我こそは十四番隊隊長(自称)   作:かなりゆっくりめ

94 / 94
藍染惣右介
五番隊隊長。温厚な人物として知られていたが、中央四十六室で日番谷を斬ったことにより状況が一変する。

卯ノ花烈
四番隊隊長。砕蜂の検死を担当していた人物であり、今回、天挺空羅によって全隊へ緊急の情報を伝える。

黒崎一護
処刑を免れた死神代行。状況を理解しきれないまま、再び大きな事件へ巻き込まれる。

緋山雷太
五番隊三席。死神・緋山雷太であると同時に、破面ガルムルド・ジュードスタインでもある。

雛森桃
五番隊副隊長。長年信頼してきた藍染の突然の離反を目の当たりにする。

東仙要
九番隊隊長。藍染・市丸とともに双殛の丘へ姿を現す。

市丸ギン
三番隊隊長。松本乱菊と深い因縁を持ちながら、藍染側に立つ。


反逆の藍染と沈黙する卯ノ花

「一、五番隊隊長・藍染惣右介は反逆者である」

 

卯ノ花の声を、初めは聞き違いかと思った者もいた。

だが、天挺空羅は続く。

 

「一、藍染惣右介は中央四十六室の賢者・裁判官の全員をすでに皆殺しにしている。

一、一連の旅禍侵入および内乱の真の首謀者は藍染惣右介である。

一、動機は霊子結晶『崩玉』を強奪するため、瀞霊廷全体に混乱を誘発したことによるもの。

一、四十六室内において十番隊隊長・日番谷冬獅郎が斬り伏せられ、現在重体。

一、藍染惣右介はすでに崩玉を手中に収めた模様。

一、なお、二番隊隊長・砕蜂は死を偽装されており、八番隊五席・戸川古男がその謀略を暴いた」

 

反逆、四十六室の全滅、隊長の重体。何から確かめればよいのか。

近くの隊士へ問いかけても、同じ問いが返ってくるばかりだった。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

 

「どういうことだ……ッ!? あの温厚な藍染隊長が……四十六室を皆殺しにした反逆者だと……!?」

 

ルキアには、処刑撤回のために動いていると聞いていた男の顔が浮かんでいた。

古男と日番谷に同行していたはず。その日番谷を斬ったという。

では、共にいた古男は無事なのか。砕蜂の死の偽装を暴いたとは、どういうことなのか。

 

「………………行くぞ。ルキア、白鷹」

 

「はっ……!」

 

光四郎は鼻元の血を拭うのにもたついていた。先ほどまでの失態を隊長に見られた気まずさも、今は構っていられない。

白哉の足取りには、もう酔いが残っていなかった。

 

ルキアも駆け出す。

何を信じればよいのか分からなくても、兄の背を追うことはできる。少なくとも、ここで考え込んでいて答えが出る話ではなかった。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

「た、隊長……ッ!! 今の『天挺空羅』の全隊通信は……一体……!?」

 

勇音には、尋ねたいことが多すぎた。

藍染の反逆も信じがたい。しかし、その話を目の前の隊長から聞かされたことの方が、どうしても引っかかる。

 

「全て、紛れもない事実です。我々も現場へ向かいましょう。藍染惣右介はどうやら……双極の丘にいるようですね」

 

「……し、しかし隊長……。隊長は先ほどから……ずっとこの四番隊隊舎に居られましたよね……? 一歩も四十六室へなど行かれていないはずなのに、どうしてそこまで詳細に……??」

 

微笑を向けられ、言葉が続かなくなる。

叱られたわけではない。質問を取り消せと言われてもいない。それなのに、重ねて聞くことができなかった。

 

何か報告を受け取るところを見落としたのだろうか。

そう考えてみても、腑に落ちない。通信はあまりにも詳細だった。

四十六室の中で起きたことを、まるで傍らで見ていたかのように。

 

日番谷隊長の治療を急がなければならない。今はそれを優先するしかないと、自分に言い聞かせる。

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

「何がどうなってるんだ!? 四十六室が全滅で、隊長が裏切り者ォ!?」

 

たつきの声に、一護も顔を上げた。

やっと仲間と落ち着いて話せるようになったと思えば、また騒ぎが起きている。

今度は話をしていた相手が、そもそも全員殺されていたという。

 

「………なんの説明もねえ………。さっきの通信の話は……本当なのかよ!?」

 

誰に聞けばいい。

海燕たちを探すより、まず現場へ行った方が早いのか。

外では足音と呼び声が続き、いつまでも座っている気にはなれなかった。

 

「と、とにかく現場にいってみようよ!! どっちなの!? 『装飾の丘』ってどこォォッ!!??」

 

「……双極(そうきょく)だ………井上」

 

「こっちだ。海燕さんから大体の道順は聞いている!」

 

石田について門を出る。

一護には、走るうちにも引っかかることがあった。

 

砕蜂は生きていた。ならば古男も、それを知っているのか。

いつから何を知っていたのか。

会えたら聞く。まずは、それからだ。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

「……藍染隊長、どうしはりましたん? ボクには何が何やらサッパリで……」

 

市丸の問いに、返事はなかった。

 

「私もです。先ほどまでは何の進展もなかったはず……。本当に……崩玉を手に入れられたのですか?」

 

「………………ああ」

 

東仙にとっても、予定どおりとは思えない。

手に入れたのなら成功のはず。なのに、その経緯は語られず、藍染の関心は空へ向いている。今の告発には、どこまで想定が及んでいたのか。

 

市丸にも同じ疑問があるらしい。普段ならもう少し茶化すところを、口数が少なかった。

丘へ近づく霊圧が増えていく。

 

「な……なぜだ東仙ッ!! 貴様、正義を捨てて悪に与するというのかッ!!」

 

狛村の声には、怒りよりも戸惑いがあった。

目の前にいるのは、よく知る友。無理に連れてこられた様子でもない。

 

それならば、自分でここに立つことを選んだのか。

 

「狛村……私の歩む『正義』は………今も昔も、何一つ変わらない」

 

その言葉を、以前なら頼もしく思えただろう。

今は何と返せばよいか分からない。変わらないというなら、これまで共に語ってきた正義を、どこで聞き違えたのか。

 

「ギンッッ!!」

 

松本にも、まず呼ぶほかなかった。

何をしているのかと問い詰めたい。そちらへ行くなと引き戻したい。

けれど、市丸と目が合った途端、次の言葉が喉につかえた。

 

「……ごめんな、乱菊」

 

謝られても困る。

なぜ謝るのかを聞かせてほしい。何も言わずに去って、また待たせるつもりなのか。

子供の頃と同じように、帰ってくる日も告げずに。

 

「…………まだ………か」

 

「なにが『まだ』じゃ。神妙に縛につけ、藍染」

 

山本の杖が地を打った。

すでに隊長も副隊長も集まっている。逃げるなら、なぜここで待っていたのか。

藍染の余裕を前に、誰も不用意には近づけなかった。

 

「……哀れだな、山本元柳斎。何も知らないとは……。いや、知らないからこそ……幸福なのかもしれないがね」

 

「?? 何をわけの分からんことを言っておる?」

 

「――ねえ? そうだろう……卯ノ花隊長?」

 

勇音の胸が詰まる。

あの質問に答えてもらえなかったことを、思い出さずにはいられない。

藍染は何を知っているのか。卯ノ花とは、何について話しているのか。

傍らから返事はなかった。

 

「藍染さんッッ!!」

 

駆け上がった一護の目にも、三人の姿が映る。

市丸と東仙まで一緒にいるとは聞いていない。牢の前で言葉を交わした相手もいる。

どこから話を聞けばいいのか、ますます分からなくなった。

 

「黒崎一護………まずはおめでとうと言っておこう。処刑を免れ、生き残ることができたね。そして……一つだけ君に教えてあげよう。君こそが……全ての『鍵』だ。強くなると良い。どこまでも……果てしなくね」

 

「?? …………藍染さん。あんた一体、何を言ってやがるんだ……?」

 

祝われる筋合いがあるのかも分からない。

処刑に仕組まれたものがあったなら、まずそれを説明してほしい。

鍵と言われたところで、何を開けるのかさえ知らない。

 

聞き返す前に、空が裂けた。

 

黒腔の奥に、大虚の仮面が並んでいる。

一体、二体ではない。織姫の足が止まり、石田の視線も上へ向く。これほどの数を相手にするのかと身構えたところで、黄色い光が降りてきた。

 

藍染たちを囲む光に、山本の霊圧が阻まれる。

 

「くっ……『反膜(ネガシオン)』か……! 手が出せん……!」

 

「馬鹿な……ここまで虚を引き連れていたのか……!」

 

恋次の蛇尾丸も届かない。

あと数歩の距離なのに、踏み込めない。反膜の中では、三人の身体がゆっくりと浮き上がっていた。

 

「藍染……お前ほどの男が、そこまで落ちたというのか……」

 

浮竹の言葉を聞きながら、藍染は眼鏡を外す。

握り潰したレンズが落ち、前髪が後ろへ撫で上げられた。

 

「……………さてな。最初から誰も天に立ってなどいなかった。君も、私も、神の座すらもだ。――だが……これからは、この私が天に立つ」

 

一護は刀を握り締めた。

こちらの問いには答えず、それで終わりにするつもりなのか。納得などできない。

追いかけようとする足を、反膜の光が止めていた。

 

その時、藍染から地上へ呼びかけが落ちる。

 

「――ガルムルド」

 

ガルムルド・ジュードスタイン。緋山雷太という名と同じく、自分に向けられている。

 

「君は、好きにするといい。どちらの道を選ぶのも君の自由だ。……だが、先の命令を果たすことこそが、私の……ささやかな『願い』だよ」

 

雛森から離れるな。

あの命令を覚えている。理由を考え、霊体を調べ、それでも分からないまま傍にいた。

今も、その理由を教える気はないらしい。

 

呼ばれれば、行くこともできるのだろう。

ガルムルドとして虚圏へ渡り、藍染たちに加わる。だが好きにしろと、こちらへ判断を預けられた。

 

ならば、好きにする。

 

染華の息子として過ごした日々を、偽物だと思ったことはない。

破面としての自分を、消えてよいものだと思ったこともない。

内側に別人がいて、どちらへ行くか揉めているわけではなかった。どちらも自分の気持ち。ここに残りたいのも、雷太でありガルムルドである彼自身の意思だ。

 

母がいる。仲間がいる。

それに、雛森を一人にするなと言ったのは、ほかでもない藍染ではないか。

 

重傷の足へ力を込める。痛みはあるが、立ってはいられる。

一歩も前へ出ず、視線も合わせなかった。

 

最高の死神にも、最高の破面にもなる。

そのために、今ここを離れる必要は感じないのだ。

 

「藍染隊長ォォォッッ!!!! どうして……どうしてですかァァッッ!!!!」

 

隣から伸びた雛森の手は、空を掴む。

包帯に血が滲んでいた。傷を庇うことすら忘れて、去っていく姿を追っている。

 

自分には、何か言ってもらえると思いたかった。

隊長と呼べば振り向いてくれた。相談すれば聞いてくれた。その人に今も呼びかけているのに、なぜ何も返ってこないのか。

 

自分の声だって聞こえているはずなのに。

 

反膜はさらに高くなり、市丸も東仙も、黒腔の奥へ消えていく。

最後まで藍染から返事はなかった。

 

閉じた空へ、雛森の手が残る。

雷太はそばを離れなかった。命令を守るためか、今はうまく答えられない。

ただ、ここに置いていく気にはなれない。

 

勇音もまた、問いを抱えたままでいた。

 

四十六室で何があったのか。

誰から報告を受け、何を確かめて、あの告発を伝えたのか。

 

卯ノ花烈は、一度も中央四十六室へ行っていない。




■ 天挺空羅

縛道の七十七。

複数の対象へ術者の声を直接届ける高位の伝達系鬼道。

通常の伝令とは異なり、緊急時に多数の死神へ一斉に情報を伝えることができる。

■ 反膜(ネガシオン)

大虚が仲間を救出する際などに使用する特殊な光。

光に包まれた対象と外部空間を隔絶し、展開後は通常の手段による干渉が困難になる。

■ 黒腔
現世・尸魂界・虚圏など、異なる世界を移動するために虚が利用する空間通路。

今回は多数の大虚とともに開かれ、藍染・市丸・東仙の離脱経路となった。

■ ガルムルド・ジュードスタイン

現在の緋山雷太が持つ、もう一つの名。

雷太の内側に別人格として存在しているわけではなく、死神として生きてきた緋山雷太も、かつて虚であったガルムルドも、どちらも同一人物としての彼自身である。

■ 崩玉

死神と虚、その二つの境界に干渉する霊子結晶。

本作では原作とは異なる経緯を持ち、黒崎一護や朽木ルキアの処遇とも単純には一致しない。

今回の天挺空羅では、藍染の行動目的としてその名が全隊へ告げられた。

■ 砕蜂の「死の偽装」

天挺空羅によって初めて全隊へ告げられた情報。

現時点で明らかになっているのは、「砕蜂の死には偽装が存在した」と告知されたことまで。

その手法、実行者、目的、古男がどのように真相へ到達したのかについては、まだ詳細が明らかになっていない。

今後の展開について、尸魂界編のあとは

  • すぐ破面編がいい
  • バウント編とかも見たい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生したら初代護廷十三隊だった件(作者:宇川ゆうたろう)(原作:BLEACH)

なんやかんやで死んで転生したら初代護廷十三隊でした。原作開始まであと1000年!?長すぎんだよクソが!!▼注:初代護廷十三隊メンバーの名前しか判明していないのをいい事に色々捏造しています。また、前に書いた二次小説の設定を色々引き継いでいますが、そちらとは完全に別世界です。


総合評価:2057/評価:8.29/連載:10話/更新日時:2026年09月15日(火) 19:00 小説情報

スリザリンの凡人、なぜか闇の帝王候補扱いされる(作者:ノア)(原作:ハリー・ポッター)

ノア・セルウィンは、スリザリンに入る予定の純血少年である。▼野心はない。▼度胸もない。▼特別な才能も、今のところ特にない。▼あるのは、面倒事を避けるための少しばかりの言葉選びと、最初に小さく嫌だと言わないと後でもっと面倒になる、という妙に現実的な処世術だけだった。▼だが、魔法界は面倒だった。▼血筋。▼家名。▼寮の派閥。▼有名人。▼闇魔術。▼そして、見捨てるに…


総合評価:2423/評価:8.35/連載:5話/更新日時:2026年06月13日(土) 07:10 小説情報

転生したのに念能力が使えない男(作者:ゴリラ廻戦)(原作:HUNTER×HUNTER)

ざけんなや オーラが無いんじゃ ドブカスが▼


総合評価:5067/評価:6.36/連載:10話/更新日時:2026年09月04日(金) 12:00 小説情報

氷叢家の種馬(ガチ)(作者:のりしー)(原作:僕のヒーローアカデミア)

氷叢零至(ひむられいじ)▼落ち目の氷叢一族に産まれてしまった鬼子。▼現役No.2ヒーローであるエンデヴァーの炎系個性に対抗しうる程の才を持ち産まれ……故にその個性は『コキュートス』と名付けられた。周囲の希望の願いと共に。▼ ▼しかし……▼幼き頃は神童で、育てば秀才……成人後はただのクズ。▼『あの』雄英高校に華麗なる推薦合格ゴールをブチかました後、この男は才を…


総合評価:3854/評価:7.8/連載:32話/更新日時:2026年09月17日(木) 21:38 小説情報

伏黒宿儺に「そろそろ狩るか…♠︎」する転生者(作者:羂索は踊り狂って死ぬ♠︎)(原作:呪術廻戦)

▼ 呪術廻戦を知らない転生者が伏黒宿儺相手に「そろそろ狩るか…♠︎」するだけの話。▼タグは随時追加


総合評価:5854/評価:7.4/連載:7話/更新日時:2026年08月06日(木) 18:19 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>