高校二年生──長尾和幸(ながおかずゆき)には、これといって人に誇れるような夢はない。

成績は普通。
運動は得意。
そして、両親が営む定食屋を幼い頃から手伝ってきたおかげで、料理の腕にはちょっとだけ自信がある。

そんな和幸には、幼い頃から付き合いの続く一人の親友がいた。

武田信也(たけだしんや)

学年トップの成績を誇る優等生。
しかし、その代償とでもいうように運動神経は壊滅的。
短距離走では女子を含めてクラス最下位。
おまけに人付き合いも大の苦手で、学校でまともに話す相手は和幸くらいしかいない。

正反対な二人だが、不思議と昔から馬が合った。

放課後になれば和幸の実家の定食屋へ。
勉強を教えてもらう代わりに、信也には店を手伝わせる。

時には信也の家へ遊びに行き──和幸が密かに想いを寄せる、世話焼きで美人な信也の母・諏訪(すわ)にからかわれる。

そんな毎日が、これからも続いていく。

和幸はそう思っていた。

──高校二年生の春。

信濃月奈(しなのつきな)です」
「妹の、信濃星奈(しなのせいな)です」

和幸たちのクラスへ、二人の少女が転校してくる。

顔も同じ。
背丈も同じ。
髪型まで同じ。

違うのは、月と星──それぞれが身につけた髪留めだけ。

見た目は瓜二つなのに、中身はどこか違う双子の姉妹。

彼女たちとの出会いをきっかけに、それまで二人だけで完結していた和幸と信也の日常は、少しずつ形を変えていく。

四人で囲む定食屋のテーブル。

初めてできる新しい友人。

勉強に、体育祭に、文化祭。

そして──初めて知っていく、誰かを好きになるという気持ち。

「なあ、和幸」
「ん?」
「……高校生活って、こんなに面倒だったか?」
「僕に聞くなよ。でも──」

きっと、悪くない。

料理上手でスポーツ万能。でも将来の夢はまだない少年。

頭脳明晰。でも人との付き合い方を知らない少年。

そして、二人の前へ現れた瓜二つの双子。

高校二年生の春。

四人の青春は、一軒の小さな定食屋から動き始める──