……せや!
ゼロレクイエムの改変です。
原作のままが一番きれいな終わり方だ!という方はブラウザバックをお願いします。
訂正
黒の騎士団内での立場を変更しました。
ルルーシュの部下→ルルーシュの協力者(C.C.と似たような立場)
燃えさかる炎と鮮血の匂いの中で覚醒したあの日から、俺は「マリオ・ディゼル」として生きてきた。前世の日本人としての記憶とこの世界の知識を持ちながらも、歴史の奔流を止めることはできなかった。両親と妹の冷たくなった身体を抱きしめた瞬間から、俺の歩む道は決まっていたのだ。原作のレールを逸脱することなく、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという男の「世界の破壊と創造」を完遂させるため、俺はあえてマリオの足跡を忠実に踏みしめ続けた。
ルルーシュの協力者となりて駆け抜けた日々。だが、どれほど命を削ろうとも悲劇は容赦なく重なった。俺の破滅的な歩みを温かく受け止めてくれていたクラリス・ガーフィールドまでもが、仇敵カーリー・ディゼルの手によって命を落とした。ついにカーリーを討ち果たした時、俺の胸に残っていたのは達成感などではなく、果てしない虚無だけだった。両親、妹、そしてクラリスさん。俺がこの世界で愛し、守りたかった者は一人残らず奪われ、消え去ったのだ。
本来の「マリオ・ディゼル」なら仇を討った後に表舞台から姿を消すはずだった。しかし俺は、ルルーシュたちの元へ戻った。彼らが企てる最後の悲劇、「ゼロレクイエム」の本当の仕上げを果たすために。
世界を決定づける式典の直前、静まり返った控室で俺はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと向かい合っていた。過酷な命運を背負い疲弊した男は、俺が差し出したグラスを疑いもせず口にし、やがて揺らぐ意識の中で困惑の目を向けた。
「マリオ……お前、何を……」
「今は眠れ、ルルーシュ。死ぬべきなのは君じゃない」
崩れ落ちる体を抱きとめ、ソファへ静かに横たえる。君にはまだ、生きる理由がある。世界からどれほど憎まれようと、生きてその目で確かめなければならない未来がある。何より、君にはナナリーがいるのだから。守るべき妹を残して死ぬことなど、俺が絶対に許さない。俺にはもう、守るべき者も、帰る場所も何一つ残っていない。ならば、この命の使い道は最初から決まっていた。
部屋の影から、篠崎咲世子が姿を現した。彼女の瞳には深い葛藤と、全てを悟った諦念が宿っていた。俺は彼女から、ルルーシュが着るはずだった豪華な装束と顔を隠す仕掛けを受け取った。背格好を合わせ、悪逆皇帝の仮面を被る。咲世子さんの変装術とこの衣装があれば、誰も偽物だとは気づかない。
背後から静かな足音が近づいてきた。そこにいたのは、全てを察した眼差しを向けるC.C.だった。
「……本当にいいのか、マリオ」
C.C.の声にはいつもの嘲弄の色はなく、深く重い響きがあった。俺は胸元を正しながら自嘲気味に微笑んだ。
「俺にはもう何もないんだよ、C.C.。両親も、妹も、クラリスさんも……俺がこの世界で愛し、守りたかったものは全部カーリーに奪われた。復讐を果たした俺には、もう守るべきものも、帰るべき場所もどこにも残っていない」
俺はソファで静かな寝息を立てるルルーシュを見つめた。
「でも、ルーシュにはまだ、ナナリーがいる。生きて、罪を背負ってでも、ナナリーと明日を生きる資格があるんだ。守るべき者がいる奴が死んで、何も残っていない俺が生き残るなんて、そんな理不尽な話はないだろ」
「……お前はどこまでも愚かで、救いようのないお人好しだな」
C.C.は深く息を吐き、静かに首を振った。
「ルルーシュが目を覚ましたら、どれほど悔やみ、自分を責めるか分かっているのか?」
「それでいいさ。生きて苦しんで、それでもナナリーと一緒に笑える日を探せばいい。……C.C.、君の共犯者のこと、頼んだぞ。俺の代わりに、あいつの歩む明日を見届けてやってくれ」
「……ふん。最後まで人使いの荒い男だ。安心しろ、私という共犯者が、そう簡単にあいつを一人にはさせない」
「ありがとう」
俺は悪逆皇帝の仮面を被り、光が射し込む扉へと足を踏み出した。
陽光が照りつけるパレードの街頭。押し寄せる民衆が吐き出す凄絶な怒号と憎悪の嵐の中、俺は装甲車の上に立ち、世界の憎しみを一身に受け止めていた。そのとき、先頭を進むナイトメアフレームの上を一筋の閃光が駆け抜けた。仮面の英雄「ゼロ」――枢木スザクだ。
白刃を閃かせ、一直線に俺めがけて跳躍するスザク。仕掛けられた演出通り、俺の胸を目がけて突き出される剣。だが、間近に迫ったスザクの仮面の奥の瞳が、俺の姿を捉えた瞬間に激しく揺れた。
刃が俺の胸を深く穿ち、激痛と熱量が全身を駆け巡る。俺は倒れ込みそうになる身体をスザクの肩に預け、彼の耳元でかすかに囁いた。
「……いい顔だな、スザク……。完璧な……ヒーローだ……」
「どうして……! どうしてルルーシュじゃないんだ、マリオ! 君がこんな……こんなことをする必要なんて……っ!」
スザクの声は怒りと困惑、そして悲痛な叫びに震えていた。俺は刺された胸の痛みに耐えながら、スザクの背中に血で汚れた手を回した。
「俺にはもう……帰る場所が、なかっただけだ……。奪われ尽くした俺の……最後の身勝手さ……。ルルーシュを……頼むぞ、ゼロ……。君と……そしてこの世界に、温かな明日を……遺してやってくれ……」
「……誓う。君が命を懸けて護ったこの希望を……僕が、死んでも守り抜く……!」
スザクが胸からゆっくりと剣を引き抜いた。吹き出す血の激痛に頭が眩み、足元が大きくふらつく。意識が混濁する中で耐えきれず、俺の身体は前へと倒れ込んでしまった。段差のない装甲車の滑らかな斜面を滑り落ち、そのまま崩れ落ちるように滑り込んだ先には――捕らわれているナナリーがいた。
周囲ではコーネリア率いる反乱軍が人質たちを解放している最中であり、湧き上がる大歓声と暴徒の叫び、地響きのような混乱が音のすべてを呑み込んでいた。
目の前へ滑り落ちてきた俺に対し、ナナリーは震える手で血に濡れた胸元と、その手に触れた。
掌に残る戦いの傷痕、指の節の感触、忘れるはずもない独特の手触り。触れた瞬間、ナナリーの瞳が激しく揺れ動き、彼女は目の前に倒れている人物が誰なのかを胸の奥から確信した。
「……え……? この、手……傷……? いいえ……お兄様じゃない……。あなたは……マリオさん……!? マリオさんなのですか!?」
「……さすがだな……ナナリー……。手だけで…分かっちゃうか…」
「どうして……! どうしてマリオさんがお兄様の変装をして……こんな……っ!? お願いです、答えてくださいマリオさん!」
ナナリーの手が俺の血で赤く染まっていく。人質解放の歓声と怒号の爆音が世界を埋め尽くし、ナナリーがどれほど悲痛な声を張り上げようとも、この真実は誰の耳にも届かない。かき消された世界のなかで、俺は残された最後の力を振り絞り、震える彼女の手をぎゅっと握り返した。
「……聞いてくれ、ナナリー……。ルルーシュは……大丈夫だ……。咲世子さんたちと一緒に……安全な場所にいる……。あいつはまだ……死んじゃいけないんだ……」
自分の手に残る感触と事実に涙を溢れさせるナナリーの瞳を、俺は仮面の奥からまっすぐに見つめ返した。
「ナナリー……世界の悪意は…俺が引き受ける……。だから……二人で……絶対に、幸せになってくれ……っ」
「マリオさん……! いやです、そんな……っ! お兄様の身代わりなんて……私を遺して行かないでください! マリオさん――っ!」
解放に湧く民衆の大歓声にかき消され、誰の耳にも届かないナナリーの悲痛な絶叫。彼女の温かい涙が、仮面へとこぼれ落ちていく。
ああ、これでいい。
俺の愛した家族も、クラリスさんももういないけれど。復讐を果たして空っぽになったこの命で、みんなは明日を迎えることができる。
血の匂いに塗れた俺の「マリオ・ディゼル」としての物語は、いま、満ち足りた救いの中で静かに幕を閉じた。
もしかしたら続くかも……