『ただの棒振り』の私は後に世界を震撼させていく 作:冰藍雷夏
バンとの戦いを終えた私は、エリス達の元へと戻って来ていた。
「キュッキュッ!」
「貴様、わざと手を抜いているな!おふざけおてっ!くら……ゴフッ!」
「キュウッ!」
マシュは戦いを楽しんでいた。
そして、人間相手に勝ってしまった。
変化の魔法が使えるならば、戦った相手もそれなりに魔法は得意だろうに。
マシュは強かった。
「マルスさん、マルスさん!アイニスが、アイニスの身体がボロボロなんです」
「マルス……すまん、下手を打った。どうやら我はここまでのようだ。今後のエリス姫様のことは、貴様に任せ……」
「いやいや、こんなお転婆姫の相手はアイニスしかできない」
瀕死のアイニス。
そんなアイニスの身体に手を伸ばし魔法をかける。
私の回復魔法で全回復させよう。
「治したぞ」
「アイニス、わたくしのアイニス……………え?」
「……エリス姫様。治ってます……そうでした。このマルスという男は規格外の男でした」
「……え?」
呆然とするエリスとアイニス。
2人は義理の姉妹らしく、複雑な関係らしいので暫く放置。
他の人質を解放する。
椅子に縛り付けられている胡散臭い情報屋に回復魔法をかけながら、縄を切る。
「えっと、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、感謝する。あたしの名前はメルザスだよ」
「知ってます」
「酒場で情報屋をね……て、ええ?」
「そこで眠っている偽物の女の人に一度会っているので」
「ダリオスに?あいつはオカマだぞ」
「……えぇ」
知りたくなかった真実だった。
それからは、王都に居るバンの部下達を片っ端からマシュの軍隊が駆逐。
捕えると同時に、王都郊外のどこかに縛り上げて連れて行き、行方不明にした。
アジトにあった有り金全てを没収。
……流石にバンの宝物の一切には手を付けなかった。
エリスやアイニスいわく、どれも貴重品のようで、王都で恐れられているバンが持って適切に管理していた方が安全とのことだったので放置した。
たしかに、バンは収集に命をかけている節がある。
命懸けの人間は怖い。
やる気の謎パワーを遺憾なく発揮して、こちらの予想を超える動きをするから怖い。
そして数日後、堂々と私達の前に現れて謝罪してきた。
丁度、露店で食事をしている最中のことだった。
「おう、ガキ共!この間は悪かったな!ハルメルネ・リタの新作は無事に手に入れたけどよう。俺様の部下共が行方不明になってんだが。何か知らねえか?」
「き、貴様は!」
「おん?なんだよ。ガキ、俺様に惚れたか?やめとけ、やめとけ。俺様とテメェじゃ釣り合わねえよ」
「殺す!」
「シャッハ!!来いや、ガキ」
そのまま、アイニスとバンは殺し合いを始め、王都の夜へと消えて行った。
「一件落着か」
「ど、どこがですか?問題が山積みにしか見えませんけど?アイニスが殺されかけたんですよ?」
「ん~、それはアイニスの態度も悪かったのでは?アイニスはいつも上から目線の高圧的な態度だったので、年上のバンが苛立ったのでは?」
「それは……ありそうな話ですね」
「うん」
私の説明に微妙に納得するエリス。
今は楽しそうに殺し合いをしている。
「逆に今回はバンと出会えて良かったと思っている」
「……なんでですか?あの方は絶対に頭のおかしな方ですよ」
「それを言ったら私もそう。ついでにエリスもそう」
「ぐっ!なんでですか!」
食事中に頭を掴んでミシミシしないでほしい。食べづらい。
「……それよりも、エリスもアイニスもまだまだ未熟過ぎる。精進した方がいい」
今回のアイニス誘拐事件は、バンによる大人の……本気の仕業だった。
結構な長い時間、エリスとアイニスと共に過ごしているが。
王族特有の余裕……人より上に立っていると思い込んでいる節がある。
「それは……マルスさんもですよね?」
「私はもう。摩り切れているから例外。それにほとんど成熟しているから、身体以外は」
「……マルスさんの言っている意味がいまいち分かりませんね」
「今は分からなくていい」
今のエリスが、私の正体を知ってもしょうがないのでね。
「結論から言うと、エリスもアイニスもまだまだ未熟なので、私を見習うように。以上、説教終わり」
「それはマルスさんも同じじゃないですか~!」
また体を揺すられる。
やれやれ、これからも私は2人に振り回されながらこの王都で生活していくことになりそうな予感しかないな。
「フフフ、楽しい日々になりそうだ……これからも」
「マルスさ~ん!」