光り輝く太陽に導かれ   作:光り輝くダンディー

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第47話 光り輝く太陽に導かれ

 

 

アスナは、アインクラッドへ向かう前から、ずっと気になっていることがあった。

 

それは、レイと再会したとき、自分がどんな顔をすればいいのかということ。

 

嬉しいに決まっている。会いたくて、会いたくて、仕方がなかった人なのだから。

 

けれど、最後に会ったときから、かなりの時間が経っている。再会した瞬間、泣いてしまうかもしれない。それでも、できることなら笑顔で迎えたい。

 

そんなことを考えていたアスナは、そっとアイテム欄を開いた。

 

そこから取り出したのは、小さな手鏡だった。

 

アインクラッドで手に入れた、れっきとしたゲーム内アイテムである。

 

アスナは周囲に仲間たちがいないことを確認すると、手鏡を自分の顔に向けた。

 

鏡に映る自分の顔を確認する。

 

口元を少し緩めてみる。次に、自然な笑顔を作ってみた。

 

「……うん」

 

小さく頷く。

 

けれど、すぐに表情を変え、もう一度確認する。

 

「……これなら大丈夫かな」

 

そう呟いて、手鏡をアイテム欄へ戻した。

 

誰にも見られていないことを確認すると、アスナは何事もなかったように仲間たちのもとへ戻った。

 

まさか、こんなところで手鏡を使って笑顔の確認をしているとは、誰も思っていないだろう。

 

もちろん、本人も知られたくはなかった。

 

そして、彼女たちは目的の場所へ向かう。

 

彼らはついに、その場所へとたどり着いた。

 

アインクラッド。

 

かつて死のゲームの舞台となり、今では通常のゲームとして再び遊べるようになった世界。

 

しかし、その地下では、今もなお死のゲームが続いている。

 

そして、そこにレイがいる。

 

「……ここから先は、私が案内するね」

 

アスナが仲間たちを振り返った。

 

「レイ君のログハウスの場所を知っているのは、私だけだから」

 

「頼む、アスナ」

 

キリトが頷く。

 

リズ、シリカ、クライン、エギルも、緊張した面持ちで続いた。

 

リーファも一緒だった。

 

彼女にとって、レイはまだ会ったことのない人物だ。

 

それでも、兄や仲間たちがどれほど彼を大切に思っているのかは、ここまでの話で十分に伝わっていた。

 

そして、ユイも仲間たちとともに来ていた。

 

全員が、胸の内に同じ思いを抱いている。

 

本当に、レイは生きているのか。

 

ダンディーの話は、本当だったのか。

 

その答えが、もうすぐ分かる。

 

◇

 

アスナの案内で、彼らは森の中を進んでいった。

 

やがて、木々の間に一軒のログハウスが見えてくる。

 

懐かしい建物だった。

 

かつてレイが暮らし、アスナと二人で過ごしたこともある場所。

 

「……ここだよ」

 

アスナの足が止まった。

 

その声は、わずかに震えていた。

 

目の前にあるのは、間違いなくレイのログハウス。

 

しかし、扉の向こうに本当に彼がいるのかは、まだ分からない。

 

「……レイ君」

 

アスナは扉を見つめた。

 

会いたかった。

 

ずっと、ずっと会いたかった。

 

もう二度と会えないと思っていた人。

 

最後に見た彼の姿が、今も心から離れない。

 

「……レイ君、いる?」

 

アスナは扉に向かって声をかけた。

 

返事はない。

 

「……レイ?」

 

キリトも呼びかける。

 

すると――。

 

カチャリ。

 

扉の向こうから、鍵の外れる音がした。

 

全員が息を呑む。

 

ゆっくりと、扉が開いた。

 

そして。

 

「……何だ。騒がしいな」

 

聞き覚えのある声。

 

黒い装備。

 

見慣れた顔。

 

感情の読みにくい、あの赤い瞳。

 

そこに立っていたのは――。

 

「……レイ君……?」

 

アスナの声が、かすれた。

 

レイは目の前にいる一同を見回し、わずかに眉を動かした。

 

「……アスナ? それに、お前ら……」

 

一瞬、誰も動けなかった。

 

本当に、そこにいる。

 

幻でも、画像でもない。

 

レイが、生きて目の前に立っている。

 

「……レイ……!」

 

キリトが声を上げた。

 

「レイさん……!」

 

シリカの目から、涙があふれる。

 

「ちょっと……本当に……生きてたのね……!」

 

リズは口元を押さえた。

 

クラインは目を見開いたまま、何度もレイを指さす。

 

「お、おい……マジかよ……! 本当にレイなのか!?」

 

「見りゃ分かるだろ……」

 

レイは呆れたように答えた。

 

いつもと変わらない口調。

 

いつもと変わらない表情。

 

それが、彼らには何よりも嬉しかった。

 

「……よかった……」

 

エギルが深く息を吐いた。

 

「本当に……よかった……」

 

ユイも、嬉しそうに声を上げる。

 

「レイさん! よかったです!」

 

レイはユイを見て、少しだけ目を細めた。

 

「……ユイか。久しぶりだな」

 

「はい!」

その返事を聞いて、ユイはさらに嬉しそうに笑った。

 

そして。

 

「……レイ君っ!」

 

アスナが駆け出した。

 

レイが何か言うよりも早く、その胸に飛び込む。

 

「……っ」

 

レイは一瞬だけ目を見開いたが、彼女を拒まなかった。

 

アスナは彼の服をぎゅっと握り締めた。

 

「……会いたかった……っ!」

 

涙が止まらなかった。

 

「ずっと……ずっと、会いたかった……!」

 

声が震える。

 

「もう会えないと思ってた……! レイ君がいなくなって……私……!」

 

言葉が続かない。

 

ただ、泣きながら彼にしがみついた。

 

レイは、そんなアスナを静かに見下ろしていた。

 

やがて、彼は小さく息を吐く。

 

「……悪かった」

 

その短い言葉に、アスナは首を横に振った。

 

「違う……! レイ君が謝ることじゃない……!」

 

彼女は顔を上げた。

 

涙に濡れた瞳が、真っ直ぐにレイを見つめる。

 

「……生きていてくれて、ありがとう……!」

 

レイは何も言わなかった。

 

ただ、アスナが落ち着くまで、その場に立っていた。

 

少し離れたところでは、キリトたちも目元を押さえていた。

 

「……よかったな、アスナ」

 

キリトが小さく呟く。

 

「……うん」

 

リズも、涙を拭った。

 

「本当に……よかった……」

 

リーファは、そんな彼らを静かに見守っていた。

 

彼女はレイと初対面だ。

 

今は、再会を喜ぶ仲間たちの邪魔をするべきではない。

 

そう思い、少し離れた場所で待っていた。

 

◇

 

しばらくして、アスナはようやくレイから離れた。

 

それでも、彼の服を握る手はなかなか離れなかった。

 

「……ごめんね。私、つい……」

 

「……別に構わない」

 

レイは淡々と答えた。

 

「……お前らも、いつまでそこに立っているつもりだ?」

 

「え?」

 

「……入れ。話があるんだろ」

 

その言葉に、全員の表情が明るくなる。

 

「ああ、そうさせてもらう」

 

キリトが答えた。

 

「お邪魔します!」

 

シリカが頭を下げ、リズたちも続く。

 

リーファも、少し緊張しながらログハウスへ入った。

 

レイは彼女を見て、わずかに首を傾げる。

 

「……見ない顔だな」

 

「あ、はい!」

 

リーファは背筋を伸ばした。

 

「私はリーファ。キリトく……お兄ちゃんの妹です」

 

「……妹?」

 

レイはキリトを見た。

 

「……へー、妹いたのか」

 

キリトが苦笑する。

 

「反応うすいな……」

 

クラインが呆れたように突っ込んだ。

 

リーファは少し驚いたものの、すぐに笑顔になった。

 

「えっと……初めまして、レイさん。お兄ちゃんたちから、いろいろ聞いています」

 

「……そうか。俺はレイだ」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

簡単な自己紹介を終えると、全員が席についた。

 

ユイは、いつものようにキリトとリズのそばにいた。

 

ようやく再会を果たした。

 

しかし、まだ聞かなければならないことがある。

 

なぜレイは生きているのか。

 

なぜ地下にいるのか。

 

そして、これからどうするのか。

 

キリトが、真剣な表情で口を開いた。

 

「……レイ。まずは、お前の話を聞かせてくれないか?」

 

「……ああ」

 

レイは頷いた。

 

「俺も、説明する必要があると思っていた」

 

◇

 

「……あの戦いのあと、目が覚めたら第七十五層にいた」

 

レイは、淡々と話し始めた。

 

「周囲に誰もいなかった。HPはゼロになったはずなのに、俺は生きていた」

 

「……やっぱり、ダンディーストラップの効果だったんだな」

 

キリトが呟いた。

 

レイが視線を向ける。

 

「……ダンディーストラップ?」

 

「その話は後で説明する。まずは続きを聞かせてくれ」

 

「……分かった」

 

レイは特に追及せず、話を続けた。

 

「目が覚めたあと、ログアウトを試した。だが、できなかった」

 

「ログアウトできない……?」

 

アスナが不安そうに尋ねる。

 

「ああ。何度試しても無理だった」

 

レイは表情を変えずに答えた。

 

「そのあと、システムメッセージが届いた。内容は、地下百層をクリアしろ、というものだった」

 

「地下百層……」

 

キリトが真剣な表情で繰り返す。

 

「それで、地下の存在を知ったのか?」

 

「……いや」

 

レイは否定した。

 

「地上とは別に、地下にも階層が存在していた。俺は、前から地下攻略を始めていたんだ」

 

「……そんなことを……」

 

シリカが呆然と呟く。

 

「それで、地下のことを誰にも知らせなかったの?」

 

リズが尋ねた。

 

レイは少しだけ目を伏せた。

 

「……あの頃は、地上の第一層がようやくクリアされたばかりだった」

 

その言葉に、全員が静かになる。

 

「……やっと、希望が見え始めた時期だった。そんなときに地下の存在を知らせれば、余計な混乱を招く可能性があった」

 

レイは、いつもの冷静な口調で続けた。

 

「地上の攻略に集中してもらうため、地下のことは黙っていた。俺一人で進めばいいと思った」

 

「……だから、一人で……」

 

アスナが呟く。

 

「……ああ」

 

レイは、それ以上言い訳をしなかった。

 

彼にとっては、必要だと思ったことをしただけなのだろう。

 

しかし、キリトたちは複雑な表情を浮かべていた。

 

レイが一人で抱え込んでいたものの大きさを、改めて知ったからだ。

 

「あと一層でクリアだ」

 

レイは短く答えた。

 

「だが、まだクリアしていない。最後まで油断するつもりはない」

 

その言葉には、攻略を続けてきた者としての冷静さがあった。

 

◇

 

「……今度は、俺たちの話だな」

 

キリトが口を開いた。

 

「俺たちが何をしてきたのか、順番に説明する」

 

まず、彼らはSAOクリア後の現実世界について話した。

 

キリトが目覚め、アスナがALOに囚われている可能性を知ったこと。

 

そして、仲間たちとともにALOへ向かい、アスナを救出したこと。

 

レイは黙って話を聞いていた。

 

「……なるほどな」

 

アスナが無事に救出されたことを聞いても、レイの表情は大きく変わらなかった。

 

ただ、彼女が隣に座っていることを一度だけ確かめるように見た。

 

「……それで、アスナが戻ってきたあと、エギルが妙な画像を見つけたんだ」

 

キリトは、レイらしき人物が写った画像について説明した。

 

見知らぬ場所に立つ、レイによく似た人物。

 

その画像が、どこから来たものなのかは分からなかった。

 

しかし、彼らはその画像を手掛かりに、レイが生きている可能性を追いかけたのだ。

 

「……その画像をきっかけに、ALOの未踏破エリアを調べたんだ」

 

エギルが話を引き継ぐ。

 

「最深部のボスを倒せば、アインクラッドに関する情報が一つ手に入る。そう聞いてな」

 

「……それで、その未踏破エリアに行ったわけか」

 

レイが呟く。

 

「そうだ。そこで待っていたのが……」

 

キリトは、少しだけ言葉を切った。

 

そして、全員が何とも言えない表情になった。

 

「……ダンディーだった」

 

「…………」

 

レイは、無言になった。

 

数秒後。

 

「……また、あいつか」

 

心底うんざりした声だった。

 

「……どこにでも現れるな、あの珍獣は」

 

「……ああ。俺たちも、まさかあそこにいるとは思わなかった」

 

キリトも苦笑する。

 

リズが、ため息をついた。

 

「本当に大変だったんだから。倒したと思ったら分裂するし、うるさいし……」

 

「二体になったときは、もう終わったと思ったぜ……」

 

クラインも遠い目をした。

 

「……分裂したのか?」

 

レイが尋ねる。

 

「ええ。二体になったわ」

 

リズが答えた。

 

「そのときは、もう絶望的だったわよ」

 

「……そうか」

 

レイは、何とも言えない表情を浮かべた。

 

あのダンディーが、ALOにまで現れた。

 

しかも、以前と変わらず好き勝手に振る舞っていたらしい。

 

「……それで、あいつから俺の情報を聞いたのか?」

 

「ああ」

 

キリトが頷いた。

 

「ダンディーストラップには、HPがゼロになってから一分後に復活する効果があるらしい。お前が生きていたのは、そのおかげだ」

 

「……なるほどな」

 

レイは自分の状況を振り返るように、少しだけ考え込んだ。

 

「……あのストラップ、そんな効果があったのか」

 

「俺たちも驚いたよ」

 

キリトは苦笑した。

 

「正直、ただのふざけたストラップだと思っていたからな」

 

「……俺もだ。だが、つけてたのは正解だったか」

 

レイは、ため息をついた。

 

「……まったく、ずっと翻弄されっぱなしだ」

 

「本当にな……」

 

キリトも深く頷いた。

 

「……それで、ダンディーから地下のことも聞いたんだな」

 

「ああ」

 

キリトの表情が少し変わった。

 

「ただ、あいつから聞いたのは、それだけじゃない」

 

「……他にもあるのか?」

 

レイが尋ねる。

 

「ああ。実は、ダンディーは俺たちに情報を伝えるために、命を懸けていたんだ」

 

その言葉に、レイの眉がわずかに動いた。

 

「……命を懸けて?」

 

「ああ。あいつは、お前が生きていること、地下では今もデスゲームが続いていること、そして地下百層までの攻略状況を俺たちに伝えてくれた」

 

キリトは一度言葉を切った。

 

「でも、それは簡単なことじゃなかった。あいつは、自分の命を削るようにして、俺たちに必要な情報を伝えてくれたんだ」

 

「……そうだったのか」

 

レイは黙って聞いていた。

 

「最初は、いつもの調子でふざけているように見えた。でも、あのときのあいつは違った。自分がどうなっても構わないという覚悟で、俺たちに伝えようとしていたんだ」

 

キリトの言葉に、リズたちも静かに頷く。

 

「そうね。普段のダンディーからは想像できないくらい、真剣だったわ」

 

リズが呟いた。

 

「ふざけたことばかり言ってるのに、あのときだけは違ったよね……」

 

シリカも、あのときの光景を思い出すように目を伏せた。

 

「……あいつなりに、必死だったんだろうな」

 

エギルも静かに続ける。

 

「……そうか」

 

レイは短く答えた。

 

その表情からは、何を考えているのか分からない。

 

だが、ダンディーが自分のためにそこまでしたという事実は、しっかりと受け止めているようだった。

 

「……あの珍獣が、そこまでするとはな」

 

「俺たちも驚いたよ」

 

キリトは苦笑した。

 

「ただ、あいつは最後まで自分のことをダンディーだと言い張っていたけどな」

 

「……それはいつも通りだな」

 

レイの返答に、少しだけ空気が和らぐ。

 

しかし、キリトはまだ話を続けた。

 

「それから、地下百層のボスについても情報を教えてくれた」

 

「……ボス?」

 

「ああ。地下百層の最深部に待ち受けている存在だ」

 

キリトは、全員を見回してから口を開いた。

 

「その先に待ち受けているのは……神らしい」

 

「……神?」

 

レイが聞き返す。

 

「ああ。そう聞いている」

 

キリトが頷いた。

 

その言葉に、リズたちは何とも言えない表情を浮かべた。

 

「……神って、本当にそんな存在がいると思う?」

 

リズが戸惑ったように尋ねる。

 

「わからない。ダンディーが命懸けで伝えてくれた情報だ。警戒するべきだ」

 

キリトはそう答え、真剣な表情で続けた。

 

「だから、俺たちは皆でレイと共に戦うために、追いかけてきた。地下百層を一緒にクリアするために」

 

レイは、全員を見回した。

 

アスナ

 

キリト

 

リズ

 

シリカ

 

クライン

 

エギル

 

リーファ

 

そして、ユイ

 

皆の表情に迷いはなかった。

 

「……地下が今もデスゲームだってことは、分かっているんだな?」

 

レイが尋ねた。

 

「ああ」

 

キリトが答える。

 

「危険なのは承知している。それでも、俺たちは行く」

 

「……私も」

 

アスナがレイを見つめた。

 

「レイ君が一人で戦っているなら、今度は私も一緒に戦いたい」

 

その言葉に、ほかの仲間たちも頷いた。

 

「俺たちは覚悟している。危険だからって、ここまで来て引き返すつもりはないぜ」

 

クラインが力強く言った。

 

「もちろん、準備は必要だけどね」

 

リズが付け加える。

 

「私も、レイさんの力になりたいです」

 

シリカも真剣な表情で答えた。

 

リーファも、兄の隣で頷いた。

 

「私も行きます。お兄ちゃんたちと一緒に」

 

「ユイも、レイさんをお手伝いします!」

 

ユイも、はっきりと告げた。

 

レイは、しばらく何も言わなかった。

 

彼らが本気であることは、十分に伝わっていた。

 

危険を知らずに言っているわけではない。

 

それでも、ここまで来た。

 

自分を助けるために。

 

「……そうか」

 

レイは静かに息を吐いた。

 

「……ありがとう」

 

その一言に、全員が目を見開いた。

 

「……レイ?」

 

キリトが思わず聞き返す。

 

レイは、わずかに視線を逸らした。

 

「……わざわざ危険な場所まで来てくれたんだ。それくらいは言う」

 

「……レイ君……」

 

アスナの目に、また涙が浮かんだ。

 

けれど今度は、悲しみからではなかった。

 

レイは、仲間たちの気持ちを受け取ってくれた。

 

それだけで、十分だった。

 

◇

 

しばらくして、話題は地下百層の攻略へと移った。

 

「……ただ、一つだけ言っておく」

 

レイが口を開く。

 

全員が彼に注目した。

 

「……地下は地上とは違う。今もデスゲームだ。準備は念入りにしておけ。無理をするつもりなら、俺は止める」

 

「分かってる」

 

キリトが頷いた。

 

「全員で生きて帰る。それが前提だ」

 

「……ああ」

 

レイは短く答えた。

 

そして、ふと思い出したように口を開いた。

 

「……しかし、あのダンディーは最後まで予想を裏切るな」

 

その言葉に、部屋の中が静まり返った。

 

一瞬の沈黙。

 

次の瞬間。

 

「……それは本当にそう!」

 

リズが即座に叫んだ。

 

「倒したと思ったら分裂するし、最後にはレイの情報まで知ってるし!」

 

「しかも、あいつが持ってたストラップに復活効果があったなんて……」

 

シリカも呆れたように首を振る。

 

「もう、何が何だか分からないよ……」

 

「俺だって、あいつのことは理解できねえよ……」

 

クラインが遠い目をした。

 

エギルも苦笑する。

 

「……まあ、感謝しているのは確かだがな」

 

「……そこがまた複雑なんだよな」

 

キリトも頷いた。

 

助けられた。

 

情報を教えてもらった。

 

しかも、その情報を伝えるために命まで懸けていた。

 

感謝している。

 

しかし、あの太陽のような姿と、意味不明な言動を思い出すと、どうにも素直になれない。

 

レイは、そんな仲間たちを見て、わずかに息を吐いた。

 

「……あいつらしいな」

 

その言葉に、全員が同時に頷いた。

 

ダンディーは、最後まで予想を裏切る。

 

それだけは、全員の共通認識だった。

 

◇

 

その日のうちに、彼らは地下百層攻略に向けた準備を始めた。

 

装備の確認。

 

回復アイテムの補充。

 

戦闘で必要になるものの整理。

 

そして、全員で生きて帰るための作戦を考える。

 

レイもまた、彼らとともに準備を進めることになった。

 

これまで一人で進めてきた地下攻略。

 

だが、最後の階層には、仲間たちと向かう。

 

「……明日、準備が整い次第、攻略に向かう」

 

レイが告げた。

 

「分かった」

 

キリトが頷く。

 

「みんな、今日はしっかり休もうね」

 

アスナが仲間たちに声をかけた。

 

全員がそれぞれ返事をする。

 

レイは、ログハウスの窓から外を見た。

 

静かな森。

 

穏やかな風。

 

ここで一人、地下攻略を続けてきた日々。

 

そこに、再び仲間たちが集まった。

 

「……レイ君」

 

隣に立ったアスナが、そっと声をかける。

 

「……何だ?」

 

「……もう、一人じゃないからね」

 

レイは、彼女を見た。

 

アスナは、優しく微笑んでいた。

 

「今度は、みんなで一緒に帰ろう」

 

レイは少しだけ黙り、それから小さく頷いた。

 

「……ああ」

 

その短い返事に、アスナは嬉しそうに笑った。

 

地下百層。

 

そこには、何が待っているのか。

 

本当に神のような存在が待ち受けているのか

 

そして、その正体は何なのか。

 

まだ誰にも分からない。

 

だが、もう一人ではない。

 

レイと仲間たちは、地下攻略の準備を整え、明日を待つのだった。

 

 






おまけ『ゲーム機戦争』全15話

第13話「ネットワーク大決戦」

スマホ「フハハハハ! どうした? ゲーム機たちよ! 俺のネットワーク攻撃に手も足も出ないようだな!」

プレイステーション「くっ……! オンライン対戦だけでなく、ゲームの配信まで自由自在だと……!」

スマホ「当然だ! いつでもどこでも、好きなゲームを楽しめる。それが俺の力だ!」

ゲームボーイ「くそっ! 俺たちだって負けてられないぞ!」

プレイステーション「そうだ。俺たちもネットワークを利用すればいい!」

ファミコン「ネットワークだと?」

プレイステーション「オンライン対戦、追加コンテンツ、そしてダウンロード! 俺たちにもできることはある!」

メガドライブ「よし! 俺もネットワークに接続するぞ!」

ファミコン「お前、ちゃんと接続できるのか?」

メガドライブ「当たり前だ! 今度こそ失敗しない!」

ピッ!

メガドライブ「……あれ?」

ファミコン「どうした?」

メガドライブ「パスワードを忘れた」

ファミコン「何やってんだお前ぇぇぇっ!」

プレイステーション「と、とにかく! 全員ネットワークに接続だ!」

ゲーム機たち「おおおおおっ!」

ゲーム機たちは次々とネットワークに接続し、スマホ帝国に反撃を開始する!

プレイステーション「オンライン対戦、開始!」

ゲームボーイ「協力プレイだ!」

サターン「こちらも援護する!」

64「負けるものか!」

スマホ「ほう……。なかなかやるじゃないか」

プレイステーション「これが俺たちの反撃だ!」

スマホ「だが、まだまだ甘い!」

ピカピカピカッ!

スマホが大量のデータを送り込み、ゲーム機たちのネットワークを攻撃する。

ゲームボーイ「うわああっ! 通信が不安定だ!」

64「こっちも処理が追いつかないぞ!」

プレイステーション「くっ……! まだまだだ! ネットワークの力は、こんなものじゃない!」

スマホ「フハハハハ! いいぞ! もっと楽しませてくれ!」

ゲーム機たちとスマホの戦いは、ますます激しさを増していく。

しかし、どちらも決定打を与えることはできなかった。

――第13話・終

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