数年前にpixivに投稿してました。
その日、海軍の戦力は海軍本部へと集中していた。
「お前の父親の名前を言え。エース」
「……」
苦々しく吐き捨てるセンゴクに、顔を下に向けて押し黙る火拳のエース。海楼石という鎖に繋がれ、みすぼらしい姿が全島放送に映り込んでいた。エースは分かっていた。いつかこうなることは。だがここまで海賊王の血に固執する海軍に驚かされたのもまた1つ知った事実。
エースは何のことだとばかりに鼻で笑い返した。「俺のオヤジは白ひげだ」と言ってみせた。
だが、「ちがぁう!!」とセンゴクは腹の底から唸る。
「お前の母親の名前は、ポートガス・D・ルージュ。父親の死から1年と3ヶ月経った頃、父親の悪魔の血を引いて生まれてきたその子供。それがお前だ。そして父親の名は_____
海賊王、ゴールド・ロジャーだ」
恐らく全世界のほぼ全ての人間が驚いて息を吸ったことだろう。
記者も「まさか本当だったとは……」と、放送から目が離せなかった。そしてエースも否定することなく、ただただ己の未熟さと白ひげ達に迷惑をかけてしまっていることに下唇を噛んでいた。
ある者は言った。
「悪魔の子なんて捕まって良かったわ」
「ははは。最高のショーじゃないか」
「生きて売り飛ばしてたら、いくらしたかなぁ」
「だが、どちらにしろ、火拳のエースは終わりだな。だってこれから殺されるんだから」
そうやって、民衆の意識が憎悪に満ちている時____。
1人が火拳のエースが映っているテレビを指さした。
「なあ、あそこ……。火拳のエースの後ろの空に何か見えないか?」
*
センゴクは冷や汗が止まらず、息をのんでいた。
無論、目の前に鎮座している火拳のエースが怖いからでは無い。むしろその逆……後方からとてつもない速さでやってくる畏怖のナニカ。
バッ!!と後ろを振り向いた時には既に遅く、……見た事のない大きな黒いものが視界全体を覆った。いや違う……、これは化け物の足だ!!!!! 驚いて、1歩2歩下がってしまう。化け物は威圧感のある瞳でギョロりと見下ろしてきた。
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センゴクは息が出来なかった。否、止めていた。
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そのとき吐き出されるは、センゴクの詰まった息。フゥフゥと、肺がやっと動き始める。とてつもない威圧感……まさか覇王色の覇気か? と、考えたくもない最悪の考えが広がっていく。
「お前は……何者だ?」
喉を震わせて、やっとのこと喋れたのはそれだけだった。センゴクは恐る恐るといった形で見上げると、黒い鱗に覆われたその怪物は面白いとでも言うかのように目を細める。
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________全世界に震撼が走った。
残念なことに、
副音声など聞こえない世界である。
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「てん……りゅう、びと!?」
センゴクは焦った。本物の天竜人ならば、世界政府も絡んでくる。そして天竜人らしからぬその見た目。一体どこが人だと言うのだ!? 驚いている合間にも、その自称天竜人は話す。
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そのとき、バキン!と音を立てて粉々に壊れたものが1つ。エースを繋いでいた海楼石の鎖である。フッと力の感覚が戻ってきたことに驚きを隠せないエース。そして視線の矛先は無論、自称天竜人である。
もし、悪魔の実でドラゴンになっているのだとすれば火拳のエースを繋いでいた海楼石は壊せないはず。つまり、目の前のドラゴン……黒龍は本物の龍なのだと知らしめた。ここに居る火拳のエース、センゴクだけではなく、この放送を見てしまった全世界の民へと。
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まさに正論。
その言葉を天竜人が言うか……?
皆の心はひとつだった。
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その言葉に「いや……」と付け加えたのは火拳のエース。俯いて顔は見えないが、雰囲気からして先程とは違う。
「アンタと一緒に戦わせて貰うぜ。そして俺は、白ひげの……オヤジの元へと帰る!!!!」
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火拳のエースは、とんでもない助っ人に「おう!!!」と太陽のような笑顔を向ける。
しかし隣で聞いていたセンゴクが許すわけがなかった。プルプルと怒りで拳が震える。
そして唐突に手元に入ってきた電報。
_____あの黒龍は天竜人の中では確認されてないそうです!!!
「ふざけるなァ!!!!!」
そのセンゴクの言葉を皮切りに、三大将が動く。一気に間合いを詰めてきた三大将に対し______黒龍は火拳のエースを足元に引き寄せたかと思えば、空へと浮かんだ。そして胸の奥から込み上げる高鳴りと共に、龍の怒りの息吹を吹き出そうとする。
三大将は、同時に脳に鳴り響いた危険信号を無下には出来なかった。ボルサリーノは光の速さで安全地帯へと飛び、サカズキはマグマで溶かした地面に隠れ、クザンは咄嗟に20メートルにも近い氷の盾を作って身を隠す。
その反応は間違いではなかった。
普通の炎じゃリタイアしないだろうと踏んでの、第2形態の青白い炎を繰り出した黒龍。本来ならば怒りで出すつもりが、興味本位で出してしまった。そして逃げ遅れた海軍の大半は戦力を失うこととなる。
阿鼻叫喚の地獄絵図。それもそうで、即死級の龍の息吹を無防備な状態で受け取ったからだ。一瞬で燃え尽きた人間も居れば、灰となって消えた者もおり、そして見えるのは死屍累々の火の海。まさに獄炎。
「貴様ァ……!!!」と、怒りに震えるセンゴク。
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黒龍の、人間を虫程度にしか見ていない双眸がギョロりと辺りを見回す。そうして見つけたのは、大きな戦艦。そして白い髭が目立つ巨体。黒龍の(人間の数百倍もの性能がある)聴力を持ってして聞こえてくるのは「グラララ!!」という笑い声。
火拳のエースもカクテルパーティー効果なのだろう、その声にハッとして顔をあげる。「オヤジ!!!」と嬉しそうに……だけどバツが悪そうに顔を向けた。
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黒龍は、鉤爪がギラギラと鈍く光る黒い鱗で覆われた手のひらを広げると、火拳のエースに《乗れ》と言った。おずおずといった形で乗り込む火拳のエースを黒龍は見届けると、羽をバサりと瞬くように広げる。翼を広げると大きすぎて、海軍本部の両壁が壊れた。「本部がぁ!!」と、また唸り声を腹の底から出すセンゴク。
そうして飛ぼうとするが、やはり邪魔が入るものである。「そうはさせんぞ!!!」と大声で怒鳴ったセンゴクが居たのだが、既に上空へと飛んでいた黒龍と火拳のエースは『アリンコみたいだな』と意思が合致していた。
だがそれも束の間、いつの間にか悪魔の実の能力で仏となり、すぐに黒龍が飛んでいる所まで大きくなっていくセンゴク。
「私から逃げられると思うなよォ!!!」
そして衝撃波を繰り出そうとしたセンゴクだったが___、黒龍が尻尾を振るったかと思えばセンゴクの横腹に大打撃が襲ってくる。カハッとセンゴクの中にあった空気が吐き出される。
それでもセンゴクは力を出して黒龍の尻尾を捕まえた。だが……青白い炎が直後にセンゴクを襲った。当たったら即死級ブレス。それをモロに当たってしまったセンゴクは、超高威力の炎を浴びながら意識を失い後ろへと倒れていく……。
黒龍の手元にて、それを見ていた火拳のエースはいとも簡単に倒れてしまった海軍トップに驚きを隠せなかった。
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黒龍は下から飛んでくる鉄砲や、マグマや氷、光線などをものともせずに真っ直ぐに白ひげの方へと飛んでいく。大砲だけは何故か避けていた。
そうしてバサりと羽を瞬かせて降り立ったのは、白ひげであるニューゲートの手前。黒龍は、そっと手の中に居た火拳のエースを差し出した。まるでトトロとは誰かが言ったものである。
「グラララ……息子が世話んなったな」
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そうして黒龍は______なぜかまた処刑台の所へと戻ると一息つく。
そして全世界放送へと言い放った。
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黒龍はそう言い放つと、三大将の攻撃を避けながら上空へと飛び立つ。海しかないどこかへと行ってしまった。
後日、新聞一面に黒龍……ミラボレアスが映ったのは言うまでもない。
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もしかして:【ミラボレアス】とは。
黒龍。
高い能力と体力を持ち合わせる。
擦り傷を追わせるのも難しい。
超高威力の劫火(ブレス)持ち。
・劫火は赤い炎。致死レベル。
・第2形態の劫火は青白い炎。即死級。
「劫火(ごうか)」とは「ミラボレアス」が放つ大技で、空中からスリップダメージのブレスの後、即死級のブレスを放つ。
1回のクエスト(1日)で計5回使用。
攻撃範囲は広く、炎を吹かれる前に逃げるべし。
だがしかし逃げるには熟練のハンターなど、相当の技量と経験が必要である___。
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人間の姿に擬態した私は、一丁前に足を組んで優雅に珈琲を啜っていた。
そして手に取っているのは、そこら辺のチンピラから強奪した金で買った新聞。
スタバみたいな若者向けの飲食店で、ホットコーヒー飲みながら真面目そうに新聞広げてるお姉さんだと思うだろ????
……英語だらけで読めない。
おかしい。中学の時の英語は4だった。
だが、写真は分かるぞ。
多分これは……私だな。翻訳コンニャクが欲しい所だが、読める単語だけ拾っていく。
えーーっと、、オンリー、あらいぶ?
ライブは読めるぞ。生放送って意味だろ?
オンリーは一つだけってことだから……。
……どういうことだこれ。
「一つだけの生放送????」
そう独り言をごちると、ブハッといつの間にか相席に座っていた客が鼻からホットコーヒーを吹き出す。汚いな!?!?
「嬢ちゃん、文字が読めないのか?」
「え…………まあ……ハイ」
相席の人は、片腕に赤髪と特徴的なコスプレをしていた。元の世界でも見たことがある。なんだっけ……赤髪のシャアだった気がするわ。
ちなみに今聞かれた感じで文字を起こすとなると「おまwwwww文字がwwww読めなwwwいwwwのかwwwww」って感じ。
「ここと、……ここは読めるんですけどね」
「だっはっは!!!! YesとNOだけじゃねーーか!!!」
シャアさんは窒息になりかけるまで笑い続けた。流石の私もヒクヒクと口角が上がってしまう。もちろん笑いそうになって……ではなく、羞恥心のほうで。
「じゃあ教えて下さいよォ。お兄さん、その感じだとスラスラ読めるんでしょ?」
私が頬っぺたを膨らませて言うと、シャアさんは笑い涙を人差し指で拭いながら「まあな」と当然だとばかりに言ってくる。なんかムカつくな……。そこで私の無駄な対抗心が働き、なんかちょっと難しそうな単語もある長文英語を指さし、「じゃあここ。全部言えますか?」とニッコリ笑みを貼り付けて聞いてみた。
しかしシャアさんは「ああ、読めるぞ」と言って見せた。
シャアさんは真面目な顔をして____口を開いた。
「書いてあることはこうだ。『全世界に激震が走る。真の天竜人が現れたと、放送を見た者たちは異口同音。天竜人はそんなバケモノは知らないと語るが、悪魔の実でもない本物の龍とは如何に? 天竜人・海軍・世界政府……だけでなく海賊までもが血眼になって探している。その理由は黒龍ミラボレアスが言った《我を倒した者のみ従おう》という言葉だろう』と」
シャアさんは言い終わると、「どうした? 難しい顔をしているぞ」と微笑んできた。対して私は、ボーッとした頭で「英語が難しかったんです」と言って退ける。
どーーーーやら私はやらかしたらしい。
確かに『あれ?海軍???なんか聞いた事あるような』とは思ったさ。目の前のシャアさんも見覚えあるしさ。
なんだここ……ワンピースの世界やん。
さらに言うと、ミラボレアスになった時の私って……。
まったく違うこと喋ってるやん。
まあでも、エースを助けられたからいっか。
そう思って、ズズズ……とホットコーヒーを猫舌なので少しずつ啜る。
ここがモンハンの世界じゃないとすれば____ハンターが死んだらキャンプ場に転送されるというシステムも当然あるわけが無い。つまり海軍と戦った時、私は少なからず人を殺したことになる。罪悪感がある訳じゃない。なんなら今更ながら罪悪感が襲ってきている。だけど中身が半分ドラゴンなせいか、ちっとも心は痛くなかった。まるで本当に他人事のような_____と、そこまできて少しばかり自己嫌悪になる。
シャアさんは無言になった私を面白そうにずっと見ていた。
認めたくないものだな、自分自身の若さ故の過ちというものを……。
「それで? 嬢ちゃんは、その黒龍と知り合いなのか?」
私が珈琲を飲み終わって机に置いた時、シャアさんはそう問うた。やはりそう来たか。
「いんや? 生意気なヤツだな〜とは思いましたね」
と、嘘を言ってのける。
シャアさんは目を丸くさせると「だっはっは!!」と、また笑ってみせた。
だが、ひとしきり笑い終わったあとに真面目な顔をするシャアさん。
「なあ、これは唯の独り言なんだが……。もし黒龍ミラボレアスに会ったら言って欲しい。『俺の大切なものを助けてくれてありがとう。会ったら宴をやろうじゃないか』とな」
思わずシャアさんの顔をパッと見てしまった。
するとウインクしてくるシャアさん。
宴……。
うた、げ……?
「酒が飲める?????」
「ああ」
「タダ酒????」
「勿論だとも。なんなら最近入手したやつなんだが、世界に3つしかない____」
その言葉を待ってましたとばかりに私は真顔になる。
そして私は息を吸った。
ある言葉を吐くために。
「行きます」
「「「お前が黒龍だったんかい!!!!」」」
いつの間にか店内に座っていたシャア海賊団たち全員にツッコミを入れられた。