これは、自己愛溢れ過ぎる一人の不良が、他人であるはずの一人の女性に恋をして、彼女に想いを伝えるために、その最初の一歩を踏みした物語である。

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アニメで俺ガイルを見ていて、平塚先生誰か貰ってやれよ……いやむしろ自分が貰いたい。
そう思ったので、ちょっとしたリハビリがてら俺ガイルの短編でも書いてみようと思い書き始めたのですが……何故かオリ主が……



※作者はアニメ視聴のみで原作未読者です。もしかすると原作登場キャラの性格や言動などに違和感があるかもしれませんが、その場合はスルーしていただくかご指摘していただけるとありがたいです。

※原作未読者なので今回短編として投稿させていただきました。長編化の予定は今の所ございませんのでご了承ください。


やはり彼の青春ラブコメは困難極まる。

 初めて会った時は美人な人だと思った。

 

 その後話をすると、思ったよりも親しみやすそうな人だと思った。

 

 もちろん色々と残念な面も多々あったが、それも含めても好ましいと思えた。

 

 我ながら上辺だけの付き合いが多い中で、彼女との付き合いだけは本心から笑い合える仲だと自負している。

 

 いつしかこの感情こそが恋であると気付き、彼女の事が好きなのだと気付いた。

 

 しかし、仲がいいと言っても相手が同じような恋愛感情をこちらに抱いているとは限らない。

 

 もし同じように好意を抱いてくれていたとしてもおそらくは断られてしまうのだろう。

 

 それ以上に今の関係が崩れるのを怖れてしまい、一歩踏み出す事が出来なかった。

 

 自分がここまでヘタレていた事にその時初めて気付いた。

 

 なのでこの一年の間、想いを告げる事無く、しかしそれでも楽しく過ごしてきたのだけれども、最近はこのままでいいのかと思うようになった。

 

 残念な面があるとはいえ、彼女は美人なのだ。他にも彼女を好きになる人が出てきて、アタックする可能性はゼロではない。

 

 ならば、今の関係性を壊してでも一歩進むべきではないか。

 

 しかしヘタレてしまう可能性も否めないので、敢えてここで宣言しておいて背水の陣を敷いておこうと思う。

 

 

 結論を言おう。

 

 

 俺は今年度中に彼女に告白する。

 

 

 

 

 ……そこまで読み上げてから椅子に座っている美人教師はその手に持った紙から目の前に立っている俺の方に視線を向けた。

 

「……なあ西大寺、私の出した課題内容は何だったかな?」

 

「『高校生活を振り返って』って作文だな」

 

「なら何故私は君の恋愛事情について読んでいるのかなぁ……?」

 

「高校生活振り返ったらそれが一番の変化だったからに決まってるだろ。平塚センセ」

 

 そう返答すると、手で顔を覆いながら天を仰ぐ。その様子が様になっているあたりやはりこの人はカッコイイという言葉が似合う。

 というか音読されるとかさすがに恥ずかしい。幾ら周囲の評価とか俺にとって塵芥に等しいものだとしても、職員室で自身の恋心をバラされるとか羞恥プレイにしても行き過ぎじゃないだろうか。

 

「……というかそもそも君、友達いるのか?」

 

「強いて言えば平塚センセくらいだな」

 

「教師を友達にカウントするんじゃない」

 

 いや、それは俺もそう思うけども、一緒にラーメン食べに行ったり、ゲームしたり、休日ドライブに連れて行ってもらったり、遊びに出かけたり…………これってどう考えても教師と生徒というより友達同士だろ。

 

「まあ実質ゼロという事か」

 

「だって友達なんて別にいらんし」

 

 平塚センセのように上辺を完全に取っ払って本音同士で気楽に話せる関係なら友達というのも悪くないけど、大抵の場合友達なんて上辺を取り繕い相手に合わせて空気を読む必要がある関係。そんなモンただ疲れるだけだ。

 とはいえ、変に孤立すればそれはそれで面倒が起きる。ならギブ&テイクの関係で十分。上辺だけの馴れ合いなんて必要以上はいらん。……総武高に来てからはその関係すらもないが。

 

「……君は相変わらずだな」

 

「当たり前だろ。俺は俺。その本質は変わらんよ」

 

 自分の持つ狭いコミュニティの中で満足できれば他がどうなろうと知った事ではない。当然、外と関わらんとどうしようもない事もあるけどそれは最小限に収めたい。

 

 

 極論、俺は俺だけあればそれでいい。

 

 

 それが俺の持つ持論である。

 

 ……とはいえ、何事にも例外は存在する。

 

「しかしそんな君にも好きな人が出来るのだな……」

 

「まぁ……だな」

 

「しかもそれを課題で私に自慢してくるとか、ひどくないか……」

 

「いや待て。それ自慢じゃなくて……」

 

「うるさい! クソ、どうして課題で教え子のラブレターなんか読まないといけないんだ! あー!! 私も結婚したい!!」

 

 ……なら何故そのラブレターの相手が誰かがわからないのだろうか。別に交流が殆どない間柄というわけではないし、むしろ教師と生徒という枠を超えたレベルで遊びまくってると思うのだが……一度俺の来歴をおさらいしてみよう。

 

 

 元々俺は関西に住んでいたが、親の都合で千葉に引っ越しする事になって急遽引っ越し先から近い総武高校を受験する事になった当初は苛立ちを隠せずにいた。

 何せ今まで慣れ親しんだ故郷を離れる事になったのだ。ギブ&テイクの繋がりとはいえ、作ってきた交友関係もゼロに変えるのだ。さらに言えば向こうでしてきた志望校対策の受験勉強もやり直しである。いいトコなしの最悪である。

 それでも何とか入試をクリアしてこの総武高校に入学できたものの、周りを見渡せば、上辺を取り繕い何とか孤立しないようキャラや言動に気を遣う鬱陶しい塵芥……もとい他人ばかり。さらに鬱陶しい事に関西人というだけで何か面白い事を言えとか言ってくる塵屑共。当初は穏便に済まそうとはっきりと拒否しても構わず俺の領域に土足で踏み込んで入り込もうとし、蹂躙してこようとした辺りで、自称気の長いと思われる俺は完全にプッツンとキレた。

 

 

 結果、入学して数日で三人ほどボコって、一週間程、停学処分になった。

 

 

 停学明けで戻った教室に俺に構おうとするアホはおらず、かといって報復を恐れてかイジメやちょっかいを仕掛けてくるアホもいなくなり、俺は独りになった。

 

 その孤立した状態が、俺にとって―――

 

 

 

 

――――とても快適であった。

 

 

 俺の領域に踏み入ろうとするアホがいなくなるのなら、もっと早くからこうしておけばよかったとも思った。

 

 こうして俺の学園生活に一時の平穏が訪れた――――かのように思えた。

 

 少しすると友人が悪かったと俺に謝ってくる葉山とかいう男に付き纏われるようになった。

 独りになれて快適だったのに纏わり付いてくるんじゃねぇよ、とか思いながらあしらっても、何だかんだと俺に構ってくる。

 世話焼きなのだろう。孤立してしまった俺を見ていて申し訳がないのだろう。あと俺にその友人とやらを殴った事を謝って欲しいのだろう。一般的に見ればコイツのような人間は好感を抱くんだろう。

 だが、俺にとっては鬱陶しいだけであった。何より、笑顔で本心を隠して建て前でこちらに接触してくるコイツは不快でしかなかった。

 俺の心情を察してか頻度は減ったものの、絡んでくるのに変わりはなく、満たされない日々が続いていた。

 

 そんな客観的に見れば荒れていた時期に生徒指導担当のイケメン美人教師・平塚静は俺に対して正面からぶつかってきた。

 ぶつかってきたと言っても、別に物理的な意味ではなく、対話を以ってである。時に言葉で、時に拳で…………あ、物理的な意味もあったわ。

 当然関わってきたのは教師としてとかの建て前とかそういうのもあったかもしれんけど、話す内容としては裏表なく本心でこちらに対しぶつかってくる。それが不思議と不快ではなくて、自然とこちらも本心をぶつけるようになっていた。

 そうして話していく内に仲良くなって、趣味が合うという事でさらに仲良くなり、一緒に出掛けるようになってさらに仲良くなった。

 基本的に自分以外の他人、それも肉親すらも鬱陶しいと思っていた俺としては珍しく、いつの間にか平塚静という存在は俺の領域の一部となっていた。

 

 

 ……と、まあここまでいけば誰でもわかると思うが、俺の想い人とは今目の前にいる平塚静その人である。

 

 

 というよりも俺の交友関係でそういう対象になり得るのが自分以外いねぇ事に何故平塚センセは気付かないんだろうか。

 

 

 歳の差? そんなモンどうでもいい。大事なのは俺自身の感情。

 

 親の意見? 知るかボケ。何で俺の恋愛事情に他人を混ぜんといかんのだ。

 

 社会的倫理? 知った事か。俺の人生を他人の基準で縛られるとかありえん。

 

 

 理想としては平塚センセが仕事に、俺は家を守る。この形でいけたら最高である。

 家事くらいならするし、買い物くらいなら普通にする。近所付き合いも……程度にもよるけど出来る。

 まあそれも相手の気持ち次第なんだがなぁ。相手の気持ちを無視してっていうのは流石の俺もいいとは思わんし。

 ただもしも告白が失敗してさらに今の関係も崩れたら、俺は果たして自制できるんだろうか、いやできない。最悪、犯罪紛いな事をして平塚センセを手籠めにしてでも攫っていきかねない。それは俺としても望む所でない。そもそもそれが物理的に出来るかどうかというのも疑問である。

 でもよく婚活が~とか言ってるし、俺でも告白したらいい返事が返ってきそうな気はする。仲は良好だし、互いの良い所悪い所はよく知っててなおつるんでるわけだし、性格の相性も多分悪くはない。問題になるのは教師と生徒という関係性で、多分平塚センセはその辺りを気にするだろうから、あと二年弱待ってくれるんなら是非とも俺が貰いたい。いや俺としては今から婚姻届けにサインしても問題はないんだけども、まだ結婚できる年齢じゃないから残念である。あ、でも事実婚は出来るわけで、それならアリかもしれない。告白の台詞は『卒業後の結婚を前提に付き合ってくれ』ではなく『結婚を前提とした男女交際を前提に事実婚するか』にするか。いや、ここは男らしく簡潔に『俺が結婚してやんよ!』の方がいいか……いや待て色々とおかしい。

 

 少し落ち着こうと思い、平塚センセに視線を向けると、向こうも少し落ち着こうと考えたのか、懐から出した煙草に火を付け一服する。……職員室って禁煙じゃねぇのか?

 その煙草一本なくなる辺りでようやく落ち着いてきたのか、吸っていた煙草を携帯灰皿に押し付けながら口を開く。

 

「……とりあえずレポートに関してはもういい。再提出してもらってもそう変わらんだろう。だが、君の悪意ある作文によって私の心を傷つけた罰として、奉仕活動に参加してもらう。罪には罰が必要だからな!」

 

 悪意どころか好意の塊だったし、傷つけたのが罪なら俺が結婚して償ってもいいのだが……などと考えながらも、よくわからない単語が出てきた事でそれらの想いが口に出る事はなかった。

 

「奉仕活動?」

 

 他人嫌いな俺に奉仕活動を命じるとか、ヒドイ話である。もしかして冗談かとも思ったけど、席を立って白衣を翻しながら職員室から出ていこうとする平塚センセを見て冗談とかでない事を察した。

 

「では付いてきたまえ」

 

「……いやまあいいけどよ。説明はしてくれよ」

 

 

 ……そうして言われた通り、職員室を出ていく平塚センセに付いて行っているのだが、結局詳しい所か簡単な説明すらない状態である。特別棟に向かっているのはわかるのだが、それ以上は何の情報もない。

 

「なあセンセ、どこ向かってんの? それくらいは教えろよ」

 

「何、君の社会不適合っぷりを少しでも何とかしてくれる場所さ。このままでは君、第六天のように大欲界天狗道を歩みかねないからな」

 

「センセ、さすがに俺も天眼は持ってねぇよ」

 

 というよりもさすがに俺の孤独願望はウンコマンになるほどではない。理想としては平塚センセと殺し愛夫婦のような一種の共依存の関係になる事だけれども、現状ではどっちかと言えば第四天か刹那くらい……あれ、これどれにしてもアカン奴?

 

 というか、俺、ボランティアさせられるんじゃなかったのか?奉仕活動ってそういう事だろ。それとも奉仕活動って何かの隠語だったりするんのか?

 

「着いたぞ」

 

 そんな事を考えながら辿り付いた場所は特別棟の教室の前。おそらくは何かの部室として使われているのだろうが、プレートにはないも書いておらず、何に使われている教室なのかわからなかった。

 

 何の教室かと聞く前に平塚センセはノックもせずに扉を開けた。

 

 

 

(∴) (∴) (∴) (∴) (∴) 

 

 

 

 平塚先生から奉仕部に無理やり連れてこられた翌日、いつもならすぐさま家に帰っている俺は奉仕部の部室へと足を向けていた。

 強制とはいえ入部してしまったのだから、顔を出すくらいはしておくべきだろう……決してサボったら平塚先生が怖いなどという理由ではない。

 とはいえ部長である雪ノ下の話では依頼人が来ない限りは特に何をするわけでもないので、二人で長机の両端を挟んで読書をしている。

 時々罵倒をされながらもこうして部室に来る俺は我ながら忍耐強いと思うね。決してMではない。

 そんな有意義とは言い難い時間を過ごしていると、部室の扉が前触れもなく開いた。そこにいたのはやはりというか、平塚先生であった。

 

「先生、ノックを……」

 

「ああ、すまない。忘れていたよ」

 

 雪ノ下が昨日と同じように注意するが、平塚先生は悪びれる事もなく、開いた扉をノックする……今さらしても遅いだろ。

 

「それで、今日は何の用ですか?」

 

「ああ、実は今日も新入部員をつれてきた。よろしくしてやってくれ」

 

「あ……?ちょっと待て。入部って何だ?」

 

 どこかで聞いた事のある台詞の後に粗暴な印象を感じる口調で疑問を呈しながら入ってきたのは長身である平塚先生より背の高い男であった。

 着崩した制服に鋭い目付は、先程の口調も相まって所謂不良のような印象を与えてくる。というかどっかで見た事あるような……?

 

「貴方、確か西大寺君だったかしら?」

 

「知り合いか?」

 

「いいえ。でも彼、ある意味有名人よ。人との繋がりがないあなたは知らないかもしれないのだけれど」

 

 会話をするたびにいちいち罵倒してくるのが地味に辛い。いや確かに知らないけどさ。有名人だからって誰でも知ってると思うなよ。

 

「2年F組、西大寺誠二。入学してすぐに暴力沙汰で停学処分になった問題児。今でも色んな人から怖がられているわ。教師とかもね」

 

 ええー……、所謂不良ってヤツ? しかも教師とかも避けるようなレベルで。総武高にもそういうのいたのかよ。というか同じクラスじゃねぇか。道理で見た事あるわけだ。

 

「その噂多分スッゲー尾鰭付いてるけどな。本職の不良に比べたらそう大した事はしてねぇだろうに。ついカッとなって机蹴り飛ばして、何人か思いっきりぶん殴ったくらい」

 

 それは大した事ではないのだろうか? というかカッとなって人殴るとかまさに不良じゃねぇか。カルシウムとか糖分が足りてない証拠だな。あれ、つまりマッ缶飲めば万事解決するんじゃ……しないよな。八幡解ってる。というか何だ本職の不良って。不良って職業なの?

 

「彼は素で世界は自分を中心に回っていると信じて疑わないほどの自己中心的思考を持った利己主義者だが、自分の利にならない事はしようともしないから安心していい」

 

「紹介の仕方ひでぇな……てか入部って何だよおい」

 

 確かに紹介の仕方も酷いが、否定をしないコイツも酷い。何が酷いってその酷い紹介をどこも否定しないって事は全部自覚してるって事で、自覚してるって事はそれらが全部事実であるって事だ。つまりコイツは相当に自覚のある自分勝手な輩だ。

 

「あと、私からの依頼でコイツの更生もお願いしたい。比企谷とは別のベクトルで社会に適合できない人間だからな」

 

「正直、比企谷君の更生だけで手一杯なんですが……」

 

 手一杯なら仕方ないから西大寺を入れる代わりに俺をリリースしてくれないものか。あれ、これ結構名案じゃないか? 今すぐにでも口に出して提案したいが、出した時の平塚先生の反応が怖い。一先ずは様子を伺う事にしよう。

 

「おや、君にも出来ない事があるとはな……まあさすがの雪ノ下と言えども仕方ないか」

 

「……いいでしょう。その挑発、敢えて乗りましょう」

 

 乗っちゃったよ。早いよ、様子伺う時間もなかったじゃねぇか。挑発限定とはいえコイツ、やっぱりチョロいぞ。

 

「では後の事は雪ノ下に任せるとしよう」

 

「いやまて。入部って……」

 

「西大寺、ついでにさっきの事も相談してもらうといいんじゃないか?」

 

「いやだから……」

 

 そうさり気ない気遣いを含んでいるであろう爽やかな台詞を、女性がしてはいけないくらいに物凄く不機嫌そうな表情で言い放ちながら平塚先生は去って行った。

 というかその西大寺ってヤツの抗議に何かしら返答してやれよ。それとも抗議は受け付けないっていう意思表示なの?

 

「とりあえず座ったらどう?」

 

「……ああ」

 

 雪ノ下の薦めに西大寺は椅子を引っ張ってきて背凭れを前に持ってくる形で座り込んだ。

 

「……自己紹介、いらねぇよな?」

 

「そうね。名前はお互いわかったでしょうし」

 

「あれ、俺除外されてない?」

 

「あら比企谷君、いたのね」

 

「いたよ。お前さっきまで話してただろ」

 

 こいつ、若年性アルツハイマーにもでも罹ってんじゃねぇのか? それとも何、記憶を消す程俺と話すのが嫌だったの?

 

「で、ここって何する部活なんだ? 奉仕活動しろとか言われたんだが」

 

「平塚先生からは聞いていないの?」

 

「何か課題出したら罰としてここに連れてこられた」

 

 ああ、俺と同じパターンか……道理でさっきのやりとりに既知観を感じたはずだ。

 

「なら簡単に説明するわね」

 

 

 雪ノ下は昨日俺にもした『魚を与えるのではなく魚の取り方を~』云々の説明を西大寺にする。というか西大寺にはクイズ出さないんですね雪ノ下さん。

 

「ふーん……つまり、ニートに上から目線で職場を斡旋するハロワみたいな感じか」

 

「そうね。間違ってはいないわ」

 

「いや、否定しろよ」

 

 その言い方だとハロワ全部が感じ悪いように聞こえるから。あと依頼人がニートとか、上から目線でとか、そこは否定しないとダメなんじゃないのか。それとも雪ノ下にとっては間違っていないのか? ……在り得る。こいつの場合、今日昨日での俺への対応を見てる限り自分以外の全てを下に見ていてもおかしくはない。あのナチュラルな罵倒が俺限定の可能性もあるが……何その特別待遇、嬉しくない。

 

「で、何でこんな部活してんのお前ら?」

 

「何でって……平塚先生に無理矢理、な」

 

「ああ俺と同じ感じか…………名前なんだっけ。まっ、いっか」

 

「……比企谷だ。比企谷八幡」

 

 まっ、いっか……じゃねぇよ。名前がわからないのはちゃんと名乗ってないから別にいいけど、それで良しとするのはおかしいだろ。せめて口に出さずに心に留めておけよ。

 

「で、雪ノ下だっけ? そっちは?」

 

「私、世界を変えたいと思っているの」

 

「……うん?」

 

 西大寺の反応は正しい。いきなりそんな事言われてまともに反応出来る奴はいない。

 

「頼るという名目で誰かに責任や負担を押し付ける。出る杭を打って優秀な人間の足を引っ張る。そんなのはただ問題から逃げているだけ。それでは問題は解決しないし、相手を押し潰してしまう。だから問題は自分で解決しなければいけない。自分を変えないといけない」

 

 問題から逃げるのではなく自分が変わるべきだと、そしてそのように意識していくべきだと、そう雪ノ下は宣言する。けれどもその意見に俺は異を唱える。

 

「だから、その変わるって事自体が現状からの逃げだろ。逃げないってのは、変わらずその場で踏みとどまる事を言うんだよ。そもそも『自分』ってのはそう簡単に変えられるものじゃないだろ。誰かに指摘された程度で簡単に変わるものなんて、そんなモン本物の『自分』じゃない」

 

「それじゃ問題は解決しない。そこで変わらずにいたら、周りも、自分も、誰も救われないじゃない」

 

 つい反論しておいて何だが、この話題に関して俺と雪ノ下がいくら議論した所で平行線になるだけなのは昨日の時点でわかっていた。

 それは雪ノ下も同じだったのだろう。言い合っていた俺と雪ノ下はどちらからという事もなく沈黙してしまった。

 

 その沈黙を破ったのは、やはり第三者である西大寺であった。しかし、その言葉は俺の予想を裏切るものであった。

 

 

 

「正直、俺からすればお前らどっちも間違ってるけどな」

 

 

 

「……あ?」

 

「何ですって?」

 

 てっきり話を変えてくるかと思えば、さらに斬り込んできた。しかも俺と雪ノ下、どちらに味方するでもなくどちらも否定する形で、だ。

 

「出来ない事を人に頼る事は悪い事じゃねぇし、その場で踏み止まる事が正しいというわけでもねぇ。単純に数が増えればそれだけ出来る事柄や力の大きさも増えるし、変わるまいと踏み止まって自身が砕けたら意味ねぇし。民主主義だろうが社会主義だろうが立憲君主制だろうが独裁制だろうが、一人じゃ何にも成し得んのは当然だし、体制が変わっても変わらずに踏み止まってれば排除される」

 

「一匹狼を気取っている貴方がそれを言うのね」

 

「一匹狼だからこそ言えるんだよ。ま、論点はそこじゃねぇけどな。正直お前らのその理屈なんてどうでもいい」

 

「……? ならあなたは何が間違っているというの?」

 

「その自分の理屈を他人に押し付けてる辺りが間違ってるっつってんだよ。変わろうが変わるまいが、逃げようが逃げまいが、その選択をした自分に満足できたんなら、それが何よりも正しいモンだろうが」

 

「待ちなさい。それは……」

 

「完全な自己中じゃねぇか、それ……」

 

 そんな俺や雪ノ下の呟きに西大寺は「当たり前だろ」と返してくる。

 

 

「他人なんざ知った事か。集団が個人より強かろうと、社会的に間違っていようと、世界がどうであろうと、俺が俺であるが故に俺の中では俺こそが唯一正しいんだよ」

 

 

 他人や社会の理屈がどうだろうと、過程や結果がどうだろうと、自分の中で正しければそれこそが何よりも正しい。コイツの主張はそんな自己愛に塗れた者であった。……それにしても俺俺言い過ぎたせいで俺の中でゲシュタルト崩壊しかけたぞ。俺俺詐欺でもここまで俺俺言わないだろうに。だが今の発言で多少であるが西大寺という人間性が垣間見えた。

 

 西大寺は自己愛に塗れていると言っても決して社会的常識を身に着けていないわけではない。世間的に何が正しくて何が悪くて、何をすれば賞賛されて何をすれば侮蔑されて、どうすれば効率よく物事が進むか、その辺りをきっちりと理解している。

 

 それらを理解した上で、そんな事よりも己の考え方こそが何よりも正しいのだと思っているのだ。

 

 極端な話をすれば、おそらくこいつは自分の命と他の数十億単位の人間の命を、あるいは自分の命と愛する者の命を天秤にかけた時、社会的にはどちらを選ぶべきかという事を理解していたとしても、葛藤する事もなく寸分迷うことなく自分の命が助かる選択をする、そんな人間だ。……まあ今のは極端すぎる話なので程度の程まではわからないがそう間違ってはいないだろう。

 

「……平塚先生が貴方をここで更生させてほしいと言った意味が少しわかった気がするわ。比企谷君といい勝負ね」

 

 雪ノ下もある程度理解したようである。しかし俺がコイツと同レベルというのは納得できない。そもそも更生の必要性を感じない俺よりどう考えても西大寺の方が更生の必要があるのは確定的に明らかである。

 

「……というか論点ずれ過ぎだろ」

 

 始めは奉仕部にいる理由だったのにいつの間にか互いの主義主張をブローし合う展開になっていた。

 

「確かに。ま、一応在籍はするけど、俺以外のために俺の労力を割く気はねぇから置物とでも思ってくれや」

 

「何を言っているのかしら。貴方も部員である以上、何より平塚先生から更生の依頼を受けた以上放っておくわけにはいかないわ」

 

 えー、と不満を垂れる西大寺を見ながら、つまり俺も勝手にサボったりしたらダメなのかとこっそりとため息を吐く。っと、そこで雪ノ下が何かを思い出したように口を開いた。

 

「依頼といえば、貴方も相談事があると平塚先生が言っていたけれど……」

 

「あー……別にいいよ。お前らに恋愛相談とか無意味すぎる」

 

「恋愛、だと……!?」

 

 おい、さっきまで言葉の端々に隠し切れずに主張されてた確固たる自己愛はどこにいった。他人の事はどうでもいいんじゃなかったのか。

 

「一ついいかしら。そこの目の腐った彼はともかく何故私まで無意味と断じられているのか説明してほしいのだけれど?」

 

 目が腐ってるのは関係ないだろ。これでも基本は整ってるって自負してんだよ。……まあ誰かと付き合った事とかないけども。

 

「だってお前ら友達すらいねぇだろ」

 

「……まずどこからが友達なのか厳密に定義してもらってもいいかしら?」

 

「……俺は平等を重んじる性質だから特定の親しい人間を作らないようにしているんだよ」

 

「そもそも親しい人間いんの?」

 

 痛恨の一撃。八幡は死んでしまった。そんな言葉と全滅のBGMが脳内に鳴り響く。まあ訓練されたぼっちである俺はそこからの復活も早く済んだ。ふと雪ノ下の方を見ると何やら「親しい人くらい……」と小声で呟きながら紅茶のカップを持った状態のまま固まっていた。どうやら雪ノ下にも痛恨の一撃は命中していたようだ。復活にはまだかかりそうである。

 

「な、ならお前はどうなんだよ。友達いんのか?」

 

「俺? 何でそんな煩わしい物わざわざ作らないといけないんだよアホか」

 

 やっぱりお前もぼっちじゃねぇか。というかアホ呼ばわりされるとか。何、お前の中でその答えは常識だったの?

 

「……それでも、あなたを更生させるという意味ではちょうどいい依頼だと思うけれど」

 

 あ、フリーズしてた雪ノ下が再起動した。多分「やっぱりあなたも友達いなかったんじゃない」という開き直りで立ち直ったんだろうな。それにしてもこの空間、ぼっち多すぎじゃない? スタンド使い並に引き合いすぎじゃない?

 

「ま、知られて困る事じゃねぇし……俺が好きなのは平塚静だよ」

 

 ……予想以上にあっさりと白状したな。自分の中で確固としてある事だからこそ知られたところでどうにもならないって事か?

 

 それにしても、平塚静……プロぼっちである俺では生活指導担当でこの奉仕部の顧問である国語教師の平塚先生くらいしか出てこないのだが、生徒にも同じ名前の人がいた事に驚く。まあ異様に生徒数が多いから在り得ない話じゃないか。いや、そもそもここの生徒とも限らないのか。

 

「平塚静……そんな生徒いたかしら……? 比企谷君は……知っているわけないわよね。ごめんなさい、答えがわかり切った残酷な質問をしてしまって」

 

 雪ノ下も知らないのかそんな呟きが聞こえてくる。というか謝られて傷つくとは思わなかった。いや実際知らないんですけどね。

 てか、全校生徒の名前を網羅しているの? なら何で俺の事は知らなかったの? あ、ぼっちだからですかそうですか。

 

「いや、生徒じゃねぇし」

 

「なら外部の人間という事かしら」

 

「いやそうじゃない。というかさっきまでここにいただろ」

 

 生徒ではない、外部の人間でもない、さっきまでここにいた……

 

「雪ノ下、今日ここに誰か来たのか?」

 

「来てないわ。私以外だと彼と平塚先生しか来ていないはずだけれど」

 

「あれ、俺今カウントから除外されてなかった?」

 

「貴方という存在を認識したくなかったから、つい」

 

 つい、で人の存在を消さないでもらいたい。

 

 しかし、となると西大寺の好きな人とは一体誰なのか……まさかエア彼女とかの想像上の人物じゃないだろうな。

 

 

 

「いやだからその平塚センセだって」

 

 

 

「「………………………………はぁっ!?」」

 

 西大寺の言葉を脳が理解するのに数秒の時間を要し、そしてその意味を理解した時、俺と雪ノ下は声を重ねながら同時に椅子から立ち上がっていた。それくらいには驚いていた。

 

「あなた、本気……!?」

 

「あの先生にその手の冗談通じないぞ……!」

 

 あの先生にそんな冗談を言えば、下手をすればその日のうちに婚姻届けを書かせて提出できるようになるまで自宅で額縁に飾って保管しかねない。その額縁に入っているのは実はコピーした奴で本物は財布とかに入れてそう。で、提出できるようになったらその日の役所が開くと同時に出しに行きかねない。それくらいに結婚に飢えている。

 そんな俺達の反応に少し不機嫌な表情を浮かべながら西大寺は反論をしてくる。

 

「おいおい、平塚センセは確かに残念だ。ラーメン食う時は豪快だし煙草はめっちゃ吸うし、どっかオッサンっぽい所もあるし、ネタ発言も多い。メールはいちいち長いし多分恋愛観も重いんだろう。そりゃ婚活もうまくいかねぇわって思う」

 

 何でコイツ平塚先生の事こんなに知ってんだ。ストーカー?ストーカーなの?いやでもさっきの先生との様子を見る感じだと普通に仲好さそうだったよな。って事はプライベートでそういう仲のいい付き合いしてるって事か? てか平塚先生も実は満更でもないんじゃないか、これ? それにしても平塚先生ダメな所多すぎだろ。こんなに指摘しておいてなお好きとかコイツ相当な物好きじゃねぇか。もういいから貰ってやれよ。

 

「でもな――――」

 

「――――ほう……君は私をそう思っていたのか……」

 

 ……その時、西大寺の言葉を遮るようにノックもないままに扉が開かれ、恐ろしいまでに無表情の平塚先生が入室してきた。

 

「…………どこから聞いてた?」

 

「私が残念だ、という所からだな」

 

 てっきり西大寺の愛している云々辺りから聞かれてるかと思ったが、そうではなかったのでホッとした。そこから聞かれてたら俺にまで怒りの矛先を向けられかねない。だけれどもそれは逆に言えば西大寺が平塚先生を貶している辺りしか聞いていないという事で、このままではまずい事になるのではないか。その証拠に平塚先生の右拳がミシミシと音が鳴る程の力で握り締められていき、唸りを上げるのを今か今かと待っている。指の閉じ方からして衝撃の……?

 

「違うぞ。話には続き、というか前部分があって……」

 

 西大寺も危機に気付いているのか、椅子から立ち上がり距離を取ろうとしているが、平塚先生の拳が解かれる事はなく、腰溜めに引き絞られ、そして放たれた。

 

「――――問答無用ぉぉ!」

 

 渾身の腹パン・バースト。相手は死ぬ。

 衝撃とか撃滅とかを超えて、もう向こう側の世界に触れちゃってるよ、あれ。てか教育的指導の域を超えてると思うんだが……というか今回のは教育全く関係ない私怨での一撃だし。

 

「私だって好きで結婚してないわけじゃないんだよぉぉぉ!! うわぁぁぁん!」

 

「ま……待……て……」

 

 西大寺の弁解を聞くことなく、泣き叫びながら教室から飛び出していく平塚先生。

 それを止めようにも追いかけようにも、先程の一撃で立てない西大寺は無様に這い蹲るしかなかった。

 その様子を見ていた俺と雪ノ下はそれぞればつが悪そうな表情を浮かべながら口を開いた。

 

「その……何と言えばいいか…………悪かったわ」

 

「…………てかお前、もう貰ってやれよ」

 

「おう……そうする……」

 

 

 

 

……こうして奉仕部に一人のぼっちが加わった。

 

 





……続かない……


オリ主の簡単な設定

西大寺誠二
誕生日:3月2日
血液型:B
座右の銘:俺は俺故に唯一絶対



以下、裏話もとい無駄話


本来であれば原作未読の作品で二次創作をするべきではないのでしょうが、平塚先生への愛というか何かが溢れてきたので今回書かせていただきました。


当初、オリ主は平塚先生の事が好きなボッチ系生徒という設定だけで書き始めたのですが、キャラ付けの際に……

関西出身で関西弁を話すキャラに→八幡やゆきのんとは違うタイプのボッチ……不良系で→不良系ぼっち……他人嫌いな一匹狼にするか

……以上のような流れで、滅尽滅相もとい大欲界天狗道系主人公となりました。どうしてこうなった……!?
(なお一人称で関西弁だと読み辛くなったので関西弁は没になりました)
ただ波旬レベルでの自己愛だと平塚先生がヒロイン出来ないとかじゃなく物語として進まないので、少しはマイルドにしています。それでも相当な自己中にはなっていますが。
オリ主の外見に関しては背は平塚先生よりも高く、見た目は不良っぽくて、目付きは悪いくらいにしか考えていませんので、その辺りは自由にイメージしてもらっていいと思います。ちなみに自分のイメージは浅黒い肌で逆立った金髪の細マッチョ。……筋肉付けた波旬ですね。


なお自分の脳内では、

・入学後にオリ主に絡んできた被害者は戸部君で、オリ主を見ると声を上げてビビッてしまうくらいに苦手意識を植え付けられている
・不良繋がりとこじつけられて川なんとかさん関係の依頼を押し付けられ、少し仲良くなる。ただし恋愛フラグは建たない
・オリ主、何だかんだで奉仕部を自分のテリトリーとして認める。自己愛(笑)
・多分告白は修学旅行の京都あたりで、夜に二人で抜け出してラーメン食べたりしてる道中で、色々と我慢できなくなったオリ主が平塚先生を抱きしめて「お前が欲しい」とか男らしく攫って行く

……などと色々と妄想してます。書く予定はないです。

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