X780年。
フィオーレ王国、マグノリア。
妖精の尻尾。
「エルザ、準備はできましたか?」
「はい!」
ギルドの入り口で、エルザ・スカーレットが力強く頷いた。
十五歳にしてS級魔導士となった彼女は、今日、初めてのS級依頼へ向かう。
その隣には、黒髪のハーフツインテールを揺らす少女。
イリス・アストレアが立っていた。
「ふふっ。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
「い、いえ! 緊張などしていません!」
「おや?」
イリスが微笑む。
エルザは少しだけ頬を赤らめた。
「……少しだけです」
「ふふっ」
その様子を見ていたマカロフが、満足そうに頷いた。
「エルザ。今回の依頼はおぬしが主体じゃ。イリスねえちゃんは、あくまで万が一のための同行者じゃからな」
「承知しています!」
「うむ。頼んだぞ」
「はい!」
エルザは胸を張った。
そのとき。
「エルザー!!」
ナツが駆け寄ってきた。
「すっげえ魔物が出たら、俺にも教えろよ!」
「お前は留守番だ」
「なんでだよ!?」
「私の初任務だからだ」
「くそー!」
その横で、グレイが笑う。
「せいぜい頑張ってこいよ、エルザ!」
「言われなくても、そのつもりだ」
エルザが答える。
「エルザお姉ちゃん、気をつけてね!」
リサーナが手を振った。
「うむ。必ず無事に帰ってくる」
イリスも笑顔で手を振る。
「それでは、行ってきますね」
「いってらっしゃーい!」
賑やかな声に見送られ、二人はマグノリアを出発した。
◇
今回の依頼先は、フィオーレ王国北部の山岳地帯。
古代遺跡の調査中、危険な魔物が出現し、調査員たちが内部に取り残されたという。
依頼内容は、調査員の救出と魔物の討伐。
報酬も危険度も、通常の依頼とは一線を画していた。
「……なるほど」
馬車に揺られながら、エルザは依頼書を読み返していた。
「魔物の種類は不明。遺跡内部の構造も完全には把握されていない……」
「難しそうですね」
隣に座るイリスが、のんびりと答える。
「はい。ですが、必ず達成してみせます」
「ふふっ。頼もしいですね」
エルザは依頼書を畳んだ。
そして、少し迷ってから口を開く。
「……イリスさん」
「はい?」
「一つ、聞いてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです」
「イリスさんは、初めて難しい依頼を受けたとき、怖くありませんでしたか?」
イリスは少し目を瞬かせた。
そして、懐かしそうに微笑む。
「怖かったですよ」
「……え?」
「私も、最初から何でもできたわけではありませんから」
イリスは窓の外へ視線を向けた。
「初めての依頼では、失敗しないように何度も準備を確認しました。危険な魔物と戦うときも、緊張したものです」
「イリスさんでも……」
「はい」
イリスはエルザを見つめる。
「でも、怖いからこそ慎重になれます。大切なのは、その気持ちに振り回されないことだと思いますよ」
「……なるほど」
エルザは静かに頷いた。
「ありがとうございます」
「ふふっ。どういたしまして」
それから二人は、しばらく他愛のない話を続けた。
ナツとグレイの喧嘩。
ミラジェーンとの張り合い。
リサーナが作ったお菓子のこと。
いつしかエルザの緊張も、すっかり和らいでいた。
◇
数日後。
山岳地帯の古代遺跡。
「……ここか」
エルザは巨大な石造りの入り口を見上げた。
周囲には崩れた柱や、苔むした石像が並んでいる。
かつては立派な建造物だったのだろう。
しかし、今では長い年月によって、その大部分が崩れ落ちていた。
「ずいぶん古い遺跡ですね」
イリスが呟く。
「はい。まずは内部を確認します」
エルザは剣を抜いた。
「イリスさん、行きましょう」
「はい!」
二人は遺跡へ足を踏み入れた。
内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。
壁には古い魔法文字が刻まれている。
エルザは足元を確認しながら進む。
崩れた石材。
巨大な爪痕。
そして、床に残された引きずられたような跡。
「……大型の魔物がいるようです」
「そうみたいですね」
イリスは穏やかに答えた。
しばらく進むと、奥から微かな声が聞こえてきた。
「……誰か!」
エルザが足を止める。
「今、声が……!」
「聞こえましたね」
「急ぎましょう!」
二人が通路を抜けると、広い地下空間へ出た。
そこには、崩れた石柱に囲まれた調査員たちの姿があった。
「助けに来てくれたのか!?」
「妖精の尻尾のエルザ・スカーレットです!」
エルザが名乗る。
「皆さん、怪我はありませんか!?」
「軽い怪我だけだ! だが、ここから出られないんだ!」
調査員の一人が奥を指さした。
「あそこに、化け物が……!」
その瞬間。
「グルルルルル……!」
低い唸り声が響いた。
暗闇の奥から現れたのは、巨大な四足の魔物。
全身を黒い甲殻で覆い、鋭い爪と牙を持つ異形の獣だった。
「……なるほど」
エルザは剣を構える。
「イリスさん。調査員の方々のそばにいていただけますか?」
「はい。わかりました」
イリスが頷く。
エルザは一歩前へ出た。
「ここから先は、私が引き受ける!」
◇
「グオオオオオッ!!」
魔物が咆哮した。
次の瞬間、巨大な身体が突進してくる。
「換装!」
エルザの身体が光に包まれた。
現れたのは、防御に優れた重装の鎧。
剣と盾を構え、突進を受け止める。
「くっ……!」
凄まじい衝撃。
足元の石畳が砕けた。
だが、エルザは踏みとどまる。
「はああっ!!」
剣を振るう。
甲殻に火花が散った。
「……硬い!」
刃が通らない。
魔物は巨大な爪を振り下ろした。
エルザは盾で受け流し、距離を取る。
そのとき。
「危ない!!」
調査員の叫び声。
魔物が突然方向を変え、彼らのいる場所へ向かっていた。
「させるか!」
エルザが地面を蹴る。
「換装!」
軽装へ切り替え、一気に加速。
魔物の進路へ飛び込んだ。
「はあああっ!!」
鋭い斬撃が、魔物の前脚を打つ。
「グルアアッ!!」
魔物が怯んだ。
その隙に、エルザは調査員たちへ叫ぶ。
「今のうちに、あちらの通路へ!」
「わ、わかった!」
調査員たちが走り出す。
イリスはその様子を見守っていた。
エルザは魔物の注意を引きつけながら、少しずつ戦う場所を移していく。
崩れた石柱。
狭い通路。
そして、広い空間。
エルザは周囲を見回した。
――ここなら。
「換装!」
再び装備が変わる。
今度は、複数の剣を空中に展開した。
「いくぞ!」
剣が一斉に飛ぶ。
魔物は甲殻で攻撃を弾いた。
しかし、エルザは怯まない。
次々と剣を放ちながら、魔物の動きを観察する。
前脚。
胴体。
首。
硬い甲殻の隙間。
「……見えた!」
エルザの瞳が鋭く光った。
魔物が再び突進する。
エルザは正面から迎え撃たず、横へ跳んだ。
そして。
「換装!」
手にした剣が、細身の鋭い一振りへ変わる。
「はああああっ!!」
甲殻の継ぎ目。
そこへ、全力の突きを放った。
「グオオオオオッ!!」
魔物が悲鳴を上げた。
巨大な身体が揺らぐ。
エルザは間髪入れずに踏み込んだ。
「これで――終わりだ!!」
一閃。
魔物の身体が大きく傾き、地面へ崩れ落ちた。
轟音が響く。
やがて、遺跡に静寂が戻った。
「……ふう」
エルザは剣を下ろした。
周囲を確認する。
調査員たちは全員無事。
魔物も完全に沈黙している。
「……よし」
エルザは小さく頷いた。
その背後から、柔らかな声が聞こえた。
「お疲れさまでした、エルザさん」
「イリスさん!」
振り返ると、イリスが微笑んでいた。
「とても立派でしたよ」
「……ありがとうございます」
エルザは少し照れたように笑う。
しかし、すぐに真剣な表情へ戻った。
「一つ、聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい?」
「私の判断は……間違っていなかったでしょうか?」
イリスは静かに首を横に振った。
「いいえ」
そして、優しく微笑む。
「調査員の方々を守りながら、魔物の特徴を見極め、自分の力で討伐した。素晴らしい判断だったと思います」
「……!」
「もう、立派なS級魔導士ですね」
エルザの表情が明るくなった。
「……ありがとうございます!」
イリスは嬉しそうに頷いた。
「ふふっ。これからも頑張ってくださいね」
「はい!」
こうして。
エルザ・スカーレットの初めてのS級任務は、無事に達成された。
◇
それから、一年が過ぎた。
X781年。
妖精の尻尾。
「やったわああああ!!」
ギルドに、ミラジェーンの歓声が響き渡った。
「ついに! ついにあたしもS級よ!!」
ミラジェーン・ストラウス。
十六歳になった彼女は、S級魔導士昇格試験に合格したばかりだった。
「おめでとう、ミラ!」
リサーナが笑顔で抱きつく。
「姉ちゃん! すげえぞ!」
エルフマンも大喜びだった。
そして。
「ふふん!」
ミラジェーンはエルザの前へ立った。
「これであんたと同じS級よ!」
「そうだな」
エルザが頷く。
「おめでとう、ミラ」
「……は?」
ミラジェーンが目を瞬かせた。
「ちょっと! なんでそんなに普通なのよ!」
「普通に祝福しているだけだが?」
「もっと悔しがりなさいよ!」
「なぜ私が悔しがる必要がある?」
「むきいいいっ!!」
いつもの言い争いが始まった。
周囲から笑い声が上がる。
その様子を見ていたメイビスが、楽しそうに手を叩いた。
「ふふっ! ミラちゃん、おめでとうございます!」
「ありがと、メイビスさん!」
「それで、初めてのS級任務なんですけど……」
メイビスがにっこり笑う。
「約束どおり、私が一緒に行きますね!」
「……ああ」
ミラジェーンの表情が、少し微妙になった。
「そういえば、そんな話だったわね」
「はい!」
「……本当に大丈夫なの?」
「もちろんです!」
メイビスは胸を張った。
その横で、マカロフが深く頷く。
「安心せい。メイビスねえちゃんが一緒なら、何の心配もいらん」
「……そう?」
ミラジェーンは首を傾げた。
いつもお菓子を食べている、可愛らしい金髪のお姉ちゃん。
魔法に詳しいことは知っている。
けれど、戦っているところは一度も見たことがない。
――本当に、この人が?
そんな疑問を抱きながらも。
「……まあ、よろしくね」
「はい! よろしくお願いします!」
二人は初めてのS級任務へ向かうことになった。
◇
数日後。
フィオーレ王国西部。
人里離れた渓谷。
「……まったく」
ミラジェーンは腕を組んでいた。
「なんでこんなところに魔物が集まってるのよ」
今回の依頼は、渓谷に出現した魔物の群れの討伐。
近隣の村へ被害が及ぶ前に、巣を排除する必要があった。
「ふふっ。ずいぶん多いですね!」
メイビスが楽しそうに笑う。
「笑い事じゃないでしょ!」
ミラジェーンが叫んだ。
その直後。
「グルルルル……!」
岩陰から魔物が現れた。
一体。
二体。
さらに数体。
「……ふん!」
ミラジェーンが不敵に笑う。
「ちょうどいいわ!」
「接収!」
黒い魔力が身体を包む。
悪魔の力を宿した姿へと変化したミラジェーンが、地面を蹴った。
「はあああっ!!」
強烈な一撃。
魔物が吹き飛ぶ。
続けて、別の魔物を蹴り飛ばした。
「この程度!」
次々と敵を倒していく。
メイビスは少し離れた岩の上に座り、楽しそうに見守っていた。
「ミラちゃん、すごいですね!」
「当然よ!」
ミラジェーンが胸を張る。
やがて、最後の魔物が倒れた。
「ふう!」
ミラジェーンは満足げに笑った。
「こんなものね!」
「お疲れさまでした!」
メイビスが拍手する。
しかし。
その瞬間だった。
渓谷の奥から、地響きが聞こえてきた。
「……何?」
ミラジェーンが振り返る。
巨大な岩壁が崩れ落ちた。
土煙の向こうから現れたのは、先ほどまでの魔物とは比較にならない巨体。
全身を黒い岩のような装甲で覆い、巨大な角を持つ異形の魔物だった。
「グオオオオオオッ!!」
咆哮。
大地が震えた。
「……なによ、あれ」
ミラジェーンの表情が引き締まる。
依頼書には、こんな魔物の情報はなかった。
「……まあ、いいわ!」
ミラジェーンが拳を構える。
「まとめて倒してあげる!」
地面を蹴った。
強烈な拳が、魔物の胸部へ叩き込まれる。
轟音。
しかし。
「……っ!?」
魔物はほとんど動かなかった。
次の瞬間、巨大な腕が振り下ろされる。
「くっ!」
ミラジェーンは咄嗟に回避した。
地面が砕け散る。
「……硬すぎる!」
再び攻撃する。
だが、装甲はびくともしない。
魔物が口を開いた。
黒い魔力が集まっていく。
「……まずい!」
ミラジェーンが身構えた。
そのとき。
「ミラちゃん」
背後から、穏やかな声が聞こえた。
「ここからは、私に任せてもらえますか?」
「……メイビスさん?」
振り返る。
そこには、いつもと変わらない笑顔のメイビスが立っていた。
「ちょっと待って! あいつ、普通の魔物じゃないわよ!」
「はい。そうみたいですね」
「だったら――」
「大丈夫ですよ」
メイビスは微笑んだ。
そして、一歩前へ出る。
「すぐに終わりますから」
その瞬間。
空間が、静かに歪んだ。
「……え?」
ミラジェーンが目を見開く。
魔物が黒い魔力を放とうとした。
しかし。
「空間切断」
メイビスが、小さく呟いた。
次の瞬間。
巨大な魔物の身体を、透明な線が走った。
音もなく。
抵抗する暇もなく。
魔物の巨体が、斜めに断ち切られた。
「…………は?」
ミラジェーンの口から、間の抜けた声が漏れた。
巨大な魔物が崩れ落ちる。
地響き。
土煙。
そして、静寂。
メイビスは振り返った。
「ふふっ。終わりましたよ!」
「…………」
「ミラちゃん?」
「…………ちょっと待って」
「はい?」
「今、何したの?」
「空間を切ったんです!」
「……空間?」
「はい!」
メイビスはにっこり笑った。
「魔物がいる場所の空間そのものを切断したので、硬い装甲も関係ないんですよ!」
「…………」
ミラジェーンは、倒れた魔物を見た。
そして、メイビスを見る。
もう一度、魔物を見る。
「……ええええええっ!?」
渓谷に、絶叫が響き渡った。
◇
任務を終えた帰り道。
「……ねえ、メイビスさん」
「はい?」
「あなた、一体何者なの?」
ミラジェーンが真剣な顔で尋ねた。
メイビスは少し考えた。
そして、いつもの笑顔を浮かべる。
「妖精の尻尾の魔導士ですよ!」
「……それは知ってるわよ!」
「ふふっ!」
「笑ってごまかさないで!」
ミラジェーンが叫ぶ。
メイビスは楽しそうに笑っていたが、やがて少しだけ真面目な表情になった。
「……ミラちゃん」
「何?」
「今日のこと、みんなには内緒にしてくれませんか?」
「……どうして?」
メイビスは穏やかに微笑んだ。
「私は、みんなと普通に楽しく過ごしたいんです」
「…………」
「強いとか、偉いとか、そういうことを気にせずに」
その言葉に、ミラジェーンは少しだけ目を細めた。
そして。
「……わかったわ」
「本当ですか?」
「ええ」
ミラジェーンは笑った。
「あたしたちだけの秘密ね」
「はい!」
メイビスが嬉しそうに頷く。
「ありがとうございます、ミラちゃん!」
「……でも」
「はい?」
「今度、あの魔法について詳しく教えてもらうからね!」
「ふふっ。もちろんです!」
二人は顔を見合わせて笑った。
◇
数日後。
妖精の尻尾。
「ミラ!」
エルザが声をかけた。
「初めてのS級任務はどうだった?」
「……まあ、いろいろあったわ」
ミラジェーンが答える。
「そうか。無事に帰ってこられて何よりだ」
「……ふん!」
ミラジェーンは腕を組んだ。
「当然でしょ!」
そのとき。
「ミラちゃーん!」
メイビスが元気よく駆け寄ってきた。
「一緒にお菓子を食べませんか?」
「……あ」
ミラジェーンは、思わずメイビスを見つめた。
いつも楽しそうに笑っている。
お菓子が大好きで、少し子供っぽいところもある。
可愛らしい金髪のお姉ちゃん。
けれど。
――あの魔法。
――あの一瞬。
思い出すだけで、背筋が震える。
「……メイビスさん」
「はい?」
「……いえ、何でもないわ」
ミラジェーンは小さく笑った。
「一緒に食べましょ」
「はい!」
メイビスが嬉しそうに頷く。
その様子を見ていたイリスが、静かに微笑んだ。
「……ふふっ」
隣にいたマカロフが、小さく呟く。
「どうやら、知ってしまったようじゃのう」
「そうですね」
イリスは頷いた。
「でも、いいことだと思いますよ」
「……そうか?」
「はい」
イリスは、楽しそうにお菓子を食べ始めた二人を見つめる。
「メイビスにも、また一人、大切な仲間が増えたんですから」
マカロフは少しだけ目を細めた。
「……そうじゃな」
一方。
「ミラちゃん! このケーキ、とっても美味しいですよ!」
「……ふふっ。本当ね」
ミラジェーンは笑った。
そして、心の中で呟く。
――まったく。
――妖精の尻尾って、本当に変なギルドね。
けれど。
そんな場所が、彼女は大好きだった。
こうして。
エルザ・スカーレットとミラジェーン・ストラウス。
二人の若きS級魔導士は、それぞれ初めての任務を終えた。
一人は、憧れの剣士に成長を認められ。
もう一人は、可愛らしいお姉ちゃんの恐るべき実力を知った。
そして、二人を見守るイリスとメイビスは、これからも変わらず妖精たちのそばにいる。
新しい時代は、もうすぐそこまで来ていた。
【こそこそ妖精話】
~お姉ちゃんの秘密~
妖精の尻尾、昼下がり。
エルザ「……ミラ。最近、メイビスさんと仲がいいな」
ミラジェーン「ん? まあね」
エルザ「S級任務で何かあったのか?」
ミラジェーン「……別に?」
エルザ「そうか。ところで、メイビスさんは戦闘ではどんな魔法を使うんだ?」
ミラジェーン「…………」
エルザ「ミラ?」
ミラジェーン「……あんた、知らない方が幸せなことってあると思う?」
エルザ「……何の話だ?」
ミラジェーン「世の中って広いのね……」
エルザ「だから何の話だ!?」
そこへ。
メイビス「ミラちゃーん! ケーキ食べませんかー!」
ミラジェーン「あっ、メイビスさん! 食べる食べる!」
エルザ「……私もいただこう」
メイビス「はい! 三人で食べましょう!」
楽しそうに笑うメイビス。
その姿を見つめながら、ミラジェーンは思った。
ミラジェーン(……あの人、あんなに可愛い顔して空間を切るのよね)
エルザ「……ミラ。なぜメイビスさんを見て震えている?」
ミラジェーン「……思い出しただけよ」
エルザ「何を?」
ミラジェーン「秘密♪」
エルザ「……むう」
メイビス「ふふっ! ミラちゃんとの秘密です!」
エルザ「……二人とも、ずるいぞ!」
その日のエルザは、珍しく少しだけ拗ねていたという。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
今後とも『妖精と聖剣使い』をよろしくお願いいたします。