王位を継ぎそうにない好みのショタ第3王子を成長するまで愛でて放流する気だったのに気付いたら王妃にされて囲われてしまったんだけれども(白目) 作:ステラ
今まで存在していた互いの身分を隔てていた透明な板がなくなり、可愛い義妹ポジに落ち着いてしまったショコラさん本人はとっても満足。
でも陛下と再婚させるのはナシにしませんか???
目まぐるしく周囲が動き、ようやく正気に戻ったそこにはなんとも言えない表情をした陛下と「ではあとはおふたりでご機嫌よう♪」とそそくさと部屋から出て行った主の背中があった。
ああ、そうだこのまま媚薬入りのお茶を飲まして2人でおせっせさせるのが主であり義姉であるシンシアからの命であった。そうだそうだ。
「そぉーい!」
バシン! と陛下が飲もうとしていた紅茶を手から払った、不敬にも思えるがこの程度でどうこう思う程お互いに知らぬ仲ではない。
「ど、どうしたショコラ?」
「その、いや……とにかくこの紅茶はおやめ下さい。新しくいれてもらいましょう」
ショコラにとって真の主人は何時だってシンシアである、しかしクレスを友とせよと命じたのもシンシアであり今では掛け替えのない親友のようなもので……。
つまるところ特に秘密だと言われた訳でもないので陛下にシンシアが婚活(※陛下と円満に離婚するための前向きな活動、略して婚活)している事を(言っちゃダメな事以外は)話したのである。
自分にとっても決して他人事ではないからだ。
何故か今では名目上とはいえ孤児上がりの情婦が公爵家の四女にまで
というかどういうシンデレラストーリーだ、あまりにも作為的なこと以外は物語として我が事ながら出来すぎていると言って過言では無い。
「……そうか、シアはそんなにも(王妃である事に)疲れていたのか」
「ハイ、そう(ショタじゃなくなってぴえん)なのです」
微妙に食い違っていようが大筋が合ってればそれはまあ特に会話に問題ないということで。
クレスにとってのシンシアの真実は、幼い第3王子をあらゆる政敵から己が傷付きながらも守護し続け慈しみ育ててくれた唯一の救いであり女神そのものである。信仰と愛のハーフミックス。
実際は好みのショタを育成して美味しいところだけ頂いてポイ〜する為に婚約していた……なんてのは当人が知らなければ真実ではないのである。
歴史書にも尤も愛に満ち溢れた女性として語り継がれるのだからこれが真実。よしっ。
「シアの幸福のためなら何でもしてやりたい……だが僕はシアを失うことに耐えられそうもない。どうにか彼女がもう二度と(心ない者たちから)傷つかずに生きていけるようにしたい」
「そうですね、私ももう(ショタじゃないぴえんと)泣き腫らす王妃…お義姉さまを見ていたくありません」
身分を超えて親しい友人として付き合うのはともかく、陛下の再婚相手としての未来は御免こうむる。
クレスが気に入らないとかではなく、ただただ彼にとって最愛なのはシンシアでありシンシアにとって最愛(だったの)がクレスなのだ。
そこは不可侵な領域、間に挟まれたくない。
端的に表すとこの2人はショコラの言わば推しであった。
王城からの帰り道。
すっかり貴族の一員として立派な馬車や護衛の騎士たちについ先日まで同僚だった侍女やメイド達を従えるのにむず痒い思いをしながらダイショスターキ邸へと帰宅したショコラの目に映ったのは、呑気にお見合いプランを実行し浮かれている主にして義姉からの熱烈なハグだった。
昔は
「おかえりなさいショコラ、陛下とのデートは楽しかったかしら? ね、どんなことを話したか聞かせてちょうだいね♪」
このショタコン、名目上は新しく義妹として迎え入れたショコラを今後はよろしく……的な理由で誤魔化しつつ実態は自分の夫であり国王である相手へ堂々と次の女を宛てがうというとんでもない事をしているのだが、そんな事をしておきながらそれはそうとして恋バナで盛り上がろうとしているのだ。
本来ならドン引き確定の行いだが、ショコラからすれば「もう、仕方ないですねぇ」と思わず返してしまう程度の話。
慕っている主からのお願いに抗うという選択肢は端から存在していないのである。
従者は主にならうもの、とはいえだ。
今では義姉妹なのだから尚更シンシアからの心の距離は近く、それはかつて幼かった陛下1人に向けられていた愛情の発露だ。
余計に陛下が可哀想でならないショコラであった。
「陛下とはまあ(離婚回避に向けて)とても前向きに今後についての話をしてきましたけれど」
「まぁまぁ♡やっぱり歳が近い者同士だと話が弾むのね、あの方ならショコラを不幸には決してしないわ。大丈夫よ、わたくしは重い病気を患ったとして僻地に引っ越す予定だから恙無く離婚して最短3日で再婚から結婚式まで終わらせられるようにスケジュールを組んでおくから!」
このショタコン、伊達に1人で第1王子と第2王子の勢力相手にやり合っていないので根回しや仕込みに関しては他の追随を許さない敏腕なのである。ゴリ押しとも言う。
その無駄に広い人脈と、もはや呪い地味ためちゃくちゃ良い外面と救国の逸話が相まって貴族はもとより一般市民からも慕われている理想の国母。
そう見えればそれが真実。
あまりにも特別視されすぎて未来で信仰の対象にまでなる彼女が本気で裏工作をしたら、恐らく何の問題もなくこのまま離婚が成立してしまうだろう。
どうにかしてそれはやめて欲しい。
「あの、お義姉さま……お義姉さまが陛下と別れたい気持ちは重々承知していますが、何もすぐに別れずとも今の様に別居をして偶に会うとかの緩い感じに出来ないでしょうか?」
「ん〜……そう?」
「……!」
悩んでいる。
悩んでくれているのだ、それがとてつもなく嬉しい。
そう、ショコラ自身最近になって感じてきたのだがシンシアは結構な具合で自分に優しいのである。どうでもいい相手からこんなセンシティブな話題に口を挟まれたら「
そうでもなければわざわざ義理の妹にしなかっただろうしクレスに宛てがおうとも思わなかっただろう。
そういう気遣いの前提となる条件に“ただし非ショタである”という残酷な真実が挿入る事で冷たい人間にも思えるが、ショタに向かう熱い愛情より数段劣るもののそもそもが愛情深い人間なのである。
致命的に
「でも〜わたくしこのまま王妃で居続けたくないし、
「……っ!」
今や心がだいぶ離れた陛下とは違い、可愛い義妹がそこまで言うなら譲歩しても良いけれど──と心が揺れ動いている姿に希望を見出すショコラ。
とはいえ面倒くささが勝ったら我が道を行くであろうことは織り込み済み、何とか離婚阻止にはならずとも妥協点にまで持ち込みたい所だ。
「今陛下は取り潰した領地や新しい貴族籍の再分配や属国との交渉でお忙しくなる(というてい)そうで、お義姉さまとお会いし辛くなる(我慢する)と言ってましたよ」
「あらまぁ……なら、そんなに急いで離婚しなくてもわたくしが引っ越すだけでもいいかしらねぇ」
よしっ!
確かな手応えを覚える。
実際のところ仕事量だけで言えば陛下が立太子されるまでの長期間忙殺されたと言って良い仕事量だったのだから、まぁクレスが王位を継承しその立役者たるシンシアが名実ともに(本人にとっては不愉快だが)風の女神として崇め奉られている彼女が何をしていようが不平不満を漏らす人民はあまりにも少ないだろう。
何せ戦場においては
これ迄の過程は華美に装飾され誰もが知る愛と希望に満ちた夢のある現代の御伽噺として国民には広まっている、それがどれだけ虚飾に塗れていようが実際に得た成果は同一なので誰も口を挟めはしない。
「そうですよ! 程よい距離感で、いつかは私とも親しい仲(無二の親友)になっていきますよ。はい。うんうん」
「そうですわねぇ……じゃあ、取り敢えずドキッ☆2人は結ばれ愛の結晶を育むのであったプランは先送りにしましょうか」
危 な か っ た !
このまま何もせずシンシアのする通りに動いていたら即懐妊させられ退路を無くされた上で王妃に
本当に危なかった。
ヤると言ったら本当にヤる人なので、マジで本人から撤回させた意味は大きい。
とはいえ今後も注意が必要だろう。
なにせいつ暴発するとも分からない爆弾なのである、取扱にはいっそう注意をしなくては。
他所から見たショタコンさん。
外面だけは本当に良いので何も知らない相手は即信用してしまう、それは完璧に罠である。