1987年、冷戦が早期に終結した世界。大戦で海に沈んだ艦艇と人々の怨念が、深海棲艦となって現れた。人類は海上交通を脅かす彼らとの戦いに敗れ、対抗する存在として、艦の魂を宿す少女たち――艦娘が姿を現す。

日本では、古来の信仰や神道儀礼を応用した「神降ろし」によって、人間の少女に艦魂を宿す技術が確立されていた。艦娘は単なる兵器ではない。人の心と魂を持ち、提督との間に結ばれる霊的な絆によって、その力を高める存在である。しかし、その絆は愛情や信頼だけでなく、執着や嫉妬といった感情までも増幅させる危うさを秘めていた。

それから三十余年。元陸軍士官の父と、艦娘である母を持つ青年・岸本優は、自らの境遇と向き合いながら提督への道を歩み始める。本人が望んだわけではないその進路の先にあったのは、人材不足に悩む伊勢警備府への着任だった。

伊勢警備府は、伊勢神宮の神域を守る霊的な責任と、名古屋圏を含む海上交通の防衛という重要な役割を担う拠点である。神道の素養と提督としての適性を兼ね備えた優の着任は、警備府にとって待ち望まれたものだった。しかし、その特異な資質は国内にとどまらず、諸外国の関心をも集めることになる。

親潮、Helena、熊野、飛龍をはじめとする艦娘たちとともに、優は新たな職務に臨む。そこには艦隊の運用や深海棲艦との戦いだけでなく、艦娘たちとの信頼関係、そして時に複雑に絡み合う心の問題も待ち受けていた。

神域のほとりに築かれた伊勢警備府。穏やかな日常と海の向こうから迫る脅威の狭間で、青年と艦娘たちは、それぞれの想いを胸に新たな航路を歩み始める。

【他サイトでの掲載について】
本作品は、Pixivにも掲載している作者本人による作品です。

Pixiv掲載ページ:https://www.pixiv.net/novel/series/16734147

本作品はPixiv版とハーメルン版の双方で公開しております。両サイトの掲載作品は同一作者によるものです。