カズマ一行との騒がしい大騒動から数日後。僕はゆんゆんとクリスを伴い、アクセル北方の古い神殿跡へと赴いていた。目的は、遺跡の奥に巣食う魔物の討伐。しかし、崩落した祭壇の瓦礫を退けたとき、それはまたしても僕の前に現れた。
「……嘘、だろう?」
僕の目の前にあったのは、一振りの美しい片手剣。それは、左腰に吊るしたフレイヤの「漆黒」とは対照的な、濁りのない「白銀」の輝きを放っていた。
フレイヤと同じく、この世界のいかなる金属とも違う未知の素材と、高度な超技術で作られている。傷一つない圧倒的な頑丈さを秘めているのは、ひと目で分かった。
「――あなたが、私の新しい
不意に響いたのは、凛とした涼やかな鈴の音のような少女の声だった。フレイヤの軽いギャル語とは真逆の、クールで冷静沈着な響き。
「うわあああっ!? また喋る武器ですかー!?」
「ちょっとライ! あんた、今度はどこからそんな怪しい剣を引っ張ってきたのさ!」
ゆんゆんとクリスが同時に叫び、頭を抱える。
「……君も、自分の名前や正体が分からないのかい?」
「ええ。目覚めた瞬間、すべてのメモリーが失われていたわ。分かっているのは、あなたの手に握られたとき、胸の奥がひどく温かくなったことだけよ」
クールな口調とは裏腹に、その白銀の剣は、僕の手のひらにぴったりと吸い付くように馴染んできた。最初から僕の所有物になるために生まれてきたかのように、深い愛着と信頼の念が伝わってくる。
「そうか……名前がないのは不便だね。ならば『リリィ』という名はどうかな?」
「リリィ……素敵な名前ね。気に入ったわ、ライ。これからは、あなたの戦う盾となり、道を切り開く刃となることを誓うわ」
リリィは物静かに、しかし確かな歓喜をにじませてブレードを微かに震わせた。
「ちょ、ちょっと待ったーーー!!」
その時、僕の腰のホルダーで、漆黒の斧が激しく発光した。
「なによその新入り! クールぶっちゃってマジうざいんだけど! ライたんの第一夫人はあたしだし! てかライたん、浮気とかマジありえない、ぴえん超えてぱおんなんだけど!」
「……騒がしい斧ね。主を『ライたん』などと不名誉な名で呼ぶのはやめなさい。品性が疑われるわよ」
「はあ!? 品性とかマジ古いし! あんた、あたしより先にライたんに磨いてもらおうとか思ってたら、マジぶっ飛ばすからね!?」
「主の手で手入れをされるのは、武器として至上の喜びよ。それをあなたのような『拡声器』に譲るつもりはないわ」
「な……!?」
出会った瞬間から、ギャル斧とクール剣のキャットファイトが始まってしまった。
「はは……。頭痛の種が、二倍に増えちゃったな……」
僕は片手剣リリィを右手に、片手斧フレイヤを左手に構える。白銀の美剣と、漆黒の怪斧。未知の超技術で作られた、二振りの「喋る意思を持つ武器」による、世にも奇妙な二刀流スタイルがここに完成した。
「うぅ、ライさんの周りが、どんどん女の子? で埋まっていく気がします……。私、明後日の方向のライバルが増えすぎて、もうどうしたらいいか……」
「ゆんゆん、しっかりして! あいつ、ただの天然タラシなんだから! うう、もう……右も左も下も、敵だらけじゃないのさ……っ!」
クリスが赤い顔で自分の胸元を思い出しながら、ギリギリと拳を握りしめる。
「いくよ、二人とも! フレイヤ、リリィ、喧嘩はそこまでだ。前方に魔物の気配がする!」
「おっけー☆ あたしを使うライたんが、マジ最強ってとこ見せつけちゃおう!」
「了解よ、ライ。私の冷徹な一撃、その目に焼き付けなさい」
二つの異なる少女の声が響く中、ライは神速のステップで、ダンジョンの闇へと躍り出た。