俺はマルチブランドフードホールディングス「いろはにほへと組」頭領ってか社長、
幼馴染で妻の
取引を見るのに夢中になっていた俺は、背後から近づいてくる「腹に巨大な口のついた」もう一人の仲間に気付かなかった。
俺はその男に何か知らんけど全身ベロみたなもんでぐるぐる巻きにされ、このままならアカン殺される! と確信。そのまま殺られる訳にもいかなかったから奥の手を使った。
『鯛焼き名人! アルティメット・フォーム!』
『な、なんじゃそりゃッ!?』
説明しよう。あれはまだ俺が大学もペーペーくらいの年だった頃。実家のたこやき屋の系譜をもつ「いろは組」やら、未知の実家のたいやき屋の系譜をもつ「ほへと組」との料理バトルみたいな抗争(?)というか、そんな長い歴史の云々かんぬんに巻き込まれてた時。
俺のそっくりさんみたいなエラい格好良い変身ヒーローみたいなのに色々あって助けられて、無事ロミオとジュリエットみたいな関係だった未知とは結婚できたんだが。その時に俺が装着していたコンバットスーツが、この「鯛焼き名人アルティメット・フォーム」だ。
もとは未知を一流のやいやき屋にするために鍛えるための養成ギプス的な装備だったんだが、ほへと組の連中が色々頑張って電子処理でなんやかんやして、最も高速にたいやきを焼くことが出来るようになった最強装備────いわば未知の嫁入り道具!
その後、俺達が結婚して組も統合したのをきっかけにたこ焼きにもマルチ対応できるようになったこの装備、なんかよくわからんけど物凄い怪物みたいなのにもギリギリ対抗できる。ちょっとぶん殴ったりして逃げるくらいは余裕みたいな、ンな感じや。
というわけであれから20年くらい、時代は最先端科学。うちのレトルト工場の管理やってる
何のため? 決まってる、泣いてる子供たちにうちの組のものを食べてもらって、その味で笑顔になってもらうためや。
まあ直近はこの前、風都支店の店の視察いったときに、髪クリップでとめてる可愛い感じの兄ちゃんから「アルティメット・フォーム・スペシャルターボとは必殺技なのかい? 実に興味深い……できれば変身して見せてくれ!」とか言われて使った時くらいだったんやけど。
というわけで、今日も例によって持ってたのが功を奏した。身体が持ち上げられると同時にアタッシュを展開して、内部に格納されたたい焼き用の鉄板でぶん殴る。温度が瞬時に加熱可能なレベルまで上がってることもあって、そのベロみたいなのを熱い熱い言いながら、連中は逃げてった。
「
さながらアイア〇マ〇みたいにアタッシュが展開して俺の身体に装着される……、主に上半身に。予算が足りなかったってん、下半身まで回すアーマーが作れなたせいだ。なんなら見た目も20年くらい前とそんな変わらへん。
ともかくそんな感じで装着した俺は、人型からそれこそ20年くらい前に見たことあるようにバケモノに変身したその男たちと、専用鉄板とかたこ焼きピックとかを使って応戦。そのうち何か「ジュ~シ~!」とかポップな音立てたカッコ良いヒーローみたいな兄ちゃんに助けられて、なんとかなった。
「危ないところ、助けてくれてありがとうな! ……仮面ライダー? えらい久しぶりに見たよ」
『え? えっと……』
「というか、それってグミ? ポッピンとか言ってたし、普通のグミじゃないでしょ。せっかくの縁だしコラボしない? うちで仮面ライダーグミ! とかいって売り出したらめっちゃ売れそうってか色めっちゃ美味しそうよなそのコンバットスーツの────」
『ああああ、ちょ、ちょっと、ごめんなさーいッ!』
そんな感じで色々あって、社長らしく(?)スカウトしとったら何か逃げられたし。解せぬ。未知にもその話したら「照れ屋なんかね?」と不思議がっとった。
子供らはうちの家業には反抗期らしく反発してるから、こういう話はしない。
で、本題。その日の夜、何かエラい白い服着た昔のキムタ〇みたいな髪型イケメンが訪ねてきたんだ。俺の部屋の窓から。なんかこう、すうっと体光らせて
そう叫んだらその白い兄ちゃんは何か楽しそうにクスクス言ってた。何わろてんねん。
『失礼。そうですね……、超常現象のようなものには、慣れているようですね。もしかして貴方も
『何言うてんや兄ちゃん。アレか? 兄ちゃんも仮面ライダーか? 話唐突やなだいぶ』
『仮面ライダー ……?』
『…………いやむしろ何で知らないのよ。都市伝説、都市伝説。テレ〇でもやっとったやん夏のゴールデンの特番のホラーコーナーみたいなんで。バイクに乗って仮面とかコンバットスーツまとってる、なんかヒーローみたいなやつ』
そう、二十年前に俺と未知が結婚する切っ掛けになったというか、なんか色々迷惑かけたり助けてくれた俺のそっくりさんがその仮面ライダーだった。仮面ライダーって名前はそれから数年後に色々あってなんか知ったんやけど(OREジャーナルとか週刊誌にもちょっと名前載ってたか?)、こうも訳わからん超能力みたいなの持ってて
そんな俺の慣れた反応に、白い兄ちゃんは楽しそうに笑った。だから何で笑ってんねん。赤ちゃんつかまり立ちしてるの見てる親みたいな目しとんぞ。
『なるほど、ある意味好都合。……そうですね、できれば少し力を貸してもらいたいのです。別に貴方が何かをするという必要はない。髪を一本だけ、いただければ』
「何? 何で?」
『必要だからです、それがヒトの未来を守ることに』
何か未来でゾンビウィルスでも蔓延って、俺の遺伝子がワクチンにでもなるんか? とか思ったけど…………、話しててそう悪いヤツじゃない感じがしたし、髪の毛一本くれてやるくらいならまあええかと。
この時はそう思っていた。
────この時の自分の浅はかさを、恨みたい。
「何や、バトルファイトって」
で、今が
どうもどうもどうも、俺や。
三上了・クローンや。
何でクローンとか言ってんのかいきなりで申し訳ないけど、他に説明のしようがない。というか、あの白い兄ちゃんがそう教えてくれてるのが今や。
『私のことはナビゲーターだとでも思ってください。もとより「参加者の遺伝子選定」以上に、私たちロードがケモノに干渉することは許されていないので』
最低限の説明は必要でしょうが、と笑う兄ちゃんに、俺は滅茶苦茶困った。例えば最初の最初、兄ちゃんに聴いたやりとりを書いてみる。
Q.周り何もないけど何処? てか今は何年?
A.北半球、第7ソティス周期。
Q.もっとわかる説明してくれへん?
A.大体1万年くらい前ですね。
もうこの時点で意味不明や。何やソティスて。つか、何処いう質問には答えてくれてないし。まあ聞いても本人もよくわからんらしいと言って来たんで、責められへんけど。
一応聞かれたことにはちゃんと答えてくれるんやけど、兄ちゃんえらいインテリなんかすげーわかりにくい。話してることが、庶民にもわかるように頼むで。
で、色々聞き出してまとめると。なんや兄ちゃんは七人くらいおる偉い
偉い天使ってのは孔雀、馬、ドラゴン(ドラゴン!?)、鯨、鷹、牛、ライオン、の七柱(兄ちゃんはこう数えとった)。白い兄ちゃんはこのドラゴンの、火の天使らしい。
「ドラゴンって、全然人間やん見た目」
『私たちのこの姿は、私たちの主たる存在に似せて作られていますから。人間も、そうですよ?』
ほーんて感じや。いや、まあそういう宗教的なあれこれ色々ヤバそなセンシティブな話は、企業経営者として微妙に触れづらいところなんやけど。
で、兄ちゃんはそのバトルファイトっつーのに参加させる存在を選ぶために、過去から未来に跳んでたとか何とか。タイムマシン? 天使って何でもありなんやな……。
そんでもってクローンどうこうの話にもどるんやけど。
「何で俺、こんな若い身体してるんだ? 腹ぜんぜんビールっ腹じゃないし……って、何か顔も皺無くなっとる!?」
『もっとも活動に適していた二十代の頃の姿に構築していますので』
構築って何やってのを深掘った結果が、まあ、俺がクローンだって話や。
俺自身は三上了がこの白い兄ちゃんに提供した髪の毛一本、それをもとに作られた存在らしい。人格とか記憶とかクローンだと複製できへんやろ昔公共放送のスペシャル番組とかで見たで? と聞けば、まあそのあたりは神様的な云々かんぬんでらしい。訳わからん。
「で、何? そのバトルファイトっての。俺、何に参加させられそうになってるん?」
『簡単に言うと、地上の覇権を手にするための代理戦争……、のようなものでしょうか』
さっぱり意味不明やったけど、バトルファイトとは何か。いや、名前からしてバトルロワイヤルっぽさはあるが、そういう単純な話じゃないみたいや。
白い兄ちゃんの言葉をそのまま借りるなら、生存競争と、種の繁栄の代理戦争とか。だから「バトル」「ファイト」とかいっても「戦い」「闘い」みたいな直訳をすると、ニュアンスを損ねるみたいだ。
種の繁栄をかけた生存競争としてのバトル、それを決するためのファイト、みたいな感じ。
「えー ……? 無茶ぶりやん。何させてくれとんねん。人類代表、俺で良いのかいッ。もっとおるやろそれこそ、こう、仮面ライダーやっとったのとか、アフリカ系とかのムキムキマッチョメンとか、アメリカ系のエージェントとか。人類基準で見ても色々、上澄み多いやろ」
『いえ、人種の選定は黄色人種に限定してましたので』
「何で……?」
『亜熱帯と亜寒帯の中間域……、人類の代表として選ぶのに適切な地域で進化した人類で、かつ最も精神的に複雑怪奇摩訶不思議面妖な文化を発展させていたのが日本だと判断しました』
そりゃまあ、俺と未知の実家に関しても「たこ焼きがサイコー!」と「たい焼きが世界を制する!」みたいなモンで百年くらいいがみ合っとったくらいらしいし(ホンマかい!?)。
世界的に見てもここまでアレなことに本気で、それでいて血みどろにならずになんやかんや最終的に合流したり、それでもお互いの文化の小競り合いみたいなのは日常茶飯事なっとるん、世界的に見てアレなんかい? よくわからんけど。
そうやって適当に聞いてもよくわからんことしか言わない白い兄ちゃんは、くすくす笑って俺に何かくれた。
「……ベルトと、たすき掛け? 矢筒でも背負わせるのか?」
蛇っぽい意匠の施された趣味の悪い真鍮みたいなベルトと、茶系で中央に何か赤いハート型みたいな宝石のあるたすき掛けのベルトみたいなのを渡される。
装着してみてくださいとか言われて、まぁよくわからんけどジーンズの上からベルト巻いて、シャツの上からたすきをかけたら。
『その肩ベルトは
「…………は?」
んな意味深なことを言うと、白い兄ちゃんはたすき掛けされた宝石を30度くらい回転させて。アレ、斜め掛けになってたハートがちゃんと正面になったっていうか、丁度正面から見ると胸の中央に対して、綺麗にハートの形が来るようになったというか。
そういうのをした瞬間、俺の身体はバキバキとかメリメリとか音を立てて変化した。
何か全身、黒いベルトみたいなんが纏わりついとって……、何? こう、デ〇ズニ〇のヘラクレスの衣装を趣味悪くした感じのカッコに、肌は真っ白で石膏みたいになっとる。水辺だったからそっちの方覗いてみたけど、何かエラいパンプアップしてムキムキマッチョマンな体格になって、もともと着用しとった衣装は弾け飛んでる。
頭は何かローブみたいなのがついてて……、あと、ローブの下はものすっごい機械みたいな感じの。ドクロみたいなマスクに覆われとった。
レスラーとかみたいにご丁寧に口元が開いとるけど、何この…………、何? やっぱり白い石膏みたいな肌になっとるし。
後なんか矢筒と一緒に弓みたいな前衛的な感じのもちゃんと背中に生えてきとるし。何やねんこれ。
というかアンデッドって何や? 死にぞこない?
『原義に乗っ取るならイモータルの方が近いですが、ここはアンデッドと』
「えっ何? バケモン? えっ俺バケモンなっとるんか!? どんな改造手術やねんッ!?」
『改造と言うより、人間を不死身の生命体として最も戦闘力を発揮できる形態に変化させた状態、といったところですね。その胸の
わけわからんけど何してくれてんねんこの兄ちゃん!?
思わずツッコミを入れようとしたけど何や? テレポテーションとかそんな感じで一瞬でその場から消えたと思ったら、背中から「落ち着いてください」とか声が聞こえる。
「細かいルールは後で進行システムたる
アンデッドになったことで死ぬことだけはありませんが、その代わり敗退した場合────人類が今後の未来で、地上にて反映することはないでしょう」
『私は火の
いやだから意味わからんて。いやちょと待てよ。
色々と文句を垂れていると、白い兄ちゃんは一瞬赤く発光すると同時に姿を消して。
残された俺は…………。
「…………あっ、なるほど。こうすると元の姿に戻るんやな」
とりあえずたすきがけの宝石をもとの位置に戻してみて。それでドクロのバケモンみたいな姿から人間の姿に戻ったのを見て、とりあえず安心した。
・
本作主人公。仮面ライダー剣、20年後の三上了……の人格と記憶を有するクローンを基に作られたヒューマンアンデッド。何かよくわからないことに巻き込まれ続けて、何かとんでもない責任を勝手に背負わされて困惑している。
状況的には卵が先か鶏が先か、みたいな状態。
・火のエルロード・プロメス:
ご存じ? 仮面ライダーアギトの通称「光の力」。本作では例の神話ベースで、ドラゴンの大天使。闇の力(テオス)とは決戦をしなかった時空の模様。
・井上
仮面ライダーガヴよりゲスト。たまたま三上了を助けたら、財団Bもないのに仮面ライダーグミのイメージキャラクターに抜擢されそうになり、なんか怖くなって逃げる。バケモノ呼ばわりされなかったのはともかく、ものすごい商魂たくましい勢いで迫られて面食らったのも無理はない。
・フィリップ/仮面ライダーダブル:
仮面ライダーWよりゲスト。諸事情あって(ジオウ的な意味合いで)時空が乱れているので、W前後の時代の頃。第一話で調べていた「タイヤキ名人アルティメット・フォーム」「アルティメットフォーム・スペシャルターボ」の謎に迫る……!
・ヒューマンアンデッドの怪人状態の外見:
大体趣味の悪いヘラクレスかHE-MAN。アンデッドらしく? 肌は革っぽい石膏みたいな白、頭部はローブを被っていて、ドクロマスクをつけている。形状は端的に言うと、アニメ版スカルマンのアレを黒くしたもの。