任せることにした)
(ワシはライスをメインで見ながら、トランのフォームと負荷も確認する)
(スズカに任せるいうても、丸投げはせえへん)
・・・・・・
『よし!二人とも10分休憩!水分補給も忘れないように!』
ライス『はい!』
トラン『ほ~い♪』
スズカ『トランちゃん、走った後はすぐに止まらず、少し歩いてね』
トラン『分かってるって~』
スズカ『それから、水分補給も』
トラン『スズカ先生、結構細かいねぇ』
スズカ『トレーナーさんから任されていますから』キリッ
『……』
(スズカ……立派になって……)ウルウル……
ライス『トレーナーさん、次に使うマーカー、並べておきました!』
『え?』
ライス『さっきのコーナーに、同じ間隔でいいんだよね?』
『あ、うん……ありがとう』
ライス『はい!』ニコッ
トラン『トレちゃん、さっきの走りの動画、共有フォルダに上げといたよん♪』
『もう?』
トラン『ついでに区間ごとのタイムも入れといたから、後で見といて』
『……ありがとう』
スズカ『トレーナーさん、次のメニューはこちらで合っていますか?』
『うん……それで合ってる』
スズカ『では、休憩が終わったらトランちゃんと始めますね』
『……お願いします』
『……』
(2人とも、超真面目……)
(教えたことはすぐに吸収するし、自分から次の準備までしてくれる……)
(スズカも完璧にサポートしてくれとる……)
(全っ然、手ぇかからへん……)
『……』
(ワシの仕事……どこ?)
トラン『……トレちゃん、ヒマそうだねぇ』
『ヒ、ヒマじゃないよ』
トラン『さっきから、その記録用紙……ずっと同じページじゃん?』
『全体を見てるんだよ』
トラン『ぼ~っとしてるように見えたけど?』
『見守ってるんだよ!』
トラン『それをヒマって言うんじゃない?』
『違いますぅ~!』
スズカ『ふふっ……』
ライス『トレーナーさん!ライス、もう一度走ってきてもいい?』
『まだ休憩中だろ?』
ライス『でも、さっき教えてもらった走り……忘れないうちに、もう一度やってみたいの』
『……分かった、でも、あと5分は休んでからな』
ライス『はい!』
『無理もしないこと』
ライス『うん!』ニコッ
『……』
(ホンマに、楽しそうに走るなぁ……)
(ライスの中に、負けたくないっていう強い気持ちがあるのは分かった)
(せやけど……毎回、誰かと競わせて引っ張り出すんは違う)
(レースになれば、隣を走る相手も、展開も変わる……)
(ライス自身が、前に行きたい……勝ちたいって思えるようにせんと……)
ライス『ふふっ……次は、もっと綺麗に曲がれるかな……♪』
『……』
(ライスが楽しいと思える、何かで……)
(あの闘争心を、自然に引き出せへんかな……)
『……』
(楽しいこと……)
(…………)
(……なに?)
スズカ『トレーナーさん?』
『……はい?』
スズカ『また、難しい顔をしていますよ?』
『ちょっと……新しい宿題が増えただけだよ』
スズカ『宿題……ですか?』
『うん……』
ライス『トレーナーさん!もう走ってもいい?』
『まだ3分しか経ってない!』
ライス『ご、ごめんなさい!』
『……』
(まぁ……ゆっくり考えるか)
◇◇◇
数日後 トレーナー室
ライス『……~♪』カキカキ……
トラン『……』ポチポチ……
交換日記作成中……
ライス『……できました!』
トラン『ウチも終了~♪』
『うん、ありがとう……それじゃあ最後に、みんなに発表があります』
ライス『発表……?』
トラン『おっ、なになに~?』
『ライスのデビュー戦が決まりました!』
ライス『……え?』
『7月、札幌レース場で行われるジュニア級メイクデビュー……』
『これが、ライスの最初のレースです!』
ライスは胸元で両手を握り、確かめるように顔を上げる
ライス『ライスの……デビュー戦……』
トラン『おぉ~!コメちゃん、いよいよじゃん♪』
(コメちゃん……さらに距離が縮まってる!)
スズカ『おめでとう、ライスちゃん』
ライス『あ、ありがとうございます!』
『本番まで時間はある……焦らず、一つずつ準備していこう』
ライス『……はい!』
ライス『ライス……一生懸命、頑張ります!』
『うん……よし!チームポリマ、最初の目標は、ライスのメイクデビューだ!』
『がんばれポリマ、がんばれー……』ライスのマネ
一同『え?』
『おー!』ライスのマネ
一同『……』
『続いてよっ!』
ライス『え?えっと……』
スズカ『トレーナーさん』
トラン『可愛くない』
『がーーーーんっ』
ー2章ー002話 STARTING FORCE~Porrima~ 完
第2章 第2話
STARTING FORCE~Porrima~
チームポリマ、初練習開始!
……のはずが、最初に出てきたのは交換日記でした。
ライスには大好評。
トランには即座に「パースッ!」。
片桐、初手から担当二人の温度差に殴られていますw
それでも最後には、それぞれの形で交換日記に参加してくれました。
手書きにこだわる片桐と、交換日記用のアプリを作ってくるトラン。
方向性は真逆ですが、そこまでして付き合ってくれるあたり、トランはなんやかんや優しい子です(笑)
そして、ライスの中にある「負けたくない」が、初めて走りに表れました。
あの小さな背中が一気にトランを引き離した瞬間、私も書きながら「来た!」となっています。
先日、読者さんから、物語は面白いものの少し読みづらく、もう少し読みやすくしてほしい、とのご意見をいただきました。
そのご意見を受けて、この作品のテンポを崩さない範囲で、場面や人物の動きが伝わりやすくなる地の文を、これから少しずつ増やしていこうと思います。
急に作風を変えるのではなく、今までの読み味を残しながら、少しずつ読みやすく。
今回は、その点を意識して調整してみました。
次回は、第2章 第3話。
ライスのデビューへ向けて、次の一歩が始まります。
【次回公開予定】
第2章 第3話
公開予定:9月20日(日)19:00
【KUROXの
対象:第2章 第2話・第3話
公開予定:9月21日(月)7:00
【X(本編直接公開・最新情報)】
https://x.com/utsupapa_2021
【note(裏話・ネタ解説)】
https://note.com/kurox_1200
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