『百獣のカイドウ、化猫の宿で居候になる 』   作:パスカルDX

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第22話 最強生物、六魔将軍を相手に無双する

第22話 最強生物、六魔将軍を相手に無双する

 

 

 ニルビット族の聖地。

 

 巨大な盆地の中央に立つ六本の石塔から、黒い光が空へ向かって伸びていた。

 

 まっすぐ。

 

 天を貫くように。

 

 その光は雲へ届き、上空をゆっくりと黒く染めていく。

 

 風が止まった。

 

 鳥の声もない。

 

 虫さえ鳴かない。

 

 まるで森全体が。

 

 これから始まる戦いを恐れ。

 

 息を潜めているようだった。

 

 六本の塔を背に。

 

 六人の魔導士が立っている。

 

 闇ギルド《六魔将軍》。

 

 ブレイン。

 

 コブラ。

 

 レーサー。

 

 ホットアイ。

 

 エンジェル。

 

 ミッドナイト。

 

 一人一人が、一つのギルドを壊滅させても不思議ではないほどの実力者。

 

 バラム同盟の一角を担う、六人だけの闇ギルド。

 

 連合軍が結成された理由そのもの。

 

 だが。

 

「……」

 

 その六人の視線は。

 

 今。

 

 一人の男へ集まっていた。

 

 百獣のカイドウ。

 

 人獣型。

 

 青い鱗。

 

 二本の角。

 

 巨大な金棒。

 

 肩から漏れるような異様な圧力。

 

 魔力ではない。

 

 にもかかわらず。

 

 周囲の空気そのものが震えている。

 

 ウェンディは。

 

 カイドウのすぐ後ろ。

 

 約束通り。

 

 一歩。

 

 離れていない。

 

「カイドウさん」

 

「ああ」

 

「絶対に」

 

「ああ」

 

「勝手に飛び出さないでください」

 

「……」

 

「返事してください」

 

「まだ始まってねェ」

 

「だから今言ってるんです!」

 

 ウェンディが。

 

 カイドウの腰布を掴む。

 

「サクラさんの指示を聞く」

 

「ああ」

 

「味方を巻き込まない」

 

「ああ」

 

「聖地を壊さない」

 

「……」

 

「カイドウさん?」

 

「努力する」

 

「そこだけ弱いです!」

 

 サクラは。

 

 そんな二人を横目に見ながら。

 

 白い翼を広げた。

 

「全員、戦闘態勢」

 

 声。

 

 鋭い。

 

 先ほどまでの柔らかな雰囲気は消えている。

 

 聖十大魔導。

 

 連合軍総指揮。

 

 サクラ・ヴィンセント。

 

「第一目標は、六魔将軍の排除」

 

 エルザが剣を抜く。

 

「第二目標」

 

 サクラ。

 

「六本の塔の起動停止」

 

 ローバウルが杖を握る。

 

「第三」

 

 サクラの視線。

 

 ウェンディ。

 

 ジェラール。

 

「二人の鍵を、敵へ渡さない」

 

「俺も戦う」

 

 ジェラールが言った。

 

「駄目だ」

 

 エルザ。

 

 即答。

 

「だが」

 

「まだ立っているだけで辛いだろう」

 

「少しは魔力が戻った」

 

「それでもだ」

 

「エルザ」

 

「駄目だ」

 

「でも」

 

「駄目だ」

 

 ジェラールは。

 

 少し。

 

 困った顔。

 

「話を聞いてくれ」

 

「聞いた上で駄目だ」

 

 カイドウ。

 

 横目。

 

「赤髪」

 

「何だ」

 

「お前も大概だな」

 

「何がだ」

 

「過保護」

 

「お前だけには言われたくない!」

 

「おれは護衛だ」

 

「私はジェラールの――」

 

 エルザ。

 

 言葉。

 

 止まる。

 

 ジェラール。

 

 見る。

 

「俺の?」

 

「……仲間だ」

 

「そうか」

 

 ジェラールは。

 

 少し。

 

 嬉しそうに。

 

 笑う。

 

「ありがとう」

 

 エルザ。

 

 顔。

 

 僅かに赤くなる。

 

 カイドウの眉。

 

 動く。

 

「おい」

 

「カイドウさん!」

 

 ウェンディが。

 

 先回り。

 

「今は六魔将軍です!」

 

「分かってる!」

 

「エルザさんたちは放っておいてください!」

 

「男は信用できん」

 

「またそれですか!」

 

 そんな。

 

 緊張感があるのかないのか分からない会話。

 

 それを見ていた六魔将軍。

 

 最初に。

 

 苛立ったのは。

 

 レーサーだった。

 

「舐めやがって」

 

 低い声。

 

「俺たちを目の前にして」

 

 足元。

 

 魔力。

 

 歪む。

 

「何を遊んでる」

 

 次の瞬間。

 

 レーサーの姿が。

 

 消えた。

 

「速い!」

 

 ルナが息を呑む。

 

 いや。

 

 速い。

 

 そう見える。

 

 ウェンディの視界では。

 

 完全に消えている。

 

 エルザも。

 

 僅かに反応が遅れる。

 

 だが。

 

 カイドウだけは。

 

 動かなかった。

 

「遅ェ」

 

 ぼそり。

 

「何?」

 

 レーサーの声。

 

 次の瞬間。

 

 カイドウの左手が。

 

 何もない空間へ。

 

 伸びた。

 

 がしっ。

 

「な――」

 

 首。

 

 掴む。

 

 レーサーの姿。

 

 そこに。

 

 現れる。

 

「捕まえた」

 

 カイドウ。

 

 低い。

 

「どうして」

 

 レーサー。

 

 目。

 

 見開く。

 

「俺の魔法が」

 

「魔法?」

 

 カイドウ。

 

 鼻。

 

「お前が速いんじゃねェ」

 

 レーサーの顔。

 

 固まる。

 

「周りを遅くしてるだけだろ」

 

 サクラの目。

 

 僅かに。

 

 見開く。

 

 レーサーの魔法。

 

 相手の感覚を遅くし。

 

 自分だけが高速で動いているように見せる。

 

 だが。

 

 見聞色。

 

 相手の意思。

 

 気配。

 

 動きの起こり。

 

 そのすべてを読むカイドウには。

 

 錯覚など。

 

 ほとんど意味を持たなかった。

 

「離せ!」

 

 レーサー。

 

 魔力。

 

 爆発。

 

 だが。

 

 カイドウの手。

 

 微動だにしない。

 

「ウェンディ」

 

「はい?」

 

「こいつ」

 

 レーサー。

 

 持ち上げる。

 

「遠くへ投げてもいいか」

 

「駄目です!」

 

「敵だぞ」

 

「聖地が壊れます!」

 

「なら」

 

 カイドウ。

 

 少し考える。

 

「近くへ落とす」

 

「優しくです!」

 

「敵だぞ?」

 

「必要以上にです!」

 

「注文が多い」

 

 レーサー。

 

「てめェら!」

 

 顔。

 

 真っ赤。

 

「俺を何だと思って!」

 

 カイドウ。

 

 手。

 

 少し。

 

 下げる。

 

 そして。

 

 地面へ。

 

 どん。

 

「ぐっ!」

 

 レーサー。

 

 尻から。

 

 落ちる。

 

 地面。

 

 僅かに。

 

 へこむ。

 

「……」

 

 ウェンディ。

 

 見る。

 

「今のは?」

 

「優しくした」

 

「まあ」

 

 土。

 

 亀裂。

 

 少し。

 

「前よりは」

 

「だろ」

 

「成長しましたね」

 

「褒めるな」

 

 六魔将軍。

 

 沈黙。

 

 レーサー。

 

 怒りで。

 

 震える。

 

「貴様!」

 

 立ち上がる。

 

「殺す!」

 

「来い」

 

 カイドウ。

 

 金棒。

 

 まだ。

 

 使わない。

 

「素手で十分だ」

 

「なめるなァ!」

 

 レーサー。

 

 再び。

 

 消える。

 

 複数。

 

 残像。

 

 右。

 

 左。

 

 背後。

 

「カイドウさん!」

 

「見えてる」

 

 カイドウ。

 

 体。

 

 ほんの少し。

 

 横へ。

 

 レーサーの蹴り。

 

 空を切る。

 

 次。

 

 拳。

 

 避ける。

 

 次。

 

 刃物。

 

 頭。

 

 僅かに傾ける。

 

「なぜ!」

 

「遅ェと言っただろ」

 

 カイドウ。

 

 人差し指。

 

 レーサーの額。

 

 弾く。

 

 ごん。

 

「ぐあっ!」

 

 レーサー。

 

 後ろへ。

 

 転がる。

 

 一回。

 

 二回。

 

 三回。

 

 石柱。

 

 直前。

 

 カイドウの焔雲。

 

 出る。

 

 レーサーの背。

 

 受け止める。

 

「……」

 

 サクラ。

 

 目。

 

 瞬く。

 

「今」

 

「何だ」

 

「敵が柱へぶつかる前に止めましたね」

 

「聖地を壊すなと言っただろ」

 

「……」

 

「何だ」

 

「いえ」

 

 サクラ。

 

 少し。

 

 笑う。

 

「約束を守っているなと」

 

「当然だ」

 

 ウェンディ。

 

 目。

 

 輝く。

 

「カイドウさん!」

 

「褒めるな!」

 

 まだ。

 

 褒められていない。

 

          ◇◇◇

 

「面白い」

 

 コブラ。

 

 笑う。

 

「心の声まで」

 

 耳。

 

 傾ける。

 

「うるせェ男だ」

 

 カイドウ。

 

 コブラ。

 

 見る。

 

「耳の小僧か」

 

「誰が小僧だ」

 

「聞こえるんだろ」

 

「ああ」

 

 コブラ。

 

 口元。

 

 歪む。

 

「てめェが何を考えてるか」

 

「なら」

 

 カイドウ。

 

 にや。

 

「今も分かるな」

 

 コブラの顔。

 

 固まる。

 

 頭。

 

 響く。

 

 ひたすら。

 

『ウェンディから一歩』

 

『酒二杯』

 

『いや一杯か』

 

『赤髪の横の男が気に入らん』

 

『桜頭うるせェ』

 

『ウェンディ一歩』

 

『酒』

 

『肉』

 

『ウェンディ』

 

『酒』

 

『敵』

 

『ウェンディ』

 

『ウェンディ』

 

『ウェンディ』

 

 コブラ。

 

 こめかみ。

 

 引きつる。

 

「……」

 

 カイドウ。

 

 笑う。

 

「どうした」

 

「うるせェ!」

 

「聞こえるんだろ?」

 

「同じことばっか考えるな!」

 

「何をだ」

 

「ウェンディ! 酒! 肉! ウェンディ! 酒!」

 

 全員。

 

 カイドウ。

 

 見る。

 

 ウェンディ。

 

 顔。

 

 赤い。

 

「カイドウさん」

 

「何だ」

 

「頭の中まで親バカなんですか?」

 

「違ェ!」

 

「ほぼ私じゃないですか!」

 

「敵のことも考えてる!」

 

「少しだけでしょう!」

 

 コブラ。

 

 額。

 

 押さえる。

 

「なんだこいつ」

 

 心を読む魔法。

 

 普通なら。

 

 圧倒的優位。

 

 次の行動。

 

 攻撃。

 

 恐怖。

 

 全部。

 

 先に。

 

 分かる。

 

 だが。

 

 カイドウ。

 

 考えていること。

 

 単純。

 

 しかも。

 

 戦闘になると。

 

 身体が。

 

 思考より先へ動く。

 

「右から来る」

 

 コブラ。

 

 読む。

 

 カイドウ。

 

 右。

 

 拳。

 

 来る。

 

「見えてる!」

 

 避ける。

 

 だが。

 

「左だ」

 

「何?」

 

 尻尾。

 

 横。

 

 どん。

 

「ぐっ!」

 

 コブラ。

 

 弾かれる。

 

「心と体」

 

 カイドウ。

 

「全部同じだと思うな」

 

「ちっ!」

 

 コブラ。

 

 口笛。

 

 森。

 

 奥。

 

 地面。

 

 揺れる。

 

「キュベリオス!」

 

 巨大な毒蛇。

 

 姿。

 

 現れる。

 

 ルナ。

 

 息。

 

「蛇……!」

 

 ウェンディ。

 

 構える。

 

「カイドウさん!」

 

「動くな」

 

 カイドウ。

 

 前。

 

「おれがやる」

 

「一歩!」

 

 ウェンディ。

 

 服。

 

 掴む。

 

 カイドウ。

 

 止まる。

 

「……」

 

「離れない約束です!」

 

「蛇が向こうだ」

 

「じゃあ私も行きます!」

 

「危険だ」

 

「一緒ならいいんですよね!」

 

「……」

 

 カイドウ。

 

 難しい顔。

 

「そうだな」

 

「行きます!」

 

「離れるな」

 

「はい!」

 

 二人。

 

 前。

 

 サクラ。

 

 呆れ。

 

「戦場で親子散歩をしないでください」

 

「誰が親子だ!」

 

「今はそこじゃありません!」

 

 キュベリオス。

 

 口。

 

 開く。

 

 紫。

 

 毒。

 

 霧。

 

 吹く。

 

「毒!」

 

 ウェンディ。

 

 風。

 

 纏う。

 

「天竜の――咆哮!」

 

 天空の風。

 

 毒霧。

 

 押し返す。

 

 コブラ。

 

 目。

 

 見開く。

 

「滅竜魔法!」

 

「させねェ!」

 

 さらに。

 

 カイドウ。

 

 口。

 

 開く。

 

 青白い炎。

 

「熱息!」

 

「カイドウさん!」

 

 ウェンディ。

 

 慌てる。

 

「上です!」

 

「分かってる!」

 

 熱息。

 

 地面。

 

 ではない。

 

 上空。

 

 毒霧だけを。

 

 焼き払う。

 

 青い炎。

 

 空。

 

 走る。

 

 黒雲。

 

 一部。

 

 消し飛ぶ。

 

 キュベリオス。

 

 驚く。

 

 カイドウ。

 

 人獣型。

 

 戻る。

 

 地面。

 

 踏む。

 

 だが。

 

 力。

 

 抑える。

 

 巨大な体。

 

 跳ぶ。

 

「蛇ァ!」

 

「キュベリオス!」

 

 コブラ。

 

 叫ぶ。

 

「避けろ!」

 

 カイドウ。

 

 拳。

 

 巨大蛇。

 

 頭。

 

 直前。

 

 止まる。

 

「……」

 

 ウェンディ。

 

 目。

 

 丸く。

 

「カイドウさん?」

 

「お前」

 

 カイドウ。

 

 蛇。

 

 見る。

 

 キュベリオス。

 

 震える。

 

「操られてるだけか?」

 

 コブラ。

 

「何を」

 

「こいつ」

 

 カイドウ。

 

 鼻。

 

 動かす。

 

「お前と違って」

 

 蛇。

 

 見る。

 

「殺気が薄い」

 

 コブラの顔。

 

 変わる。

 

「キュベリオスへ触るな!」

 

 カイドウ。

 

 拳。

 

 下ろす。

 

「なら」

 

 巨大な手。

 

 蛇の首。

 

 掴む。

 

「少し寝ろ」

 

 キュベリオス。

 

「!?」

 

 カイドウ。

 

 指。

 

 頚部。

 

 軽く。

 

 圧。

 

 蛇。

 

 力。

 

 抜ける。

 

 地面へ。

 

 ゆっくり。

 

 横たわる。

 

「殺してない」

 

 ウェンディ。

 

 驚く。

 

「カイドウさん!」

 

「褒めるな」

 

「まだ何も!」

 

「顔が褒めてる」

 

「分かるんですか!?」

 

 コブラ。

 

 怒り。

 

「キュベリオス!」

 

 走ろう。

 

 カイドウ。

 

 目。

 

 向ける。

 

「安心しろ」

 

「何?」

 

「寝てるだけだ」

 

「……」

 

「お前は」

 

 金棒。

 

 手。

 

「寝かせるかどうか」

 

 黒い稲妻。

 

「分からんがな」

 

 コブラ。

 

 冷汗。

 

 一筋。

 

          ◇◇◇

 

「金!」

 

 ホットアイ。

 

 地面。

 

 両手。

 

「金こそすべて!」

 

 地面。

 

 波。

 

 石。

 

 柔らかく。

 

 液体。

 

 変わる。

 

「地面が!」

 

 ルナ。

 

 ローバウル。

 

 支える。

 

「足元じゃ!」

 

 ウェンディ。

 

 沈みかける。

 

「きゃっ!」

 

 その前。

 

 カイドウの腕。

 

 腰。

 

 抱える。

 

 持ち上げる。

 

「カイドウさん!」

 

「足元が危険だ」

 

「それは分かりますけど!」

 

 カイドウ。

 

 ウェンディ。

 

 片腕。

 

 抱えたまま。

 

 液状化した地面。

 

 立つ。

 

「……」

 

 ホットアイ。

 

 目。

 

 見開く。

 

「沈まない?」

 

 カイドウ。

 

 脚。

 

 武装色。

 

 纏う。

 

「こんな泥で」

 

「……」

 

「おれを沈められると思ったか」

 

 ホットアイ。

 

 両手。

 

 さらに。

 

 魔力。

 

 周囲。

 

 大地。

 

 波。

 

 巨大な土の津波。

 

「カイドウ!」

 

 サクラ。

 

「聖地を壊さないで!」

 

「分かってる!」

 

 カイドウ。

 

 ウェンディ。

 

 肩。

 

 乗せる。

 

「掴まれ」

 

「はい!」

 

 ウェンディ。

 

 角。

 

 ではなく。

 

 髪。

 

 掴みそう。

 

「髪はやめろ!」

 

「どこを掴めば!」

 

「角!」

 

「いいんですか!?」

 

「今は!」

 

 ウェンディ。

 

 角。

 

 両手。

 

 掴む。

 

「行くぞ」

 

「どこへ!?」

 

 カイドウ。

 

 上。

 

 跳ぶ。

 

 土波。

 

 下。

 

 通過。

 

 そのまま。

 

 ホットアイ。

 

 頭上。

 

「なっ」

 

「軽くな」

 

 カイドウ。

 

 金棒。

 

 持ち上げる。

 

「雷鳴――」

 

「カイドウさん!」

 

「分かってる!」

 

 覇王色。

 

 纏わない。

 

 武装色。

 

 最小限。

 

「八卦!」

 

 どん。

 

 直撃。

 

 ではない。

 

 ホットアイの前。

 

 地面。

 

 寸前。

 

 金棒。

 

 止める。

 

 衝撃波だけ。

 

 当てる。

 

「ぐおっ!」

 

 ホットアイ。

 

 吹き飛ぶ。

 

 十数メートル。

 

 土。

 

 転がる。

 

 気絶。

 

「……」

 

 サクラ。

 

 見る。

 

「直接殴っていない」

 

「ああ」

 

「聖地への損害も」

 

 地面。

 

 小さい穴。

 

「最小限」

 

「……」

 

 ウェンディ。

 

 カイドウの肩。

 

「すごいです!」

 

「褒めるな」

 

「本当に加減してる!」

 

「おれを何だと思ってる」

 

「山を消す人です」

 

「消してねェ」

 

「山頂をなくしました!」

 

「似たようなもんだ」

 

「認めましたね!?」

 

          ◇◇◇

 

「鬱陶しい」

 

 ミッドナイト。

 

 ようやく。

 

 動く。

 

 寝台。

 

 から。

 

 立つ。

 

「力だけの怪物かと思った」

 

 目。

 

 開く。

 

「案外」

 

 魔力。

 

 歪む。

 

「器用だ」

 

 カイドウ。

 

 ミッドナイト。

 

 見る。

 

「眠そうな小僧」

 

「誰が小僧だ」

 

「寝てろ」

 

「永遠にな」

 

 ミッドナイト。

 

 魔法。

 

 発動。

 

 空間。

 

 歪む。

 

 カイドウの金棒。

 

 曲がるように。

 

 見える。

 

「?」

 

 ウェンディ。

 

 目。

 

 見開く。

 

「金棒が!」

 

「曲がってねェ」

 

 カイドウ。

 

 手。

 

 感触。

 

 確認。

 

「見せ方だ」

 

 ミッドナイト。

 

 笑う。

 

「それだけではない」

 

 次。

 

 カイドウ。

 

 自分。

 

 正面。

 

 現れる。

 

 もう一人。

 

 カイドウ。

 

「幻影?」

 

 エルザ。

 

「いや」

 

 サクラ。

 

「反射魔法」

 

 ミッドナイト。

 

「力は」

 

「すべて」

 

「お前自身へ返る」

 

 偽カイドウ。

 

 金棒。

 

 振る。

 

 本物。

 

 カイドウ。

 

 受ける。

 

 どん。

 

 地面。

 

 揺れる。

 

「カイドウさん!」

 

「問題ねェ」

 

 偽カイドウ。

 

 再び。

 

 攻撃。

 

 カイドウ。

 

 避けない。

 

 胸。

 

 受ける。

 

 どん。

 

「効かねェな」

 

 ミッドナイト。

 

 顔。

 

 歪む。

 

「なぜ」

 

「おれの攻撃を」

 

 カイドウ。

 

 にや。

 

「おれが耐えられねェと思ったか?」

 

 ミッドナイト。

 

 息。

 

 止まる。

 

 最悪の相性。

 

 相手の攻撃を。

 

 反射。

 

 でも。

 

 カイドウ自身が。

 

 その攻撃に耐えられる。

 

「なら」

 

 ミッドナイト。

 

 空間。

 

 さらに。

 

 歪める。

 

 ウェンディの姿。

 

 カイドウの前。

 

 現れる。

 

「!」

 

 カイドウ。

 

 動き。

 

 止まる。

 

「カイドウさん」

 

 偽ウェンディ。

 

 泣いている。

 

「助けて」

 

「……」

 

 ミッドナイト。

 

 笑う。

 

「怪物にも」

 

「弱点はある」

 

 偽ウェンディ。

 

 手。

 

 伸ばす。

 

「カイドウさん」

 

「……」

 

 本物ウェンディ。

 

 カイドウの肩。

 

「カイドウさん?」

 

 カイドウ。

 

 偽ウェンディ。

 

 見る。

 

 次。

 

 肩。

 

 本物。

 

 見る。

 

「……」

 

「何ですか?」

 

「こいつ」

 

 偽物。

 

 指。

 

「お前より素直だな」

 

「どういう意味ですか!」

 

 偽ウェンディ。

 

 固まる。

 

 ミッドナイトも。

 

 固まる。

 

「本物なら」

 

 カイドウ。

 

「最初に『勝手に前へ出ないでください』だ」

 

「その通りです!」

 

 ウェンディ。

 

 胸。

 

 張る。

 

「それから」

 

「大声出すな」

 

「はい!」

 

「酒一杯」

 

「はい!」

 

「薬飲め」

 

「はい!」

 

「……偽物の方が楽だな」

 

「カイドウさん!」

 

「冗談だ!」

 

 ミッドナイト。

 

「何だこいつら……」

 

 幻影。

 

 崩れる。

 

 精神。

 

 揺さぶる。

 

 はず。

 

 なのに。

 

 会話。

 

 成立。

 

 しない。

 

「今度は」

 

 カイドウ。

 

 目。

 

 赤い。

 

「おれの番だ」

 

 金棒。

 

 構える。

 

「反射するんだろ?」

 

「ああ」

 

 ミッドナイト。

 

 笑う。

 

「なら」

 

 カイドウ。

 

 金棒。

 

 地面。

 

 置く。

 

「殴らねェ」

 

「何?」

 

 覇王色。

 

 放つ。

 

 攻撃。

 

 ではない。

 

 意思。

 

 威圧。

 

 圧倒的な。

 

 王の資質。

 

 空気。

 

 黒い雷。

 

 走る。

 

「――!」

 

 ミッドナイト。

 

 体。

 

 固まる。

 

 反射。

 

 できない。

 

 物質。

 

 でも。

 

 魔法。

 

 でもない。

 

 ただ。

 

 カイドウという存在そのものから。

 

 押し寄せる。

 

 圧。

 

「ぐ……」

 

 膝。

 

 崩れる。

 

「精神へ来るなら」

 

 カイドウ。

 

 一歩。

 

「おれも」

 

 また一歩。

 

「精神で返す」

 

 ミッドナイト。

 

 歯。

 

 食いしばる。

 

 だが。

 

 視界。

 

 揺れる。

 

「化け物……」

 

「知ってる」

 

 カイドウ。

 

 前。

 

 立つ。

 

「最強生物だ」

 

 ミッドナイト。

 

 意識。

 

 落ちる。

 

 地面。

 

 倒れる。

 

 カイドウ。

 

 手。

 

 襟。

 

 掴む。

 

 倒れる前。

 

 ゆっくり。

 

 寝かせる。

 

「頭を打つ」

 

 ウェンディ。

 

 驚き。

 

「カイドウさんが、敵の頭を守った!」

 

「気絶してる奴へ追撃する趣味はねェ」

 

「前はありましたよね?」

 

「昔だ」

 

「本当に成長してます!」

 

「だから褒めるな!」

 

          ◇◇◇

 

 四人。

 

 レーサー。

 

 コブラ。

 

 ホットアイ。

 

 ミッドナイト。

 

 短時間。

 

 ほぼ。

 

 封じられた。

 

 残る。

 

 エンジェル。

 

 ブレイン。

 

 エンジェルの表情から。

 

 余裕。

 

 消えていた。

 

「……ありえない」

 

 星霊の鍵。

 

 握る。

 

「六魔将軍が」

 

 目の前。

 

 カイドウ。

 

 立つ。

 

「一人に」

 

「一人じゃありません!」

 

 ウェンディ。

 

 カイドウの肩。

 

 まだ。

 

 乗っている。

 

「私もいます!」

 

 カイドウ。

 

 少し。

 

 顔。

 

 上。

 

「そうだったな」

 

「忘れないでください!」

 

「軽すぎる」

 

「体重の話はやめてください!」

 

 エンジェル。

 

 歯。

 

 噛む。

 

「舐めるな!」

 

 鍵。

 

 掲げる。

 

「開け!」

 

 星霊。

 

 召喚。

 

 光。

 

 複数。

 

 出現。

 

 サクラ。

 

 前。

 

「ウェンディさん!」

 

「はい!」

 

 カイドウ。

 

 肩。

 

 ウェンディ。

 

 下ろす。

 

「ここにいろ」

 

「一歩です!」

 

「おれが動く」

 

「私も!」

 

「星霊が来るぞ」

 

「援護できます!」

 

 ウェンディ。

 

 風。

 

 両手。

 

「アームズ!」

 

 強化魔法。

 

 カイドウ。

 

 腕。

 

 風。

 

 纏う。

 

「……」

 

 カイドウ。

 

 自分の腕。

 

 見る。

 

「軽い」

 

「攻撃力を強化しました!」

 

「必要ねェ」

 

「でも使いました!」

 

「……悪くねェ」

 

 ウェンディ。

 

 顔。

 

 明るく。

 

「本当ですか?」

 

「ああ」

 

「じゃあ」

 

「褒めてねェぞ」

 

「私が褒められたと思ったんです!」

 

「戦え!」

 

「はい!」

 

 エンジェル。

 

 星霊。

 

 次々。

 

 魔法。

 

 飛ぶ。

 

 カイドウ。

 

 前。

 

 金棒。

 

 横。

 

 一振り。

 

 風圧。

 

 全部。

 

 軌道。

 

 逸れる。

 

 ウェンディ。

 

 その隙。

 

 風。

 

 巻き上げる。

 

「天竜の翼撃!」

 

 星霊。

 

 直接。

 

 倒さない。

 

 エンジェル。

 

 周囲。

 

 魔法陣。

 

 崩す。

 

「なっ!」

 

「カイドウさん!」

 

「ああ!」

 

 カイドウ。

 

 足。

 

 踏み込む。

 

 エンジェル。

 

 前。

 

 一瞬。

 

「速っ――」

 

「レーサーより」

 

 カイドウ。

 

 指。

 

 額。

 

「お前の方が遅ェ」

 

 こつ。

 

 軽い。

 

 だが。

 

 エンジェル。

 

 目。

 

 回る。

 

 後ろ。

 

 倒れる。

 

 サクラの光。

 

 支える。

 

 地面。

 

 激突。

 

 防ぐ。

 

「カイドウ」

 

「何だ」

 

「加減しすぎでは?」

 

「ウェンディが見てる」

 

 サクラ。

 

 一瞬。

 

 黙る。

 

「……なるほど」

 

 ウェンディ。

 

 後ろ。

 

 嬉しそう。

 

「カイドウさん!」

 

「褒めるな!」

 

          ◇◇◇

 

 残る。

 

 ブレイン。

 

 一人。

 

 杖。

 

 握る。

 

 周囲。

 

 倒れた。

 

 六魔将軍。

 

 仲間。

 

「……」

 

 ブレインの顔から。

 

 笑み。

 

 消えている。

 

「これは」

 

 サクラ。

 

 一歩。

 

「終わりです」

 

「終わり?」

 

 ブレイン。

 

 低い。

 

「違う」

 

 杖。

 

 石塔。

 

 向ける。

 

「まだ」

 

 黒い光。

 

 さらに。

 

 強く。

 

「ニルヴァーナがある!」

 

「止めろ!」

 

 ローバウル。

 

 叫ぶ。

 

 六本の塔。

 

 一斉。

 

 魔力。

 

 噴き上がる。

 

 地面。

 

 震える。

 

 盆地。

 

 底。

 

 何か。

 

 巨大。

 

 動く。

 

「何だ!?」

 

 ルナ。

 

 ウェンディの手。

 

 握る。

 

 ジェラール。

 

 額。

 

 押さえる。

 

「まずい!」

 

「何です!」

 

 エルザ。

 

「予備術式じゃない!」

 

「では?」

 

「起動術式そのものが」

 

 ジェラール。

 

 顔。

 

 青ざめる。

 

「切り替わった!」

 

 ブレイン。

 

 笑う。

 

「二つの鍵が」

 

 ウェンディ。

 

 ジェラール。

 

 見る。

 

「ここへ揃った」

 

 ウェンディ。

 

「でも、私たちは魔力を渡してません!」

 

「直接」

 

 ブレイン。

 

「渡す必要などない」

 

「何?」

 

「聖地へ入った時点で」

 

 ローバウル。

 

 顔。

 

 変わる。

 

「まさか!」

 

「そうだ」

 

 ブレイン。

 

 笑う。

 

「この土地が」

 

 石塔。

 

 黒。

 

「魔力を吸い上げる」

 

 ウェンディ。

 

 体。

 

 揺れる。

 

「っ!」

 

「ウェンディ!」

 

 カイドウ。

 

 すぐ。

 

 抱える。

 

「魔力が」

 

 ウェンディ。

 

 胸。

 

 押さえる。

 

「抜けて」

 

 ジェラールも。

 

 膝。

 

 つく。

 

「ジェラール!」

 

 エルザ。

 

 支える。

 

 床。

 

 魔法陣。

 

 現れる。

 

 青。

 

 ウェンディ。

 

 星。

 

 ジェラール。

 

 二つ。

 

 線。

 

 塔。

 

 繋がる。

 

「ブレイン!」

 

 サクラ。

 

 天使魔法。

 

 光。

 

「術式を止めなさい!」

 

「もう遅い!」

 

 ブレイン。

 

 杖。

 

 掲げる。

 

「ニルヴァーナは!」

 

 地鳴り。

 

 巨大。

 

「目覚める!」

 

 カイドウ。

 

 顔。

 

 完全に。

 

 変わる。

 

 先ほどまで。

 

 加減。

 

 約束。

 

 考えていた。

 

 だが。

 

 今。

 

 腕の中。

 

 ウェンディ。

 

 苦しんでいる。

 

 魔力。

 

 勝手に。

 

 奪われている。

 

「カイドウさん」

 

 ウェンディ。

 

 苦しい。

 

「待って」

 

 カイドウ。

 

 ゆっくり。

 

 ウェンディ。

 

 サクラへ。

 

 預ける。

 

「カイドウ?」

 

「桜頭」

 

「サクラです」

 

「ウェンディを」

 

 低い。

 

「頼む」

 

 サクラ。

 

 目。

 

 見開く。

 

「どこへ」

 

「一歩」

 

 ウェンディ。

 

 手。

 

 伸ばす。

 

「約束」

 

 カイドウ。

 

 止まる。

 

「……」

 

「離れないって」

 

 苦しそう。

 

 でも。

 

 言う。

 

 カイドウ。

 

 拳。

 

 握る。

 

「ウェンディ」

 

「はい」

 

「今だけ」

 

「……」

 

「一歩じゃ」

 

 金棒。

 

 手。

 

「届かねェ」

 

「……」

 

「あいつを止める」

 

 ブレイン。

 

 遠く。

 

「戻る」

 

 カイドウ。

 

 ウェンディ。

 

 目。

 

 見る。

 

「必ず」

 

 ウェンディ。

 

 少し。

 

 迷う。

 

 そして。

 

 腰。

 

 青いお守り。

 

 見る。

 

「……行ってください」

 

 カイドウ。

 

 目。

 

 僅かに。

 

 大きく。

 

「でも」

 

 ウェンディ。

 

 強く。

 

「絶対に戻ってきてください」

 

「ああ」

 

「聖地を壊しすぎない」

 

「努力する」

 

「味方を巻き込まない」

 

「ああ」

 

「ブレインさんを」

 

 ウェンディ。

 

 少し。

 

「殺さないでください」

 

 カイドウ。

 

 長い。

 

 沈黙。

 

「……」

 

「カイドウさん」

 

「難しい注文だな」

 

「約束です」

 

「……分かった」

 

 金棒。

 

 肩。

 

 乗せる。

 

「気絶で済ませる」

 

「はい!」

 

 カイドウ。

 

 一歩。

 

 前。

 

 その瞬間。

 

 空気。

 

 変わった。

 

          ◇◇◇

 

 覇王色。

 

 黒い稲妻。

 

 聖地。

 

 六本の塔。

 

 震える。

 

 ブレイン。

 

 顔。

 

 初めて。

 

 恐怖。

 

「何だ」

 

「これは」

 

 魔力。

 

 ではない。

 

 それが。

 

 余計。

 

 理解できない。

 

 空。

 

 黒。

 

 割れる。

 

「お前」

 

 カイドウ。

 

 一歩。

 

「ウェンディの魔力を」

 

 また。

 

 一歩。

 

「勝手に」

 

 地面。

 

 ひび。

 

 ウェンディ。

 

「地面!」

 

「分かってる!」

 

 カイドウ。

 

 足。

 

 少し。

 

 浮かせる。

 

 焔雲。

 

 足元。

 

「これなら壊れねェ!」

 

 ウェンディ。

 

 苦しいのに。

 

 目。

 

 大きく。

 

「そこまで気をつけられるんですか!?」

 

「今言うな!」

 

 ブレイン。

 

 杖。

 

 振る。

 

「常闇奇想曲!」

 

 黒い。

 

 魔法。

 

 砲撃。

 

 カイドウ。

 

 正面。

 

「避けろ!」

 

 エルザ。

 

「必要ねェ」

 

 カイドウ。

 

 胸。

 

 受ける。

 

 爆発。

 

 煙。

 

 ブレイン。

 

 笑う。

 

「終わりだ!」

 

 煙。

 

 消える。

 

 カイドウ。

 

 立っている。

 

 服。

 

 少し。

 

 焦げ。

 

「……」

 

「こんなもんか」

 

 ブレイン。

 

 口。

 

 開く。

 

「ありえ」

 

「今度は」

 

 カイドウ。

 

 焔雲。

 

 消える。

 

 姿。

 

 一瞬。

 

 消える。

 

「どこへ」

 

「上だ」

 

 ブレイン。

 

 見上げる。

 

 カイドウ。

 

 金棒。

 

 高く。

 

「雷鳴八卦!」

 

「カイドウさん!」

 

 ウェンディ。

 

 叫ぶ。

 

「殺さない!」

 

「分かってる!」

 

 金棒。

 

 ブレイン。

 

 直前。

 

 軌道。

 

 変える。

 

 頭。

 

 ではない。

 

 杖。

 

 どん。

 

 ブレインの杖。

 

 粉砕。

 

「なっ!」

 

 衝撃。

 

 腕。

 

 痺れる。

 

 ブレイン。

 

 吹き飛ぶ。

 

 カイドウ。

 

 焔雲。

 

 背後。

 

 置く。

 

 受け止める。

 

「ぐっ!」

 

「まだだ」

 

 カイドウ。

 

 前。

 

 ブレイン。

 

 胸元。

 

 掴む。

 

「術式を止めろ」

 

「もう止まらん!」

 

「止めろ」

 

「無理だ!」

 

「なら」

 

 カイドウ。

 

 顔。

 

 近い。

 

 黄金色。

 

 瞳。

 

「止め方を言え」

 

「知らん!」

 

「嘘だな」

 

 見聞色。

 

 僅か。

 

 心。

 

 揺れ。

 

「右の塔」

 

 ブレイン。

 

 目。

 

 動く。

 

 カイドウ。

 

 見る。

 

「そこか」

 

「しまっ」

 

 カイドウ。

 

 ブレイン。

 

 サクラ。

 

 方向。

 

 軽く。

 

 投げる。

 

「受け取れ!」

 

「人を荷物のように!」

 

 サクラ。

 

 光。

 

 包む。

 

 ブレイン。

 

 拘束。

 

 カイドウ。

 

 右。

 

 塔。

 

 向く。

 

 その塔。

 

 黒い光。

 

 中心。

 

 他より。

 

 濃い。

 

「制御塔じゃ!」

 

 ローバウル。

 

「壊せば!」

 

 ウェンディ。

 

「ニルヴァーナも止まる?」

 

「一時的には!」

 

「カイドウさん!」

 

 ウェンディ。

 

 叫ぶ。

 

「お願いします!」

 

 カイドウ。

 

 笑う。

 

「やっと」

 

 金棒。

 

 構える。

 

「壊していい物が出たな」

 

「塔だけです!」

 

「分かってる!」

 

「周りは!」

 

「分かってる!」

 

「加減!」

 

「今は」

 

 カイドウ。

 

 黒い雷。

 

 金棒。

 

 纏う。

 

「無理だ」

 

「ええ!?」

 

「塔だけ消す!」

 

 足元。

 

 焔雲。

 

 上。

 

 飛ぶ。

 

 金棒。

 

 両手。

 

「大威徳――」

 

 サクラ。

 

 顔。

 

 引きつる。

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

「――雷鳴八卦!」

 

 轟音。

 

 黒い雷。

 

 一本。

 

 塔。

 

 正確に。

 

 中心。

 

 叩く。

 

 衝撃。

 

 巨大。

 

 でも。

 

 横へ。

 

 広がらない。

 

 覇気。

 

 全て。

 

 塔の内部。

 

 貫く。

 

 石塔。

 

 一瞬。

 

 静止。

 

 次。

 

 上から。

 

 下まで。

 

 さらさら。

 

 砂。

 

 崩れる。

 

「……」

 

 全員。

 

 沈黙。

 

 周囲。

 

 木。

 

 無傷。

 

 地面。

 

 無傷。

 

 隣。

 

 塔。

 

 無傷。

 

 制御塔だけ。

 

 なくなる。

 

「……」

 

 ウェンディ。

 

 口。

 

 開く。

 

「カイドウさん」

 

「何だ」

 

「すごいです」

 

「褒めるな」

 

「今回は褒めます!」

 

「やめろ!」

 

 黒い光。

 

 止まる。

 

 六本。

 

 うち。

 

 一つ。

 

 消失。

 

 魔法陣。

 

 揺らぐ。

 

 ウェンディ。

 

 体。

 

「魔力が」

 

「止まった!」

 

 ジェラール。

 

 呼吸。

 

 戻る。

 

 エルザ。

 

 安堵。

 

「ジェラール!」

 

「ああ」

 

「どうだ?」

 

「楽になった」

 

 ローバウル。

 

 塔。

 

 見る。

 

「完全には止まっておらん」

 

「何?」

 

「残り五本」

 

「全部壊すか」

 

 カイドウ。

 

 金棒。

 

 肩。

 

「待って!」

 

 ウェンディ。

 

「自壊術式に必要です!」

 

「どれだ」

 

「分かりません!」

 

「なら全部は壊せねェな」

 

「すぐ理解した!」

 

 サクラ。

 

 少し。

 

 感心。

 

 ブレイン。

 

 拘束。

 

 中。

 

 笑う。

 

「遅い」

 

「何がだ」

 

 カイドウ。

 

 見る。

 

「一つ止めた程度で」

 

 ブレイン。

 

 顔。

 

 歪む。

 

「ニルヴァーナは」

 

 地面。

 

 再び。

 

 揺れる。

 

「もう目覚めた!」

 

 轟音。

 

 盆地。

 

 外。

 

 森。

 

 遠く。

 

 地面。

 

 持ち上がる。

 

「何!?」

 

 ルナ。

 

 ローバウル。

 

 立ち上がる。

 

「そんな!」

 

「地下じゃ!」

 

 地面。

 

 割れる。

 

 遠く。

 

 巨大な。

 

 石の脚。

 

 一つ。

 

 二つ。

 

 六つ。

 

 森。

 

 持ち上げる。

 

 ウェンディ。

 

 目。

 

 見開く。

 

「ジェラールさんの」

 

「記憶通り」

 

 ジェラール。

 

 呟く。

 

「ニルヴァーナは」

 

 巨大。

 

 都市。

 

 地下から。

 

 上昇。

 

「歩く」

 

 カイドウ。

 

 空。

 

 見上げる。

 

 巨大な古代魔法都市。

 

 六本の巨大な脚。

 

 森を跨ぐ。

 

「……」

 

 カイドウ。

 

 口元。

 

 ゆっくり。

 

 上がる。

 

「でけェな」

 

「カイドウさん」

 

 ウェンディ。

 

 嫌な予感。

 

「何だ」

 

「楽しそうにしないでください」

 

「してねェ」

 

「顔が笑っています!」

 

「でかい敵を見るとな」

 

「ニルヴァーナは敵じゃなくて魔法都市です!」

 

「なら」

 

 カイドウ。

 

 金棒。

 

 肩。

 

「壊せばいい」

 

「全部は駄目です!」

 

「なぜだ!」

 

「自壊術式を使うんです!」

 

「面倒だな」

 

「その言葉は禁止です!」

 

 サクラ。

 

 大きく。

 

 息。

 

「六魔将軍との戦闘は」

 

 周囲。

 

 見る。

 

 五人。

 

 倒れて。

 

 ブレイン。

 

 拘束。

 

「……ほぼ終わりました」

 

 エルザ。

 

 カイドウ。

 

 見る。

 

「一人で」

 

「ああ」

 

 サクラ。

 

 少し。

 

 頭。

 

 痛そう。

 

「ほぼ全員を無力化しました」

 

 ウェンディ。

 

 胸。

 

 少し。

 

 張る。

 

「カイドウさん、すごいんです!」

 

「なぜウェンディが誇らしげなのだ?」

 

 エルザ。

 

 苦笑。

 

「家族だからです!」

 

 ウェンディ。

 

 反射。

 

 言う。

 

 カイドウ。

 

 固まる。

 

「……」

 

 ウェンディ。

 

 自分。

 

 言ったこと。

 

 気づく。

 

「あ」

 

 カイドウ。

 

「今」

 

「何でもありません!」

 

「家族と」

 

「聞き間違いです!」

 

「言ったな」

 

「言ってません!」

 

 シャルル。

 

「言ったわ」

 

「シャルル!」

 

 ルナ。

 

「私も聞いた」

 

「ルナ!」

 

 サクラ。

 

「私も」

 

「サクラさんまで!」

 

 エルザ。

 

「私も聞いたぞ」

 

「エルザさん!」

 

 ジェラール。

 

「俺も」

 

「ジェラールさんは休んでいてください!」

 

 カイドウ。

 

 にや。

 

「ウォロロロロ!」

 

「笑わないでください!」

 

「おれのギルド」

 

「家族」

 

「悪くねェ」

 

 ウェンディ。

 

 顔。

 

 真っ赤。

 

「もう!」

 

 巨大なニルヴァーナ。

 

 動き始める。

 

 六魔将軍。

 

 ほぼ。

 

 壊滅。

 

 それでも。

 

 本当の危機。

 

 これから。

 

 カイドウ。

 

 金棒。

 

 持つ。

 

 ウェンディ。

 

 横。

 

「次は」

 

「ニルヴァーナだな」

 

「はい」

 

「壊す」

 

「全部じゃありません!」

 

「分かってる!」

 

「本当に?」

 

「必要なところだけだ!」

 

「約束ですよ!」

 

「ああ!」

 

 百獣のカイドウ。

 

 六魔将軍。

 

 相手。

 

 圧倒。

 

 しかし。

 

 敵。

 

 倒せば。

 

 終わりではない。

 

 完全覚醒を始めた。

 

 古代魔法都市ニルヴァーナ。

 

 その巨大な脚が。

 

 一歩。

 

 森へ。

 

 踏み出した。

 

 ずしん。

 

 大地。

 

 揺れる。

 

 ウェンディ。

 

 遠く。

 

 見る。

 

「向かってる」

 

「どこへだ」

 

「化猫の宿の跡地」

 

 ローバウル。

 

 顔。

 

 険しく。

 

「あの地下に」

 

「自壊術式があるからじゃ」

 

 ジェラール。

 

 目。

 

 細い。

 

「いや」

 

「何?」

 

「それだけじゃない」

 

 胸。

 

 痛む。

 

「何か」

 

「……」

 

「ニルヴァーナは」

 

 言葉。

 

 探す。

 

「そこにあるものを」

 

「……」

 

「取り込もうとしている」

 

 ルナ。

 

 胸元。

 

 突然。

 

 押さえる。

 

「っ!」

 

「ルナ!」

 

 ウェンディ。

 

 駆け寄る。

 

「どうしたの!」

 

「熱い」

 

「どこが?」

 

「ここ」

 

 ルナ。

 

 胸。

 

 黒い。

 

 小さな紋様。

 

 再び。

 

 浮かぶ。

 

 全員。

 

 顔。

 

 変わる。

 

 ブレイン。

 

 拘束。

 

 中。

 

 笑う。

 

「人形は」

 

「……」

 

「まだ」

 

 ルナ。

 

 震える。

 

「役目を」

 

 ブレイン。

 

「終えていない」

 

 カイドウ。

 

 笑み。

 

 完全に。

 

 消える。

 

 ウェンディ。

 

 ルナ。

 

 抱く。

 

「ルナ!」

 

「大丈夫」

 

「大丈夫は禁止です!」

 

 ルナ。

 

 苦笑。

 

「ウェンディの口癖」

 

「今はそんなこと!」

 

 カイドウ。

 

 ブレイン。

 

 振り返る。

 

 黄金色。

 

 瞳。

 

 恐ろしい。

 

「次は」

 

 低い声。

 

「説明してもらうぞ」

 

 ブレインの笑みが。

 

 僅かに。

 

 引きつった。

 

 六魔将軍を。

 

 圧倒した。

 

 最強生物。

 

 だが。

 

 戦いの中心は。

 

 すでに。

 

 敵から。

 

 ルナ。

 

 ジェラール。

 

 ウェンディ。

 

 三人へ。

 

 移り始めていた。

 

 そして。

 

 巨大な古代都市は。

 

 ゆっくりと。

 

 化猫の宿跡地へ。

 

 進み続けていた。




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