「お使い?」
「ええ、お使いです」
休日に能力開発の施設に呼び出された。
なにをやらされるのかと思いきや、そんなことを頼みにきたのか?
この暑苦しい夏にリクルートスーツの上に白衣をきた先生は汗1つかかずにそう告げた。
「ていうか、能力に関して黙ってましたよね。勝手に
右掌を先生に見せつけるが、
「ふむ……ついに肉体に影響が発現した、と」
「もっしもーし? 聞いてますか? 強化された身体能力でデコピン喰らわされたいですか?」
「それは計器に対して行ってください。無駄に力を浪費する行為は非効率です」
「じゃあ、帰りますね。お使いなんて行かされるのも俺の生活にとっては非効率なので」
「待ちなさい」
立ち去ろうと背を向けたら物凄い力で引っ張られた。
「なんですか」
「能力の検証です。今から送る座標に向かいなさい」
「お使いは?」
「これがお使いです」
「……携帯に?」
「既に送りました」
勝手に話を進めるのはこの人の悪い癖だと思う。
とはいえ、この力について知りたくないかと言われれば答えはYESだ。
ポケットから携帯を取り出すと、既に位置情報と時刻がメールに紐づけして送られてきていた。
「……ここ、花火大会ともろに被りますよね」
「ええ。それが?」
「……なんでもないでーす」
なんで花火大会で能力の検証をするのかさっぱりだが、断る気も起きなかった。
この人のマイペースさ加減に付き合うのはこれが初めてではない。
前もいきなりB級の時代劇の映画に突然誘われたし、今回も似たようなものだろうか。
「じゃ、いってきます」
無表情で手を振る先生に挨拶して、俺は花火大会の会場に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
花火が打ち上げ続けられる最中、奇遇にも佐天と初春に出会った。
2人とも浴衣が似合っている。
「あっれ!? 片墨じゃん! 補修以来だね」
「うっす。そっちは元気そうだな」
「まあね~、花火大会ってテンション上がんない?」
気持ちはわかる。
「片墨くんも花火大会ですか?
「まあ、そんなところだな。ところでそちらの彼女は?」
いつもの2人組かと思えば、これまた浴衣に身を包んだ見知らぬ少女がいる。
「こんばんわ。私は春上衿衣っていいます。どうぞよろしくなの」
「どうも、片墨掘斗だ」
「春上さんは夏休み中に転校してきたんですよ」
ああ、どうりで顔を知らないわけだ。
「せっかくだし、片墨も来なよ。屋台とか見て回ろ?」
「いいな。わかったよ」
俺は3人についていくことにした。
この場所に来た時点で先生のお使いは果たしている。
あとは自由にさせてもらおう。
花火が夜道を照らす中、俺たちはゆっくりと歩き始めた。
「片墨」
「なに───」
「喰らえ! ルイコスプラッシュ!」
「ぶっ!?」
急に顔に水をかけられた。
「なにすんだ」
「えへへ、能力の練習」
見れば佐天の手元には乱回転する水の塊があった。
そういやさっき水風船を持ってたなこいつ。
風を使って操っているのか。
「器用なもんだな」
「へへへ、次のシステムスキャンはレベル2を狙ってるからね」
「まあ、それはともかくとして……初春」
「どうぞ」
水風船を手渡された。
「1回は1回」
佐天の頭上で水風船を割った。
「ぶわっ!? やったな~!」
「先にやったお前が悪ッ!?」
急に右掌がまた熱くなった。
「「「片墨(くん)!?」」」
3人が驚く中、また紋様が体に広がっていく。
その時だった。
近くの地面が揺れたかと思いきや、タイルが外れて浮かび始めた。
「これは……」
「ぽ、ポルターガイスト?」
ポルターガイスト。
物体が誰の手も介さずに動く心霊現象。
最近の学園都市で頻発する怪現象が、なぜ今このタイミングで?
しかも紋様が浮き出るおまけつきとは。
いったいなんの偶然だ?
紋様とポルターガイストに何らかの関係性を見出して、先生は俺をここにやったのか?
疑問が渦巻く中、近くの電柱が春上さんに倒れ掛かってくるのが見えた。
「春上さん!!」
初春が盾になるように覆いかぶさるが、あれでは被害者が増えるだけだ。
足に力を入れて踏み込み、右拳を電柱に叩きつけた。
「はあッ!!」
ガンっと音をたてて、拳が電柱を逆方向の林の中へと押し倒す。
「大丈夫か?」
「か、片墨くん。そんなことできたんですか?」
「気にすんな」
「いや、気にしますよ……」
「片墨くんはスーパーパワーの持ち主なの……」
俺が差し出した手を初春が掴む。
少し遅れて機械鎧を身に着けたテレスティーナと名乗る女が現れたのはその後だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ポルターガイストが解決した?」
数日後、佐天からの連絡を受け、白井さんと初春がいるという
詳しい話ができると思っていたのだが……
「う、ううう……」
「初春、落ち着いて。ね?」
泣きじゃくる初春とそれを慰める佐天。
事態がよくない方向に向かってる気がした。
佐天の話では、ポルターガイストの原因はあの木山がまた教え子を助けるために強引な実験をしたせいだったらしい。
その木山が捕まり、子供たちは
事態はもっと複雑な様相を呈していたということだろう。
なにせ初春は、MARの研究所から帰ってからあの様子だというのだから。
「……」
御坂さんが黙り込んでどこかに行こうとしている。
みんなは事態の把握に急いでいるのか、それに気づかない。
木原がどうとか言っているが、もうこの際それは後回しだ。
追い詰められた顔をした御坂さんを放っておくわけにはいかない。
とはいえ、ついて行こうとしても断られるか相手にされないだろう。
なので、距離をとってついて行くことにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
御坂さんが辿り着いたのは
そこの敷地内に入っていったまま、5分経っているが出てくる気配はない。
行こうかどうか迷っていたその時だった。
施設の中から何かが砕かれたような轟音がした。
「……行くか」
不法侵入になりそうだが、御坂さんほどの電気使いなら記録の改竄くらいできるだろう。
もしかしたら悠長に御坂さんを待っている暇はないかもしれない。
そう思って中に入ったわけだが────
「マジかよ」
機械鎧を着た人物に米俵のように担がれる御坂さんの姿があった。
傍らには白衣の男。
御坂さんは意識を失っているのか抵抗する素振りが見えない。
異常事態だ。
「ふう──!」
右拳が熱くなる感覚を思い出す。
それだけであの紋様が広がる。
インデックスを巡る戦いで力の扱い方はなんとなくわかった。
とんっと足音を響かせて踏み込めば、あっという間で目の前に機械鎧が。
俺は機械鎧を力任せに蹴り飛ばした。
「ぐあああ!!?」
御坂さんを取り落とし、悲鳴を上げて施設の壁に突っ込んでいく機械鎧。
力を込めて蹴り飛ばした甲斐あってか、動く気配はない。
「な、なんだおま───」
近くにいた白衣の男が拳銃を撃つ前に手加減をしながら裏拳で顎を撥ねる。
常人とは言えないスペックだ。
生身の人間相手に本気を出したらスプラッター映画まっしぐらの血みどろの惨劇になるだろう。
「さて、どうするか……!」
複数の足音が聞こえる。
機械鎧も混ざってるな。
数が多いと面倒だ、早めに御坂さんを回収して逃げ───
「はああああ!!」
その時、風が吹いた。
遠目に見えた敵の集団が目に見えない何かに吹っ飛ばされていく。
ばっと扇子を開く音に後ろを振り向くと、そこには入院着に身を包み、ロングの黒髪をたなびかせる少女の姿があった。
「先ほどの戦い、見事でしたわ」
「はあ」
「私は婚后光子! さあ、あなたの名前を教えてくださいまし」
「片墨掘斗です」
「片墨さん……素晴らしい名前ですわね!」
適当につけた名前なんだけど、素晴らしいか?
まあ、とりあえず褒め言葉ならありがたく受け取ろう。
今は、意識を失った御坂さんを回収して撤退するのが先だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
病室にて。
「私……なんか、見えなくなってた。みんなに迷惑かけて───」
「迷惑じゃないです」
御坂さんの言葉を佐天が遮る。
「離れて心配するくらいなら一緒に苦労したい……友達ってそういうものじゃないですか」
目覚めてもなお一人で向かうことに固執していた御坂さんを制止したのは佐天だった。
佐天のコミュニケーション力の高さには本当に頭が下がる。
良くも悪くも、人を見る目はあるヤツだ。
「な~に自分は関係ないって顔してんの! 片墨もそうなんだからね!」
「え? 俺そこまで御坂さんと付き合いないんだけど……」
「それなら婚后光子も似たようなものですの。気に病む必要はありませんわ」
「!?」
白井、なんか婚后さんに辛辣だな。
「さあ、みんなを助けに行くわよ!」
なんか俺も一緒に行く流れになってるけど、
護衛役は必要だろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テレスティーナ・木原・ライフライン。
MARを事実上仕切っていたその女が、今回の事件の主犯らしい。
木山の教え子たちと春上を奪還するため、俺たちはダミーの輸送車を追わされていた木山と合流した。
そこからは滅茶苦茶だった。
高位能力者の本気とはかくも恐ろしいものなのだろうか。
白井は金属の矢を飛ばしまくるし、婚后さんはその風で道を塞いでいた機械鎧の部隊を吹っ飛ばす。
そして御坂さんは───
『ホラホラ、どうしたぁッ!?』
スピーカーからテレスティーナとかいう女の罵声が飛び交う。
御坂さんは木山の車を追いかける巨大な機械鎧との戦闘中だ。
放たれる電撃は容易くビルの1棟を再起不能に追い込む威力。
先ほど金属を磁力で飛ばす
しかし、相手は御坂さんの能力を知り尽くしているらしい。
電撃は弾かれ、超電磁砲は50mという射程の外にいるから届かない。
かといって、この状況で俺にできることはあるのか?
木山の車に初春と佐天と共に乗り込んているが、武器になりそうなものは───
「なければ作るしかないか」
後部座席のドアを開く。
「片墨!?」
「片墨くん!? 何をやってるんですか!?」
「ちょっと行ってくる」
既に紋様は展開していた。
御坂さんのいる車の天井へ移動する。
「ちょっとアンタ!? 車の中にいないと危険───」
「街灯」
「は!?」
俺は車の進行方向にあった長くそびえる街灯へと跳躍する。
そしてその根元に向かって拳を叩き込んだ。
バゴンっと破砕音を響かせて、街灯は倒れ始める。
それを───
「よっと」
両手で持つ。
意外と軽かった。
俺は両手でしっかりとつかんだ街灯を4mほどの機械鎧に向けてぶん投げた。
『ハアッ!? ふっざけん───』
テレスティーナは猛スピードで迫り来る街灯を避けきることができなかった。
ショベルカーの先のような右腕の軸間接に街灯が突き刺さる。
俺は走ってきた木山の車の天井に再び舞い戻った。
「片墨、あんた能力を吸い込むだけじゃ───」
「話はあと。それより、お役に立てたかな?」
だらしなくぶら下がる機械鎧の右腕を見た御坂さんは不敵に笑った。
「上出来よ!」
『調子に乗るなクソガキどもォオオオオオオオ!!』
テレスティーナの駆る機械鎧が迫る。
無事な左腕を振りかぶり、俺たちごと車体を潰すつもりのようだ。
「させると思うか?」
迫り来る鉄腕。
それに向かって飛び上がり、拳を振るった。
拳は機械鎧にめり込み、その攻撃を止めることに成功する。
『なんなんだテメエは!?』
俺にヘイトを向けるのもいいが、御坂さんから目を逸らしたな?
「こんのおおおおお!!」
放たれた磁力が、ぷらんと垂れ下がっていた機械鎧の右腕を引きちぎる。
そして、
「コインだけじゃない! これが私の、全力だああああああ!!」
右腕を弾丸に篭めて、超電磁砲は放たれた。
巨大な砲弾と化した右腕は、テレスティーナの機械鎧を貫いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
学園都市・第二十三学区。
子どもたちが運ばれた研究施設にて。
「……」
初春が叩くキーボードの音が響く。
研究施設は広大だ。
それをしらみつぶしに探したら何日かかるかわからない。
だが、こっちには初春がいる。
「見つけました! この施設内で桁違いに電力が消費されている場所は最下層のEブロックです!」
風紀委員随一と言われるコンピュータ技術を誇る初春にとっては、この程度の施設のハッキングなど造作もない。
施設のコンソールには、施設全体のマップが映り、赤く表示されたフロアがあった。
俺たちは初春が突き止めた場所へと向かった。
「誰もいない……か」
施設内に警備はいない。
それどころか研究員すらいないようだ。
完全にテレスティーナ個人の実験場らしい。
「春上さん!」
人一人分の収納スペースがあるカプセルの中に春上はいた。
初春の呼びかけに反応し、目を覚ましたところをみれば命に別状はないのだろう。
壊すのは簡単そうだが、なにが起こるかわからない。
大人しく初春が開けるのを待つか。
「う、ああああ!?」
「!?」
突然のことだった。
モスキート音に似た音が聞こえたと思ったら、みんながいきなり苦しみ始めた。
「なんだ!?」
無事なのは俺と木山だけ。
この音が原因なのはわかるが、施設中から流れているのか近くのスピーカーを壊しても止まる様子がない。
「よくもやってくれたな」
「!?」
背中に何かが叩きつけられる。
俺はその勢いのまま吹っ飛び、施設のコンソールに激突した。
「片墨、くん……!!」
襲ってきたのはテレスティーナだ。
あの爆発に巻き込まれたのか、頭から血を流している癖に人をぶん殴る元気はあるらしい。
「いてえなこの野郎……」
痛みにこらえ紋様を広げようとした。
紋様は広がった、しかし。
「なん、だ?」
バチバチと音を立てて右手から白い火花が漏れる。
異常事態に動揺する間もなかった。
火花は次第に不定形な光へと姿を変え、当たった施設の床を破壊した。
「本当になんなんだてめえはよォ。キャパシティダウンも効いてねえどころか、この期に及んでまだ隠し玉があんのか? いいかげんにしろよこのチート野郎がぁああああ!!」
テレスティーナが奇声を上げて突っ込んでくる。
だが避けられない。
今は右手から周囲に溢れ出そうとする光を抑えるのに必死だった。
テレスティーナが振るう先の尖がったドリルのような武器が俺を何度も打ち据える。
「あ、が!?」
「はっはあ? 隠し玉じゃなくて能力の暴走かぁ。いいぜぇ、お仲間の心配をしたまま愉快な肉片になりやがれよぉ!!」
「貴様ぁあああ!!」
木山が突っ込んできた。
無謀だ。
機械鎧相手に生身の人間では歯が立たない。
「がぁっ!?」
跳ね飛ばされる木山が施設の壁に叩きつけられる。
意識を失ったのか起き上がる様子はなかった。
せめて溢れ出る光をテレスティーナに向けてやりたいところだが、確信がある。
今抑えつけているこの光は、俺自身の敵味方の区別関係なく暴れ回ると。
どうすればいい?
暴走の原因はこの音だ。
でも止める手立てが────
「片、墨!」
「さ、てん?」
「──水風船!」
──驚愕する。
やれというのか?
この土壇場で、かつて佐天がやったようにこの光を操れと?
「やるっきゃ、ねえか」
戦える人間は俺だけだ。
左手で右手首を掴んだ。
「オラオラオラァ!!」
体がミシリと嫌な音を立てて、壁際に吹っ飛ばされる。
口から血が漏れた。
身体能力の強化もまともに働いていない。
次の攻撃で限界が来る。
それがわかった。
──集中。
佐天の真似で構わない。
イメージは稼働中の洗濯機の中。
回転する水流のイメージ───
「……なん、だ? そりゃあ」
それは球だった。
回転する光の束が渦を巻いて、一つの球のように見える。
確信があった。
殺せる。
これを相手に叩きつければ、あんな機械の鎧など貫通する。
生身の肉体を回転に巻き込んで解体できる。
……できて、しまう。
「……ぐ」
立ち上がる───視界が開けた時、思わず笑ってしまった。
「なんだ……なんなんだその目はァ!?」
「お前……みんなを舐めすぎだ」
次の瞬間、流れていた音が止まった。
「なに!?」
ここに佐天と白井さんはいない。
お互いを支え合って脱出し、この音の発信源を叩いたのだろう。
マップは初春の手で丸裸にされていた。
発信源も初春なら掴める。
それを白井か佐天の端末に転送したのだ。
苦痛に苛まれながらみんなができることをやった結果。
テレスティーナは見事に足を掬われたわけだ。
「よくもやってくれたわね……!」
御坂さんの放つ磁力がテレスティーナを捕まえた。
テレスティーナは強烈な磁力に振り回されて吹っ飛んでいく。
「舐めるなよガキども……こいつはてめえの超電磁砲を超える力があるんだからなぁ!!」
テレスティーナが散々俺に叩きつけた尖った武器の先端が開くと火花が奔った。
簡易式の超電磁砲のようだ。
「御坂さん」
「……何よ」
「俺が止める。あんな不出来な贋作に付き合わせるのは気が進まないからな。その代わりに」
超電磁砲が放たれる。
俺はその射線に先ほどの球をかざした。
それだけだった。
発射された熱線はこちらに届く前にかき消される。
「本物、見せてくれよ」
「──じゃあ、しっかり目に焼き付けなさい。これが本場本元の」
コインが宙を舞い───
「
怒れる稲妻が唸りを上げた。
コインは熱線となって放たれ、テレスティーナをブッ飛ばした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……てことがありました」
「まあ、あなたにキャパシティダウンは通じないでしょね」
先生は当然のようにあの音の正体を知っていた。
まあ、テレスティーナも木原ってミドルネームだったし、親戚の伝手ってやつだろうか。
「それよりも、あなたが生み出したその玉に興味があります。出しなさい」
「はいはい螺旋丸」
「螺旋丸?」
命名は佐天。
右掌に意識を集中させれば、すぐに白い輝きが現れる。
紋様を出す必要はないのは顕彰済みだ。
あの時と違う点は、目を焼くような眩い輝きを持ってはいないこと。
精々、小型のソケットくらいの光だ。
「ふむ……結構です。消してください」
「はい」
消そうと思えばすぐに螺旋丸は消えた。
先生はなにやら考え込んでいる。
「
「あー、もう帰ってもいいですか?」
「データは取れました。許可します」
「へいへい……そういえばマスタードッグは? 借りてたドラマのDVD返したいんですけど」
「先生は少し忙しいようですね。渡しなさい。私から返します」
自分がマスタードッグに会いたいだけだろうに。
まあ、ちょうど持ってきているし、渡しとくか。
「じゃ、マスタードッグによろしく頼みますよ───唯一先生」