ポケモントリオン兵導入によるボーダー隊員の反応 作:ジャサス
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ありがとうございます。
(堤視点)
ランク戦でも防衛任務でも、数をこなせばこなすほど、トリオン体が無惨な事になる事も増える。ベイルアウトの恩恵で生身は無傷なので、進んで自爆戦術を取る事もあるし、正直慣れてる。ポケモンもオレ達のトリオン体と破壊時の仕様は近いので、ボックスに強制収容されたとしても、そこまで深く悔やむ事もない。
…ないが、さすがに戦闘の度、技を使う度に爆散していくポケモンの存在は、ちょっとこう…なんとも言えない気分になってしまった。視界の端でピチューがすごい顔してビリリダマを見ているのが見えた。ポケモン視点でもそうなのか。トリオン兵だし、ボックスに戻せば直るから効率的なのは確かだけど。
戸惑うオレ達をよそに、三雲君はそのまま説明を続ける。
「『自爆』は体内のトリオンを全て使って、大爆発を起こします。なのでこれを使うとトリオン切れ状態になって、ビリリダマでもマルマインでも強制的にボックスに戻る事になります」
「粉々になるわけじゃないんだ。良かった…」
「あ、いえ、砕けます。爆心地にいるので、さすがに」
日佐人がショックを受けてる。日佐人が入隊した時にはもう、ポケモンは兵器じゃなくて、任務のパートナーって風潮になってたから余計衝撃が大きいんだろうな。…大丈夫かな三雲君達。いろいろありすぎてちょっと攻撃的になってないか?『ポケモンはトリオン兵』って割り切ってるタイプなんだろうか。初期のポケモンの扱いは、割とそんな感じだったけど。
頭をガリガリ搔きながら、諏訪さんが三雲君に確認をしている。
「なるほどな、一発限りの大技って感じか。任務だと使い所が難しいな。戦闘で壊れるのは仕方ねぇけど、無意味に建物とか壊すのはやめといた方がいいぞ」
「はい。なので防衛任務の時は自爆させるにしても、威力の下がるビリリダマですることになると思います」
「分かってんならいい。宇佐美も任務の時は気をつけて見とけよ」
「はい、勿論」
淡々と説明する三雲君を、おサノと日佐人が何とも言えない顔で見ているのに気がついたのだろう。雨取さんは気まずげに目線を下げてしまった。宇佐美さんはそんな雨取さんを心配そうに見つめながら、何も言わずに軽く背に手を添えた。
「あのさ。別におれたち、ビリリダマのことを道具だって思ってるわけじゃないからね」
何かオレから声をかけるべきかと悩んだ次の瞬間に、空閑君の声が割り込んだ。
「コイツはトリオン兵だけど、おれたちの仲間だってちゃんと分かってるよ。オサムとチカと話して、コイツを選んで、大事にするって決めたんだし」
空閑君は隣に座る雨取さんの膝の上、ビリリダマに手を伸ばして軽く撫でる。ビリリダマは目を細めて空閑君の手に擦り寄った。
「あ、あの!任務も大丈夫です!ちゃんと訓練して、爆発の範囲を広くしたり狭くしたりできるようになりました!あと、元気になったらお疲れ様ってみんなでいっぱい撫でて褒めてます!」
空閑君に続いて、首をすくめていた雨取さんも必死に三雲君とビリリダマを擁護し始めた。一方で三雲君はまた冷や汗を流している。
「そりゃかわいいし、頑張ってくれてるから褒めるけど…自爆させてるのは僕だからな…」
それを聞いていたビリリダマがピョンと跳ねて、三雲君の膝に飛び乗った。グリグリと身体を三雲君の腹に擦り付けている。
「ちょ、ビリリダマ、何?あっ待ってそこ痛い、待って!」
「ビリちゃんストップ!大丈夫、ビリちゃんが修君大好きなの分かってるから!」
「止まれ止まれ。オサムはまだ腹の傷が治りきってないからなー」
「ありゃりゃ。ビリリダマ、こっちにおいでー」
ビリリダマと三雲君を中心に騒ぎ始めた玉狛第二を見て、いつの間にか入っていた肩の力が抜けた。
「あー…そんなビビんな。ポケモンをどう扱うかは隊に任されてるし。オメーらが自分達のポケモン大事にしてて、ビリリダマも納得して自爆してんなら、俺が言う事は何にもねぇよ」
雨取さんがホッと安心したような顔をした。自分達が納得してても、周りがどう受け取るかはまた別だから、それがずっと不安だったんだろう。
おサノが宇佐美さんを突いている。
「もー栞が何も言わないから、なんかすっごい不安になっちゃったじゃん!」
「ごめんってば。どうしても誤解されやすい戦い方になるから、ちゃんとポケモンも大事にしてるって信じてもらうなら、自分達で説明できないとダメかなって思って。悪い噂になりそうだったら私も口を挟むつもりだったけど」
「遊真くんが言ってくれなかったら、私、なんて言っていいか分からなかったよ…ありがとう」
「イエイエ。まぁちゃんと見たら、ビリリダマがおれらの事大好きなのは分かるからな。おれが何も言わなくても、たぶん大丈夫だったと思うぞ。でもオサムはもうちょっと頑張れ」
「ごめん。さっきも言ったけど自爆させてるのは本当だからな…。それに僕たちは支部の所属だし、何か言われても別に…」
やっとビリリダマから解放された三雲君は、相変わらずのちょっと困ったような顔でそんな事を言った。
「別に」って…三雲君、実は割とどころじゃなく図太いな?
「修くん…それは、ちょっと…その、私は本部で訓練もあるし、その…」
「三雲、ホントにやめて。後で誤解に気がついた時にオレらが気まずいなんてもんじゃなくなるから」
「あのね、修君。この手の誤解をそのままにしておいて、いい事は何もないからね。千佳ちゃんのこと気がついてた?ドンドンちっちゃくなってたよ」
「…すみません」
「オレ達からも、もう少し声かけたりすればよかったね」
「もー栞も先に相談してよー。そうしたらあたしからもフォローできたかもだし!」
おサノも日佐人も事前に会話に入って行った。隊員同士の仲も、ポケモン含めて良さそうだ。
玉狛第二はみんなここまでに色々あって、これからも大変なことが続くんだろう。それでもボーダーの仲間として、一緒に力を合わせてやっていけそうだとようやく安心して笑えた。
こうしてポケモンの紹介は終わり、玉狛第二は帰って行った。この後は風間隊に行くそうだ。宇佐美さんの元所属隊だし、変な事にはならないだろう。ピチューを撫でながら、日佐人がほうっと息を吐いた。
「自爆させるって聞いた時は何て言ったらいいか分からなかったけど、ちゃんと仲が良くてホッとしました…他の隊での挨拶、大丈夫ですかね?」
「大丈夫だろ。宇佐美もいるし、ビリリダマが懐いてるのはよく見りゃ分かる」
「諏訪さん、一瞬すごい顔してたじゃん」
「うっせー!色々予想外だったんだよ。レイジの奴、ホンットに先に教えとけっつーの」
ブツブツ文句を言いながら、諏訪さんは携帯電話を取り出した。たぶん他の隊長に軽く根回しをするんだろう。面倒見のいい人なので。
「次のランク戦から玉狛第二も参加だろ。とりあえずマルマイン対策考えんぞ。自走するメテオラなんぞ対策必須だわ」
そうやってマルマイン対策を考えるオレ達は知らなかった。
玉狛第二のマルマインは、必要トリオン量とともに能力値を盛られていたのだ。高速で追尾してくる超威力の爆弾は、ランク戦を混乱の渦に叩き落とす事になる。
「ざっけんな!うちはスナイパーいねぇんだぞ!」
『諏訪さんマルマイン振り切れてないよ!右後方12m!」
「足速いなチクショウ!」
「引き連れて来たぞ、諏訪さんがマルマインを。撃つか?」
「イヤ…まだ雨取の位置が分からねえ。それに諏訪さん撃つと、次はおまえがマルマインの標的になるぞ」
「了解。頑張ってもらおう、諏訪さんには」