「遂に出たで。みんな情報共有はしとるな?」
なのは達未確認生物対策部には暗雲たる雰囲気が立ち込めていた。遂にである。例の不審者通り魔で行方不明者が出たのだ。
「行方不明者はStヒルデ魔法学院の中東部2年生。名前はプリウス・カローラちゃん。塾の帰りに例の不審者に遭遇し、緊急信号を発したままのデバイスを残して消息不明。現場に争った痕跡は見られず。防犯カメラの映像は無し。隙間を狙われたな。」
「来たか。他の情報は。」
「なんも無し。残ったデバイスの録画は他の例と同じく襲われる映像と・・・・・・手を掴まれて連れ去られる映像だけ。」
「どうしよう・・・」
「どうしようも何も。マクリル特尉、何か感じることはあるかいな。」
「おかしいリル。ウラメシーナだという確信はあるのに全く気配を感じないリル。」
「それは距離が離れてるからわからないというのでは?」
「ティアナもわかるように説明すると・・・基本的にウラメシーナなは人を襲うリル。だから人の近くにいるはずなんだリル。もし人のいないとこに隠すのだとしたら・・・・・・それは存在の消滅を賭けて隠すことになるリル。これだけの頻度で襲っているのにそれはあり得ないリル。絶対近くにいるのに気配を感じない・・・特殊なパターンのウラメシーナリル。初めてリル。」
「プリキュアに探させるというのは出来ないんか?」
「出来る出来ないで言えば・・・・・・出来るリル。でもそれは例えばなのはを現場に連れ出さず事務作業に徹する様指示するような物リル。」
「あー・・・なるほどな。」
「プリキュアは戦士であるから・・・そういう事は基本妖精であるマクリル達の仕事なんだけどリル・・・・・・」
「うーん・・・標的にしてる基準もわからないから囮捜査もしづらい・・・・・・ほんと厄介だな・・・・・・」
「完全に成長しきって妖怪化した後に倒す、という手段も無いことには無いリル・・・・・・」
「だがそれまでにどれほどの被害が出るんだ?」
「正直未知数だけど十数人じゃ済まないことだけは確かリル。」
「そんなの待ってられないよ!!」
「わかってる・・・だが対策が思いつかない・・・」
「ううーむ・・・」
今日も会議室で紛糾しながらウラメシーナ対策を考える。が、あまりにも未知数過ぎて何も良い案が生まれてこないという悪循環に陥っていた。
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「しろかねージュース飲む?」
「飲むカルー」
「しろかねーカステラだよ。」
「わーい!」
あたしはミッドチルダに帰ってきたんだけど・・・特にやる事が無い。魔法の訓練はなのはさんが忙しくて出来ないし、プリキュアの事もウラメシーナが出てこないと出番が無い。うーん自分でも探した方がいいのかな。
「しろかねこの前の妖怪の事ってやっぱわからないの?」
「ウラメシーナの事カル?しろかねもあんまりよくわからないカル。」
「うーん。」
「ヨシコはママから何か聞いてる?」
「えっと・・・・・・狙われてる人もまちまちでおじさんからお兄さん、ヴィヴィオくらいの子からおばあちゃんまでいるって。だからもうミッドチルダ中に不審者注意報を出すくらいしか対策が無いって言ってたなー」
「そうなんだー」
「あんまり外出しないように言われてるけど・・・あたしプリキュアだし、見回りとかした方が良いのかなー」
「変身してるならいいけど変身しないで歩いてたら補導されちゃうよ。」
「そうなんだよなー」
難儀だ・・・・・・変身してパトロールしようにもウラメシーナも何もいないところで変身しようとしたら出来なかったし。リリカルコミューンももうちょっと融通が聞いたらいいんだけど。
「とりあえず晩御飯はデリバリー頼むしかないね。ヴィヴィオ何にする?」
「うーん・・・ピザにしよう!」
「おっけー!!」
「ピザって何カル?」
「えっとねー丸い生地の上にいろいろ具材を乗っけてね。」
「見ればわかるよ。」
「へー」
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「イヒ!イヒヒヒ!」
どこかの廃屋で、じゃらじゃらと小銭を掻き集めては掬って、落とす。 顔の無い異形の怪物、ウラメシーナ。それを見つめる首の長い妖怪、牛の頭を持つ妖怪、幽霊のような妖怪がいた。
「大丈夫・・・・・・なのか・・・・・・こいつは・・・・・・」
「でもねぇ・・・・・・一応は力を付けているんだよ。」
「コイツ、チカラヅク、シナイ、ウマイ。」
廃屋で小銭を弄ぶウラメシーナを訝しげな視線で見つめる三妖怪であったが懸念はそれだけではなかった。
「それで・・・・・・こいつ・・・・・・どうする・・・・・・?」
幽霊の妖怪が指差したのはウラメシーナが攫ってきた少女。人を食う事もあるウラメシーナだが、この 顔の無いウラメシーナは少女を連れてきて、持ち物を多少漁っただけで放置。三妖怪達は困り果てていた。
「どうするも何も・・・・・・」
「クッテイイ?」
「やめときなギュウキ。こいつが何か考えがあってやったんだから。」
「ウヌ・・・・・・」
「でも・・・・・・こいつ・・・・・・何もしない・・・・・・」
「イヒヒヒ!!!イヒ!!!イヒヒヒ!!!」
ウラメシーナがすっくと立ち上がると異様な歩様で廃屋を出ていく。次の獲物を探しに行ったらしい。
「・・・。」
「レイリン、ギュウキ。もうここは任せて行くよ。ノーメーンも作らなきゃいけないんだから。」
「ワカッタ・・・・・・」
「はいはい・・・・・・」
三妖怪は闇に溶けるように消えた。廃屋には大量に積まれた小銭と少女が放置されていた。
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一方、未確認生物対策課、会議室。
「何?被害者の共通点が見つかった?」
「せや。」
「それはいったい何だ。」
クロノがタブレットを持つはやてに尋ねる。ティアナも目を見張る。今回の被害者に何か共通点が見つかるなど微塵も感じられなかったからだ。
「共通点・・・って言って良いのかどうかってくらいなんやけど・・・被害者48人全員に事情聴取した調書を調べてたら見つけたんや。」
「それで?」
「この48人全員、サブウェイで3ヶ月以内にスリにあっとる。全員。」
「・・・それで?」
「それだけや・・・」
クロノがふぅとため息を吐く。もっと・・・重要な共通点かもと思っていた節がある。
「ならスリにあった人物を探して注意喚起すると?」
「それも難しい。全員財布ごと盗まれたんじゃなくて財布に手を突っ込まれて少額スられる事件なんや。そもそも気づいてない人が多すぎる。」
「というか、小銭を持ってたのか?この電子通貨最盛期のこのご時世に?」
「そうみたいやな。それでや!その48人に不審者推定ウラメシーナに襲われた時に小銭持ってたか?って聞いたらビンゴ。襲われた時も小銭持ってたそうなんや。」
「ふむ・・・」
「襲われた時にまた盗られたかどうかはわからへん言うてたわ。」
「わかった。じゃあ・・・攫われた子はどうして・・・」
「わからへん・・・・・・でも一歩進展やと思う。おそらくその子は何かしらウラメシーナの気を引く物を持っとったのは確かや。」
「会議中失礼します!!」
「どうしたティアナ。」
「首都航空隊から行方不明の少女を保護したとの連絡が来ました!!!」
「はやて。」
「了解。行ってきます。」
⏰
はやては少女が運ばれた病院に辿り着いた。話を聞く限り怪我は無く健康状態は問題ないらしい。陸上警備隊の聴取を受けた後だが自分もとねじ込み、少女に事情聴取することにした。
「ごめんなぁ何度も何度も。」
「いえ。」
「それで襲われた瞬間はデバイスで確認しとる。攫われた後の事を聞かせてくれな。」
「はい・・・えと、廃屋で目が覚めて。」
「うんうん。」
「周りに誰もいなかったので・・・・・・服とかに乱れは無かったんですけど持ち物が荒らされてて・・・・・・小銭が置いてあったのでそれを持って、歩いて公衆電話のとこまで行って、通報して、航空隊が来てくれて・・・」
「そかそか。廃屋の様子はどうやった?なにか変なとことか無かった?」
「えと・・・・・・小銭、小銭がたくさんあったんです。床の上に粗末に置いてあって・・・・・・」
「小銭・・・・・・そかそか他には?」
「他は・・・・・・その・・・・・・あんまり、余裕が無くて、覚えてなくて・・・・・・」
「そかそか。怖かったもんな。今日はこの辺にしとこな。これ私の連絡先。何か思い出した事があったら連絡してな。」
「はい・・・・・・」
「私じゃ話しづらかったら警備隊の方でもええからな。」
「は、はい。」
「それじゃ今日はこの辺にしとくな。お大事に。」
はやてが病室を後にする。だが、この後すぐ、病室に何者かが侵入し、少女を再び連れ去ってしまうのだった
「ウラーーーーーーーーーー・・・・・・」
つづく