「……本当に俺と、バトルしてくれるんですか?」
マサヒロは目を輝かせた。
目の前にいるのは――。
カントーとジョウト、二つの地方を代表するチャンピオン。
そして、マスターズエイトの一人。
マサヒロがずっと憧れていたトレーナー。
ワタルだった。
「もちろんだ」
ワタルは穏やかに笑う。
「君たち二人が、どれほどの力を持っているのか見てみたい」
「……!」
マサヒロは隣を見る。
イーブイが真剣な顔でワタルを見つめていた。
「イーブイ!」
「ブイ!」
「よし!」
マサヒロは拳を握る。
「お願いします!」
「では、始めようか」
ワタルがモンスターボールを取り出す。
「行け、カイリュー!」
「カイリュー!」
大きな身体を持つカイリューが、フィールドへ飛び出した。
「……カイリュー」
マサヒロは思わず目を見開いた。
その姿を見た瞬間――。
かつて一緒に旅をしたカイリューのことを思い出した。
ミニリュウだった頃から、一緒に旅をしてきた仲間。
そして最後には――。
竜の谷で、ミニリュウやハクリューたちを守るために残ることを選んだ。
「……元気にしてるかな」
マサヒロが小さく呟く。
イーブイがマサヒロを見る。
「ブイ?」
「大丈夫」
マサヒロは笑う。
「あいつは自分で決めたんだ」
「きっと頑張ってるはずだよ」
イーブイも頷く。
「ブイ!」
マサヒロは目の前のカイリューを見る。
「よし!」
「今は、このカイリューと勝負だ!」
ワタルはその言葉を聞いて、少し笑った。
「そうだな」
「では――」
「バトル開始!」
* * *
「カイリュー、りゅうのいかり!」
「カイリュー!」
強烈なエネルギーが飛んでくる。
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
イーブイが一気に走り出す。
攻撃をかわす。
「速いな」
ワタルが感心する。
「そのまま、でんこうせっか!」
「ブイ!」
イーブイがカイリューの周囲を駆け回る。
右へ。
左へ。
そして背後へ。
「今だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「アイアンテール!」
「ブイイイ!」
イーブイの尻尾が銀色に輝く。
ドォン!
カイリューの身体が少し後ろへ下がった。
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
「当たった!」
「見事だ」
ワタルは落ち着いている。
「だが、ここからだ」
「カイリュー、つばさでうつ!」
「カイ!」
カイリューが一気に迫る。
「イーブイ、かげぶんしん!」
「ブイ!」
イーブイの姿がいくつにも分かれる。
カイリューの攻撃が分身を次々と消していく。
「でんこうせっか!」
「ブイ!」
本物のイーブイがカイリューの背後へ回り込む。
「アイアンテール!」
「ブイ!」
ドンッ!
カイリューがよろめく。
「やった!」
マサヒロが喜ぶ。
しかし――。
「カイリュー、ドラゴンダイブ!」
「カイリュー!」
カイリューの身体が青い光に包まれる。
「イーブイ、避けろ!」
「ブイ!」
イーブイが横へ飛ぶ。
だが――。
カイリューの動きが速い。
「イーブイ!」
ドォン!!
「ブイッ!」
イーブイが吹き飛ばされる。
「イーブイ!」
マサヒロが叫ぶ。
イーブイは地面を転がった。
「大丈夫か!?」
「ブイ……!」
イーブイはゆっくりと立ち上がる。
「よし!」
マサヒロは拳を握る。
「まだいける!」
「ブイ!」
ワタルはイーブイを見つめる。
「素晴らしいな」
「え?」
「今の攻撃を受けても、まだ立ち上がる」
ワタルが微笑む。
「君たちは、本当に諦めないんだな」
「当たり前です!」
マサヒロは叫ぶ。
「俺たちは、最後まで勝つつもりです!」
「ブイ!」
「いい目だ」
ワタルは頷く。
「ならば、私も全力でいこう」
「カイリュー、りゅうせいぐん!」
「カイリュー!」
カイリューが空へ舞い上がる。
そして――。
無数の光が空から降り注ぐ。
「イーブイ!」
「ブイ!」
「かげぶんしん!」
イーブイの姿が一気に増える。
ドォン!
ドォン!
ドォン!
地面に次々と攻撃が落ちる。
「走れ!」
「ブイ!」
イーブイが必死に走る。
一つ。
二つ。
三つ。
次々と攻撃をかわしていく。
「すごいな……」
ワタルが目を細める。
「ここまで私の攻撃をかわし続けるとは」
マサヒロは集中していた。
「まだだ……」
カイリューの動きを見る。
攻撃の直前。
翼が動く。
「……分かった!」
マサヒロが叫ぶ。
「イーブイ!」
「ブイ!」
「カイリューが攻撃する直前を狙う!」
「ブイ!」
「でんこうせっか!」
イーブイが一気に加速する。
「カイリュー、ドラゴンダイブ!」
「カイリュー!」
「今だ!」
イーブイが紙一重で攻撃をかわす。
そのままカイリューの背後へ。
「アイアンテール!」
「ブイイイ!」
ドォン!
カイリューが大きくよろめく。
「よし!」
マサヒロが叫ぶ。
「今だ、エボルブラスト!」
「ブイイイイイイッ!」
イーブイの尻尾から凄まじい衝撃波が放たれる。
ドォォォォン!!
カイリューが吹き飛ばされる。
「カイリュー!」
土煙がフィールドを包み込む。
マサヒロとイーブイは、じっと土煙を見つめた。
「……どうだ?」
やがて――。
土煙の中からカイリューが姿を現した。
「……!」
マサヒロは目を見開く。
「まだ立てるのか……!」
カイリューは傷ついている。
それでも、その目にはまだ力が残っていた。
ワタルがカイリューを見る。
「よく耐えたな」
「カイリュー!」
カイリューが力強く鳴く。
「正直、ここまでとは思っていなかったよ」
「……え?」
マサヒロが顔を上げる。
ワタルはマサヒロを見る。
「君たちがここまで私のカイリューを追い込むとは思わなかった」
「……!」
マサヒロの目が輝く。
「本当ですか?」
「ああ」
ワタルは頷く。
「君のイーブイは速い」
「そして、君の指示も的確だ」
「戦いながら相手の動きを見て、戦い方を変えている」
「……」
「私は、君たちを少し甘く見ていたようだ」
マサヒロは嬉しそうに笑った。
「へへっ……」
「だったら、もっといける!」
「ブイ!」
ワタルも笑う。
「その意気だ」
「では、もう一度いこう」
「はい!」
* * *
「カイリュー、りゅうのいかり!」
「カイ!」
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
イーブイが走る。
強烈な攻撃をかわす。
「かげぶんしん!」
「ブイ!」
分身が広がる。
カイリューが次々と分身を消していく。
「本物を見つけろ!」
「カイリュー!」
カイリューが目を凝らす。
「今だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「イーブイ、アイアンテール!」
「ブイイ!」
本物のイーブイが飛び出す。
しかし――。
「そこだ!」
ワタルが叫ぶ。
「カイリュー、ドラゴンダイブ!」
「カイリュー!」
「イーブイ!」
ドォン!!
イーブイが大きく吹き飛ばされる。
「ブイッ!」
「イーブイ!」
マサヒロが叫ぶ。
イーブイは何とか立ち上がった。
「まだだ!」
「ブイ……!」
マサヒロは拳を握る。
「最後まで諦めない!」
「ブイ!」
ワタルは静かに頷いた。
「ならば、最後の一撃だ」
「カイリュー、ドラゴンダイブ!」
「カイリュー!」
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
二匹が同時に走り出す。
カイリューが迫る。
イーブイも加速する。
「エボルブラスト!」
「ブイイイ!」
イーブイの尻尾から衝撃波が放たれる。
カイリューの攻撃とぶつかる。
ドォォン!!
「イーブイ!」
「ブイッ!」
イーブイが吹き飛ばされる。
地面に倒れる。
「立て!」
マサヒロが叫ぶ。
「イーブイ!」
「……ブイ」
イーブイは身体を起こそうとする。
しかし――。
力が入らない。
そのまま、マサヒロの足元へ倒れた。
「……」
マサヒロはイーブイを見つめる。
「イーブイ……」
「ブイ……」
ワタルはカイリューを見る。
カイリューも息を切らしていた。
だが、まだ立っている。
「勝負ありだ」
「……」
マサヒロは悔しそうに拳を握った。
「負けた……」
イーブイが顔を上げる。
「ブイ……」
「でも――」
マサヒロは笑った。
「すごかったぞ、イーブイ」
「ブイ?」
「チャンピオンのカイリューと、あそこまで戦えたんだ」
「ブイ……!」
マサヒロはイーブイを抱き上げる。
「ありがとうな」
ワタルが二人へ近づいてくる。
「マサヒロ」
「はい」
「今回は私の勝ちだ」
「……はい」
「だが――」
ワタルは笑う。
「正直、ここまで君たちが強いとは考えていなかったよ」
「……!」
「もっと早く勝負が決まると思っていた」
「でも、君たちは最後まで私のカイリューを追い詰めた」
マサヒロは嬉しそうに笑う。
「本当ですか?」
「ああ」
ワタルは頷く。
「特に、イーブイのスピードは見事だった」
「そして君は、相手の動きを見て作戦を変えた」
「君たちは、これからさらに強くなるだろう」
「……!」
マサヒロの目が輝く。
「俺、もっと強くなります!」
「ブイ!」
「いつか絶対、ワタルさんに勝ちます!」
ワタルは笑う。
「楽しみにしているよ」
「その時は、私も今より強くなっている」
「望むところです!」
二人は笑った。
* * *
その後。
マサヒロとイーブイは、ゆっくりとセキエイ高原を下っていた。
「……」
マサヒロはポケットの中を見る。
そこには――。
これまで集めてきたバッジ。
そして、これまでの旅で手に入れたたくさんの思い出。
「いろいろあったな」
「ブイ」
マサヒロは笑う。
「最初はシゲルに勝つことばっかり考えてた」
「ブイ」
「サトシのことも、昔は馬鹿にしてた」
「ブイ」
「でも、旅をして、いろんな奴と会って……」
マサヒロは前を見る。
「リョウにも会った」
「ブイ!」
「たくさんの仲間にも会った」
「そして――」
マサヒロはイーブイの頭を撫でる。
「お前と一緒に、ここまで来た」
「ブイ!」
「負けたこともあった」
「ブイ……」
「でも、そのたびに強くなった」
マサヒロは拳を握る。
「ポケモンリーグではリョウに負けた」
「サトシやシゲルとも、またバトルしたい」
「それに――」
マサヒロは空を見上げる。
「いつか、ワタルさんにも勝ちたい!」
「ブイ!」
マサヒロは笑った。
「だから、まだ終われないよな」
「ブイ!」
「俺はもっと強くなる!」
「ブイ!」
「そして…いつか絶対、チャンピオンになる!」
イーブイも大きく鳴いた。
「ブイィィ!」
マサヒロは前を向く。
「行こうぜ、イーブイ!」
「ブイ!」
二人は新しい道へ歩き出した。
これまでの旅は――ここで終わる。
でも。
マサヒロとイーブイの物語は、まだ終わらない。
シゲル。
サトシ。
リョウ。
そしてワタル。
まだまだ追いつきたい相手がいる。
まだまだ戦いたいポケモンがいる。
まだまだ見たことのない場所がある。
マサヒロは笑った。
「絶対、もっと強くなってやる!」
「ブイ!」
少年とポケモンは、未来へ向かって走り出した。
二人の冒険は――。
これからも続いていく。
ここまでお読み頂き誠にありがとうございました!
気が向いたらジョウト地方編を書くかも知れませんがマサヒロとイーブイの物語は一旦完結とさせて頂きます!
それでは皆さま!ごきげんよう!