カストロは最強だ。
私がそれを証明する。
『さぁ───いよいよです‼︎ ヒソカ選手
いよいよだ、と
二年前、カストロは目の前の男──ヒソカ=モロウに敗れ、洗礼を受けた。
それをキッカケにカストロは念能力に目覚め───
「感謝するよヒソカ。お前の洗礼がなければ、私はここまで強くはなれなかっただろう。……
「………………? 何の話かな♣︎」
男は『HUNTER×HUNTER』のファンだった。
男は
カストロはヒソカに敗れ、殺される。
理由は単純だ。
カストロは能力選びを間違えたのだ。
念能力には系統がある。
放出系、強化系、変化系、操作系、具現化系、特質系。
それぞれの系統には相性があり、相性が悪い能力は習得が困難になる。
カストロは武術の達人であり、天性の資質は強化系。
しかし、彼が選んだ念能力は
具現化系も操作系も強化系のカストロとは相性が悪く、彼は才能のほとんど全てを苦手な能力の習得に費やしてしまった。
ヒソカの言葉を借りるならば、
『原作』のカストロは能力選びに失敗したが為に死んだ。作中ではそう語られる。
「悪いがヒソカ、出し惜しみはなしだ。私は全身全霊をかけて、お前という
「イイね……それでこそだ❤︎」
カストロは両手を構える。
ヒソカもまた、油断なくカストロを見つめる。
直後。
審判は叫んだ。
「始め‼︎」
その瞬間、ヒソカは目を見開く。
視界の中で
──否。否である。それは幻でも見間違いでもない。
つまり。
「くっくっく♦︎
「
──あえての
『原作』と寸分違わぬ念能力。
(いいや、違う)
しかし、
(間違いなどではない。無駄遣いなどではない。
「───
ボンッ‼︎ と。
背後からの一撃で、ヒソカの右腕が弾け飛ぶ。
ダブル、だけではない。視界に映る二人と背後からの一人。
「トリプルか……♠︎」
「
それが
『これはどういう事でしょうか⁉︎ なんとカストロ選手が十人に分裂‼︎ クローン人間か──⁉︎』
実況と共に客席がざわめく。
十人のカストロが、ヒソカを囲んで立っているのだから。
「私は念によって私の分身を九体作り出す。たかが十倍と思ったか? 違う。完全に通じ合った私達の力は百倍にも千倍にも跳ね上がる!」
瞬間、カストロ達が殺到する。
数が厄介なのではない。
たかが十人、そこらの素人が集まってもヒソカは脅威に思わない。
けれど、カストロが十人だ。
掌を虎の牙や爪に模して敵を切り裂く
カストロが念やオーラを習得していない二年前の
『ヒソカ選手避ける避ける! 右腕を失ったとは思えない軽やかな足取りで、十人のカストロ選手の攻撃をもろともしません!』
(正確には避けるしかない、と言うのが正しいけど……♣︎)
一撃でも攻撃を受けて足が鈍れば、十人分の拳がヒソカを喰い殺す。
(武術は二年前よりも強くなった♦︎ それは認めよう❤︎ でも、念に関しては──期待ハズレだよ♠︎)
具現化系・操作系、『
自分と寸分違わぬ実力を持った分身を生み出す能力。
確かにそれは強力な能力だが……強化系が選ぶには誤った選択肢だ。
カストロがもしも強化系でなければ、更に別の能力──例えば、分身と自身の位置を入れ替えるなど──を活用できた。
しかし、カストロは苦手な具現化系と操作系の能力を習得するのに、自身の才能の大半を浪費している。
そうだ。
強化系が分身を生み出す能力を習得するなど、非効率にも程が───
(
その時、ヒソカの脳裏に疑問が過ぎる。
通常、強化系は具現化系や操作系に向いていない。
分身を生み出そうとしても、どうしたって限界がある。
ましてや、カストロはたった二年前に念能力に目覚めばかりの素人。
(
数十を超える拳の交錯の中で、ヒソカとカストロの目が合う。
驚愕を込めた視線に、カストロは笑って返した。
「
「
分身を生み出す念能力は強化系にとっては弱い。『原作』でよく知っている。
しかし、それを理解した上で選んだのは、
「強化系に必殺技はいらない。強化系は基礎的な能力で他の系統を上回っている。ならば、私が考えるべきは複雑な念能力ではない。
「つまり……❤︎」
「そう、つまり──『
十人のカストロが鍛錬をすれば、十倍の速度で成長できる。
つまり、二年の時を経たカストロは──
無論、カストロは初めから九体の分身を生み出せた訳ではない。
最初は一体だけだった。才能溢れるカストロと言えど、苦手な系統の念能力では上手くいかない。
だが、その時点で成長速度は二倍。そして苦手な系統とは言っても、カストロ自身が成長すれば少しずつ念能力も成長する。
ダブルはトリプルに。
トリプルはクアドラプルに。
カストロが成長すればするほど分身数は増え、分身数が増えるほど成長速度も速くなる。
つまり、カストロの成長速度は指数関数的に速くなるのだ。
(『原作』の
『原作』のカストロに師はおらず、彼は独学で念能力を習得した。
手探りの状態では鍛錬も難しく、念やオーラという言葉を見つけるのすら難しかっただろう。
故に、彼は『
けれど、この
彼には『原作』の知識があった。
彼は念やオーラを既に知っていた。
つまり、初速において
だからこそ、すぐに『
そうだ。そうなのだ。
カストロは能力選びを間違えたのではない。
ただ時間が足りなかった。まだまだ続く道の途中で、完成したと思ってしまっただけのこと。
「我が二十年の重みに敗れろ! ヒソカ‼︎」
十人の一斉攻撃。
とうとう回避にも限界が訪れたのか、一体の分身の
「──
『おおッと⁉︎ ヒソカ選手の左足が爆発! これでヒソカ選手はもう走り回れない──⁉︎』
明らかな異常。
何らかの能力を使ったとしか思えない破裂。
けれど、その考えをヒソカは即座に否定した。
(能力ではないね♦︎ 彼の
「……ああ、そうか♠︎
「ご明察!」
水見式。
それはオーラの系統を調べる方法。
葉っぱの浮いた水に手を近づけ『
そして、強化系の場合は
これは水だけではなく、コーヒーなどの飲料物にも起こる事が確認されている。
つまり、純粋な水ではない液体──
血液を水見式のように反応させ、内側から血管を破裂する。
『ヒソカ選手っ、動きを止めた──‼︎ これは決まったか──⁉︎』
観客席から見て、勝敗はもう決まっていた。
ボロボロのヒソカと無傷のカストロ。
どちらが勝つかなんて分かりきっている。
しかし、カストロは誰よりもヒソカを信じている。
故に、最大限の警戒を込めて拳を振るう。
「まずはお前の四肢を奪ってからだ、ヒソカ……‼︎」
右足だけで立つヒソカを、十の拳が襲う。
頭や首の防御には成功するが、右腕と左足に加えて左腕までもが食い破られる。
────
(何だ、手応えが──)
それも当然だろう。
「
「がっ、」
「キミが本体だろう?」
それは『原作』でも語られていた弱点。
分身は通常の自分を
脳が揺れる。
そして、
「念によって分身を作り出すには高い集中力が必要。一撃でも攻撃を受けてはならないのは、ボクだけじゃなくキミもだった♠︎」
傍目には
けれど、実際には
確かに
ならば、後は簡単。
それを見抜いたヒソカは、相手の虚を突いて一撃を当てれば良いだけなのだから。
(そう、か。左腕は……
ヒソカの念能力は二つ。
自分のオーラにガムとゴムの性質を与える『
その上で傷口をハンカチで覆い、自身の念能力──『
理由は一つ。
ただ、
そして、狙い通り
『
(本当は彼の体にも『
ドドドドドッ‼︎‼︎‼︎ と。
ヒソカのトランプが
左腕のオーラは先ほどの一撃でカストロの顎に付着し、左腕から飛び出したトランプを『
呆気ない幕切れ。
(まだ息はあるね♣︎ そうだ、次のキミに期待し──)
「だめ、だ。……ヒソカ、最後までやるぞ」
「──────ッ‼︎」
しかし、
『
突き刺さるトランプは、体に纏ったオーラで凌いでいた。
「言った、だろう。『
「……そうだね♦︎ キミの言う通りさ♠︎」
ヒソカは笑った。
体が痺れ、能力が封じられようと、敵は二十年間鍛錬を重ねたに等しい強化系。
対するヒソカは能力こそ使えるものの、両腕を失って片足を負傷した状態。
戦いはここからだ。
だから、ちゃんと。
「──最後まで
直後。
男と男の、衝突があった。
「キミは素晴らしい敵だった……❤︎」
血が出ていない所がないくらいの大怪我。
両手片足が使えないヒソカは、這うようにしてリングから退場する。
「お疲れ。随分と苦戦したみたいだね」
「…………。ああ、マチ……♦︎」
「あんた自分で呼んだこと忘れてたでしょ」
マチはヒソカがあらかじめ呼んでいた念能力者。
少女はヒソカの千切れた腕を拾うと、糸に変化させたオーラ──『
「見事だね……❤︎」
「あんたに忘れられる程度の腕だけどね」
「それは仕方ないさ♣︎ 彼があまりにも素晴らしかったからね……❤︎」
ヒソカは過去に興味がない。
そんな彼でさえ、
それほどまでの衝撃。
あえて不得意な系統に挑むという選択。
「そう、何でも良いけど。お金はもらう、か……ら────」
「な、に……これは──ッ」
「ははは……‼︎ キミはそこまで──」
マチの手が止まる。
ヒソカの笑みが深まる。
ズズズ……‼︎ と。
リングの中心で死んだはずの
「馬鹿な……‼︎ あの男はあんたが確実に殺したはずでしょ⁉︎ 死んだ後にオーラが──」
「──
「…………っ⁉︎」
念能力は、使い手が死亡した後に発動する事もある。
そして、深い恨みや未練を持ったまま死ぬとその念はおそろしく強く残る。
では、
彼が遺すとすれば、それはどんな念なのか?
──そんなもの、決まっている。
「
『
ダブル。あるいはドッペルゲンガー。
一説によると、出会えば死ぬと噂される存在。
けれど、この瞬間においては因果が逆転している。
ダブルと出会って死ぬのではない。
死んだからこそ、ダブルが生まれる。
(しかも、このカストロは前よりも更に強い……‼︎)
オーラを見るだけで分かる。
ただの同一存在ではない。
元よりも強くなって再誕したカストロだ。
そもそも、カストロという男の念能力は自己愛から来るものだった。
分身が汚れまで再現できないのは能力としての限界ではない。
故に、
現在よりも強い
「限界か、ヒソカ?」
「…………そう、見えるかな?」
「いや、いい。何も応えるな。……そうだな、これで引き分けとしよう」
死にかけのヒソカを見下ろし、生まれ変わったカストロは笑う。
「前回は私の負けだった。しかし、今回は私の勝ちだ」
「一回死んだのに……?」
「生き返っただろう。だからノーカンだ」
「………………」
屁理屈のようだがヒソカは反論しない。
今から戦えば、敗色濃厚だと自覚していたために。
「これで一勝一敗。だから次だ」
「──────」
「
それは情けの言葉ではなかった。
カストロにとって重要なのはヒソカを殺す事ではなく、ヒソカに勝利すること。
本当の意味での勝利を掴むため、決着を延期しようと言っているのだ。
時間はカストロに有利する。
二年でここまで登り詰めたカストロは、時間を与えると更なる強さを得るだろう。
それを理解した上で、ヒソカは笑って答える。
「次はボクが
「その時はフロアマスターとしてお前を出迎えよう」
既存の念能力の強化フォームってオリジナル念能力か……?