地球連合軍、主要加盟国の一つである大西洋連邦が主導したG兵器開発に至るまでには複数のステップがあった。
1、MSそれ自体の徹底的な調査。2、対MS兵器の研究。3、検討した研究を踏まえた戦術兵器の開発。4、開発した兵器の有効性の試験と戦技研究。5、有効性を踏まえた量産配備である。
もちろん前後する可能性や並行、混合して進めることはごく普通であり、ステップとしては基本的に5段階を踏むことが多く、連合軍にとってMSという未知の兵器開発に落ちてステップの明瞭化はメリットが大きかったのだ。
そしてその結果、第二段階の研究について、研究委員会の結論は明瞭だった。
「対MS兵器はMSにこだわる必要はなく、既存兵器と同様に砲兵火力によって掃討すべきである。そして他兵科の兵器資材等が有用ならば転用されなくてはならず、特に現時点においては対戦車地雷を用いたMSの跳躍能力を超えた幅の地雷原でMSの足を破壊し、作戦行動能力を破壊したのち集中砲火により撃破することが有効である。
しかし、対戦車戦闘において歩兵直掩の牽引式対戦車砲が対戦車戦の主力とならず、戦車には戦車で対応することが求められた歴史的観点からすれば、MSにはMSを用いる事が有用と判定される。
よって第一はMSを撃滅可能な数の長射程重火砲に機動性を与え、かつ大量投入による面制圧でMSの機動性を封殺すること。
第二にジンに対し作戦行動能力において優位に立てるMSの開発を提言する。
第三に連合軍MSの開発は対MS戦闘を前提とすることで、既存兵器に対して優位を確保する事を目指したジンに対して、優位を確保する事を期するものである」
というものであった。そして次の第三段階、実機製作の段階で計画の主導権を握ってスタートを切ったのが当時大西洋連邦
地球連合軍にとってにおいて最初に試作されたMSは鹵獲したジンをもとにジンとの交戦に耐えうる機体として開発された。機体名称は「Zerstörer」。ドイツ語で駆逐機を意味し、機体個別の識別名というより、計画上の分類に近い。
地球連合主要加盟国であるユーラシア連邦と大西洋連邦の共同計画であるG計画前段階としてMSの実用化を目指し後にG兵器へと発展することなる次期作戦機計画への叩き台として作られたXMS-000 Zerstörer。それがこの機体だった。XMSも単なる試作機以上の意味を持たず便宜上の型番であり、名前すら次期主力戦車開発と誤認させる事を目的として、同時に設計技師がドイツ系大西洋連邦人だったこと、加えてCE70年に開始されたことから大西洋連邦では
基礎的な設計方針として求められたのは「モビルスーツ」というモノを理解すること、そして理解したうえで「ジン」と対応出来るモノだった。ジンで用いられているバッテリー方式やビーム方式の技術投入を一旦諦め、実弾兵器に重きを置いた機体だった。つまり地球連合軍のMSはその本質において高機動な自走砲という扱いで、高機動な自走砲に、自走砲の機能を潰さない程度の格闘戦を持たせるというのが開発方針だった。対MS戦闘を前提とした巨大な人型高機動自走砲。それがZerstörerであり、連合軍の定義ではそれを「モビルスーツ」と定義したに過ぎない。
動力源としては既存技術の延長としてガスタービン方式を活用、バッテリーはあくまで蓄電手段として用いられている機体で、基本性能においてはジンに匹敵する程度の機体として完成した。本機を軸に地球連合軍のMS機体開発は本格的にスタートしたのだ。Zerstörerの基礎設計の完了は計画提言から2週間で行われ、連合軍の突貫開発であるのと同時に、それは連合軍の兵器開発ノウハウの高さと言え、またそれ以上に連合軍の切羽詰まった状況がうかがえる。
とはいえ、最大のネックは機体ではなく、
MSに限らず軍用OSは人海戦術でローラー作戦的なバグ潰しするようなシロモノではない以上、新型兵器の開発は遅れるのが常だが、連合軍の開発は遅れに遅れ、遅延として処理するのが難しいほど遅れていた。
理由としてジンとは全く異なる、連合軍にとって生産しやすいMSである以上、流用が利かず、それ以前に暗号化されたOSの復号作業に時間は掛けられないと判断した為、完全に一から設計せざるを得なかったのだ。
まず、OSは基本的なソフトウェアシステムである基本ソフトウェアが出入力を担当し、中核となるMSの内部部品の直接の駆動を制御する制御系システムであるのだが、連合軍のMS用OSは基本ソフトウェアと制御系システムが連続する完全に垂直統合型とし、OSと制御系が不可分として設計されていた。これがネックだった。
本来、垂直統合型は悪いことではない。その機種専用として行うなら比較的制御に無理がなく、開発もスムーズに進みやすい。しかし連合軍の方針は少しズレていた。巨大な人型兵器のOSに戦闘機から流用された基本的ソフトウェアと、四肢を制御する制御系システムという本来全く別物の組み合わせは本質的に無理があったのだ。挙句、Zerstörer用OSの開発の遅れからG兵器用OSを開発する余裕はなく、途中からG兵器にも流用可能な汎用性をZerstörer用OSに求められた時点で設計方針は破綻していた。その機種専用のOSを求めながら、他の機体にも使えるOSというのは支離滅裂でしかない。ZerstörerとG兵器では機体の基本構成も設計思想も装備もまるで異なる。それでも連合軍は「時間がない」という理由から方針を改めようとはしなかった。結果、基本ソフトウェアが一応完了しているにも関わらず、技術部門は一旦基本ソフトウェアから手を入れ直さざるを得ずその分大幅に遅延していた。基本ソフトウェアへの手入れとして行われたのはより広範な制御系システムの受け入れ幅の拡大だった。つまり、基本ソフトウェアの出入力はそのままに、制御系の多数取り込めるようにすることだった。簡単に言えば、タイプCしか受け入れられない接続端子をタイプA、タイプB、Lightningの接続端子も追加して読み取り可能にするようなものだ。実際はもっと複雑だが本質はそこではない。
だが、連合軍はOSの開発完了を待たず、第二次MS整備計画、つまり次期主力MSの選考/技術試作実験機たるG兵器開発へと踏み切った。それほどまでに連合軍は時間に追われていた。
開発場所はオーブ領、先のZerstörer開発に引き続きヘリオポリスである。
しかしながらオーブ領で行われた開発は地球連合軍、特に計画を主導する大西洋連邦によって囲い込まれていた。オーブ側はオーブの企業がオーブ政府代理人として対応し、それはオーブ最大の軍需企業、モルゲンレーテ社が請け負った。つまり、大西洋連邦の軍需開発費の支払先は直接オーブ政府に支払われるものではなく、受注したモルゲンレーテ社に一旦支払われるというマネーロンダリングを挟んでいた。その額は外貨不足に喘ぐオーブ政府にとって戦時中最大の収入元として期待される額だが、その業務は選抜された「社員」という名のオーブ軍将兵が参加していたのだった。
当然大西洋連邦やユーラシア連邦は自らの最新技術について隠し、技術的優位性を保ったままオーブに負担だけを押し付けようとした。オーブもそれを承知で大西洋連邦やユーラシア連邦の技術者に対して
つまり、このヘリオポリスは地球連合軍として一枚岩の形に見える大西洋連邦が主導権を握りつつもユーラシア連邦とせめぎ合い、かつオーブが2ヶ国を出し抜こうとする情報活動の最前線だった。
ケイは車を走らせた。自動車専用道路を
検問所のオーブ官警から執拗なチェックを受けたり、不愉快な質問を受けたりしたが、ひしゃげた車止めや跡地となって焼け焦げた検問所の詰所、そしてどこかに飛んで行ったと思われるゲートのバー、散乱したコンクリートブロックは戦場の近さを示していたが、ケイに実感は薄かった。
歩兵銃を持った腕だけ投げ出されていたのが目に入った。検問所の誰かのだろう。それ以上深く考えず、ケイは車から降りて歩兵銃を手に取った。
無防備とか敵がいるかもしれないとか全く現実感が沸かず、そこに銃があるという理由でケイは拾った。
腕から抜き取った歩兵銃は血で濡れているわけでもない。ありふれたオーブ軍官警の制式小銃だった。手に持ったずしりと感じる重みは懐かしい。遊底が下がっていなかった。半透明でプラスチック製の弾倉残弾を確認すると弾はすべて残っていた。安全装置もかかったままで、抵抗する余裕なく吹き飛ばされたらしい。
手に取った歩兵銃の銃口を斜め下に向け、引き金に手をかけないようにしつつ、コッキングレバーを引いくと、遊底を下げ跳ね上がる遊底がカシャンと音を立てて戻った。やはり薬室には弾が残っていなかったようだ。猟銃として販売されている市販のライフルの制限は自動連射機能の問題であるため、残弾の確認、薬室の確認、装填などの動作には自然な慣れがあった。
何故か他の弾倉を探すという思いはなく、歩兵銃を車両の助手席に投げた。感傷もそこそこにタイヤが滑り、シートに押し付けられる感覚で加速を感じ、ケイは構わず本来封鎖されている区画に車を突っ込んだ。
今、ケイの頭にあったのはフーヴァー達のところに行かねばならないという脅迫的な認識だけだった。
やがて廃墟のような姿をしたB棟を見つけた。ケイの知るB棟は白い外壁で、B棟自体の立ち入りにもオーブ官警によるセキュリティチェックを受ける建物だったが、警備室は既に誰もいなかった。B棟自体にも着弾したのか、崩落した外壁により、中身が剥き出しになっている箇所もある。鉄骨や鉄筋がささくれだった姿を見せていて、周囲に舞っている埃は先より濃くなっていた。
遠くで爆発音がした。ケイは車両を降りた。歩兵銃を持って外階段を上る。フーヴァー達もB棟にいるはずだ。警備システムは戦闘の余波か、それとも
──馬鹿どもが、派手にやりやがったな。あんなところに道を造りやがって……。
そう内心で吐き捨てて、ケイは解放されている避難ドアを空けた。少し躊躇えば良かったと思いながらも、ケイはドアからB棟の中に入っていった。
ケイ達連邦系学生達が作業をしていた部屋はなかなか見つからなかった。
中には人の気配がなかった。埃っぽく、非常灯の明かりは視界を得るには全く不足していた。ゴーグルと暗視装置と防護マスクが必要だと思ったがケイは今さら戻るつもりはなかった。時折揺れる外からの重低音はまだ戦闘中ということを示している。つまり、今この瞬間、B棟に気を向ける余裕はない。落ち着けば封鎖される可能性が高く、持ち出しは不可能になる。今が最善の時間帯だった。
安全装置を外し、引き金に手をかけて背を壁にあて、銃口を前に向けて一歩を進み出した。
砕けた内壁の破片はB棟の廊下にも散らばり、剥離した天井の欠片が行く手を邪魔している。一歩一歩慎重に踏みしめながら進んでいると突然上階で足音がした。フーヴァー達がいるのか? とも思ったが、フーヴァーならこんな無防備なことはしない。では連合軍か? 外での戦闘音は続いていた。結論は一つだった。
──ザフト、か……。
直感した。ザフトも分かっているのかもしれない。それとも最初から狙っていたのか?
大混乱に陥っているだろう連合軍がコロニーの内部でMSとの戦闘に夢中になっている間、B棟を含む研究施設はほぼ無防備になるということを。HQとの交信で伝えてきた浸透部隊とはこの連中かもしれなかった。
改めてアンダーバレルを握り直し、ケイは壁に寄りかかって息を潜めた。
突然、上階で銃声が響いた。ケイは息を止めた。複数のアサルトライフルの連射する音と、やはり複数の拳銃の音が交錯していた。やがて沈黙した。
ケイは息を吐き出して天井に銃を向けたが、向けることの無意味さに気がついて辞めた。ケイは館内の構造を思い出した。B棟は館内の複雑さより、移動の利便性を優先した施設だ。上から鳥瞰すると長方形で、長方形の4隅に階段があり、同時に4隅に繋がる4辺は長大な廊下だった。
敵がどうするかわからないが、ケイは銃声のした箇所から一番近い階段を監視できる辺に移動した。廊下は鉄筋コンクリート製の打ちっ放しで、柱が動線に張り出している。身を隠すにはちょうど良かった。
いつでも撃てる準備をし、銃口だけを柱の陰から階段に向けてケイは静かに待った。
静かな廊下で自分の鼓動だけが耳の奥で聞こえた。呼吸が苦しい。新鮮な空気が欲しかった。今更ながら弾倉を探せばよかったと思った。1マガジンと短銃しかないなら戦闘は自殺行為だった。
その時、肌を撫でる気配を感じた。風が凪いだのだ。ケイはぞっとした。ヘリオポリスは宇宙コロニーだ。自然の風などあり得ない。大気管理システムが生きていていたとしても、ここは館内だった。大穴が開こうが、B棟の館内であり、しかも大穴の階とは別の階だった。肌で感じるほどの風をコロニーで感じるなど一つしかあり得ない。
──まさか気密が破れたのか!?
足音がしていたがケイは顔から血の気が引いていくのを感じた。それでも不用意に動けなかった。身体が金縛りに縛られたように動けなかった。
だがそれは思い過ごしだった。風は階段から流れていた。風に押し流されて、埃で塞がれた視界が少しずつ階下へ流れていた。どうやら大穴から空気が流れ、負圧の掛かっていた建物内部に流れ込んだということのようだ。やがて足音が再び聞こえ、複数人が階段を下りていくのを感じた。ケイには気が付かなかった。遠ざかる足音にケイは息を吐き出した。完全に気配が消えてからケイは上階に向かった。
上階はひどい有様だった。鼻を突いたのは埃っぽさではなく火薬の燃焼した臭いだ。鋭く、酸っぱい臭いはケイにも馴染みのある臭いで、風が流れた程度では流されなかったようだ。
銃声のした部屋はすぐに見つかった。扉が開いて弾痕だらけだった。中央のデスクに倒れ伏す背格好は見覚えのある背格好だった。手に持った短銃は戦闘発生後にどこからかパクったものだろう。軍用施設に短銃を持ち込めるほどここのセキュリティは緩くない。
見渡す限り室内に通信設備はなかった。
──通信も脱出も出来ずに、取り残されたか……。
ケイは何を言えばいいのか分からなかった。実感が沸かないのだ。昨日まで、否、ほんの数時間前に今日の予定を話して「今日は第四区画にいる、探りを入れてみるから頼むよ」と教えてくれた相手が骸になっている姿にケイはどうすればいいのか全く分からなかった。「遅かった」というような事すら考える余裕がなかった。
フーヴァーの亡骸は執拗なまでに弾痕があった。狙われていたのか、抵抗したから撃たれたのか分からない。
周囲に倒れ伏すのはおそらく連絡を経っていた護衛要員として派遣されていたはずのグループ4のメンバーだろう。皆、見覚えのある顔だった。全員が徹底的に射殺され、血溜まりに沈んでいた。デスクに倒れているのはフーヴァー1人だった。短銃とアサルトライフルではその火力差に圧倒されたのは想像に難くない。
ケイはじっと瞳から光の消えたフーヴァーの表情を見ているうちに、その首には見覚えのないネックレスがあることに気が付いた。
ゆっくりネックレスを外した。ネックレスに吊されていたのはペンダントトップだかロケットだかに見せかけたそれに不審を感じた。確かフーヴァーの押し花カードの絵柄は洋梨だったはずだ。ネックレスのペンダントトップも洋梨の形をしていて、なによりネックレスに吊るすには大きすぎるサイズだ。これがフーヴァーが意図を持って残していないとは到底思えなかった。ケイは洋梨のアクセサリーを手にして観察した。前後に引っ張るとカバーが取れ接続端子が現れた。
──記憶媒体だ。
フーヴァーの近くにはフーヴァーの身分証のカードも無い。ケイ自身のカードではフーヴァーの領域にアクセスできない。わけのわからない暗号文が表示されるだけだ。おまけにカードリーダーは流れ弾が当たったのか弾痕があり、壊れていた。もうケイの手元では内部のデータの確認が出来ない。
──これがフーヴァーが命賭けで守ろうとしたのがこの記憶媒体なら、中身は恐らく“あれ”だ。“あれ”が暗号化処理され記憶媒体に保存され、バックアップも消してあるならば残っているのはこれだけだ…………。
都合が良すぎる考えだった。ケイはこのあたりがロマンチストと言われる所以だろうなと全く関係のない事を思った。そんな無関係なことを考えて落ち着こうとした。
「ヘリオポリスで俺達の同胞、つまり連邦系学生が飢えている。オーブの政治が何であっても彼らを食べさせるべきだ」
フーヴァーはそう言って学生自治組織を主導した1人だった。ケイが書記ならフーヴァー自身も黒子の一人として副議長代理という肩書で学生自治組織を動かした富裕労働層の一人だった。フーヴァーにはもう頼れない。恐らく大半の富裕労働層がそうなのだろう。合議は機能しないし、案を出し合う友人も、根回しと取引で応じる適度な権力闘争もない。たった一人だ。これからどうすればいいのか? その答えはなかったが、それでもフーヴァーという友人が残そうとしたものがこの記憶媒体に残されているなら、やることは決まっていた。
評価、感想待ってます。
意味のわかりにくい用語等について感想欄でご指摘いただければ解説します。
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※本来の定義から外れていますが、ここではあえて、
OS→MSのシステム全般
基本ソフトウェア→本来の意味でのOS
制御系システム→実際の機器の制御
=本作でMS用OSとはMSの操縦制御全般システム
と定義し区分しています。というか原作が全部「OS」にひとまとめにしたせいでごちゃまぜになって意味が通らないので、頑張って原作に沿わせつつ本来の定義に近づけようと努力した私は悪くないと思います!
この後のルート分岐について。別ルートとして書きたいと思っていますが、本二次創作の「正史」としてはどちらがいいですか??
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フレイが早い期間ハードモードの後に覚醒
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フレイが長い期間ハードモードの後に覚醒