神が実在し、信仰が力となる時代。

人口約二兆人、かつての地球を遥かに凌ぐ巨大な惑星を舞台に、人類は宗教によって分断されていた。

世界を支配する三大宗教――キリスト教、仏教、そしてアリス教。

中でも女神アリスを頂点とするアリス教は、圧倒的な武力によって世界の半分を占領。異端者への迫害が横行し、各宗教の対立は激しさを増していた。

そんな世界で、神を信じない一人の少年がいた。

黒瀬迅、十八歳。

口が悪く、喧嘩っ早く、金もなければ信仰心もない。

アリス教徒の両親に勘当され、行き場を失った迅は、空腹のあまり無宗教軍の食料庫に忍び込む。しかし、あえなく捕まり、市民権と三食の飯を目当てに世界最弱の軍隊へ入隊することになってしまう。

そこで出会ったのは、勝負に異常な執着を見せる戦闘狂、ラフバ・エラーと、天才的な頭脳と剣の腕を持つ少女、アギ・ハワー。

所属も性格も違う三人は、問題児二人のお目付け役としてアギが組まされたことをきっかけに、やがて軍内で「三馬鹿」と呼ばれるようになる。

くだらない勝負に、上官への反抗、絶えない喧嘩。

しかし、そんな騒がしい日常の裏では、世界を巻き込む宗教戦争が静かに動き始めていた。

だが、彼らが強くなるほど、世界の残酷な現実も明らかになっていく。

神への信仰が人を救う一方で、神への信仰が人を殺す。

正義も悪も、祈る神が違えば容易に入れ替わる。

そしてついに、世界の命運を懸けた第二次世界大戦が勃発する。

かつての大戦をたった一人で勝利に導いた女神アリス。

その絶対的な力を前に、迅たちは何を守り、何を失うのか。

神を信じず、神に屈せず、ただ仲間と笑って生きることを望んだ少年。

彼が最後に選ぶのは、神を葬ることか。

それとも――。

「俺は神には祈らねぇ」

これは、神を嫌った少年が、神に抗い、世界の運命を変える物語。

そして、何よりも笑うことを大切にした男の、長く騒がしい戦争の記録である。

『神葬戦争』――開戦。