第143ヴァルハラ歩兵連隊・連隊情報部

戦場整理中、オルク所持品より記録帳一冊を回収。
内容は、帝国兵の日記形式を模倣した私的記録と判断。
敵性種族資料として保管指定。

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オレの日記 勝手に読んだらぶっ飛ばす

オレの日記

 

一日目

 

死んだインゲンから、ちっこい本を拾った。

弾も入らねえし、刃もついてねえ。だが、そいつは上着の奥に大事そうにしまっていた。

 

中を読むと、飯を食ったことや、雨が降ったことが書いてある。インゲンは、その日にあったことを字にして残すらしい。

 

最後には「明日も無事でありますように」とあった。

その次からは真っ白だ。まだ使える。

 

オレもやることにした。

 

ボスに見せたら

「そんなモン書いてるヒマがあったら弾ァ詰めろ!」

と言われた、なのでグロッツにやらせた。

それから今日のぶんを書いた。

 

きょうは、たまをつめた。

 

初めてにしちゃ、よく書けた。

 

二日目

 

日付というのも書くらしいが、今日は何日なのか誰も知らねえ。

 

だから、本を拾った日を一日目にした。明日は三日目だ。これなら間違えねえ。

 

スクラップの山から赤い鉄板を見つけた。

 

メクに「こいつは速えぞ」と教えたら、「車輪もねえのに走るか」と言いやがった。

 

夕方、グロッツがオレの昼飯を盗んだ。

 

あいつは赤い鉄板に飛び乗って、坂を滑って逃げた。

 

追いつけなかった。

 

明日、メクにこのページを読ませる。

 

三日目

 

本日は偵察を行った。

 

前の持ち主がこう書いていたので、真似した。

 

インゲンの基地を見つけた。高い壁に、鉄の門。見張り台にはでかい銃が据えてある。中でも大勢が歩き回っていた。

 

ここまで揃えておいて、オレらに黙っていやがった。

 

ボスに知らせると、牙をむいて笑った。

 

「明日は早えぞ」

 

戻ってから弾を詰めた。チョッパの刃も研いだ。ゴルザグはトラックの前に鉄の角を溶接していた。

 

明日のぶんまで書きたくなった。

 

だが、まだ門をぶち抜いてねえ。

 

楽しみのために取っておく。

 

四日目

 

トラックがひっくり返った。

 

門にはまだ届いていなかった。

 

ゴルザグは運転席から這い出すと、「予定どおりだ!」と怒鳴った。せっかくつけた鉄の角が地面に刺さっていた。

 

何の予定だったのかは聞けなかった。見張り台が撃ち始めたからだ。

 

みんなで駆けた。

 

インゲンの銃は、光る弾がびゅんびゅん飛んでくる。暗いうちに襲ってよかった。どこに敵がいるか、よく分かる。

 

見張り台の下から、降りてこいと怒鳴った。

 

ボムが降ってきた。

 

話の早えやつだった。

 

この本にも穴があいた。

 

文字のねえところで助かった。

 

五日目

 

基地はオレらのものになった。

 

ボスが一番高い建物に登って、旗を立てた。そこは昨日、オレが屋根を撃ち抜いたところだったので、途中で片足が沈んだ。

 

笑い声がした。

 

ボスは穴から抜け出すと、そいつを旗竿でぶん殴った。

 

倉庫で飯を見つけた。四角い缶に入っていて、噛んでもなかなか開かねえ。

 

撃ったら開いた。

 

中身は壁についた。

 

グロッツが別の缶についている輪っかを引くと、ふたがぺろんとめくれた。

 

あいつはオレの顔を見て、黙ってそいつを差し出した。

 

利口なグロッツだ。

 

食ったあと、空き缶をくれてやった。

 

六日目

 

本日は天候晴朗なり。

 

前の持ち主は、戦った日にも天気を書いていた。オレは忘れていた。今日はきちんと書く。

 

朝は晴れていた。

 

昼にメクの作業場が吹っ飛んだ。

 

煙で空が見えなくなって、ボルトと鉄板が降ってきた。でかい扉が食堂の屋根に刺さった。

 

メクは顔を煤だらけにして出てきたが、両手で抱えた何かをボスに見せびらかしていた。

 

あれは明後日には撃てるらしい。

 

天気のところを直しておく。

 

晴れ。のち、スクラップ。

 

拾いに行ったら、いいボルトがあった。

 

七日目

 

外れの土手でインゲンと撃ち合った。

 

向こうは石の陰。オレは壊れたトラックの後ろ。

 

あいつが撃つと車が光った。こっちが撃つと石が欠けた。昼過ぎには車も石も、ずいぶん小さくなっていた。

 

ところが肝心のインゲンには当たらねえ。

 

弾倉を替えていると、向こうが頭を出して何か叫んだ。聞こえねえから顔を出したら、また撃ってきた。

 

ちょっとカシケーやつだった。

 

日が傾くころ、そいつが片手を上げた。

 

オレも上げた。

 

すると、向こうは土手の向こうへ消えちまった。

 

終わりの合図だったのかもしれねえ。

 

知っていれば、手なんか上げなかった。

 

八日目

 

メクのビッグシュータができた。

 

長い銃身に、ごつい弾倉。持つと腕にずっしりくる。どこから剥がしてきたのか、取っ手にはインゲンの祈り文句が残っていた。

 

試し撃ちしたら、祈り文句が焦げて読めなくなった。

 

的は粉々だ。

 

台もなくなった。

 

その後ろの小屋からゴルザグが飛び出してきた。

 

いい具合だったが、途中でビッグシュータがひしゃげて、弾が出なくなった。

 

メクが覗き込んだ。

 

「銃身がもたねえ」

 

「じゃあ増やせば良いじゃねえか」

 

あいつの顔がぱっと明るくなった。

 

明日もここへ来よう。

 

九日目

 

インゲンが来ねえ。

 

土手にもいねえ。道路にも動くものがねえ。ボスは見張り台に椅子を持ち込んで、ずっと遠くを睨んでいる。

 

隣のモブと殴り合った。

 

きっかけは忘れた。ゴルザグの歯が折れたので、拾ったやつとゴルザグでもうひと勝負になった。

 

悪くはなかった。

 

だが、あの土手のインゲンが、仲間を連れて戻ってきたらもっとよかった。

 

新しいビッグシュータは、今度はちゃんと撃てる。

 

持っていく弾薬箱まで決めて、もう二度も詰め直した。

 

あと、相手だけだ。

 

十日目

 

朝っぱらからグロッツがわめいていた。

 

うるせえので黙らせようとしたら、道の向こうを指さした。

 

土煙だった。

 

高いところへ登った。

 

インゲンだ。

 

前に逃げた連中もいるのかもしれねえ。だが、あんな数じゃなかった。

道路いっぱいに歩兵がいる。旗が揺れている。トラックが次々に丘を越えてくる。

 

レマン何とか戦車。

 

その後ろにも戦車。

 

おい、あれを見ろ。あのでけえのだ。横にもダッカがついてやがる。上の砲は、オレらのトラックより長えんじゃねえか。

 

後ろの丘では大砲を並べていた。

 

何門あるのか数えようとしたら、最初の一発が来た。

 

見張り台の下が吹っ飛んだ。

 

腹の底まで響く音だった。

 

ボスが椅子を蹴飛ばした。

 

笑っている。

 

メクはオレの銃に最後のボルトを叩き込んだ。ゴルザグがエンジンをふかしている。あちこちで雄叫びが上がる。肩がぶつかる。誰もどきゃしねえ。みんな門へ押し寄せている。

 

また大砲が鳴った。

 

壁が崩れた。

 

出口が増えたぞ。

 

インゲンども、準備してやがったんだな。

 

あれだけ集めるのに、時間がかかったんだな。

 

よし。

 

待った甲斐があった。

 

今日は書くことが山ほどできる。

 

続きは帰ってからだ。

 

最高の――

 

Waaaaagh!!〈いくさだァァァア!

 

の始まりだ!!


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