〜特級裨益呪霊〜 黄昏の福音 作:楓舞星
「僕は善道徳心。正義の味方さ」
彼女が現れた。
「そのまま、とうせんぼするんだったら切るが?」
そう言う真希であったが……
(こいつ……五条先生よりも強い……?)
今の目があるからこそ理解できた。目の前の敵は、異常な呪力を、異質の圧力を放っていることに。
「いいや、僕はとうせんぼなんて醜い真似はしない。違うんだ。正義の味方として君の迷いを、願いを叶えにきたんだ」
「……迷いはもう晴れている。これから願いは叶えにいく」
「叶えたい願いは一体なんなんだい?正義の味方として聞く義務が僕にはある」
「この家の連中を皆殺しにする」
「皆殺し……?それはダメなことだ!それは悪のすること!そんなことを決断してしまうなんて、今からでも診療のカウンセリングを受けた方がいい!」
「……お前は何を言っているんだ?」
「それに、君にはまだ命があるじゃないか!命の尊さを学び、尊び、そして、そこから話は始まるんだ!!」
「……………………切るぞ?」
真希は釈魂刀を善道に向けた。善道は悲しそうな顔をして、
「……そうかい、それでも、話は聞いてくれないんだね……すごく、悲しい気持ちでいっぱいだ。だけど、仕方がないーー
ーー正義を、執行する」
「っ!!」
(見えなーーっ!!)
ドン。
真希は腹に一撃イかれた。
壁を跳ねて復帰するが、相手が今の自分でも追いつけないほどの速さをしていること、それと同時に勝てないことを悟った。
だが、即座に復帰した真希は一瞬で距離を詰め、善道を刺そうとするが、
「君じゃ僕には敵わないよ。大人しくしているほうがいい」
「っっ!!」
だが、真希はそのあり得ない身体能力でゼンドウの横蹴りを寸でで回避し、釈魂刀で善道の頬を傷つけた。力負けしており、技術でも負けていた真希がこれを出来たのは、間違いなくとてつもない偉業である。
「……今、自分が何をしたと思う?僕の頬を裂いたんだ!その代償は高く支払ってもらう!」
そう言いながら、ゼンドウは完璧な現闘をみせ、真希は喰らい付いたものの戦いは終結した。
そうして、真希は『気絶』させられた。それに対して、善道は、
「なんだ……気絶か……殺したつもりなのに。なぜ僕は不完全なんだ……違う、僕は不完全なんかじゃない。この完全正義たる僕は完全でなくてはならない」
そうして、真希の首を刎ねようとするが……寸前で、
「動かない……どうしてだ、どうしてなんだ。この僕は絶対正義なはずだろう?もう顔もめちゃくちゃになってしまっているこの子は生きていても仕方がないじゃないか。女性としての価値が著しく低下しているのなら、安楽死させてあげるのがーー」
そう言い、なんどもなんども首を刎ねようと試みるが失敗に終わる。
「きっと、僕の中の潜在意識がとても情け深いことで、この子の生への執着を見捨てられないんだ……ああ、なんて僕は慈悲が深すぎる……」
そうして、諦めたのか、その場を後にする。
忌庫からの道すがらは、血で染められていた。
つい、善道は死んでしまっている断頭された男の頭を蹴ってしまう。
「おっとっと。君は確か、僕に刃を向けたのが悪かった人だよね」
そう言いながら、善道はつい周りを見渡す。
そこには、血ーー
ーー否、死体で道は染められていた。
「君は僕に唾を付けたのが悪い人で、こっちの人はお邪魔しますと礼儀正しく入ってきた僕に罵詈雑言を浴びせたのが悪い人」
そんな風に少々確認を取った後、善道は、
「まあいいや、この子の願いも叶えてあげたし。当然、当たり前に僕は正義の味方なんだ。今日は眠ってあげないよ。まだまだ大勢の人を救うんだ」
_______
とある公園にて、
「っ!!はぁ……はぁ……」
意識を取り戻した特級裨益呪霊……閃は、
「ヤバい……善道はヤバい……善道が大勢の人を殺したことで、私は覚醒してなんとか夢ではなく、現実として寝ている間も過ごせるようになり、善道に侵食、どうにか逃げおおせた女中や真希の殺害だけは止めれたが……」
閃は荒い息を止められなかった。
「私が寝ていた……いや、交代している間に、善道に何があったんだ……?」
(善道徳心……お前は……)
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テラスは思う。
(善道徳心を助けるという暗示が私に働いている……?いや違う、これは私がいつかに心の底から望んだこと……だが、どうして大量殺人を犯した善道を助けなくてはならない?)
しばらく考えてから、テラスは、
(善道得心……お前は……)
_______
閃とテラスは同時に思う。
((いったい、何者なんだ?))
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意識を取り戻した閃は、すぐさまタイムリープを実行した。そうして戻ったのは、禪院家大量殺戮が起こる前に。
だが、何度繰り返しても、
「殺せ!この呪霊を殺せ!!」
「待て!この『僕』の慈悲深さがわからないのかい!?『僕』に刃を向けた君すら、なんなら、まだ全員を赦そうとしているんだ!!なのに、どうしてだい!!」
ゼンドウは刃を向ける男の腕を落とし、
「ああっ!!」
「さあ、この僕に忠誠を誓え……そうすれば、救われる」
「だ、誰がお前なんぞにぃぃ!!!」
ゼンドウはその男の姿勢を見て、げんなりとしてから、首を切り落とした。
「この慈悲深い『僕』にやられたんだ。君みたいな悪人でも、きっと来世で楽しく過ごせるさ」
「殺せぇぇぇ!!!」
閃は何度も何度もやり直し、善道は何度も、何度も、殺戮を繰り返す。閃が中で必死に抵抗しても、禪院家は壊滅してしまう。
「『僕』を攻撃すると言うことは、世界に歯向かうことと同義!」
「あああ!!腕が、腕がぁ!!」
「この『僕』の絶命の一撃を避けようとしたのが悪いんだ。それに、もうそんな致命傷だと、生きてられないよね?この気高い『僕』に賛辞を送りながらーー」
繰り返した。
その結果、閃はその作戦をやめた。何故なら、
この周でも殺戮を止められなかった。そう嘆きながら、時計を見ると、
「はぁ……はぁ……え?少し、時間が伸びてる?」
閃は気づく、善道が起きている時間が伸びていることに。
「ま、まさか、私がタイムリープするごとに善道が起きてる時間が伸びる……?じょ、冗談じゃない!」
そうして、声が聞こえた。
ーーああ、君が僕に住み着く者か。精々今のうちに楽しんでおくといいよ。いずれ僕がお前の身体を侵食しきるのもあと少し。文字通り時間の問題なんだからーー
「っっ!!!」
新しい小説を執筆させてもらいました。
〜あらすじ〜
『
憑依転生してからの身体の主の遺言はなんと、『世界一の男と結婚して欲しい』。そんな遺言を受けてしまった彼は、大人としての責任や、未練を残し死んでいった身体の主のことを考えて動き出す。
これは、そんな律儀に『遺言』を叶えようかと奮闘する少女(おっさん)の奇々怪々コメディである。
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