11月16日、午後3時。東京第1コロニー。
「コガネ、総則を追加して」
津美紀の言葉に、伏黒は顔を上げた。
姉を死滅回游から離脱させるために、ここまで準備を進めてきた。そのための100点も渡した。
なのに。
「プレイヤーは結界コロニーを自由に出入りできるようにしてちょうだい?」
津美紀の口から告げられたのは、伏黒が望んでいたものとは違うものだった。
「……は?」
「……おい」
虎杖と雀が声を漏らす。
【承認されました】
【《総則》ーー12】
【泳者は結界を自由に移動することができる】
伏黒は目の前の姉を見つめた。
「津美紀……何を言ってる?」
「何って、ルールの追加よ」
津美紀は微笑む。
その表情に、迷いはなかった。
まるで、最初からこうするつもりだったかのように。
「……お前」
伏黒の顔から、血の気が引いていく。
「津美紀じゃないな」
その言葉を聞いた瞬間、津美紀の表情が変わった。
いや、正確には。津美紀の身体をまとっていた何かが、笑った。
「あなたのお姉さんよ!」
声色は同じ。だが、そこに宿る気配は、伏黒の知る姉のものではなかった。
「私は万。千年前の奴等なら通じるかもね」
津美紀の身体を乗っ取っていた受肉術師、万。
伏黒が姉を救うために積み重ねてきたものは、最初から相手の思惑の内側にあった。
「初めてはやっぱりスクナがいいわ。じゃあね、待ってるわ」
万は背中に羽を生やし颯爽と飛び去っていく。
「追うぞ、虎杖!来栖!」
「……クソッ!」
伏黒も動こうとした、その瞬間だった。
走り始めていた虎杖の身体が、不意に強張る。
「……っ!」
全身を走る異様な感覚。
自分の身体の内側で、何かが動いた。
「おい、虎杖!」
雀が声を上げる。
だが、虎杖は答えられなかった。次の瞬間。
「契闊」
宿儺の声が響いた。
虎杖の身体から、宿儺の呪いが解き放たれる。
そしてその呪いは、横にいた来栖を一瞬で気絶させた。
「小僧との縛りでな、この一分間は殺しも傷つけもできん」
宿儺は、虎杖と交わした縛りを説明しながら自分の指を軽々と千切った。
「あの小僧は本当に間抜けだ。“誰も傷つけない”という文言の中に自分を入れておらんのだからな」
千切れた指を何も気にせず豪快に笑い飛ばす宿儺。
「布留部由良由良」
その姿を見て急いで伏黒は布留の言霊を唱える。
雀は伏黒の言葉と呪力のうねりに危機を覚え、大きく後ろへ飛んだ。
伏黒が掌印を構えるも、一瞬で距離を詰めた宿儺が妨害し、千切った指を伏黒に飲み込ませた。
「小僧、面白いものが観れると言っただろ?」
伏黒を乗っ取った宿儺が虎杖に対し下卑た笑みを見せた。
*
「……伏黒?」
虎杖は何が何だかわからないまま伏黒へ声をかけた。
その刹那、宿儺は何も言わずに虎杖を殴り、遠くまでぶち飛ばした。
『鵺』
宿儺は伏黒の式神を出し、辺り一帯に雷の雨を降らした。
「ほう?遊戯の術式だけかと思えば、結界術まで扱えるとは」
「知ってんだろ?くわばらくわばら。1000年前だろ?」
「道真の雷災よけか?よくもまぁ知っているものだなそんな結界術」
「結界術が得意で良かったよ。まぁ?四方呪にする方が良かったな。くわばらじゃ守りきれなかったわ」
雀は宿儺を見据える。軽口は幾らでも叩けるが、正直ギリギリだった。
目の前にいるのは、伏黒の身体を奪った宿儺。正面から戦って勝てる相手ではない。
それは分かっている。だからこそ、まずは情報が必要だった。
「遊戯の術式だったなお前は。なら一つ、遊ぶか?」
見下した笑みが雀を見据える。
「……ちょっと、相手してもらうぜ」
雀が構える。
宿儺はその姿を見て、口元を吊り上げた。
「伏黒の身体で好き勝手されるのも、気分が悪いんでね」
「ならば、止めてみろ」
宿儺が踏み込んだ。
速い。
雀は紙一重で身を捻り、迫る攻撃をかわす。同時に、呪力で形成した牌を放つ。
宿儺はそれを見て、わずかに身体を傾けた。
牌が頬の横を通り過ぎる。
「……へえ」
雀は目を細めた。
反応速度、身体の動かし方、攻撃を避ける際の判断。
どれも、想定以上だ。だが、まだ分からないことが多すぎる。
宿儺が再び距離を詰める。雀は後退しながら牌を操り、相手の進路を塞ぐ。
単純な攻撃ではない。
攻撃を避ければ、次の牌が待ち受ける。進めば、別の牌が死角から迫る。
宿儺の足を止め、反応を確かめるための布石。
しかし。
「小賢しい」
宿儺は牌の配置を見抜いたかのように、最小限の動きで抜けてきた。
雀は舌打ちする。
攻撃を当てることより、相手の動きを制限することを優先している。それでも、宿儺を完全に自由にはさせない。
雀が牌を追加し、宿儺がそれをかわす。宿儺が距離を詰めれば、雀が退く。雀が攻撃を仕掛ければ、宿儺が受け流す。
決定打はない。だが、宿儺もまた、すぐには雀を仕留められずにいた。
「……なるほどな」
宿儺が笑う。
「ただの小細工ではないらしい」
「そりゃどうも」
雀は攻撃を当てようとはしなかった。
牌を配置し、宿儺が動ける方向を限定する。避けた先に次の牌を置き、踏み込む先に別の牌を待たせる。
宿儺の動きを縛るための布石。
だが、宿儺はその意図を察してなお、余裕を崩さない。雀が作れるのは、せいぜい一瞬の足止め。その一瞬を積み重ねることしか、今の雀にはできなかった。
雀は軽口を返しながら、頭を回転させていた。
(今のところ、足止めはできている。けど、これを続けてもジリ貧だ)
攻撃を重ねるほど、こちらの呪力は消費される。
対して宿儺には、まだ余裕がある。
真正面から削り合うのは割に合わない。
なら、どうする。
雀の脳裏に、自身の術式が浮かぶ。
『方城結手』。
そして、その奥にある領域。
『四方宝城』。
領域内で麻雀のルールを強制し、役を成立させる。役が成立すれば、打点を引き上げられる。
今の宿儺に通常の攻撃を重ねても、決定打になる保証はない。
だが。
領域に引きずり込めれば。役を成立させ、打点の高い一撃を叩き込めるかもしれない。
もちろん、領域を展開すれば勝てると決まったわけではない。宿儺が領域にどう対応するのかも分からない。
それでも、今の状況で見つけられた数少ない勝ち筋だった。
――問題は、どうやって領域に引きずり込むか。
「何を考えている?」
宿儺の声に、雀は思考を中断した。
「いやぁ。どうすりゃ一番安くて高く済むか考えてた」
「フン。面白いことを言う」
宿儺が再び踏み込もうとした、そのとき。
「恵を返して!」
鋭い声が、戦場に割って入った。
来栖華。その内側にいる天使が、宿儺を見据えていた。
「宿儺。お前をここで祓う」
邪去侮の梯子
華の身体から、強烈な光が放たれる。
雀は即座に距離を取った。
「……おいおい。今度はそっちか」
天使の術式が発動する。
宿儺の身体を、光が包み込んだ。逃げ場を許さない、圧倒的な攻撃。
雀は目を細め、宿儺の様子を観察する。
――通るのか?
呪いを消滅させる天使の術式。宿儺にとっても、無視できるものではないはずだ。
光が収束する。
その場にいた全員が、宿儺の消滅を期待した。
だが。
光の中から現れた宿儺は、伏黒の顔で微笑んでいた。
宿儺はそのまま、華の方へ視線を向けた。
「華」
突然、名前を呼ばれた。
「……え?」
「助かった」
宿儺は、伏黒の顔で微笑んだ。
「お前のおかげで、俺は戻ってこられた」
華の表情が揺れる。
目の前にいるのは、伏黒恵。
自分が助けたかった相手。
「……恵?」
天使が警告する。
『華、騙されるな!』
だが、華の意識は、目の前の伏黒へ向いていた。
「よかった……!」
華は安堵の表情を浮かべ、宿儺へ近づく。
『ダメだ!華!』
天使の声が響く。
しかし、もう遅かった。
宿儺が口を開く。
そして。
華の肩に、牙を立てた。
「――っ!?」
肉を噛み裂く音。華の顔が苦痛に歪む。
「華!」
天使の叫びが響いた。
宿儺は肩から口を離し、血を滴らせながら笑う。
「甘いな」
華がよろめく。
「……クソッ!」
雀は歯噛みした。
せっかくの攻撃を、宿儺は信頼を利用して切り抜けた。そして今、天使は華の負傷によって動きを制限されている。
状況が変わった。宿儺を領域に引きずり込むための隙を探すどころではない。
「来栖!しっかりしろ!」
雀が叫ぶ。だが、華の肩からは血が流れ続けていた。
宿儺は、その様子を見下ろしている。
余裕の笑みを浮かべたまま。
「……伏黒を、返せ」
戻ってきた虎杖の低い声が響く。拳を握り締め、宿儺を睨みつける。
雀は横目で虎杖を見た。
「虎杖……」
その背中から、怒りが伝わってくる。
虎杖は一歩踏み出した。
「まだいたのか小僧」
「お前だけは……絶対に許さねぇ」
そして、宿儺へ向かって走り出す。
再び、戦いが始まった。
222123で戦い切ったマツはスゲーよ、アンタがMリーガーの中で1番好きだ俺はww
原作基準で行きますか?
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はい。原作基準でオリ敵、オリ展開無し。
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いいえ。原作基準ではなくオリ敵オリ展開で