いずれ破滅する悪役貴族に転生した俺は、規格外の『精霊魔法』で魔法を極めて無双する~ラスボスと出会って得たスキルで、破滅フラグを回避したいだけなのに最強の聖人扱いされている~ 作:Hiruandon
あれから数日後。
ファフニール家で魔法適性の儀を終えたカイルは、己のステータスを確認していた。
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【チュートリアル終了】
魔法適性の儀を終了しました。
これより、ステータスが開放されます。
『万能属性』の適性者となりました。
カイルが適性したことにより、使用できる魔法が開放されました。
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俺が選んだ属性は、万能属性だった。
だが、生きる上で……それでいて、カイルの潜在能力を100%引き出すにはこれしかないと判断した。
しかし、チュートリアル……か。
確かに、原作の魔法適性は、一番最初のチュートリアルだ。
それが終わったということは、ここからが本編に繋がる。
……あれからエルフィと父上のストーカーをされてしまった。
父上に関しては、『光属性ではないだと!? この恥さらしが……え? 万……能? 万能!?』
怒りと喜びが入り混じった面白い表情をしていた。
エルフィも少しおかしくなってしまったし……。
『魔物退治行こ! ねぇカイル魔物退治行こ!』と連呼するマシーンと化してしまった。
……あまり思い出したくない。
屋敷に居ても碌なことがないため、俺は逃げるようにここへ来ていた。
俺がやってきていたのは、人攫いから救った子供たちのいる家だった。
ここはファフニール家の、それも俺ことカイルが所有している家だ。
……ふむ、家の中に誰もいないな。
カン! カン! と甲高い音が聞こえた。
庭の方だ。
音がした方へ向かうと、声を掛けられた。
「カイル様!」
あの時に騒ぎのわけを話してくれた年長者の子だった。
彼の名はオルフェン。
この子どもたちを率いて、ファフニール領まで連れて来ていた。
「元気そうだなオルフェン。何をしている?」
「剣の訓練です」
衣食住が安定し、学ぶ場も与えたことで、オルフェンは前よりも明るい表情をしていた。
「その……身勝手なお願いだとは分かっているのですが、剣の稽古をお願いできませんか」
「構わないが……どうして?」
「人攫いと戦った時のカイル様を見て、私も剣を交えてみたいと……」
そういうことか。
俺自身も、願ってもないことだ。
ウルルとばかり訓練していると、この世界において自分がどれほど強いのか基準が分からないからな。
ウルルは適当だし……。
『え? カイル様の強さ? あ〜……私が二日酔いでタバコ吸って、高アルコールの迎え酒して、激辛ラーメン食った時くらいじゃないっすか? へへっ』
怖いよ。俺の師匠が本当に怖いよ。
最初は冗談かと思ったが、本当にそれをした時があるらしい。
同じ人間ではないのかもしれない。
途中から怖すぎて、ウルルが何言ってるのか全然分からなかった。
ただ、思ったのが……半笑いしながらタバコ吸うな。
そう言おうとして、ぐっと我慢したんだっけな……。
「思い出したくないもんを思い出しちゃった……」
ふにゃっとしながら俺は近くの木剣を手に取る。
「それじゃ、行くぞ」
「は、はい!」
俺は素早く、木剣を振りかざした。
*
それから数分後、何度かの打ち込みののち、オルフェンが尻もちをついた。
オルフェンの太刀筋は悪くなかった。おそらく、流浪の旅で身に付けたものだろう。
最低限の剣術は身についているようだ。
「強い……! 流石です、カイル様」
「オルフェンもよく磨かれている。訓練を続ければ相当に強くなるかもな」
まぁこれくらいで良いだろう。
近くの椅子に座りながら、ステータスを確認する。
やっと落ち着ける……。
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【ステータス】性格『高潔』
名前:カイル・ファフニール レベル5 万能属性
経験値:106/505
『能力値』
体力:53+マナ補強56
筋力:15+マナ補強35
知識:35+???
素早:56
魔力:9(上限)
マナ:403
運 :8
『スキル』
【身体状況】
深影病:進行状態 51/100
ノクス・レイにより、徐々に死に至る呪い
最終的に、破滅をもたらすノクス・レイに至る。
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(……オーガレベルなら倒せる中堅冒険者クラスの筋力か)
簡単に言うと、数字が50以上は中堅冒険者クラスだ。
三桁になれば、10年~20年ほどの冒険者と言える。
体力はマナによる補強で増えていたが……ステータスの『???』ってなんだろう。
「カイル様」
オルフェンに呼びかけられ、顔をあげると子どもたちが規則正しく並んでいた。
「……そういえば、どうしてファフニールへ来たんだ?」
「私たちはウィストムで、暮らしておりました。ただ魔物と内乱で……巻き込まれ孤児となった子や、売り飛ばされた子……混乱の中を必死に逃げてやって参りました」
ウィストムか。
あそこは四大貴族の中で、もっとも安定していない領地だ。
一方でファフニール家は絶対的な光属性の力を以て、権力の維持をしている。そのお陰で領地は安定しているし、四大貴族の中で最も強い。
それに対抗するように、ジャカウィトズ家とエウプロ家が手を結び、なんとかファフニール家と均衡を保っている。
「ファフニール領は最も安定している土地ですから、安心して暮らせるだろうと」
今も魔物による侵略と、権力争いでウィストム家内部は大騒ぎだ。
原作によれば、今から数年後にあそこは……未曾有の大災害に襲われる。
それを防ごうとすれば……あの警告が邪魔をしてくる。
平和に暮らしている人たちが巻き込まれてしまう。だから、なんとかしてあげたいが……。
カイルの目尻に涙が溜まり始める。
……辛い事があったのだろうな。
「……魔物に襲われ、行方不明になった家族も探せず、誰にも救って貰えないと思っておりました」
それに釣られるように、後ろの子供たちも涙を浮かべ始める。
……魔物に襲われて行方不明になれば、探すことは難しい。
この問題は────いつか、どうにかしなければいけない。
システムからも邪魔をされない範囲で……自分にできることをしよう。
「ですが、カイル様のお陰で、私たちは救われました。しかも、こうして家や学び場まで……必ずや恩返しを……」
「しなくてもよい」
意を突かれたオルフェンが、呆気にとられる。
周囲も俺の言葉の意味に首を傾げる。
……カイルに転生した影響か、転生前の俺と比べて少し口調や性格が変わってきている。
気軽な口調で喋ろうにも、たまに偉そうな感じになるし。
俺はもう少し砕けた喋り方がしたいんだけどな。
これがファフニール家の持つ高潔さという奴なのか。
「君を助けてそのまま家臣にしてしまうのは、君の人生を勝手に縛るのと同じだ。それでは人攫いとなんら変わらない」
「……っ!」
確かに、将来的に信頼できる仲間は欲しいと思う。
しかしそれは、決められてなるものではない。
「オルフェン、これからの生き方は君自身が決めるといい。ここは自由なのだから」
「カイル……様……なんと慈悲深く……なんと素晴らしい……」
オルフェンは目を見開いて、しばらく俺を見つめていた。
いや、オルフェンの背後にいる子たちも、同じような反応をしていた。
「……カッコいい」
「凄い……」
「これが、僕たちを救ってくれた人……」
そうして、オルフェンたちは深々と頭を下げた。
「私たちには、もう行き場はありません。ですが、行き場がないからおすがりするのではないのです!」
「この方に、私たちの忠誠を捧げたい……!」
「僕たちを救ってくれたのは、この人だ……!」
「神様……」
神様? ……待て、話を聞け。
俺はただ、人道的な最低限のサポートをしただけで、決してカルトの教祖になるつもりはない。
「「「どうか、私たちを貴方様の剣とお教えください! この身が朽ち果てようとも、カイル様にお仕えします!!」」」
綺麗にハモるな。しかも全員でガッツリ地面に額を擦り付けてるし……。
誰も何も強制していない。ただ俺が自由にしろと告げただ。
ちょっと待って。
「……オルフェン、お前たち、その……もう少し落ち着け?」
「はっ! このオルフェン、身命を賭してカイル様に報います!」
ダメだ、もう聞く耳を持っていない。
「必ずや優れた騎士となり、カイル様の力になりましょう‼」
しかしまぁ……オルフェンは目的を定めたようだな。
ノクス・レイ。奴を倒すためには……俺だけが成長していればいい訳ではない。
一人の力では限界がある。
システムの邪魔を搔い潜りつつ、もっと力を蓄えなければならない。
俺は、上を目指さなければならない。
そうでなければ……待っているのは破滅だ。
視界の端にウィンドウが表示される。
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【忠誠の獲得】
オルフェンが、カイル・ファフニールの配下となりました。
高い忠誠心により、ステータスの確認ができます。
潜在能力の表示が可能です。
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ほう。
迷わず開いてみる。
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【ステータス】 17歳
名前:オルフェン レベル2
経験値:10/205
『能力値』
体力:43
筋力:10
知識:9
素早:15
魔力:0
マナ:0
運 :1+16(カイルとの出会いにより補強)
潜在能力 騎士 S
魔法適性 なし
『騎士の証』を得た瞬間……ステータスに???が付与されます
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潜在能力は騎士に向いている、ということか。
すごいな、こんなことがわかるのか。
でも、また???だ。
俺のステータスを見る能力不足なのだろうか。
……俺もまだまだのようだな。
ポンッ、と何かが頭の上に乗っかった。
「……?」
「カイル様」
子供? いや、少女か。
オルフェンが焦ったように叫んだ。
「こ、こらアーシャ‼ カイル様になんて無礼を……‼」
アーシャというのか。どこかで聞いたような名だ。
……どこで聞いたんだっけ。
それよりも、まだ少し骨が浮き出ているような気もするな。
食料の配給をもっと増やすか。
オルフェンがアーシャを俺から引っぺがす。
「うあわあ~」
「カイル様! 大変申し訳ございません‼ どうか何卒お許しを……」
……俺が貴族だと分かってから、他の子供たちはどこか恐れていた。
しかし、アーシャは俺を恐れていない。
まぁ、それも先ほど少しは、打ち解けたように感じるが……。
「物怖じしない性格のようだ。良い騎士になれるかもしれないな」
「騎士ってすごいの?」
オルフェンが諭すように言う。
「アーシャには無理だ。諦めなさい」
「じゃあ騎士になる!」
「なっ!? 兄ちゃんの言うことを……!」
……貴族社会にいると、こうした家族のような光景はまず見られない。
案外、こういう光景も……。
目の前に、白い煙が見える。
鼻孔から苦みと腐敗臭がした。
庭の入口に例のメイドが立っていた。
俺を迎えに来たらしい。
「……ウルル、ここでは禁煙と言ったはずだぞ」
「あっ、そうでしたっけ」
まったくこの師匠兼メイドは……。
「カイル様、素晴らしいお言葉でした。流石でございます」
「ずっと陰で聞いていたのか」
「どんな時もあなたをお守りすることが、仕事なので……ぷはぁ」
褒められるのは嬉しいが……ここ禁煙だってば……どうしてこのメイドは言うこと聞かないの?
レベルが高いと言うこと聞かない系かな?
それなら『レベルが足りなくてウルルは言うことを聞かない!』って表示して欲しい。
某ゲームならジムリーダーを倒してバッチ集めれば言うこと聞くんだよね。ジムを探そうかな。
「はぁ……」
そうため息を漏らすと、バサバサと一羽の鳩が飛んでくる。
ファフニール家が使う魔力で操られた連絡鳩だ。
「おや、何事でしょうか」
俺は鳩に括りつけられた手紙を手に取る。
―――そこに記されていた内容に、俺の思考が一瞬フリーズした。
……まずいことになったな。
「魔物退治に出たエルフィが、居なくなったらしい」
そして、かつてファフニール家に大損害を与えた魔物が出現していた。
その名を──