火を点けろ、燃え残ったダン戦熱全てに……。

てな感じで、この作品はとある素敵作品を拝見してダン戦熱が復活した、コーラルとコジマに脳を焼かれナニカサレタ作者の妄想小説です。

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フロム脳式ダンボール戦機ウォーズ

 LBXと呼ばれる玩具がある。

 日本の玩具メーカーであるタイニーオービット社が発売したそれは、新時代のホビー用小型ロボットとして、子供達を中心に飛躍的な人気を博すと思われた。

 

 ──しかし。

 LBXの性能は子供向けとしてはあまりにも高性能過ぎた。故に、暴走事故が多発し、瞬く間にLBXは販売中止の憂き目にあう。

 誰もが、LBXは流行と言う名の奔流に散逸してしまうかに思われた。

 だが、しかし。

 

 一度生まれたものは、そう簡単には死なない。

 

 その言葉の通り、LBXは不死鳥の如く蘇った。強化ダンボールと呼ばれる未来の梱包材、その技術を応用し開発された専用のバトルフィールドと共に。

 斯くして無事に販売が再開されたLBX、その熱狂は日本を飛び出し世界中へと伝播した。

 年々増加するプレイヤー人口、それに伴い拡大を続けるLBX市場。新たな機体、新たな戦場、新たなる強敵(ライバル)。終わる事のない、戦い続ける歓びを!

 

 ──だが、誰が想像できたであろう。この熱狂の果てにあるものが、全てを焼き尽くす暴力だと。

 

 

 

 ミゼル事変。

 首謀者であるミゼルと言う名の少年がLBXを用いて世界中で大規模な破壊活動を行った大事件。

 人類滅亡の瀬戸際に立たされたこの大事件を経て、漸く世界は気が付く、LBXの持つ潜在的な可能性……。文字通り国家を転覆できる程の力を。

 そして、その力を行使するプレイヤー達の多くが、事変解決の立役者と同じ年頃の少年少女達であるという事実を。

 

 しかし、既に数十億体(一度生)が販売され(まれた)ており(ものは)それらを回収する(そう簡単)のは(には)現実的ではない(死なない)

 

 故に大人達は別の方法を取る事となった。それが、世界初となるLBX専門教育機関の設立。

 LBX発祥の地である日本にて設立された中高一貫校、その名を神威大門(かむいだいもん)統合学園。

 

 

 

 ミゼル事変から数年の未来。

 新たな物語が、神の門とも呼ばれるこの学園から始まる。

 

 

 

 

 

 日本の首都であるトキオシティ。ミゼル事変の際に傷ついたこの巨大都市も、今や復興を果たしかつての賑わいを取り戻していた。

 そんなトキオシティの一角、トキオ国際フォーラムと呼ばれるコンベンション・センター内にて、神威大門統合学園の転入試験が行われていた。

 なお、現在唯一のLBX専門教育機関という事もあり、世界中から集まった受験生の数は数百人にも上る。

 

「621ー、どうだった筆記の方?」

「大丈夫、問題、ない」

「おー、そっかそっか」

 

 空調の効いただだっ広い試験会場、そこに所狭しと置かれたテーブルと椅子。

 そこで午前中筆記試験に臨んだ多くの少年少女達は、今、午後から予定されている実技試験に向けて各々の昼休憩を過ごしていた。

 トイレに行く者、音楽を聴く者、外の空気を吸いにいく者、仮眠する者等々。その過ごし方はまさに十人十色。

 

 そんな中、とあるテーブルにいる一組の少年少女は、持参したお弁当を食べながら会話に興じていた。

 

「そういう622は?」

「……お、おお、俺の頭脳をもってすればこの位の問題、マッハで埋めてやったよ!」

「全部埋めたからって、合格するとは限らないけどね」

「グ八ッ!!」

 

 正論を返され少々大げさな仕草を見せる少年を他所に、621と呼ばれた少女は自身のお弁当を食べ進める。

 ちなみに、先ほどから二人は番号でお互いを呼び合っているが、当然ながらそれらは本名ではない。偶々連番だった為にお互いを受験番号で呼び合っているだけである。

 

「うぅ……、こんな不憫な俺を癒してくれるのは、やっぱりウォルターの作った弁当だけだ。……あ、この唐揚げ美味! ジューシーなお肉にピリッとした辛味が合わさって抜群に美味い!」

「今回の唐揚げは七味とマヨネーズで味付けしたって言ってた」

「おぉ、七味マヨか! この前はネギ塩だれだったし、確かその前はカレー味。飽きさせない工夫の数々……やっぱウォルターはスゲーよ!」

「ん、やっぱり、ウォルターの作る料理は世界一」

「だな!」

 

 お弁当を作ってくれた人物への感謝と味の感想を述べつつ、二人はお弁当を食べ進める。

 とその最中、不意に少年が少女の頬にご飯粒がついている事に気が付く。

 

「お、ご飯粒ついてるぞ」

 

 そう言うと、少年は自身の指でご飯粒を取り、そのまま自身の口の中へと放り込む。

 

「ありがと」

「応、どういたしまして」

 

 そんな一幕を挟みつつ、二人はお弁当を堪能する。

 ちなみに、先ほどのやり取りを目撃した何人かの受験生達が、会場内の自販機に泥水のようなフィーカを買い求めに走ったのはここだけのお話。

 

 

 それから程なく、お弁当を食べ終えた二人は自販機で買ったジュースを片手に会話に興じていた。

 

「午後の実技試験に合格すれば、俺達晴れて神威大門統合学園の一員だな!」

「けど、ゴールじゃない。むしろ、漸くスタートラインに立っただけ」

「解ってるって。……なぁ、睦美(むつみ)

「何、黒鵜(くろう)?」

「絶対合格して、そんでもって企業の人達の目に留まってプロになって! ウォルターを目一杯楽させてやろうな!」

「ん、当然」

 

 受験番号621番の少女の名は両見 睦美(りょうけん むつみ)。受験番号622番の少年の名は渡 黒鵜(わたり くろう)

 名前からも分かる通り、二人は兄弟などではない。にもかかわらず二人の距離が近いのは、二人がとある人物、ウォルターの養子として一つ屋根の下で過ごしている為だ

 物心つく前に本当の両親と別れ孤児院へと預けられた二人は、数年を孤児院で過ごした後ウォルターに引き取られた。

 ウォルターは地元でも有名人らしく、これまでも何人もの孤児を引き取っては自立するまで育て上げてきた。

 

 そんなウォルターに引き取られ、何不自由なく彼の家で過ごしてきた二人は、ある日目撃してしまう。ウォルターがリビングで通帳を片手にため息をついている姿を。

 ウォルター曰く、若い頃の貯えがまだ十分残っているから心配ないとの事だが、その日の出来事を切っ掛けに二人は自分達でお金を稼ぐ方法を模索し始めた。

 そして辿り着いたのが、学生の身分でもプロとして活動する事のできるプロLBXプレイヤー。

 その為の第一歩。それが、日本のみならず世界中からプロLBXプレイヤーを目指す少年少女達が門を叩く神威大門統合学園への入学であった。

 

「受験生の皆さん。これより実技試験の説明を行いますので、御着席の程よろしくお願いします」

 

 二人が改めて決意表明を行った所で、会場内にアナウンスが流れる。刹那、会場を離れていた受験生達がぞろぞろと戻ってくる。

 程なく、受験生全員が着席した所で、実技試験の概要が書かれたプリントが配られていく。

 そしてプリントが配り終わったタイミングで、会場内に設けられた壇上に一人の男性が姿を現した。

 

「ではこれより実技試験の内容を説明する、一字一句聞き漏らすな!!」

 

 ダークグリーンのスーツの上からでも分る程強靭な体つき、貯えられた髭に頬の傷、それらを備えた強面も相まって一見すると教師というよりも軍人という印象を受ける。

 

「今回の実技試験、貴様ら受験生どもは各々割り振られた別会場に赴き、そこで我々が用意したLBXを使って自律稼働型LBXとバトルしてもらう!!」

「ん、ねぇ黒鵜。連番なのに会場違うね?」

「あー、多分、同じ学校の仲いい奴同士連携させない為じゃね。今回の実技試験は自律稼働型LBXの撃破ポイントを競うものみたいだしさ」

「そっか」

「当然、競争とは言え他の受験生に対する妨害行為等は認められん!! そんな事をすれば泣いて詫びる羽目になるぞ!! それから……そこの二人!! 交流に余念がないようだな。ついでに仲良く刺繍でもしてそのよく回る舌を縫い付けておけ!!」

 

 教師から注意を受けた二人は咄嗟に頭を下げる。

 

「では説明を続けるぞ! 受験生ども!!」

 

 その後も聞き漏らす方が難しいのではと思えるほどの声量で行われる説明が続けられ、最後に、教師の口から締めの言葉が送られる。

 

「以上を持って説明を終える! 全員、理解できたな? 理解できたのなら復唱しろ!!」

「「り、理解しました!!」」

「よろしい!! では準備を始めろ!! 愉快な試験の始まりだ!!」

 

 刹那、受験生達は各々割り振られた実技試験の会場に向けスタッフの誘導のもと移動を始める。

 

「黒鵜」

「ん?」

「頑張ってね」

「応、そっちもな!」

「うん!」

 

 睦美と黒鵜の二人も、最後に励ましの言葉を掛け合うと、各々の会場に向けて歩み始めた。

 

 

 

 

 スタッフの誘導のもと実技試験の会場に足を踏み入れた黒鵜が目にしたのは、現代都市のフィールドで構成された巨大なDキューブ。

 

「それでは受験生の皆さん、LBXとCCMをお配りしますので、受験番号を呼ばれた方から取りに来てください」

 

 刹那、スタッフの説明と共に、今回の実技試験で相棒となるLBXとその操作端末であるCCMの配付が開始される。

 

「受験番号622番」

「はい!」

 

 やがて黒鵜の番となり、彼はスタッフからLBXとCCMを受け取る。

 

(機種はBAWS(ボース)社のBASHOか。武器は、3点バーストライフルのRANSETSU-ARとパルスブレードのBU-TT/Aか。できればコアパーツも確認したいが、公平を期すために事前の動作テストは禁止されてるからな……。仕方ない、ぶっつけ本番で何とかするか)

 

 黒鵜の相棒となったのは、堅実で武骨な外観が何処かブリキロボットを彷彿とさせるBASHOと呼ばれる機体。

 同機は第一次LBXブームの頃にイギリスのLBXメーカーであるBernard(B) Applied(A) Worthy(W) Systems(S)より販売された機体で、販売開始から既に10年以上が経過してもなお一定数の愛用者を抱える老兵だ。

 

「全員受け取りましたね? それでは皆さん、Dキューブの前にお立ちください」

 

 刹那、スタッフの指示に従い、黒鵜を含めた受験生達が巨大なDキューブの前に立つ。

 

「受験生ども聞こえるか、全員の準備が整った!! これより、神威大門統合学園転入試験の実技試験を開始する! 突入しろ、受験生ども!!」

 

 次の瞬間、おそらく監視カメラを通じて各会場の様子をモニターしているのであろう、あの強面教師の声がスピーカーを通して響き渡る。

 同時に、それが試験開始の合図だと理解した黒鵜達受験生は、手にしたBASHOを次々とフィールド内に降り立たせ行動を開始する。

 

 

(この試験の肝は、如何に他の受験生よりも早く自律稼働型LBXを発見し素早く撃破する事が出来るか否か。慎重に行動してちゃ他の受験生に撃破ポイントを搔っ攫われる。……よって、攻めの一手だ!)

 

 黒鵜のBASHOはブースターを噴かせフィールド内を進む。

 現代都市のフィールドはその名の通り大小さまざまなビルが立ち並ぶフィールド。故に視界が限定され、索敵するには兎に角フィールド内を歩き回るか、或いはビルの屋上の様な高所からフィールド内を見渡すしかない。

 しかし──

 

「よっしゃ、見つけ……う、うわぁっ!? そ、そっちから撃ってくるのかぁ!?」

(相手の数が分からないのに高所に身を晒すのは悪手だぜ)

 

 黒鵜の心のつぶやきの様に、今回のバトルは通常とは異なる仕様。故に、遮蔽物がない高所に身を晒すことは十字砲火を受けるリスクを伴う。

 そんなリスクを文字通りその身で味わった受験生のBASHOを横目に、黒鵜のBASHOは火線の発射地点を目指す。

 

「いた!」

 

 程なく、角を曲がった先に一機のLBX、アサルトAR3を装備したタイニーオービット社製のウォーリアーを発見。すかさずRANSETSU-ARの照準を合わせる。

 同時にウォーリアー側も黒鵜のBASHOに気付いたのか、手にしたアサルトAR3の銃口を向けると応戦の構えを見せる。

 そして、互いの銃口が火を噴き、戦いの火蓋が切って落とされる。

 

「思ってたよりもいい動きしてるじゃん」

 

 RANSETSU-ARを撃ちつつ、被弾を抑えつつ、ブースターを噴かせウォーリアーに接近する黒鵜のBASHO。

 一方、ウォーリアーは応戦しながら一定の距離を保とうと後退を続ける。

 しかし、機動力ではブースターを装備している黒鵜のBASHOに分があった様だ。

 

「もらった!」

 

 ウォーリアーを間合いに捉えた刹那、黒鵜のBASHOはパルスブレードを起動させると光の刃をウォーリアー目掛けて振るう。

 次の瞬間、ウォーリアーのカメラから光が消えると、糸の切れた人形の如く倒れ込み再び動き出すことはなかった。

 

「まずは一機」

 

 見事最初の撃破ポイントを獲得した黒鵜だったが、喜びに浸っている暇はなかった。

 何故ならその間にも、他の受験生達が得物を横取りせんと躍起になっているのだから。

 

(受験生同士の潰し合いかよ……、受験戦争ってのは辛いね)

 

 心の中でそうつぶやいた黒鵜は、一度深呼吸を行うと、新たな得物を探しに自身の操作するBASHOのブースターを噴かせた。

 

 

 それから黒鵜は終了の合図が出るまでフィールドを駆け抜けた。

 他の受験生達が時機を破壊されたり、破壊を恐れて適当な撃破数を稼いだところで機体の保全に走る中、最後まで戦い続けた。

 

(ざっとニ十機以上は撃破したけど……。さて、どうなるかな)

 

 黒鵜は、自身が割り振られた会場内ではおそらく自身が撃破ポイントのトップであろうと確信していた。

 だが、今回の実技試験は複数の会場で行われている。他の会場の受験生達が自分以上に撃破ポイントを稼いでいる事は十分に考えられる。

 

(ま、やるだけの事はやった。か)

 

 こうして実技試験の感想を締めくくった黒鵜は、スタッフに配付されたBASHOとCCMを返却すると、一路筆記試験の会場に足を運ぶのであった。

 

 

 

 

「よー、睦美、どうだった?」

「ん~、多分、いい感じ。そういう黒鵜は?」

「そりゃもう。俺の様な金帯にかかれば、迫りくる自律稼働型LBXをちぎっては投げちぎって輪投げ……」

「……」

「ちょ、待って。ボケたんだから何かあるでしょ!? 柔道の帯に金色なんてないよとか、輪投げって何だよとか!?」

「……」

「やめて、スルー攻撃はやめて!」

「……ぷ、ふふふ、ごめん」

「はぁ~。ま、兎に角、お互い気負い過ぎて空回りしなかったみたいだな」

「だね」

 

 筆記試験の会場で睦美と合流した黒鵜は、夫婦漫才の様なやり取りを行いつつ、次の指示があるまで待つ事に。

 それから暫くした後、別会場に移動していた受験生達が再び筆記試験の会場に集まった所で、スタッフから新たな指示が飛び出す。

 

「それでは、今から受験番号を呼ばれた受験生の方々は、荷物を持って別室に移動してもらいます」

 

 刹那、タブレットを持ったスタッフの口から次々と受験番号が発表されていく。

 

「受験番号621番、受験番号622番……」

「あ、呼ばれた」

「だな。さてと、それじゃ行きますか」

「うん」

 

 その中に自分達の番号も含まれていたので、睦美と黒鵜の二人は荷物を片手に、同じく番号を呼ばれた受験生達と共に別室へと移動を始める。

 

 

 二人を含めた数十人の受験生達が足を運んだのは、そこそこの広さを持つ会議室。室内には、幾つもの椅子が並べられている。

 

「お好きな席におかけください」

 

 スタッフに促され、受験生達は思い思いの席に腰を下ろす。睦美と黒鵜の二人も、並んで着席する。

 こうして全員が席に着いた所で、会議室の壇上に、先ほど実技試験の説明を行った強面教師が姿を現した。

 

「薄々勘付いてたとは思うが、俺は先ほどの実技試験の様子を別室でモニターさせてもらった。で、その感想を言えば、多少粗削りな所は見られるが全員悪くない動きだ!」

 

 強面教師はそこで一拍置くと、更に話を続ける。

 

「さて諸君、諸君がここに呼ばれた理由、薄々勘付いているのだろう? ……では発表する!!」

 

 刹那、受験生達は一様に息を呑む。

 

「認めよう、貴様らの力を! 今この瞬間から、貴様らは神威大門統合学園の一員だ!!」

 

 強面教師の口から合格発表が行われた次の瞬間、会議室内がわっと沸き立つ。

 睦美と黒鵜の二人も、互いに笑みを浮かべながら、互いの合格を喜び合う。

 

「やったな、睦美!」

「うん!」

「神の門、LBXプレイヤーの聖地……どんな所なんだろうな」

「黒鵜、気が早すぎ」

「だけどさ……、厳しい受験戦争に勝ってやっと手に入れたんだ、やっぱ早くこの目で拝みたいだろ!」

「ふふ、そうだね」

「ではこの後スタッフから詳しい日程等の説明があるので一字一句聞き漏らすなよ!」

 

 その後、興奮冷めやらぬ受験生達はスタッフから必要な書類や手続き等の説明を受け、解散する運びとなった。

 

 

 

 それから数時間後。

 自宅に帰った睦美と黒鵜の二人は、リビングで出迎えたウォルターに試験の結果を報告する。

 

「そうか、合格したか」

 

 笑顔の二人から合格の報告を受けたウォルターも、つられて顔がほころぶ。

 

「なら今日の夕食は、合格祝いに豪華なものを用意しないとな……」

「いやいやウォルター、そんなのいいって!」

「うん、黒鵜の言う通り。いつものご飯でいい」

「しかし……」

「あ、だったらさ、ハンバーグ! ハンバーグにしてくれ!」

「うん、私も、ハンバーグがいい。ウォルターの作るハンバーグ、大好き」

「そうか、分かった。なら、今日の夕食はリクエスト通りハンバーグにするか」

「「わーい!!」」

 

 リクエストが通り更に笑顔を咲かせる睦美と黒鵜の二人。そんな二人の様子を目にし、ウォルターの顔も更にほころぶ。

 ただその一方で、ウォルターの心の中には寂しさが滲み出ていた。何故なら、神威大門統合学園は離島にある全寮制の学校。ゆえに入学が決まったという事は、卒業するまでの三年間二人に会えないことを意味していたからだ。

 

(別れなら既に何度も経験しているというのに……。俺も年だな)

「どうしたウォルター?」

「あ、もしかして、ハンバーグの材料、足りない?」

「ん、あぁ、そうだ。ひき肉を買いに行かないとな。買い物に行くぞ、二人とも」

「「うん!」」

(神威大門統合学園、確かミシガンが教師をしていた筈だ。それに、去年からカーラが特別講師として赴任していたな……。一度二人に相談してみるか)

 

 しかし、寂しさを滲ませていたのも束の間。ウォルターは独自の思惑を巡らせ始めるのであった。

 

 

 一方その頃、新たな仲間を迎え入れる事が決定した神威大門統合学園内はこの話題で持ちきりであった。

 

「ねぇねぇエア! 来週、新しい転入生が来るんだって!」

「転入生ですか?」

「そ! どんな子が来るかな!? 仲良くなれるかなぁ……あ、イケメンいるかな!? どう思う、エア!?」

「私は……、どんな方でも、LBXが好きなのならそれで」

「なにそれ。……ま、エアらしいけどさ」

 

 放課後の教室内で談笑する女子生徒達も。

 

「おいイグアス聞いたか? 来週来るさしいぜ、新しい転入生共が」

「は、そうかよ」

「おいおい何だよ、興味ねぇのか?」

「どうせ月末までにはほとんど居なくなるんだ、んな奴ら興味ねぇよ」

「けどもしかしたらいるかも知れねぇぜ、骨のある奴が」

「は! どうせ全員弾避け位にしかならねぇ木っ端だ」

「ヴォルタ、イグアス! 喋ってないで走るペースを上げんか!!」

「ちっ、ミシガンの野郎が試験の監督で居ねぇから平和かと思ってたのによ。まさか猿田の野郎に頼んでやがったなんて……」

「何か言ったかイグアス!」

「なんでもねーよ!」

 

 グラウンドで走り込みを行う野球部所属の男子生徒達も。

 

「へぇー、今度の転入生の中にはウォルターの所の二人もいるのか、面白いね」

「あらカーラ先生、嬉しそうな顔して、何かいい事でもあったの?」

「あぁ学園長。なに、今度の転入生の中に知り合いが面倒見てる子達がいたんでね」

「あら、そうなの!? どの子どの子?」

「この二人ですよ」

「ムっちゃんにクロくんね! いい子達じゃない!」

「えぇ、だから歓迎してやろうと思いましてね」

「いいわねぇ! なら歓迎しなくちゃ、盛大に!」

 

 職員室で雑談を交わす特別講師と学園長も。

 新たな仲間達の到着を心待ちにしていた。

 

 

 

 

 そして翌週。

 睦美と黒鵜を含めた数十人の転入生たちは、指定された港からフェリーに乗船し神威島へと旅立った。

 

 ──果たして、彼らは神威大門統合学園(鋼の監獄)でどのような答えを導き出すのか。

 それは、神のみぞ知る。




この度は、本作品を読んでいただきありがとうございます。
続くかどうかは不明です。

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