引き取った従弟を世界一のストライカーにするというだけの投資兼暇つぶし 作:らら
「クソ上手ぇな、瀬古タン!!これでクラブチームに入ったことがないとかめっちゃムカつくぜ!!」
「士道くんは……身体能力と感覚だけに頼りすぎだね。そういうプレーは僕も好きだけど、さすがに技術が荒削り過ぎるかな。相手の突け入れる隙が多すぎるよ。」
「ハッ、じゃあこんなのはどうよ!!」
「言いづらいけど…視線とかでどこを狙ってるのかが、すぐに分かっちゃうよ。」
とくにイレギュラーな展開が起こったりすることもなく、僕はU-20に合流できた。
いやぁ、不乱蔦くんたちを脅したりしなくて済んで、本当に良かったよ。
そして今、僕は冴くんに選ばれた黒ギャル系エゴイスト…士道龍聖くんと1on1をしていた。
すでに数十回と繰り返してるけど、僕が負けるだなんてことは一度も起きていない。
普通の人だったら嫌気が差すくらい、めちゃくちゃボコボコにされてるにも関わらず、いまだ士道くんは嬉々として挑んでくるから、なかなかいい素質があるのかもね。
「どうやったら瀬古タンに勝てんの?」
芝の上で大の字になって寝っ転がりながら、士道くんはそう聞いてくる。
最初に見たときはすごく危険っぽさそうな雰囲気だったけど、僕にはある程度従順でよかった。
そのおかげで、彼のプライドを心ごとへし折るなんてひどいことをしなくて済んだし。
「そうだねぇ…。本気の僕に自分一人の力で勝ちたいのなら………うん、諦めよう。普通の人間じゃあ不可能だし。」
まずは勉学。
満点以外を取ることは絶対にないので、いくら良くても引き分けで終わる。
次に芸術。
採点者が心から求めているものをさまざまな情報から読み取って、それを世界最高水準の技術で作り出すというやり方をするだろうから、負けるはずがない。
勝ちたいのなら、中世ヨーロッパで生きてた天才たちを連れてきたまえ。
最後にスポーツ。
例えば今みたいなサッカーの1on1とかだと、相手の表情とか筋肉の動きからどんな動作を推測して、それに対応した動きを取るから負けないね。
例外に思えるかもしれない短距離走みたいなのも、精神攻撃とかでコンディションを最悪にさせて勝つだろうし。
僕と同レベルの天才と戦うのなら別かもしれないけど、そんな人が現れるのは天文学的な確率だ。
「スッゲェ自信だなぁ、瀬古タン。」
「他のヤツならまだしも、この人が言う場合だけは身の丈に合った自信だ、悪魔くん。」
「マジ?」
「あぁ。」
そう言って話に割って入ってくる冴くん。
なんでか知らないけど、少しイライラしてるみたいだね。
寝不足かな?
それともカルシウム不足かな?
「この人が本気を出すなら、今の悪魔くんがやられてるレベルじゃ済まない思考誘導とかをしてくるだろうな。」
「もしかしなくても、バレてたかい?」
「なんとなくだ。いつもの悪魔くんのサッカースタイルはアンタに一番相性が良い。だからそれを思考誘導で潰したんだろ?」
普通に全部バレてるじゃん。
言ってることも全部当たってるし。
「この人と戦うんだったら、何も考えずにやった方が適してる。いつもと違うことをさせられてたら、その時点でもうこの人の術中にハマってるってことだ。」
「じゃあ俺ちゃんが頭使ったのは、瀬古タンの中じゃ計画通り?」
「この人の闘いやすい領域に、違和感なく引き込まれたってことだな。」
「エグいな、瀬古タン。」
ドン引きしたような顔をされながら、ガチトーンでそう言われたんだけど…。
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「やぁやぁ、才能の原石ども。U-20日本代表との試合まであと一週間しかないわけだが、新しい報せだ。」
試合のスタメンも決まり、あとは決戦に向けてトレーニングを積み重ねるだけとなっていたブルーロックの面々たち。
そんな彼らはいきなり、ブルーロックの管理者である絵心甚八に集められていた。
負ければブルーロックは解体となるがゆえに、集まっている全員の表情には緊張が浮かんでいる。
「糸師冴、士道龍聖の他にもう一人、U-20側に人員が追加された。」
ゴクリと誰かが息を呑む音がした。
張り詰めた空気が広がっている空間内で、今度はいったいどんな強敵が出てくるのかと、潔世一はそんなことを考える。
「で、ソイツの名前は───瀬古玖月。どんなプレーをするのかだが……なんのデータも得れなかった。というより、存在しなかった。」
「瀬古?」
その苗字はその場にいる誰もが知っているものだった。
なにせ糸師凛と並び立っている、ブルーロック内でツートップのストライカー⋯瀬古紫音と同じ苗字だからである。
ブルーロックのメンバーたちの視線が紫音へと集中するが、当の本人はそれらに一切気づかずに何かを考えている。
「サッカープレイヤーとしての情報はなかったが、どんな人間なのかは調べることができた。数多の子会社を持つ瀬古コーポレーションの会長。さらには、芸術系統のコンクールで何度も日本一や世界一を取っている。端的に言い表すのなら、本物の天才というヤツだ。」
あまりにも輝かしすぎる経歴。
だが、追加の人員としては不可解な点しかない。
しかし、誰かが反論を口にするよりも先に、絵心はこう話を締めくくった。
「だが、ソイツは糸師冴が追加の人員として認めるほどの逸材。ゆえに⋯いっさい侮ることなく、コンディションを最高にして試合に望め。話は以上だ。」
そうして、決戦の日はやって来る。