我こそは十四番隊隊長(自称) 作:かなりゆっくりめ
五番隊隊長。温厚な人物として知られていたが、中央四十六室で日番谷を斬ったことにより状況が一変する。
卯ノ花烈
四番隊隊長。砕蜂の検死を担当していた人物であり、今回、天挺空羅によって全隊へ緊急の情報を伝える。
黒崎一護
処刑を免れた死神代行。状況を理解しきれないまま、再び大きな事件へ巻き込まれる。
緋山雷太
五番隊三席。死神・緋山雷太であると同時に、破面ガルムルド・ジュードスタインでもある。
雛森桃
五番隊副隊長。長年信頼してきた藍染の突然の離反を目の当たりにする。
東仙要
九番隊隊長。藍染・市丸とともに双殛の丘へ姿を現す。
市丸ギン
三番隊隊長。松本乱菊と深い因縁を持ちながら、藍染側に立つ。
「一、五番隊隊長・藍染惣右介は反逆者である」
卯ノ花の声を、初めは聞き違いかと思った者もいた。
だが、天挺空羅は続く。
「一、藍染惣右介は中央四十六室の賢者・裁判官の全員をすでに皆殺しにしている。
一、一連の旅禍侵入および内乱の真の首謀者は藍染惣右介である。
一、動機は霊子結晶『崩玉』を強奪するため、瀞霊廷全体に混乱を誘発したことによるもの。
一、四十六室内において十番隊隊長・日番谷冬獅郎が斬り伏せられ、現在重体。
一、藍染惣右介はすでに崩玉を手中に収めた模様。
一、なお、二番隊隊長・砕蜂は死を偽装されており、八番隊五席・戸川古男がその謀略を暴いた」
反逆、四十六室の全滅、隊長の重体。何から確かめればよいのか。
近くの隊士へ問いかけても、同じ問いが返ってくるばかりだった。
◇◇
「どういうことだ……ッ!? あの温厚な藍染隊長が……四十六室を皆殺しにした反逆者だと……!?」
ルキアには、処刑撤回のために動いていると聞いていた男の顔が浮かんでいた。
古男と日番谷に同行していたはず。その日番谷を斬ったという。
では、共にいた古男は無事なのか。砕蜂の死の偽装を暴いたとは、どういうことなのか。
「………………行くぞ。ルキア、白鷹」
「はっ……!」
光四郎は鼻元の血を拭うのにもたついていた。先ほどまでの失態を隊長に見られた気まずさも、今は構っていられない。
白哉の足取りには、もう酔いが残っていなかった。
ルキアも駆け出す。
何を信じればよいのか分からなくても、兄の背を追うことはできる。少なくとも、ここで考え込んでいて答えが出る話ではなかった。
◇◇
「た、隊長……ッ!! 今の『天挺空羅』の全隊通信は……一体……!?」
勇音には、尋ねたいことが多すぎた。
藍染の反逆も信じがたい。しかし、その話を目の前の隊長から聞かされたことの方が、どうしても引っかかる。
「全て、紛れもない事実です。我々も現場へ向かいましょう。藍染惣右介はどうやら……双極の丘にいるようですね」
「……し、しかし隊長……。隊長は先ほどから……ずっとこの四番隊隊舎に居られましたよね……? 一歩も四十六室へなど行かれていないはずなのに、どうしてそこまで詳細に……??」
微笑を向けられ、言葉が続かなくなる。
叱られたわけではない。質問を取り消せと言われてもいない。それなのに、重ねて聞くことができなかった。
何か報告を受け取るところを見落としたのだろうか。
そう考えてみても、腑に落ちない。通信はあまりにも詳細だった。
四十六室の中で起きたことを、まるで傍らで見ていたかのように。
日番谷隊長の治療を急がなければならない。今はそれを優先するしかないと、自分に言い聞かせる。
◇◇
「何がどうなってるんだ!? 四十六室が全滅で、隊長が裏切り者ォ!?」
たつきの声に、一護も顔を上げた。
やっと仲間と落ち着いて話せるようになったと思えば、また騒ぎが起きている。
今度は話をしていた相手が、そもそも全員殺されていたという。
「………なんの説明もねえ………。さっきの通信の話は……本当なのかよ!?」
誰に聞けばいい。
海燕たちを探すより、まず現場へ行った方が早いのか。
外では足音と呼び声が続き、いつまでも座っている気にはなれなかった。
「と、とにかく現場にいってみようよ!! どっちなの!? 『装飾の丘』ってどこォォッ!!??」
「……双極(そうきょく)だ………井上」
「こっちだ。海燕さんから大体の道順は聞いている!」
石田について門を出る。
一護には、走るうちにも引っかかることがあった。
砕蜂は生きていた。ならば古男も、それを知っているのか。
いつから何を知っていたのか。
会えたら聞く。まずは、それからだ。
◇◇
「……藍染隊長、どうしはりましたん? ボクには何が何やらサッパリで……」
市丸の問いに、返事はなかった。
「私もです。先ほどまでは何の進展もなかったはず……。本当に……崩玉を手に入れられたのですか?」
「………………ああ」
東仙にとっても、予定どおりとは思えない。
手に入れたのなら成功のはず。なのに、その経緯は語られず、藍染の関心は空へ向いている。今の告発には、どこまで想定が及んでいたのか。
市丸にも同じ疑問があるらしい。普段ならもう少し茶化すところを、口数が少なかった。
丘へ近づく霊圧が増えていく。
「な……なぜだ東仙ッ!! 貴様、正義を捨てて悪に与するというのかッ!!」
狛村の声には、怒りよりも戸惑いがあった。
目の前にいるのは、よく知る友。無理に連れてこられた様子でもない。
それならば、自分でここに立つことを選んだのか。
「狛村……私の歩む『正義』は………今も昔も、何一つ変わらない」
その言葉を、以前なら頼もしく思えただろう。
今は何と返せばよいか分からない。変わらないというなら、これまで共に語ってきた正義を、どこで聞き違えたのか。
「ギンッッ!!」
松本にも、まず呼ぶほかなかった。
何をしているのかと問い詰めたい。そちらへ行くなと引き戻したい。
けれど、市丸と目が合った途端、次の言葉が喉につかえた。
「……ごめんな、乱菊」
謝られても困る。
なぜ謝るのかを聞かせてほしい。何も言わずに去って、また待たせるつもりなのか。
子供の頃と同じように、帰ってくる日も告げずに。
「…………まだ………か」
「なにが『まだ』じゃ。神妙に縛につけ、藍染」
山本の杖が地を打った。
すでに隊長も副隊長も集まっている。逃げるなら、なぜここで待っていたのか。
藍染の余裕を前に、誰も不用意には近づけなかった。
「……哀れだな、山本元柳斎。何も知らないとは……。いや、知らないからこそ……幸福なのかもしれないがね」
「?? 何をわけの分からんことを言っておる?」
「――ねえ? そうだろう……卯ノ花隊長?」
勇音の胸が詰まる。
あの質問に答えてもらえなかったことを、思い出さずにはいられない。
藍染は何を知っているのか。卯ノ花とは、何について話しているのか。
傍らから返事はなかった。
「藍染さんッッ!!」
駆け上がった一護の目にも、三人の姿が映る。
市丸と東仙まで一緒にいるとは聞いていない。牢の前で言葉を交わした相手もいる。
どこから話を聞けばいいのか、ますます分からなくなった。
「黒崎一護………まずはおめでとうと言っておこう。処刑を免れ、生き残ることができたね。そして……一つだけ君に教えてあげよう。君こそが……全ての『鍵』だ。強くなると良い。どこまでも……果てしなくね」
「?? …………藍染さん。あんた一体、何を言ってやがるんだ……?」
祝われる筋合いがあるのかも分からない。
処刑に仕組まれたものがあったなら、まずそれを説明してほしい。
鍵と言われたところで、何を開けるのかさえ知らない。
聞き返す前に、空が裂けた。
黒腔の奥に、大虚の仮面が並んでいる。
一体、二体ではない。織姫の足が止まり、石田の視線も上へ向く。これほどの数を相手にするのかと身構えたところで、黄色い光が降りてきた。
藍染たちを囲む光に、山本の霊圧が阻まれる。
「くっ……『反膜(ネガシオン)』か……! 手が出せん……!」
「馬鹿な……ここまで虚を引き連れていたのか……!」
恋次の蛇尾丸も届かない。
あと数歩の距離なのに、踏み込めない。反膜の中では、三人の身体がゆっくりと浮き上がっていた。
「藍染……お前ほどの男が、そこまで落ちたというのか……」
浮竹の言葉を聞きながら、藍染は眼鏡を外す。
握り潰したレンズが落ち、前髪が後ろへ撫で上げられた。
「……………さてな。最初から誰も天に立ってなどいなかった。君も、私も、神の座すらもだ。――だが……これからは、この私が天に立つ」
一護は刀を握り締めた。
こちらの問いには答えず、それで終わりにするつもりなのか。納得などできない。
追いかけようとする足を、反膜の光が止めていた。
その時、藍染から地上へ呼びかけが落ちる。
「――ガルムルド」
ガルムルド・ジュードスタイン。緋山雷太という名と同じく、自分に向けられている。
「君は、好きにするといい。どちらの道を選ぶのも君の自由だ。……だが、先の命令を果たすことこそが、私の……ささやかな『願い』だよ」
雛森から離れるな。
あの命令を覚えている。理由を考え、霊体を調べ、それでも分からないまま傍にいた。
今も、その理由を教える気はないらしい。
呼ばれれば、行くこともできるのだろう。
ガルムルドとして虚圏へ渡り、藍染たちに加わる。だが好きにしろと、こちらへ判断を預けられた。
ならば、好きにする。
染華の息子として過ごした日々を、偽物だと思ったことはない。
破面としての自分を、消えてよいものだと思ったこともない。
内側に別人がいて、どちらへ行くか揉めているわけではなかった。どちらも自分の気持ち。ここに残りたいのも、雷太でありガルムルドである彼自身の意思だ。
母がいる。仲間がいる。
それに、雛森を一人にするなと言ったのは、ほかでもない藍染ではないか。
重傷の足へ力を込める。痛みはあるが、立ってはいられる。
一歩も前へ出ず、視線も合わせなかった。
最高の死神にも、最高の破面にもなる。
そのために、今ここを離れる必要は感じないのだ。
「藍染隊長ォォォッッ!!!! どうして……どうしてですかァァッッ!!!!」
隣から伸びた雛森の手は、空を掴む。
包帯に血が滲んでいた。傷を庇うことすら忘れて、去っていく姿を追っている。
自分には、何か言ってもらえると思いたかった。
隊長と呼べば振り向いてくれた。相談すれば聞いてくれた。その人に今も呼びかけているのに、なぜ何も返ってこないのか。
自分の声だって聞こえているはずなのに。
反膜はさらに高くなり、市丸も東仙も、黒腔の奥へ消えていく。
最後まで藍染から返事はなかった。
閉じた空へ、雛森の手が残る。
雷太はそばを離れなかった。命令を守るためか、今はうまく答えられない。
ただ、ここに置いていく気にはなれない。
勇音もまた、問いを抱えたままでいた。
四十六室で何があったのか。
誰から報告を受け、何を確かめて、あの告発を伝えたのか。
卯ノ花烈は、一度も中央四十六室へ行っていない。
■ 天挺空羅
縛道の七十七。
複数の対象へ術者の声を直接届ける高位の伝達系鬼道。
通常の伝令とは異なり、緊急時に多数の死神へ一斉に情報を伝えることができる。
■ 反膜(ネガシオン)
大虚が仲間を救出する際などに使用する特殊な光。
光に包まれた対象と外部空間を隔絶し、展開後は通常の手段による干渉が困難になる。
■ 黒腔
現世・尸魂界・虚圏など、異なる世界を移動するために虚が利用する空間通路。
今回は多数の大虚とともに開かれ、藍染・市丸・東仙の離脱経路となった。
■ ガルムルド・ジュードスタイン
現在の緋山雷太が持つ、もう一つの名。
雷太の内側に別人格として存在しているわけではなく、死神として生きてきた緋山雷太も、かつて虚であったガルムルドも、どちらも同一人物としての彼自身である。
■ 崩玉
死神と虚、その二つの境界に干渉する霊子結晶。
本作では原作とは異なる経緯を持ち、黒崎一護や朽木ルキアの処遇とも単純には一致しない。
今回の天挺空羅では、藍染の行動目的としてその名が全隊へ告げられた。
■ 砕蜂の「死の偽装」
天挺空羅によって初めて全隊へ告げられた情報。
現時点で明らかになっているのは、「砕蜂の死には偽装が存在した」と告知されたことまで。
その手法、実行者、目的、古男がどのように真相へ到達したのかについては、まだ詳細が明らかになっていない。
今後の展開について、尸魂界編のあとは
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すぐ破面編がいい
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バウント編とかも見たい