スキル『日本』。初期は『勤勉になるだけ』のゴミだったが、開花するにつれ、ゼロ戦、忍者、和食、台風……いくらなんでも強すぎて、みな頭を抱えてる‐センエース‐ 作:閃幽零
14話 女子供も関係なく拷問して皆殺し!
宰相が、二通目の書状を開く。
読み上げようとして、一度、言葉に詰まった。
それから、絞り出すように、
「……ドーン共和国、国家主席カバノンより、降伏の勧告……」
読み進めるほどに、その声は、かすれていった。
「――ひとつ。ミシャ王女の身柄を、ドーンに引き渡すこと。
――ひとつ。セファイラの兵は、全員、デカールに戦奴として差し出すこと。
――ひとつ。身勝手な理由でデカールに甚大な損害を与え、第一皇子ルキを殺め、さらに、ドーン国家主席に毒を盛り辱めた鬼畜の所業の罰として……セファイラの一般国民は、『女子供の区別なく、一人残らず、凄惨《せいさん》な拷問を加えた上での斬首』とする」
一拍おいて、謁見の間が、ざわめきに包まれた。
「……兵は奴隷で、民はいたぶってから皆殺し……」
「正気の沙汰《さた》ではない……」
「なぜ、ここまで非道になれる!」
「身勝手な理由でデカールに被害? そっちが勝手に攻めてきたんだろうが!」
センは、ため息交じりに、
「うちの国、超小さいとはいえ、兵を除いても5000人ぐらいいるんだが……その全員を拷問するのか? 暇なのか? ドーンとデカールは……」
言いながら、心の中で、
(全国民拷問なんて、いくらなんでも意味がねぇ。大半は子供や、戦闘職を持たない女や、ガチで動けない年寄りだ……そんな連中を拷問って、他国への体裁《ていさい》が悪すぎるし、それぞれの国の穏健派や人権派からもさすがに文句が出るだろ。……となると、これはドア・イン・ザ・フェイスの可能性が高いか……)
最初に到底《とうてい》のめない要求を突きつけ、断られた後に本命の条件を出す手法。
(まあ、向こうの思惑がなんにせよ、状況がイカついことに変わりはねぇ……さて、どうするかね……)
ミシャが、一歩、前に出た。
「神格殿。……先日、神格殿は、陛下にはルキ殿下の件でセファイラを責めるおつもりはない、と仰いましたよね」
「ええ、言いましたよぉ。でも、ドーンという後ろ盾ができて、絶対に勝てる戦争になっちゃいましたからねぇ。あとは、殲滅する理由さえあればいい。……皇子を殺された、なんて、うってつけでしょぉ? それだけのことですねぇ」
くすりと笑う。
「ルキ皇子のことなんて、どうでもいいくせにねぇ。人間というのは、ほとほと醜いですねぇ。特に、絶対に狩れる獲物を見つけた時の残虐さといったら……ふふふぅ」
ミシャは、唇をかんだ。
しばらく、うつむいたまま黙っていたが、やがて、静かに顔を上げた。
「……私一人の身で、どうにか収めることはできないでしょうか」
「姫様!」
「なりません!」
重臣たちが、一斉に声をあげる。
センは、何も言わなかった。
ただ、組んだ腕の下で、指に力がこもった。
ジョカは、にこにこと笑ったまま、首を横に振った。
「それでは済まないですねぇ……王女様だって、本当はわかっているでしょぉ?」
「……っ」
ミシャは、拳を握りしめたまま、動けなくなった。
重苦しい沈黙が、謁見の間を支配する。
――その沈黙を破ったのは、一人の老兵だった。
「……やるしかありませんな、王女」
ミシャが、はっとして、老兵を見た。
老兵は、白いひげをなでながら、
「どうせ斬られるなら、一人でも多く道連れにしてやりますわい」
その言葉に、若い兵たちが、次々と顔を上げた。
「心配いりませんよ、姫様。我々には、セファイラの守護神がついてます」
「ロスの30万だって、守護神と一緒に追い返したんです」
「それに……ちょうど、新しい技も仕上がったところですしね」
にやりと笑って、仲間たちに目配せしたのは、『ユーセー』という青年。
年は、ミシャやセンと同じ。
民兵あがりの兵たちをまとめる若衆《わかしゅう》の組頭《くみがしら》で、レベルも忍術も、姫を除けばセファイラ屈指の腕前の持ち主だった。
その合図で、謁見の間に控えていた忍者兵たちが、一斉に指で印を結ぶ。
「「口寄せランク6!」」
「「「口寄せランク7!」」」
「「口寄せランク5!」」
ボンッ、ボンッ、ボンッと、白い煙があちこちで弾けた。
煙が晴れると、そこには、
尾を揺らす、銀色の狐。
牙をむく、黒い大型の犬。
のっしりと座り込む、人の背丈ほどもあるガマ。
とぐろを巻き、ちろちろと舌を出す、白い蛇。
忍者兵たちの足元に、謁見の間を埋め尽くすほどの獣たちが、ずらりと並んでいた。
「あらあらぁ、かわいいですねぇ」
ジョカは、楽しそうに手を合わせた。
だが、その視線は、獣たちではなく、センのほうへ向けられていた。
その視線に気づかないふりをしながら、センは、心の中で、
(忍者兵たちは、確かに強くなった。口寄せで強力な召喚獣を扱えるようになったし、地力が上がったぶん、分身の数も軒並み増えている。戦力としては大幅アップ……だが、さすがに100万を殺しきれる戦力じゃない……)
眉間にしわを寄せていると、
まるで心を読んだかのように、ジョカが、
「旦那様も、動物を出せるんですかぁ?」
「……まあ、一応……口寄せランク1」
印を結ぶと、手乗りサイズの『羽が生えた爬虫類《はちゅうるい》』が出てきた。
二頭身で丸っこいフォルム。
パタパタと飛んでいたが、途中であくびをして、センの頭にぽとりと着地し、そのまま丸くなって寝てしまう。
「龍ですかぁ?」
「いやぁ……これは、コウモリの羽が生えたヤモリでしょうねぇ……だから、正式にはキメラなのかな?」
「何ができるんですぅ?」
「……一応、シッポで攻撃とかできますよ……」
「……」
「なんすか、なんか文句あるんすか? ええ、そうですよ。ザコいですよ。他の連中の口寄せは、なんか、色々と忍者っぽいことができますけど、うちの子は何もできませんよ。悪いですか?!」
情けないことを叫びながら、心の中で、
(くそぉ……なんで俺の忍術は常にしょぼいんだ。忍者適性で言えば、元日本人の俺が一番高いはずだろ……くそがぁ……)
センは、そこで、ジョカに視線を向けた。
「あ、ちなみにっすけど……フーマルに助けを求めるってのは、ありなんすかね?」
「求めるだけなら、どうぞご自由にぃ」
「……弱者がすがりついても、相手にされないってことか」
センは、小さく息を吐いてから、
「じゃあ、あなた個人にお願いするのはどうです? 夫の頼みを聞くのは、妻のたしなみでしょう。聞いてくれるなら、靴でもなんでもなめますけど」
「聞くだけなら、聞いてあげますよぉ。妻ですからねぇ。さあ、好きなだけ頼ってくださぁい!」
「……聞くだけで、動く気はない……と。まったく……」
センは、頭をガシガシとかいた。
そして、心の中で、
(進化しろぉ……なんでもいい……進化しろぉ。……代わりに何を要求してくれてもいい。マジでなんでもするから……進化してくれぇ……)
と、必死に祈っていると、
世界の声が聞こえた。
――固有スキル『日本』が進化。
――究極超スキル3『浮遊戦艦ヤマト』を獲得!!!
大和型戦艦一番艦――戦艦大和。
史上最大の46センチ主砲を積んだ、日本海軍最強の超ド級戦艦。
その鋼鉄の船が、空を征《ゆ》く!!!
(きたぜ、ぬるりと……っ! リアル大和は、ほとんど活躍しないまま、航空機に袋叩きにされて沈んだ……が、今回は浮遊式……まさに虎に翼!! この世界には、大和を空から狙い撃ちできる航空戦力なんて存在しねぇ。しかも、こっちが浮いている以上、制空権は丸ごとこっちのもの……46センチ砲を、頭の上から一方的に撃ち下ろせる。……宇宙戦艦ヤ……じゃなかった、浮遊戦艦ヤマトのヤバさを、とことん見せつけてやる)