そんな二人の前に、突如として巨大怪獣が出現する。
しかも、その怪獣の弱点は――まさかの「ラブラブビーム」だった!
国家の命運を背負わされた二人は、怪獣を倒すため、強制的にラブラブさせられることに!?
果たして二人は、怪獣を倒すことができるのか――?
そして、素直になれない二人の恋の行方は!?
※カクヨムにも乗っけてます
「べ、べ、べつにあんたのことなんてよっぽどのことがない限り一緒にいてあげるとかないんだからね」
蓬莱院ティアナは黒薔薇修也のことを指差した。
「上等だ! 国家ぐるみで俺たちをくっつけさせようとしない限り、俺だってお前のことなんかとこっちだってごめんだね!」
修也も負けじとティアナの舌戦に応じた。
『ふんっ!』
二人はその場を立ち去った。
ティアナが見えなくなるしばらく後、修也はうずくまる。
「ああああああああああああああああ、どうして俺はこうなんだ」
修也はティアナが好きで好きでたまらないのに素直になれないことに激しく後悔していた。
こんなことを何度繰り返したかもわからない。
目を瞑って、蓬莱院ティアナを思い浮かべる。
「はぁー、ティアナ可愛すぎる、目も綺麗だ、髪も綺麗だ、何よりもその高潔な性格がすっごくたまらない、あと、できればそのおっぱいも揉ませてほしい、あー、俺は何で変態なんだよぉ!」
Xの裏アカウントに上記の内容を打ち込むことでスッキリした。
修也のルーティンはいったん終了した。
すると不思議な広告を見つけた。
「君の恋の力が日本の未来を救う!」
そんな仰々しい広告が目に入ってくる。
バカバカしいと思ったが、次の文面を見た時、さらなる驚愕に変わった。
「恋の力を見せつけてくれたなら1000万円プレゼント!」
「嘘だろ!」
声が出てしまった。
その広告の続きを見ると、好きな相手の想いをプレゼンして、その内容を応募せよと書いてあった。
ティアナにダイヤモンドの指輪をプレゼントしたいと一瞬思った。
それと、修也はストレス発散に自分のあらん限りの想いをその応募にぶつけた。
※
一方、ティアナは修也が見えなくなった場所に向かった。
「もう私のばかぁー」
大声でティアナは叫んだ。
いったん深呼吸をして、ティアナは心を落ち着ける。
「修也、好き好き好き好き大好き」
ティアナは本音を口に出した。
「はぁー、こんなことを言える素直な私になれたらいいんだけどなぁ」
ずがががーん。
「なに!?」
ヘリコプターから音が聞こえる。
「緊急速報、16メートル級の大型怪獣ゼメラ出現、直ちに避難せよ」
岩をかけわけ、山の形をいくつも変形させていく映像が流れる。
自分のいる場所まで地響きが伝わってくる。
自衛隊などがヘリコプターで怪獣の上空を旋回し、銃弾を打ち込むも怪獣は全く意を介さない。
ティアナはスマホでニュースを確認した。
【緊急速報】
本日午後三時四十二分頃、群馬県・浅間山南麓において、高さ約十六メートルの未確認大型生物を確認しました。
政府は当該生物を特定災害怪獣「ゼメラ」と認定。
現在、自衛隊統合作戦司令部は災害派遣から防衛出動へ移行し、警察・消防・海上保安庁と合同で住民避難を開始しています。
付近にお住まいの方は、落ち着いて自治体および警察、自衛隊の指示に従い、直ちに避難してください。
現時点で確認されている被害は、山林火災約六・三平方キロメートル、家屋損壊百三十八棟。
怪獣ゼメラは口部より高濃度の亜硫酸ガスおよび高熱火炎を噴出し、通常火器による制圧は極めて困難と判断されています。
防衛省は対怪獣特別任務部隊を出動させるとともに、内閣危機管理センターへ官邸対策室を設置。
政府は午後四時、総理大臣を本部長とする「怪獣災害対策本部」を発足しました。
なお、防衛省は今回の事案について、
『対怪獣特殊作戦第七号』
を発令したことを明らかにしています。
詳細な作戦内容については国家機密として公表されていません。
専門家によりますと、ゼメラは三年前にも出現し、その際には巡航ミサイル、電磁砲、高出力レーザー兵器など、あらゆる対怪獣兵器が効果を示さなかったとのことです。
政府関係者は、
「今回は新たな対怪獣戦術を投入する」
とのコメントを発表しています。
しかし、その詳細については一切明らかにされていません。
国民の皆様には、SNS等に流れる未確認情報を拡散することなく、政府および自治体から発表される公式情報をご確認ください。
繰り返します。
本日午後三時四十二分、群馬県浅間山南麓において特定災害怪獣ゼメラが出現しました。
付近住民の皆様は、速やかに避難してください。
「あー、怪獣、もうだめね、死ぬまでには素直になれなかったね、馬鹿は死ななきゃならないってこのことね!」
Xの通知が来たので、チラッと見て、目を見開いた。
「君の恋の力が日本の未来を救う!」
そんな仰々しい広告が目に入ってくる。
「本当、そんな素敵なことがあったらいいわね」
ティアナはそんな風にため息をつく。
「恋の力を見せつけてくれたなら1000万円プレゼント!」
ティアナは避難場所にいて、怪獣を前にしてやることがなかった。
もしも恋の力が日本の未来を救えるなら、そんな自分の願いが心から湧き上がってきた。
「もし世界が滅びるってわかってるなら遺言代わりにここに想いを告げることにして死ぬことにするわ」
近くにいる怪獣を見て、覚悟し、そう言って、ティアナは自分のあらん限りの想いを応募にぶつけた。
※
修也が送信ボタンを押す直後、スマホが鳴った。
『マッチングアプリ純愛発掘部署。自衛隊特別支部 恋愛担当官 恋染 愛次郎でございます、あなたは査定の結果、合格いたしました。』
「え?」
すると、1分後。
ぶうううううううううん。
黒いリムジンが俺の前に現れ、サングラスをつけた男たちが現れた。
「黒薔薇修也様ですね、今すぐ来ていただきたい」
「えええええええええ! どういうことおおおおおおおお!」
「自衛隊特別支部 マッチングアプリ純愛発掘部署 恋愛担当官 恋染 愛次郎でございます。あなたは我々のメンバーに相応しい人材と判明しました、あなたを連行します」
「これって誘拐じゃ? なんでえええええええええ」
修也は黒いリムジンへと謎の男たちのもとへと運ばれていった。
※
気がついた時には、テレビで見た怪獣ゼメラの前にいた。
「俺、死んじゃうって!」
巨大な怪獣ゼメラはあたりを火を吹いて溶かしていた。
「なんなのなんなの!」
聞き覚えのある声がしたので、そちらに目を向けた。
その世界一美しい声の持ち主はティアナだった。
「ティアナどうした?」
「ついてこないと、修也がどうなっても知らんぞって言われたから……」
そう言って、ティアナは指をもじもじと合わせていた。
恋次郎は修也に手紙を渡した。
「まぁ、とりあえずこれを読みたまえ」
「だめえええええええええええええ!」
ティアナがじたばた暴れているが、修也は手紙を読み始めた。
修也の頭に銃をつきつけられているからだ。
ティアナが涙目にもなってることに罪悪感を覚えつつも修也は手紙の内容に意識を向けた。
※
拝啓 かっこよすぎて神様より尊い黒薔薇修也へ
いつも顔を見ることができなくてすいません。
あなたがかっこよすぎるのが悪いんです。
あなたが私を助けてくれるたびにすぐに逃げてすいません。
だって、あなたの優しさに応えることができないから。
あなたに対してあやまりたいことがたくさんあります。
何よりも私はあなたのことが好きだということをできない臆病な女ですいません。
今ここで宣言します。
あなたのことが好きです。
今回のことが愛の試練と言われて、勇気をやっと持つことのできた私の歩みの遅さを許してください。
※
「もうやだ私ったら、恥ずかしい」
隣のティアナも顔を覆っていた。
「怪獣を倒すためだもんな、仕方ないよな」
修也はそっぽを向いて、不敵に笑った。
「ティアナ、かわいく泣くのをやめて、いい加減おとなしくなれ」
修也の顔は真っ赤である。
「ひくひっく」
ティアナはまだ泣き続ける。
かわいく泣くと言われて喜んでいるからでもある。
「おいっ、そのうるさい唇を塞がれたいのか?」
「別にそんなんじゃないわよ、私の唇をふさぐ? やれるもんならやってみなさいよ」
修也に挑発されて、ティアナは唇を修也の方へと突き出す。
「国を助けることだしにいちゃいちゃしないでくれるかな!」
愛次郎は大きな声をあげた。
「国を救うためだもんね、私たちはロミオとジュリエットみたいなものだけど国が滅んじゃしょうがないもんね」
「君たち本当面倒くさいね!」
恋次郎は呆れたのかわざと大きな声をあげた。
「ところで君たちをここに呼んだのにはちゃんとわけがある。まずは説明させてもらおう、神田橋博士、よろしくお願いします」
神田橋博士と呼ばれる人物が修也たちの前に現れた。
「我々は怪獣の弱点は必殺光線、古代兵器、特殊な鉱石、心臓のコアと人類は思っていた」
「違うってことですか?」
修也は神田橋博士にそう尋ねた。
「やつは浅間山に棲んでいて、口からの亜硫酸ガスで付近の色んな生物が死滅してしまっている。背中の殻で覆われている部分にあり、我々の持つ兵器では何一つ通用しない」
「じゃあどうしろっていうんだ!」
修也はキレた。
「慌てるな、黒薔薇少年、博士が一つだけ発見したことがあるんだ。博士お願いします」
愛次郎が声をあげた。
神田橋博士が眼鏡をクイッと上げた。
「怪獣とどんなに対話しようとも懐柔することはできなかった。」
「うっせぇよ、さっさと言えよ、ふざけてる場合か!」
「神田橋博士に失礼だぞ!」
「うぐぐ」
神田橋博士は全く気にせず、話を続ける。
「うむ、怪獣はリア充に嫉妬しているんじゃないかと!」
神田橋博士は簡潔に調査結果を話し始める。
眼鏡をクイッと上げ、iPadを通じてレポート結果を見せた。
「三年前、我々は怪獣ゼメラに対し、ミサイル、レーザー兵器、電磁砲、古代兵器、特殊鉱石など、人類が考え得るあらゆる攻撃を試した」
レポートに「失敗」の文字が並ぶ。
「しかし、一つだけ不可解な現象が起きた」
突如、不思議な動画が流れ始めた。
避難中の高校生カップルが、恐怖のあまり抱き合っている映像だった。
その瞬間。
怪獣が突然苦しみ始めた。
「我々は当初、偶然だと思った」
神田橋博士は次の動画に切り替える。
プロポーズの映像、結婚式の映像、文化祭の告白映像を怪獣に見せた動画を次々と再生する。
いずれにしろ、怪獣が苦しんでいた。
「研究の結果、怪獣の体内には『孤独粒子』が存在し、恋愛エネルギーを浴びると怪獣細胞内で共鳴を起こし、制御不能な連鎖反応を引き起こすことを発見した」
神田橋博士は胸を張った。
「そこで我々は国家予算三百億円を投入し、恋愛エネルギー研究所を設立した」
「何やってんの!」
「国の一大事なんじゃぞ」
神田橋博士は即答した。
「三年間の研究の結果、判明した」
恋愛エネルギー = 好意 × 純愛度 × 恥ずかしさ²
「これを我々は『恋子力学』と呼んでいる。」
「無駄にリアルなのやめてほしいわ」
「さらに重要なのはここだ」
神田橋博士がiPadの画面を切り替えた。
「恋愛エネルギーは、付き合ってから急激に減衰する」
「え?」
「初告白を100とすると」
・初デート……92
・初手つなぎ……98
・初キス……487
・新婚一年目……63
・結婚十年目……28
「リアルだな!」
「だから我々は出来立ての両想いしか採用しない」
「そんな理由!?」
「なお、ツンデレ同士は照れによるエネルギー増幅が確認されている」
「え?」
神田橋博士は修也とティアナを指差した。
「君たちは逸材だ!」
『嬉しくない』
「恋愛エネルギーはE=mc²を応用した恋愛質量変換装置により増幅される」
神田橋博士は胸を張った。
「つまり、恋愛エネルギーを浴びると孤独粒子が暴走し、怪獣は自壊を始めるということだ」
恋次郎はウィンクをしてきた。
「恋の力は偉大って分かれば十分だよ」
神田橋博士が右手をかざした。
「我々人類を今日まで繁栄させたのは恋の力。さぁリア充爆発させろ」
神田橋博士が言い終えると、恋次郎はため息をついた。
「冷やかしも含めて、応募者なんて何十万人もいたけどね」
恋次郎は俺たちを指さした。
「君たちの恋愛エネルギーは過去最高値だった。査定の結果、両想いでありながら互いに告白していない状態は極めて希少だった」
『りょ、りょ、両想い!』
「100点満点中、120点だ」
恋染愛次郎はかっと目を見開いた。
「さぁ、恋の力を見せ付けて、1000万円プレゼントしよう!」
「本当に1000万円手に入るんですか?」
「あー、怪獣災害特別法第14条によるものだ。今こそ国家のためにラブラブしてくれ、黒薔薇少年、蓬莱院くん!」
恋次郎はにやりと笑うと同時に作戦が開始となった。
※
「リア充を撲滅してやるううううううううううううう!」
怪獣は怨念を口にしながら、火を吹いていて、あたり一帯を炎の海としていた。
今回の襲撃ポイントはディズニーランドだった。
自衛隊は千葉県九十九里浜あたりで作戦準備を整えた。
「作戦名 黒院作戦 開始!」
合図を開始し、号令が始まった。
「3」
「2」
「1」
自衛隊が点火した。
『リア銃、発射!』
カプセルが発射されて、怪獣の前に敷かれたコースターを駆け抜けはじめた。
「思う存分、いちゃついてこーい!」
自衛隊が敬礼をして、修也とティアナを見送った。
サムズアップをして、綺麗な笑顔を向けてくる。
悔しそうに泣きつつ、歯を食いしばり、サムズアップをしている隊員もいた。
いや、あなたがまず作りなさいよというのを修也はツッコむことをやめておくことにした。
「どうしてお前といちゃつかないといけないんだよ」
「こっちのセリフよ」
修也とティアナの口論が始まる。
お互い、怪獣の前でキスをしろだなんて、改めて恥ずかしくなってしまっていた。
怪獣ゼメラが殺意を見せてきた。
「リア充、爆発しろおおおおおおおおおおおおお!」
「さっさと愛を示せ!」
怪獣の目の前を通るとき、恋次郎の合図が聞こえた。
「もう観念しろ!」
「あんたこそ!」
お互い、命の危機が感じて、吊り橋効果だろうか、修也とティアナのムードが最大限高まり、熱くて優しいキスをした。
その瞬間、自衛隊は一斉に動き出す。
「20個のスクリーンすべてを展開して、キスを見せつけろ!」
「ムードいっぱいな音楽100dBで怪獣の前で流せ!」
「ハートマークの花火も上げろ!」
怪獣ゼメラはそれらを目にした瞬間。
「ぐぎゃああああああああああああああああああ!」
激しい咆哮を怪獣はあげた。
「そんなものを見せつけるなああああああああああああ!」
「国を救うために仕方ないんだからね!」
ティアナは目を瞑りつつ、怪獣に全力で叫んだ。
「お前らがイチャイチャしたいだけだろぅ!」
怪獣ゼメラの叫び声など気にせず、修也とティアナはキスが盛り上がり、舌を絡ませ始めた。
「ディープキスをするなあああああああああああああ」
怪獣ゼメラは怒り狂った。
「恋の力を量子力学に基づいて変換いたします。この恋の質量は100g。E=mc²により、噴射します、ツン度0%、デレ度100%、エネルギーチャージ完了、発射します」
修也たちを取り囲んでいる機械がそう告げた。
『ラブラブビーム!』
修也を囲っている球体からビームエネルギーが発射された。
「俺をダシにしていちゃいちゃするのをやめろぉ」
怪獣ゼメラはやられていった。
「本当にやっちゃったよ」
修也は呆然とそう呟いた。
しばらく修也とティアナは怪獣のやられていく姿を見て、ぼーっとしていたが、再びいちゃつきはじめ、自衛隊に引きはがされるまでディープキスを続けてるのであった。
※
「よくやった、黒薔薇少年! 蓬莱院くん!」
恋次郎は修也とティアナの頭をわしゃわしゃとなでる。
「まったく、毎回初々しい出来立ての両想いカップルを探すのは大変なんだぞ」
恋次郎は遠い目をする。
「恋愛エネルギー会議で、10年目のカップルは28%低下したって結果があったが、仕方なく3年目のカップルのラブラブビームを使用した際は、怪獣に指をさされ、大爆笑された時の屈辱と言ったらなんたら」
「どうしてそこまで頑張るんですか?」
修也は不思議そうに恋次郎に尋ねる。
「実はだな、我々は日本の少子高齢化にも貢献しているのさ」
「そんな国家ぐるみでの事業が陰で行われていたんですね」
恋次郎はにこっと修也とティアナに向けて笑顔を向けて、封筒を渡す。
「約束の1000万円だ。このお金は国を救ってくれたお礼と今後の幸せな夫婦生活を祝福するささやかな餞別だよ」
『ありがとうございます』
修也とティアナは二人そろって、お辞儀をする。
すぐに我に返って、修也もティアナも顔を赤くする。
「はっはっは、末長く爆発してくれたまえ! 二人ともアディオス」
修也とティアナというカップル誕生に、自衛隊員全員が敬礼と笑顔で見送ってくれた。
明日も自衛隊は少子高齢化すらも救っているのだろうか。
そう思う修也とティアナだった。