ワノ国の空を割り、大地を揺らした麦わらのルフィとの最終決戦。
百獣海賊団総督にして、陸海空に生きる者の中で最強と呼ばれた男――百獣のカイドウは、覚醒したルフィの巨大な拳によって地の底へと叩き落とされた。
だが、カイドウが落ちていった先は、ワノ国の地下にあるマグマ溜まりではなかった。
時空の歪みに呑み込まれたカイドウは、見知らぬ世界――アースランドへと転移してしまう。
そしてフィオーレ王国の辺境に存在する魔導士ギルド《化猫の宿》の建物へ、巨大な青龍の姿で真っ逆さまに墜落した。
「敵襲ですか!?」
「違うわ、ウェンディ! たぶん空から落ちてきただけよ!」
「空から龍が落ちてくること自体がおかしいですよ!」
カイドウを発見したのは、天空の滅竜魔導士ウェンディ・マーベルと、白いエクシードのシャルルだった。
全身に大怪我を負いながらも、常識外れの生命力で生きていたカイドウ。ウェンディは恐怖に震えながらも彼を見捨てられず、治癒魔法を施す。
ところが、異世界転移の影響とウェンディの天空魔法が奇妙に作用し、カイドウの肉体に異変が起こった。
目を覚ましたカイドウは、長い髭を蓄えた巨漢ではなくなっていた。
黒い長髪に鋭い眼光、鍛え上げられた肉体を持つ、二十代ほどの若者へと若返っていたのである。
力の大部分を失い、部下も武器も酒もない。
そのうえ自分がいた世界へ戻る方法も分からない。
そんなカイドウに、化猫の宿のマスターであるローバウルは笑顔で告げる。
「行く場所がないなら、しばらくここに泊まっていけばよい」
「ウォロロロロ……このおれを飼うつもりか、ジジイ」
「客としてもてなすだけじゃ。もっとも、壊した屋根の修理代は働いて返してもらうがのう」
こうして元四皇カイドウは、化猫の宿の客兼、雑用係として暮らすことになった。
しかし、カイドウに普通の仕事ができるはずもない。
薪割りを頼めば森まで割り、畑を耕せば地面を峡谷に変え、酒場の用心棒を任せれば客が一人も入ってこない。
皿洗いでは皿を握り潰し、料理では炎の息を吐いて厨房を消し炭にする。
一方、ウェンディは見た目こそ恐ろしいカイドウにも臆することなく世話を焼き、酒を飲み過ぎれば本気で叱り、怪我をすれば治療を続ける。