牢屋敷で裁判という名の殺し合いを経験した少女たちには、反逆の心くらい宿っていると思っている。

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ただの思い付きです。
エマヒロの暮らしていた地域と中学校に、多大な捏造が入ります。


秀尽高校2年・桜羽エマ

「久しぶりだな…」

 

 ひとりの女子高生が、誰に言うでもなくそう呟いた。

 毛先が桜色に変化した銀髪を揺らし、これから通うことになる学校を見上げる。

 彼女にとっては、文字通り久しぶりだったのだ。とある事情で日本を離れてから数か月経っており、復学手続きを終えたばかりで。

 

 制服に袖を通すのも、満員電車に揺られるのも、高校を眺めるのも―――久しぶり、なのだ。

 彼女―――桜羽エマにとっては。

 

「えぇっと…職員室、職員室……」

 

 ユキの犠牲によって牢屋敷が崩壊し、少女たちの身体から「魔女因子」が消滅してから数ヶ月。

 残酷な絶望の檻から解放された桜羽エマは、日本での社会復帰に向けた様々な手続きを経て、東京都内の「秀尽学園高校」へと編入することになった。

 スマホで確認しながら、職員室へたどり着くと、疲れた顔をした女性の先生が出迎えてくれた。

 

「桜羽エマさん……ですね。あなたの『不自然な空白期間』については、受け入れ先としてこちらでしかるべき説明を受けています」

 

 エマたちが牢屋敷に囚われていた時間については、政府は仮の説明として『特殊な症例による長期療養』といったものを用意している。魔女因子だの魔女裁判だのといった非科学的かつ凄惨な真実は、混乱を避けるため世間一般には伏せられているのだ。

 

 担任と紹介された教諭・川上貞代は、手元の書類に視線を落としたまま溜息混じりに言った。

 

「事情が事情とはいえ、多感な時期の生徒たちです。変な勘繰りをされないよう、学校では目立った行動は控えてくださいね。……あ、それと。今日はもうひとり、編入生がいますから」

 

 川上がドアの方へ視線を向ける。それに引き寄せられるように振り向いたエマの目に飛び込んできたのは、黒いボサボサ頭に大きなメガネをかけた、線の細い一人の少年だった。

 

「……雨宮、蓮です。よろしくお願いします」

 

 静かで低い声。

 丁寧なお辞儀。

 どこにでもいそうな大人しい印象の少年だ。

 けれどメガネの奥にある瞳には、どこか冷ややかで、けれど深く強い光が宿っているように見えた。

 

「……桜羽エマです。よろしくお願いします」

 

「雨宮くんも、いろいろ『訳あり』でね……。二人とも同じ2年4組です。それじゃ、教室へ行きましょう」

 

 川上に促され、二人は並んで静まり返った廊下を歩く。

 不意に視線を感じて横を見ると、雨宮蓮と目が合った。エマが曖昧に微笑むと、彼はほんの少しだけ驚いたように目を見開き、控えめに釈釈した。自分と同じ、どこか居場所のない浮いた空気―――言葉を交わさずとも、互いに似た匂いを感じ取っていたのかもしれない。

 

 だが、そのささやかな親近感は、教室内へ足を踏み入れた瞬間に霧散した。

 

「今日から編入することになった、桜羽さんと雨宮くんです」

 

 川上が紹介した途端、教室内に痛いほどの静寂が広がった。

 生徒たちの視線が一斉に二人へと注がれる。

 だが、その視線に含まれているのは歓迎ではなく、あからさまな好奇と拒絶だった。

 

「……ねえ、聞いた? あの男の方……」

「知ってる。保護観察処分なんだろ? 前科持ちだって……」

「マジかよ、ヤバすぎだろ……なんでそんな奴がうちの学校に?」

 

 ヒソヒソと交わされる心ない私語。

 雨宮蓮は慣れた様子で感情を殺しているかのように、うつむき加減に指定された一番後ろの席へと向かった。

 その背中に向けられる「前科持ち」という容赦ないレッテルと冷ややかな噂にエマが反応するのは当然だった。

 

(前科持ち……? こんなに静かそうな人が……?)

 

 エマは隣の席に着きながら、胸の奥がぎゅっと締め付けられるのを感じていた。

 

 エマ自身、彼の事はいまだよく知らない。

 だがそれでも、初対面であるはずの彼のことをよく知らないくせして、表面的な噂だけで人間を決めつけ、異常者扱いして排除しようとする空気が嫌だった。

 それはかつて、エマが味わった、ユキへのいじめの様子と―――あの理不尽な絶望の構造と、恐ろしいほど重なって見えたからだ。

 

 そんな噂話から、別種の言葉をエマは拾ってしまった。

 

「女の方もさ、数か月間どこかの施設に隔離されてたらしいぜ。病気って言ってるけど、本当は頭がおかしいんじゃないの……?」

 

 うっ、と小さく声が出た。

 嫌な思い出が蘇るが、必死に押さえつけながら前だけを見るように努めた。

 

 世間から見捨てられた自分と、前科持ちとして扱われる彼。

 同じ教室の隅で「浮きこぼれ」となった二人の視線が、一瞬だけ重なった。

 

 この出会いが、のちにエマの運命を大きく揺るがすことを、今はまだ知らない。

 

 


 

 

「クソッ!桜羽っ!」

「まずいぞ、エマは自分の身を守れる手段を持っていない!」

 

 ―――時は少し流れ、カモシダパレスにて。

 エマが隙を突かれ、シャドウの衛兵に囚われた。

 異形の兵の力は強く、エマの力だけでは抜け出せない。

 取り返そうにも、既にジョーカーもスカルもモナも、手が出せない。このまま、兵が嬲り殺すためだけの人質となったその時…それは起こった。

 

「ハハハ! 良いのは威勢だけか! 落ちこぼれの不良に、前科持ち、そして……お前だ、桜羽エマ!」

 

 衛兵の隣に立つシャドウ鴨志田が、エマを指さして邪悪に歪んだ嘲笑を浮かべる。

 

「大人しく俺の奴隷になっていれば、怪しい過去も目をつぶってやったものを!」

 

 シャドウ鴨志田は、エマの過去に、禁忌に、躊躇なく踏み込んでいく。

 

「そういえば……お前と似たような経歴を持っていた奴がいたなぁ。

 確か……二階堂だったか?」

 

「!!」

 

「お前を引き合いに出せば、鬱陶しく俺様に歯向かうアイツも黙るかな?」

 

「ヒロちゃんに……何をする気なのっ…!」

 

「何もしねぇよ? 俺様に従いさえすればなぁ…!

 ああいう、小生意気な女が俺様の言いなりになるのも乙なモンだよなぁ…!!」

 

 自分を人質に、幼馴染で友人の二階堂ヒロにろくでもないことをする。

 信じられないことだが、この鴨志田ならやりかねない。

 それを悟ったエマの視界が、真っ赤になった。

 

「(それだけは……それだけは許さないっ…!)」

 

 人質に取られるのも、衛兵に武器を突きつけられるのも、目の前でジョーカー達が痛めつけられそうになるのも怖かった。

 だが―――シャドウ鴨志田が言い放ったその一言が、エマの魂に怒りの火をつけた。

 そしてそれは、知らぬ間に、あっという間に燃え広がっていく。

 戦う事を好まず、それどころか自己主張も苦手なエマだったが………親しい人が、目の前で傷つけられることには、人一倍敏感であったがゆえに。

 いちど、“見て見ぬふり”をしてしまった過去を持ってこそ、その過ちを二度と犯すまいと誓っていたがゆえに。

 

『そうだよ。それだけは許しちゃいけない』

 

「―――っぁぁっ!!?」

 

 突如、脳裏に響く声。

 同時に、エマの脳内を激しい痛みが蹂躙する。

 

『ここで黙るってことは……見殺しにすること。ねぇ、キミはここで諦める?……ユキちゃんの時みたいに』

 

「―――っ、いやだ、そんなのは、もう―――絶対に…!」

 

『ふふ、そうだよね。もう二度と、見て見ぬふりはしないって決めたんだもんね。……それじゃあ、さっそく契約をしちゃおうか。我は汝、汝は我――』

『もう傍観者のふりはやめよう? それで……君が知っていること、全部告発しちゃおうか』

 

「——あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 頭を割り割られるような激痛に、エマは喉が擦り切れるほどの悲鳴を上げた。

 痛みにのたうち回る隙を突かれ、衛兵の手からその身が零れ落ちる。地べたに膝をつき、両手で頭を抱え込むエマの全身から、眩いばかりの青い焔が溢れ出した。

 

「な、なんだ!? 何が起きている!?」

「エマ……!?」

 

 シャドウ鴨志田が動揺で顔を歪め、ジョーカーたちも息を呑んでその光景を見つめる。

 

 激痛の中、エマの顔面に突如として異質な重みが走った。

 それは、黒と銀の装飾に桜色のバラの花が施され、まるで仮面舞踏会に出てくるベネチアンマスクような、冷たく美しい「仮面」だった。

 

 視界が遮られ、絶望と理不尽の記憶が脳裏を駆け巡る。

 自分たちの尊厳を奪い、弄び、踏みにじる大人たち。ユキの惨劇。そして今まさに、ヒロや目の前の仲間たちに伸びようとしている邪悪な手。

 それを、拒絶するために。

 

「(―――許さない。どんな理由があろうと、自分の保身のために誰かを傷つける人を……ボクは絶対に許さない!)」

 

「ボクは……もう誰も……見捨てないっ!!」

 

 エマは両手を己の顔へとかけた。

 指先が仮面の縁に食い込み、肉が裂ける鈍い音が響く。

 顔面から鮮血が吹き出し、目から、口から、血のように紅く染まった青い青焔が噴き出した。

 

 バリィンッ!!と、皮膚ごと仮面を引き剥がした瞬間、凄まじい衝撃波が大広間を吹き荒れた。

 

「ヒッ……!? な、なんだあの力は……!?」

 

 衛兵たちが後ずさりし、シャドウ鴨志田が悲鳴を上げる。

 弾け飛んだ炎と血煙の中から、静かに、しかし圧倒的な威圧感を纏って現れたのは―――巨大な彫刻の判子を手に、審判の天秤を背に抱き、鋭利な刃の衣装を身に纏ったペルソナ。

 桜羽エマの―――反逆の象徴。

 『アビゲイル』。

 

「な、なんだありゃあ!?あれ、まさか…!」

「ペルソナ……! エマも覚醒したのか……!」

 

 スカルが目を剥き、ジョーカーの瞳に強い歓喜の光が宿る。モナもまた、その神々しくも禍々しい姿に声を弾ませた。

 

「おぉ…!すごいぞジョーカー!エマも、ペルソナを覚醒させたんだ!」

 

 顔を持ち上げたエマの瞳には、かつての迷いや気弱さは一切なかった。

 そこにあるのは、理不尽な罪を暴き、罰を与える「告発者」としての揺るぎない覚悟。

 

 エマは衛兵に囲まれたシャドウ鴨志田を真っ直ぐに指差し、鋭い声で言い放った。

 

「あなたの罪、ここで全部……暴いてあげる! 行こう、アビゲイル!!」

 

 エマの叫びに呼応し、アビゲイルが手を高く掲げる。

 宙に展開された巨大な魔法陣から放たれたのは、邪悪な欲望を穿つ聖なる閃光。

 全方位に放たれる祝福属性の魔法―――コウハが大広間全体を包み込んだ。

 

「グアァァァァッ!?」

 

 衛兵のシャドウは叫び声を上げる暇もなく一瞬で浄化され、シャドウ鴨志田はその圧倒的な光の前に尻餅をついて後ずさった。

 

 光が収まった戦場の中、エマは一歩踏み出す。

 その姿は、少女の色に反して黒一色だった。

 華奢な体躯に反して、明らかにオーバーサイズの、肩にかかったマント。

 黒のインナーの首元を結ぶリボンは白だが、スカートやヒールのついたブーツまで真っ黒。

 そして何より特徴的なものは―――その頭に乗った、ウィッチハット。

 

 桜羽エマの、反逆の姿が完成した瞬間であった。

 

「やっちゃおう、ジョーカー、スカル!」

 

 エマは仲間たちに向かって振り返り、強く、力強く頷いた。

 

「先走り過ぎるなよ」

「わかってる!でも、ボクにも手伝わせてよ!――あいつを、絶対にやっつけよう!」

 

 




☆桜羽エマ
本編後の時空。精神的に成長したし、ちょっとやそっとじゃ折れないけど多分嘘をつくのは絶望的に下手なまま。鴨志田にヒロちゃんを思い通りにする人質にしてやるって言われてブチ切れた。ヒロちゃんはそういう人質には応じないだろうというある種の信頼はあるかもしれないが、それはそれとして大事な親友が自分のせいで危険な目に遭うのが許せないのと、ヒロちゃんに手を出すこと自体が許せなくって覚醒すると思う。

☆雨宮蓮
屋根ゴミ。1X股することを除けばマジでいい子。

☆坂本竜司
エマのことは杏と違って丁寧に接しそう。

☆モルガナ
アン殿一筋。

☆鴨志田卓
教師の屑。多分二階堂ヒロに「正しくない」って言われたことを根に持っててシャドウ鴨志田はヒロちゃんを(性的な意味で)奴隷にしてやろうとか考えててもおかしくない。エマ?胸ないし…






ノリで書いただけです。
続きは許してください。誰か頼んだ。

ヒロ「エマが何か隠し事をしている…?そして作者は諦めている…」

  • エマ:正しい 作者:正しい
  • エマ:正しい 作者:正しくない
  • エマ:正しくない 作者:正しい
  • エマ:正しくない 作者:正しくない

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