仮面ライダー一号本郷猛は、今窮地に陥っていた。世界の裏に潜む地下勢力の1つ、呪法帝国ガロンのコウモリ魔獣は必殺のライダーキックで倒している。だが怪人級であるコウモリ魔獣の率いていた戦闘員、アリ魔兵はまだ多数残っていた。
普通なら本郷は、怪人との戦いの前に戦闘員をまず一掃する。怪人との戦いの邪魔をされないために、だ。しかしながら今回に限り、本郷は無理をしてでも怪人級であるコウモリ魔獣を撃破している。これは本郷が身体に故障を抱えていたがためだ。彼は本当であるならば、ライダーマン結城丈二によるメンテナンスを受けて、不調の回復を図らねばならない状況である。
しかしながら……。結城丈二が待つ日本に、彼は帰還する予定を立てられないでいた。彼がいる台湾の台北市にて、呪法帝国ガロンの魔獣が幾度も幾度も、連続して作戦を行っていたからである。要人暗殺未遂然り、現金輸送車襲撃未遂然り、科学者誘拐未遂然り、いくつもの事件が連続して発生していたのだ。
彼は不調を押し殺して、呪法帝国ガロンの作戦を叩き潰して来た。しかしながらついに、彼の戦闘力の根幹を支える変身ベルト、タイフーンに直接的な不調が現れたのである。戦闘時のエネルギー供給に問題を抱えた本郷、一号ライダーは力尽きる前にせめて怪人級の存在である魔獣だけでも倒さねばならなかったのだ。
(く、このままでは)
一号ライダーは必死にアリ魔兵をなぎ倒す。しかしライダーキックの衝撃で内部構造に問題が発生した膝が、崩れかけた。気合で態勢を立て直すが、その背後からアリ魔兵が
ここまで追い詰められる前に、本来であれば後輩ライダーである仮面ライダーXが交代で台湾に来てくれるはずであった。なれどその矢先、別の地下勢力による海底油田基地襲撃が、北欧は北海で発生し、どうにも動きが取れない状態になっていたのだ。
「くっ。とう!」
ばきっ。
アリ魔兵がまた1体、吹き飛ぶ。だがその一撃を加えた右拳を見て、本郷は苦い表情を浮かべる。その腕は、仮面ライダーの腕では無くなっていた。タイフーン、変身ベルトから供給されるエネルギーが切れたため、変身が解除されたのである。人間態の本郷には、
……~♪
唐突に、ギターの音が戦場に鳴り響く。アリ魔兵たちは、その音の源を辿り、振り仰いだ。……近場にある廃工場の、その煙突の天辺に、アコースティックギターを演奏している白いヘルメットを被った、薄青い所々ほつれたジーパンとジージャンに身を包んだ青年の姿があった。
それはあの、仮面ライダー・マシナリーに変身するあの青年の姿だ。しかし今日は一般衆目の姿が無いが故か、ゴーグルとフェイスマスクは着用しておらず、素顔を晒している。なお、何故にこの緊急事態に悠長にギターを演奏しているのか、と言うと……。別に意味も無くギターを鳴らしているわけでは無い。
演奏のコードをパスワード代わりにして、そのアコースティックギターが変形した。ボディが中央線から縦に2つに割れ、グリップを含めたロアレシーバー、ストックと
ッダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!
重機関銃が、火を噴く。それは乱射に見えて精密に射撃され、本郷には一撃も当たらずにその周囲のアリ魔兵をなぎ倒して行く。そして数秒後、本郷を取り巻いていたアリ魔兵は1体残らず全滅していた。
そして青年の持った重機関銃は再変形してアコースティックギターへと戻る。青年はそれを背負うと、煙突の天辺を蹴って宙に飛び出した。彼の足裏からジェット流が噴出し、その身体を飛行させて本郷の元へと運ぶ。本郷はしかし、体奧に突然の苦痛を感じた。その意識が、急激に遠のいて行く。本郷が最後に感じたのは、
*
どれだけ時間が経過したのか。本郷猛は、まるでハイテクな棺桶の様な物の中で目覚めた。円柱状のそのカプセルの中には様々な電子機器やマニピュレーターが配置されており、金属製の寝台が備えられている。横倒しになったそのカプセルの上面は、透明なガラス状パーツで出来ており、外の様子を見る事が出来た。
と、そのカプセルの透明部分がフタの様に開く。それと同時に、声が聞こえた。
『目が覚めた様だな。起きたまえ、本郷猛』
「!? ……貴方は」
『済まないが、そこにはわしの姿を投影するユニットが無いのでな。顔を見せる事はできない。……君が入っているのは、本来は仮面ライダー・マシナリーを中心に、ロボットや改造人間などを整備・修理・改造するために用意した整備ポッドだ。
とりあえず、不調を訴えていた部分は修復、一部は改修が必要であったが、どうにかした。システムチェックでは問題は無かったが、君自身何か問題を自己で認識はしていないかね?』
本郷はゆっくりと整備ポッドから出る。彼が入っていたのは、4基並んだ整備ポッドのうち端にあった1基であった。彼は自身の身体のあちこちを触り、そして手首を回したり腕を回したり、少しだけ各部位を動かしてみる。
「……とりあえず現状、問題は無さそうだ」
『それならば、良かった』
「ところで、貴方は誰で、何処にいるのか」
『わしの『本体』はそこから数十m上の階層にあるのでね。とりあえず姿を投影するシステムがある場所まで来てくれ。そこで自己紹介もしよう』
「……わかった」
そして本郷は、『声』の案内に従って整備ポッドが置いてある場所から少し入った、奥まった場所にある演壇の様な場所へと移動する。するとその場所に、立体映像で白髪の老人の姿が投影された。『声』が語る。
『わしの名は、谷方位。谷博士、などと呼ばれる事もあるが、わたしの戸籍は君たち同様に既に無くなっているも同然だろう。博士号も、な』
「あなたが……。あなたの本体、というのは」
『わたしの精神、そして
とりあえず、身体のシステムの故障によって倒れた君は仮面ライダー・マシナリーによって、大型基地ロボット『グランパ』に運び込まれた。この『グランパ』は事実上のわしの身体であると同時に、仮面ライダー・マシナリーの整備工場であり、その生まれし場所でもある』
そこへ、ゴゴゴゴゴゴと地響きにも似た音が響く。ついつい身構えた本郷に対し、谷博士は優しく言った。
『驚かんでもいい本郷君。君に代わり、呪法帝国ガロンの魔獣や魔兵による作戦を叩きに行った、仮面ライダー・マシナリーが帰還して来たのだ』
「俺を、いえわたしを助けてくれた、彼でしょうか」
『俺、でかまわぬよ。その通りだ。わたしの創った8マンと、キカイダー・シリーズを創った光明寺博士の系譜に連なる
「キカイダー04……。改造人間、ではなく、もしや」
『その通りだ。あの子は人間に匹敵するかそれ以上の知性を有しているが、人造人間だ』
そこへ、仮面ライダー形態のマシナリーが入室して来る。マシナリーは本郷に対し、ちょっと顔を向けたが、谷博士に対して報告を始めた。
「
『よくやってくれた。……? お客人に、挨拶はせぬのかね』
「!!」
その瞬間、仮面ライダー・マシナリーは硬直する。そして本郷と立体映像の谷博士とに視線を交互に送り、そしてゆっくりと本郷に対して頭を下げた。本郷はこちらも小さく会釈をする。
『……いや、ちゃんと言葉で挨拶せぬのか』
「……失礼しました、本郷猛、仮面ライダー一号。申し訳、ありません」
「いや、何か理由があるんだろう。気にしないでもらえれば」
「い、いえ。これは違うのだ。……仮面ライダー、その中でも偉大な、偉大過ぎる先達である一号、二号であるあなた方に対して。……どう会話すればいいのか、わからないのだ」
『「え」』
戸惑う2人に、仮面ライダー・マシナリーは語る。
「以前、二号ライダー一文字氏と邂逅した際も、どうにも言葉が出せなかった。仮面ライダーストロンガー城茂氏とは、彼の性格もあって話しやすかったのだが。おそらくアマゾンライダーとも、比較的気安く話せるのではと自己分析してはいるが。だがV3、ライダーマンあたりが相手では、難しいのではないかと」
『……なるほど。照れて、おるのかね』
「わかりません」
「……俺に対して、そこまでかしこまる必要は無いさ。気安く話してくれて、何も問題は無い」
「い、いえ。貴方がそう思っている事と、わたしが貴方をどう考えているかとは、別問題なのです。ですが……。黙っているのが余計に無礼であるのも、重々理解をしておりますが」
どこか仮面ライダー・マシナリーは悄然として見えた。そんな彼に、右手を差し出しつつ本郷は語る。
「そうか。それはともかく、だ。俺を助けてくれた事、そして身体の故障を直して……治してくれた事は、本当に感謝する。呪法帝国ガロンの作戦を阻止してくれた事も」
「!! ……どう、いたしまして」
そして仮面ライダー・マシナリーは本郷の右手を、握りしめた。
*
人間態に戻った仮面ライダー・マシナリーは、本郷を整備ポッドが置いてある区画の隣、ガレージ区画へと案内していた。そこには彼のサイドカーと共に、本郷の新サイクロンが置かれている。
「回収してくれたのか」
「ええ。こんな希少技術の塊、放置しておくわけにも行きませんし。それにこれも、本郷さんの身体同様に酷使が過ぎて、ところどころ機能不全が」
「……すまん」
「黙って手を入れたのは申し訳無かったですが、一応C整備までやっておきました。それと一部、どうしようもなく駄目になっていた部分があったので、そこには代替技術を以てして改修工事を」
そこへ谷博士の声が届く。グランパの中は、彼の身体であると共に彼の庭でもある。
『本郷君の身体と新サイクロンの改修点とその技術について、データを
「ありがとうございます、谷博士」
『いや、やむを得なかったとは言え、こちらが勝手に本人承諾も無しに
「しかしこのグランパと言うロボットは、素晴らしいと言いますか凄まじい物ですね」
本郷の賞賛の言葉に、しかし谷博士の声は小さく溜息を吐く。
『……かつての時代。8マンがダメージを負って加速装置を損傷した際の事だ。理論や構造、技術そのものはわたしの物であったが、生産技術の面でわたしの研究室では、加速装置を製造できなかった。そのためにアメリカ軍部と取引をし、騙し騙されの末にどうにか加速装置のパーツを入手した。
あのような事はもう御免なのでな。仮面ライダー・マシナリーの計画がわたしと光明寺博士とで立案されてから、わたしの意識を宿した大型量子電脳を中枢に組み込んだ巨大な基地ロボットを建造するところから始めたのだ』
「本当はわたしは、ダークとシャドウの残党が手を組んだ、
『あ奴らはしかし、他の地下勢力に吸収されてしまったがな』
「ですが、今の時代戦う相手は数多い。戦う『敵』には事欠きません」
『そうだ。それに当の
谷博士と人間態の仮面ライダー・マシナリーの言葉に、本郷は内心
「谷博士。そして仮面ライダー・マシナリー。どうかお願いする。今後も、我々と共に戦ってほしい」
「それは、言うまでも無い」
『我々は、そのために立ったのだから』
そして本郷は、彼らに訊ねる。訊ねておかねばならない事があった。
「ところでマシナリー。君の人間態での名前は、何と呼べばいい」
『「……」』
「……? どう、したのかね」
「いや、わたしは人造人間だからな。仮面ライダー・マシナリーと呼ばれないときは、キカイダー04のコードネームで呼ばれていたんだ。……谷博士も、わたしも、それで不便は無かったから。だが、そう、だな」
『確かに、名前が無いのはおかしい。言われるまで気づかなかった。わたしは8マンの事も、東八郎ではなく8マンと呼んでいたからな……。わたしにとって、8マンは8マンであったが故に』
一瞬絶句した本郷であった。しかし彼は気を取り直して語る。
「ならば、名前を決めるべきです。マシナリーは人造人間であって改造人間であるわたしたちとは、成り立ちが確かに違うのかも知れない。けれど、それでも。彼のキカイダー……キカイダー02ですらも、我々、と言うより結城丈二が調べた限りでは、ジローと言う名があった。そして、それに誇りを持っていたらしいのです」
『そうか……。ではキカイダー04であるが故に、シロー、か?』
「いえ、それでは大先輩である仮面ライダーV3、風見志郎氏と
『そうか……』
マシナリーと谷博士の2人は、しばらく悩む。だがやがてマシナリーが言った。
「
ですので栄光の8マン、かつての東八郎氏にちなんだ名前をいただければ、と考える次第でありますが」
『8マン、東八郎にちなんだ名前、か。そう、だな。……姓は西、名は九郎ではどうだろうか。仮面ライダー一号、本郷猛君。君が名づけの証人となっていただけるとありがたいのだが』
「よろこんで」
「……量子電脳に、刻み込みました。今からわたしは、西九郎と名乗ります。本郷猛、仮面ライダー一号。心より、ありがとう」
頷く本郷。そして再び、彼らは固い握手を結んだのである。
本郷さんは、TVシリーズ本編の一号っぽい感じですかね。仮面ライダーSPIRITSの彼は、他の後輩ライダーも巻き込まなきゃよかった、とかウジウジ悩んでましたが、TVの一号はどちらかと言うと良き先達として後輩を鍛え上げ協力し合って事を為してますからね。
悩みはあったのかもですが、戦場にそれを持ち込んではいなかった様に感じるのです。それにどちらかと言えば、巻き込んだからにはしっかりライダー特訓して生き残らせようって感じですかね。スカイライダーを残りの先輩ライダー総出で特訓したの、視聴中は『アレ、ひどくね?』と思ったもんでしたが、特訓成功してスカイライダーがパワーアップしたカタルシスでその気持ち吹っ飛びましたからねえ。
カタルシス・ウェーブ!!(番組が違います)
……あと、別の地下組織、1つ出ました。