なんだろう、これは。
 そう呟いて、眼前に広がる桃色の花びらに視線を奪われて。
 ゆっくりと手を伸ばして、それが桜の花びらだと思いだして。

 なんで忘れていたんだろう。

 そんな気持ちより。

 なんて忌々しいんだろう。

 そんな負の感情が溢れてきて。

 思いつめて、自分に自己嫌悪して。

 いつもそうだ。

 人が綺麗というものを醜い思い、人が羨むものを否定し、ずっとずっと自分が満たされることがないことを自覚して。
 何度、何度、何度。
 少しだけ信じられた女性を信じて、彼女のために戦い、戦い、戦って。
 そして気付けば二つもの、人々から『憧れる』称号を手にしてしまって。
 手の平に残る桜の花びらを、彼は握りつぶした。



 『騎士』と呼ばれる、カテゴリー5に選ばれた少年の物語。


 D.C.Ⅲ M.K.S“魔法と霧と、桜と騎士と”
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