東方白夜王   作:ザイソン

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吸血鬼異変 序

博麗の巫女は前も述べた通り完全世襲制ではなく人里で拾うか世襲だったりする。

 

そして現在。外の世界では平成という元号に変わり、日本は世界有数の経済大国になった。

 

巫女が代替わりし、新たな巫女が誕生した。名を博麗霊夢という。

 

霊夢は歴代博麗で唯一白夜叉と白雪姫を呼び捨てで呼んだ。白雪姫は怒ったが白夜叉が霊夢のあり方を良しとしたため白雪姫も黙った。

 

そしてトップクラスで天才だった。初代博麗の零華に匹敵する素体を持ち、それだけの能力———"空を飛ぶ程度の能力"がある。

 

単純でそこまで強く見えないかもしれないが実はそうでもない。

まず、"空を飛ぶ"事に関しては天狗以上の実力をもつ。減速なしでUターンしたり直角カーブをする。これは白夜叉も舌を巻いた。

そして、"空を飛ぶ"ということはあらゆる事象から"浮く"ということである。すなわち、"全ての事象から浮いた"状態の霊夢には誰も干渉できない。白夜叉でも容易にてが出せない領域に入る。もし霊夢が人間でなかったならばザッハークの"アヴェスター"で干渉できたかもしれない。

 

修練を積めばおそらく零華に並ぶほどの実力を得るだろうが霊夢は努力をしないため零華の"人間最強"の域には入らず、"最強クラスの博麗"の域に収まった。

 

「もっと修練を積めば私を倒せる英雄となり得た可能性も十分にあるのだがな」

 

ザッハークは白夜叉と神社で将棋を指しながらそう呟いた。

 

そこにお茶を二つ持ってきた霊夢が文句を言った。

 

「なに馬鹿なこと言ってるのよ。努力してあんたに勝てるわけがないでしょ」

 

ザッハークの前にお茶を置き、もう一つのお茶を飲む霊夢。白夜叉の分は無い。

 

「いや、倒すために努力せねば人類に未来はなにのだが・・・ぬ、ずっと盤上で特に何の役割を持っていなかった角行がザッハークの一手で最重要駒になったの」

 

パチリパチリと駒を指す音が神社に響く。実はこんなことしている場合では無いというのに。

 

「あんたね・・・こいつを呼び出した理由忘れているわけじゃ無いでしょうね?」

 

「まだ焦るほどの事態ではないだろう?とは言ってもいつまでもこうしているのはつまらないか。ザッハークよ。おんしも知っておるだろう?霧の湖の近くに出現した真紅の館を」

 

「無論だ。双頭龍に秘密裏に調査させたがどうやら吸血鬼の館のようだ」

 

この館の主人の吸血鬼は幻想郷に対して宣戦布告をした。幻想郷の妖怪は人間を容易に襲うことが出来なくなり不満を持ち吸血鬼の支配下に入った。吸血鬼が力で屈服させた妖怪もいる。

真に白夜叉の恐ろしさを知っている妖怪の山の妖怪、そもそも地上に出てこない地底の妖怪を除いても、吸血鬼は現在幻想郷の過半数の妖怪を支配下に置いている。

 

「別に私が全員叩きのめしてもいいのだがここで一つ、私以外にも強力な輩が居ることを示しておこうと思っての。おんしに妖怪の大軍の相手を頼みたい」

 

「それは構わんが、ディストピアやコッペリアは?」

 

「ディストピアは既に人里の防備を頼んでおる。あの壁は吸血鬼程度では破れんだろう。コッペリアは別に本人が驚くほど強いわけではないので声はかけておらぬ」

 

「ふむ、そうか。ならば私一人で相手をするのか?」

 

「一応白雪も一緒だ。しかしザッハークの"アヴェスター"があれば妖怪なんぞ十把一からげだろう」

 

白夜叉は笑いながらそう告げた。

 

「私は直接館にカチコミに行く。吸血鬼の目的が幻想郷の支配であるならば現在の幻想郷の頭である私が叩きのめした方が良い」

 

その話を聞いて霊夢はつまらなさそうな顔をした。

 

「なによ。話の流れだと私だけ留守番じゃない」

 

「当たり前だ。霊夢にはまだ早かろう。経験をあと二、三年積めば別だがの」

 

あっそ、と霊夢は呟いてスタスタ歩いて行った。

 

「全ての妖怪を私が相手をすると行っても取りこぼしがある。その上神社に貴様はおらず霊夢のみだが?」

 

「抜かりはない。紫が地底より実力者を連れてくるそうだ。まぁ、どうせ弥彦だろうがの」

 

「あの鬼か。ならば問題あるまい」

 

ザッハークはそう言って将棋盤を片付け始めた。今回は白夜叉が勝ったようでこれまで五分五分の戦績である。

 

「さて、時間もいい。そろそろ紫の準備も整う頃になっただろう。手筈通りに頼む」

 

 

 

 

霧の湖・館前

 

夜の闇と濃霧に紛れて白夜叉は館の門付近に潜伏した。

 

夜空には妖怪の紅い目が星のように光っており門を通らず上から見つからずに通るのは不可能である。

 

地上の門には中華風の服装をした、龍の一文字のマークがある帽子を被った女が1人。おそらく門番だろう。

 

(人間・・・に見えるが妖怪だの。ぱっとみ人間にしかみえぬ。種族は・・・見た目では判別付かんの)

 

いつもなら正面を堂々と笑いながら突撃していく白夜叉だが今回初めてメタルギアよろしく見つからずに進むのもまた面白いかと思っている。

 

白夜叉は考え抜いた挙句、スコップを取り出して地面を掘り出した。モグラのように地面から侵入するという作戦である。

 

ちょうど白夜叉が門番のすぐ下に差し掛かった直後、

 

門番はその拳を地面の下に叩きつけた。

 

その細腕からはとても考えられないような怪力。鬼ほどでは無いがかなり力が強い。

 

白夜叉は驚き地面から這い出る。

 

「ふむ、気配は完全に消したと思ったがの?」

 

「貴女がさっきから覗いていたときから気づいていましたよ?私の能力は"気を使う程度の能力"ですから」

 

気とは。東洋では生命のエネルギー、万物が等しく持つもので妖力や霊力とはまた違ったものだ。わかりやすくいうなら某サイヤなバトル漫画で使われるもの。

 

門番は気を探ることで白夜叉を感知していたのだ。

 

門番は武術家らしく、隙のない構えをとった。

 

「ふむ、いい構えだの。一朝一夕でできる技ではない」

 

白夜叉は一応、武術の心得があり並みの武術家であるならば敵ではないが相手は達人である。

 

「おんし、名前はなんという?」

 

「・・・紅魔館 門番。紅美鈴です」

 

「なるほどの。ここは紅魔館というのか。私は白夜叉。またの名を白き夜の魔王、白夜王」

 

「貴女が・・・この幻想郷の頂点に立つという」

 

白夜叉は無言で頷いた。

 

「できることなら今すぐに降伏して欲しいのだが・・・すでに数名の大妖怪が動き出した。このまま幻想郷の住民として穏やかに暮らして欲しいのだが・・・」

 

白夜叉の目の前には美鈴の蹴りが迫っていた。それを後ろに一歩下がる事で避ける。

 

「降伏はありません。お嬢様が負けない限り」

 

「ならばおんしを倒してそのお嬢様とやらをぶちのめしにいくかの!」

 

白夜叉は瞬く間に美鈴の懐に入り蹴りあげようとする。

それを左に交わして白夜叉の鳩尾に重い拳をたたき込もうとする美鈴。

仰向けに倒れ込むようにして避け、そのまま片手で逆立ちになり、下から真っ直ぐ突き上げるように美鈴を蹴り上げた。

 

顎を蹴り上げられた美鈴は軽い脳震盪を起こすが気合で気絶を回避。

体制を即座に立て直し拳を白夜叉の顔面に突き出す。それを白夜叉が両手で受け止めたところで美鈴は当てた拳を押し込んで相手のガードを下げさせ、左の拳を顔面に突き出した。

 

白夜叉は己の顔面に拳が当たった刹那、美鈴の腕がパンチで伸びきっている事を視認し、自らの首を支点にし、クロスカウンターのように外側から腕を叩き付けて肘を折った。

 

「痛ッッッ!」

 

美鈴はわずかに苦悶の声を溢したが闘志は消えていなかった。

 

腕を折られた直後に白夜叉の正面に屈み込み、そして残った片腕で股をすくい上げるように相手の身体を抱え上げて投げ、相手の胸に自らの膝を当てながら、体重を乗せて地面に叩き付けた。

 

それを白夜叉は済んでのところで膝を掌で受け止めておりダメージは少なかった。

 

「少し焦ったぞ。いや、すごいの」

 

白夜叉は美鈴が体制を立て直す前に紅魔館の壁に向かって放り投げた。

 

美鈴は壁を蹴って空中に飛び上がった。それが下策だった。

白夜叉は空中に追い込んだ美鈴に両足で頭部を挟み潰すように強烈に蹴り、挟んだままの頭部を地面に叩きつけた。

 

そのまま美鈴は気絶してしまった。本来ならば死んでいてもおかしくない。気絶で済んだのは美鈴が頑丈だったからだろう。

 

「斉天大聖までとはいかずともかなりの達人だったの」

 

白夜叉は気絶した美鈴を壁の下に移動させ、門をくぐった。

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