「聞いたことがあるか―――告死鳥の啼かす声を」
噂の始まりは決まってその一言だった。
誰が始めたかわからない不明瞭な噂話
= 告死鳥が啼く声を聴いた者は生きて戦場から還ってくる事は出来ない。 =
西暦の時代。
女性しか操れないマルチフォーム・スーツ『インフィニット・ストラトス』によって世界は混迷へと誘われた。
女性が男性を虐げる時代は戦場へと広がるが、それは一つの伝説によって阻まれていた。
―――告死鳥伝説。
これはその伝説たる少女達の物語の一片…
過去に書いていたISとSRWのクロスとは別物の小説です。
元ネタはスパロボOGのスピンオフ作品のアレですので。
告死長戦記は個人的に好きな小説ですしゲシュテルベンもカッコいいですからね。
ちなみにキャラに見たことのある名前がちらほら居ますが、そこはまぁ…ね?
最後には勝手ながらプロフィールとかを書きましたので、そこも是非。
では。久しぶりのスパロボクロスのIS小説、スタートです。
「聞いたことがあるか―――告死鳥の啼かす声を」
噂の始まりは決まってその一言だった。
何処かの誰かが吹かし始めた不明瞭な噂話。
真実が偽りか定かではない戦場に伝わる伝説。
それが何時、誰が言い始めたのかは誰も分からない。噂というのは誰かも分からない
しかしそれとは裏腹に伝説は明確なもので、決まった台詞の後は決まった話が作られるのだ。
「なんだそりゃ…?」
「色んな戦場で実しやかに語られる伝説さ。今じゃ軍人だって知ってる話だ」
切り出された噂話を聞き、興味深そうな顔をして話を聞こうとするがそれ以前にそんな話は聞いたことが無いと当然の事を口にする。
「……聞いたこと無いな」
「なんでも、その鳥の鳴き声を聞いた奴は生きて戦場から還る事ができない話だそうだ」
「は?」
伝説を聞いた瞬間、抜けた声で当然の疑問に当たり話をするほうへと訊ねる。
「なんで聞いた奴が死ぬ伝説が今も伝わってんだ?」
「さぁな。多分、その声を聞いた奴が居て、偶然出くわさなかったってだけじゃないのか?」
「………なのか?」
「さぁな。聞いた話しだし、詳しくも教えてくれなかった」
「………。」
冷静に考えれば可笑しい事だ。
『告死鳥の啼かす声を聞いた者は生きて還る事はできない』と確定した事だというのにその話は実しやかに伝えられている。
話た相手のように偶然その声を遠くから聞いていたというのならまだ分かるが、それでもまだにわかに信じがたい話だ。
「ただ…その伝説に面白い話があってな」
「ん?」
そんな与太話を面白いと思う相手の気も知れるが、別に聞いて損はないだろうと思い冗談半分に耳を傾ける。
ここからが面白いんだ。
そういった顔をして語る相手の笑みを見ながら顎に手を置いて聞き続けることにした。
「告死鳥が飛んだ場所には、決まって死人が出てくる」
「死人?死んだ奴が?」
「ああ。誰かはその死人は告死鳥が産み落とした奴らだって言い張るけど、それはどうにも信じられない話でな」
「…そりゃな」
「まぁ言いたい事は分かる。だが、その死人は役割を終えると消えるのではなくどこかへ飛んでいくんだ」
「飛ぶ?浮くんじゃないのか?」
「ああ。その偶然聞いた奴が、なんでも強い突風が起こったとかで…で。そいつは多分飛んでいったんじゃないかって」
少し目が泳いでいるのに気づく。
ここまで来たら当然の疑問が浮かび上がり、しかめた顔をして話し相手へと問いを投げる。
噂話ということで多少は我慢できたが、ここまで来るともう考えられる事はひとつだけだ。
「………お前、それ本当に聞いた話なのか?」
「…仕方ないだろう。聞いた相手は本当にそれだけだったと言ってるし、嘘をついてるかどうかも確かめた。悪いのはどちらかというとこのいい加減な話を持ち出した奴だ。こっちじゃない」
聞いた話が事実そんな感じであったし、話したほうも冗談半分で殆ど覚えていない話だ。虚実を混ぜようにも話がいい加減であるし、そもそも聞いたほうと同じことを疑問に思い訊ねたことがある。
その結果が持ち出した人物のいい加減な回答。真意も分からずの不明瞭を軽くジャンプして飛び越すような勢いの噂話が誕生したということだ。
「――第一、そんな事あるのか?告死長の啼く声を聞いた奴は生きて還れないって話」
「さてな。真意は定かではないが、そんな話はあちこちで聞く。現に、これに近しい話を聞いたことが何度もあるからな。それも一箇所ではなく複数の地でだ」
「………。」
「信じるか否かはお前が決めろ。私は…少なくとも半分は信じないと決めている」
「……じゃ。俺も冗談程度にって事で」
そうして、どこから齎されたか定かではない与太話をつまみに話していた織斑一夏とラウラ・ボーデヴィッヒは夜の深けた中でただ二人、笑い事のように話を続けたのだった。
どうせ何処かの誰かが捏造した話か、定かでもない噂を元に作った出鱈目だろう。
そんなことを思い、彼らは法治国家の中で三年という短い学生生活を謳歌していた。
その伝説”告死鳥伝説”が真実であると知らずに――――――
◇
ポストアポカリプス、というのだろうか。
世界が荒廃し、人類が必要以上に築き上げてきた人類社会がその一瞬で終焉へと至ってしまった大地。
その気になればモヒカン頭の男たちが奇声をあげて徘徊する世界が…もしかしたら完成するのだろう。その場合は御免こうむるが。
しかしそれに近しい光景。それが現在目の前に広がっているとすればそう思うほか無いだろう。
破壊された家屋、壁にめり込んだ弾丸、血と死臭そして硝煙のニオイ。
最後のがくればそれも考え物になるが、それでも目の前にある光景が変わるわけでも状態が変化する訳もない。
荒廃した世界。それが今目の前に映る全て。
そしてその世界にばら撒かれた不釣合いな物――
その世界が地獄であるかのように至るところに撒かれた無数の黒い十字架。かつて戦場と呼ばれていた場所は一瞬にして墓地のような風景に変わり果てていた。
そしてその中に置かれた四つの棺桶。それが死人のゆりかごだ。
死した者達がこの世へと蘇るための箱舟。しかしその中身は既になく、棺桶は半開きだったり蓋が近くに倒れていたりとそれぞれだ。
既に外に出ている。それは誰の目からも明らかだ。
だが棺桶の中から現れるのは
この世に生きる存在ではない死人だ。
「………ふぅ」
小さく疲れた溜息を吐き心身の疲労をほそい肩に乗る。
何度も経験したことではあるが、それでも平等さもない疲労には毎度溜息がつき物になる。特に、この後の事、を考えると少女の顔は憂鬱なものになり更に深い溜息に繋がる。ある種のループだ。
だが、そう悲観している時間も永くは無い。
この後を考えれば尚更。ならば、それまでにできるだけ沈んだ気を取り戻すだけ。
疲れ切った顔をする彼女は、自分の右手が握る一本の長い剣を持ち上げると品定めでもするかのように剣を見始める。
「……うん。悪くは無いかな」
その言葉の前後に付け足すことはない。
間もおかずに呟かれた言葉が、彼女が右手に持った実体剣への感想の全てだった。
僅かに血と油にまみれた剣は鉄分のにおいを纏い、鼻を刺激する。何度もにおったものだがそれでもというべきなのだろうか、鼻へとその鉄と僅かな生肉のニオイが入ると身体の神経が反応し骨の芯を刺激する。身体中に快楽物質が分泌されて毛が逆立ち、僅かに頬が緩む。
「ただの剣だけど…そっか。切れ味はいいか」
ただの鈍らかと思っていたが、存外にも切れ味のいい剣に上機嫌になる。企業が作った剣というものは大抵は量産性を考慮して切れ味というのが悪いものが多い。
どうしても切れ味をよくしたいのなら自分で磨げ。それが企業から使う者達への返答だ。
だが、今彼女が持っている剣はそれとは違い極めて扱いやすく且つ切れ味がいいという物、刃物などの接近戦武器を好む彼女には嬉しい一品だ。
「――――なに血まみれの剣に見ほれてるの?」
「………。」
しかしその姿は傍から見ればその台詞通り。血と油が付いた人や機械を切り裂いた後の剣だ。本人も分かっていることだが、改めて他人から言われると気分が悪い。
への字に曲げた口がやがて舌打ちに変わり、後ろに立つもう一人の少女へと向けられた。
「終了時間までの一分間、それみて自分にうぬぼれでも……ま、するような性格でもないか」
「………。」
「心配しなさんな。別にどうこう言うのもないし。いつもの事だから」
「ッ………!」
癇に障る台詞に青筋を立て、後ろから軽口を叩く彼女に切れ味抜群の剣で三枚に下ろしてやろうかと思っていたが、それは間に合わず彼女達の
浮かび上がったモニターから設定された時間が零になったのを確認した二人は、自身たちの
彼女達
戦車及び装甲車、二十二台
戦闘ヘリ、十二機
旧式陸戦型パワードスーツ、八機
他、その爆発に巻き込まれた兵士数十名
そして。その戦力を殲滅戦と派遣されたマルチフォーム・スーツ、通称「IS」三機。
それをたった数十分という時間の間に全て撃破し自陣営の被害は零。まさに驚異的ともいえる戦果を彼女達はこの日あげたとになる。
が―――
「けど、その戦果って全部他の士官のに変わるんだよなぁ…」
帰還一番に開口すれば最初に出てきた言葉は他でもない愚痴だった。
髪を解き火照った身体から滴る汗を拭き取るタオルを首にかけた少女リェータは薄着ともいえるISスーツ一枚に身体を冷やさないようにと序で半分にもってきた上着を腰に巻きつけ投影式のモニターが表示されるタブレット端末をミニテーブルに置きながらそう呟く。
独り言のように喋る口調ではあるが、彼女の場合ほぼあからさまに周りに聞こえるように声を出して喋っていたようで、それは室内に居るほかの三人の少女達にも聞こえていた。
銀色のクセッ毛のロングヘアーをソファから落とし、気だるそうに三人ほど座れるソファを占拠するレナは気だるげな空気を漂わせながらも規則的な呼吸で睡眠をとる。
その隣では栗色のサイドテールを肩に乗せ軽食を取るフランは、軽食をかじり食べかすを頬につけたまま黙って噛み続けていた。
そして。週刊誌をアイマスク代わりに同じく睡眠をとろうとし先ほど彼女が三枚に下ろそうかと考えていた少女、クロウはクスクスと笑いながら週刊誌…だと思っていたアダルト雑誌を取り、レナと同じくクセのある黒い髪を見せつつリェータを見た。
「今更そんな事をいうか?」
「………。」
「今に始まった話じゃないだろ?それは」
アダルト雑誌を閉じてミニテーブルに置くと自分の持ち物であるタブレット端末を起動しなにかの作業を行い始める。
彼女のことだ、やることは一つだけだ。と内心で決め付けるとまたも口をへの字に曲げて不服そうな表情をする。
付き合いが長い相手ではあるが一向に彼女に対して慣れというものを持つ事が出来ないのはクロウという人物を知ってから付きまとう課題と問題だ。
だが、彼女にはもう一人その問題と呼べる人物が居る。
「なんや、今更出世したいなんて言いだしたいんか、リェータは」
「……違う。違うけど…………」
「―――『アタシは今日みたいなチンピラテロリストを倒したのがアタシ達だっていう事を知ってほしいんだ』………か?」
「な……!?」
挑発的な態度で話すフランにまたこいつか、と苛立ちつつもそれを抑えて呟く。
だがリェータの本心を見透かしたかのように次にフランは彼女の真似をしているつもりで、考えていただろう台詞を演技つきで喋りだした。
それには思っていた本人も驚き、声を裏返す。
「ハッ…そりゃ無理やて。わかっとるんか?自分がどんな状況に置かれてんのか。ウチ等は極秘裏に動かなアカンっていう立場であってやなぁ…」
「……そうだね。アンタは数えるぐらいしか戦果ないから隠したいよね」
「なんやて!?」
しかしリェータも黙っておらず持ち前の口の悪さを利用しフランが薄々と気づき、気にしていたところを的確に突く。しかもかなり挑発的態度でだ。
「いつも思うんだけどさ、なんで鎌なんて持ってるの?アンタの役割って機密保持とアタシ達への補給でしょ。要らなくない?」
「うっさい!万が一お前等の暴れ線突破された場合の時のことをやなぁ…!!」
「あーはいはい、要は言い訳ね」
「ッ―――!!!」
怒りが頂点に達したフランは手にしていた軽食を強く握り締め、そのままミニテーブルへと叩き付ける。軽い挑発に怒りを見せた彼女を見てクロウは頭を抱えると二人を止めにかかろうとするが、それよりも速くタッチの差でフランが怒りで火蓋を切った。
「表に出ぇ!!このすっとこどっこい!!お望みどおりその鎌で首きったるわ!!!」
「上等じゃない、先にアンタのそのふざけた髪を斬って上げる…!!」
「あーあ…」
双方怒りの顔で額をぶつけ合い、骨と骨を打ち鳴らす。更にそこを退かないために腕を支点にして体勢を維持している。些細な喧嘩ではあるが、二人の力を考えるとクロウは無意識にその支えになっているミニテーブルのほうを気にしてしまう。
だがやっぱり喧嘩は止めなくてはならないかと思い彼女らの仲裁に入ろうとするが、毎度行われる喧嘩に止めるべきか否か、入れるかどうかさえも考えてしまう。そう考えるとクロウの
「………また喧嘩ぁ?」
眠気を纏いつつも苛立った様子で目から冷めたレナは安眠を邪魔された不機嫌さで原因たる二人のほうへと目を向ける。
当の二人は現在進行形でにらみ合いを続けており、ダルそうにそれを見ていたレナは安眠妨害をする二人には聞こえないくらいの声で再び眠りに付こうとしていた。
「…喧嘩なら他所か甲板でやってよね…」
「寝ること以外考えんやっちゃなぁ…」
「低血圧です…」
低血圧と言ってもレナの場合、寝不足の延長のようなもので栄養不足だったりというのは彼女には無く寧ろ健康的なほうだ。あるとすれば気力の低下と疲労のたまりやすさというべきか。
兎も角、その所為でレナは作戦以外の殆どの時間を睡眠にあてており、動くときがあるのは主に作戦の時や空腹になった時などだけ。行動がある程度決まってしまっているのだ。
「…眠い」
「………ウチのメンバーってどうしてこうマイペースっていうか…」
その後、リェータとフランの口喧嘩は発展すること無く鎮火され喧嘩の度を越した仕合はまたも未遂で終結した。
いつものことではあるが、これが地中海に停泊する特務艦のとある一室での日常だ。
◇
西暦の時代。
技術革新と共に進化し続けた人類は新たな力を手にする。
かつては宇宙での活動を視野に入れたマルチフォーム・スーツ。
正式名称「インフィニット・ストラトス」通称ISと呼ばれる
ISが劇場的登場をして以後、ISの影響は軍事バランスだけでなく社会にも影響を及ぼしていた。
人類が辿り着いた一つの極み。ISと呼ばれるものはスポーツとして言われる傍ら、兵器として呼ばれ、更には女性人類の象徴になっていた。
―――女性にしかISは動かせない。
これがその理由全てだった。
それを理由に、ISの登場以後それを利用したテロやクーデターが続発。世界各地で成功を収め、殆どの主導権は女が握る時代「女尊男卑」の時代へと傾向していった。
それ以前からも男女の不平等さが叫ばれていた世の中だが、その時代へと傾いた瞬間、それは拍車をかけることになる。
社会的、人種的。その全てで男性よりも女性のほうが圧倒的に優遇される時代へと変わり果ててしまったのだ。
無論、それは男性からだけでなく身内たる女性からも反発を受けることになるが、一時力を手にしてしまった彼女達に耳を傾ける気など最早無い。
民間企業で使用される小数のISを除きその残り全ては軍属となり男性、ましてや同じ性別たる女性に対しての抑止力であり圧力となった。
今や世界の列強たる国家はその主義に傾向し女性至上主義が誕生しつつある。
女性の怒りと恨み、それによって生まれた社会主義はやがてひとつの大きな国際問題に発展しそれを彼女達が力で抑えるという堂々巡りになっていった、が。
それを一世紀も続けるつもりは誰も無い。
ましてや、それを延々と続けるつもりなど主義を掲げる者達以外は誰も居ない。
だから彼女達は生まれたのだ。
いや、死人として蘇った。
表向きは欧州を中心に広がるテロや内戦の鎮圧のため。
しかし真意はその機体の実戦データ習得と無慈悲な行為を行うISの殲滅。
いわば彼女らへの牽制と抑止だ。
それを担うのが、彼女達『FDXチーム』と呼ばれるISの特殊部隊だ。
ある事情から軍に属する組織に居るものの、その存在は秘匿されており居るかどうかさえも怪しい存在として活動を続けている。
その理由についてはいずれわかることではあるが、それが原因で彼女たちは自由に行動が出来ない窮屈な生活と仕事が数多くあった。
そのひとつとして。
イタリアにあるイタリア軍内でかなり規模のある基地のひとつのアビアノ基地ではその仕事ということでリェータたちFDXチームの四人がある一室に集まっていた。
身内からも姿を隠さねば成らない意味があるのかどうか分からないと愚痴のように思う彼女の目の前には一人の老年の男性がへの字に曲げた顔を上目だけで確認すると、小さく口を釣り上げデスクの上に置かれた一枚の報告書に目を通しきる。
「ふむ。今回の介入先は装備からしてイギリス…いや、ドイツか。
―――よくやってくれた。近頃、欧州軍による北アフリカの暴徒鎮圧は過激化の一途を辿っている。ISが倒されると知れば有頂天になっている彼女らも少しは黙るでしょうに」
基地司令のカルロは笑みのまま一人呟き、そして自分の前に立つ黒い外套…から頭を出した少女四人に好意的に賞賛の言葉を送る。
軍人といえばよそよそしい性格や確実に裏でなにか考えていたり、一辺倒だったりと偏った性格の人物が多いというイメージがあるが、カルロはそのイメージから逸脱しそのどれもから距離を取る中間的立場の軍人だった。
女尊男卑だからと言って女性を優遇不遇したりせず、かといって男性にも優劣を持ち込もうとはしない。
人間皆平等。それがリェータの隣に立つクロウが持った彼への印象だ。
「連日のスクランブルで疲れただろう。少しは身体を休めて次の作戦に万全を期して欲しい」
報告が終わり、カルロが退室してよしとさせると眠たげなレナが筆頭にリェータ、フランと最後にクロウが退室しようとする。
しかしその瞬間、カルロが直ぐに何かを思い出したようで彼女らを止めた。
「ああ。それと、君等の
「「…………は?」」
「………。」
眠たげなレナと後ろで抜けた声で驚く二人。そして一人あまり驚いた様子ではないクロウは確認としてカルロへと訊ねた。
「……上司、というのは」
「無論。君達の参加している計画の責任者だ」
その言葉の刹那。クロウの後ろにいたリェータとフランの顔はマッハで嫌な予感を感じとったという顔をしていた。
◇
FDXプロジェクト
ISの開発業界の中で特異的立場にある企業がひとつある。
ただ一社だけ自前のISを開発せず、唯々新型のIS専用銃火器を開発する古参企業ダニエル・インストゥルメンツ社は経緯を辿ればかつては対人用銃火器を開発していた企業で、そのつながりは有名なH&K社、ワルサー社、コルト社などとも持っている。
そしてそのダニエル社が立ち上げたプロジェクトが、FDXプロジェクトと言う。
プロジェクトの目的はシンプルで自社が開発した試作武器・装備の実働試験が目的。そのため、プロジェクトの試験を実際に行う部隊には同社が開発した試作武器・装備などが詰められ、自由度のある軍とは違い様々な制約が課せられることになる。例を上げるならばある装備を必ず利き手で装備する事。射撃兵装の最大射程を図る事。特定の強化パーツを付けること、などだ。
だが。
ただそれだけのプロジェクトなら企業と軍が合同で行えば事足りる話だ。
通常の軍に割り振りでプロジェクトの一環となる制約を言い渡せば効率はいい。
なのに何故、専門のチームが設立され、世間の悩みの種である紛争、内戦地帯に介入するなどという行為を行っているのだろうか。
その答え全ては先ほどカルロが話していた彼女達の上司が握っていた。
曰く、「社内政治には少し自信がある」
フラン曰く「街で会えば絶対に目を合わせたくないやつ」
クロウ曰く「この人とは絶対に知人になれない」
リェータ曰く「悪趣味の塊が服を着て歩いている」
その全てを満たす人物。それが特務艦の艦内にある一室で子供のように椅子をまわしていた男、ダン・ワッツだった。
「死人たちのお帰りだ……!」
悪趣味としか言えないファッションセンスの塊と言っても良いだろう。その象徴たるダンは陽気な声で嫌々そうな表情をする四人の少女たちを出迎える。
一名睡眠直前。二名反抗的視線。そして一名は無表情だか内心では警戒している。
見た目はただの悪趣味な服装をした男という人物だが、彼こそがこのプロジェクトを立ち上げた立案者兼責任者。そしてすべての元凶。
真っ先に殴りたいと思っているリェータが簡単に殴れない理由。
その握り締められた拳が黒い外套で隠されている理由。
わずか四人の特殊部隊が基地司令直属の部隊である理由。
約数で僅か四百七十ほどしかないISのコアの内、四つが一企業。しかもほぼ個人というべきところに治まっている理由。
FDXチームが存在する理由、そして
告死鳥伝説が広がる理由。
その全てが辿り行き着いた先に彼が立っていた。
「―――アンタのことだから話長くなりそうなんで、手早く用件だけを先に話してくださいダン主任」
口を開き何か話しを始めようとしたダンだが、それを先立ってレナが挙手と共に制する。
素早く、はっきり、正確に止められたダンは数秒ほどその体勢のまま固まってしまい、ようやく首を動かすと子供のようにえー、と言いそうな顔でレナに尋ねる。
「………聞きたくないのかい?」
「多分長くなると思うんで。長いの
「……仕方ない。また後日に……」
((嫌だっつーの))
すっぱりと断ったレナに胸を撫で下ろしたリェータとフランだが、ダンの方は残念そうな顔をするがまだ諦めていないようで後日話そうと決心を一人で固めていた。
そんな無駄話という変な話にはこりごりなので露骨に嫌そうな表情で二人は拒否を表明したが、矢張り言わなければ伝わらなかったようだったが。
だが言わなければ分からないというのは確かなことだ。
現に彼女達も何故そこに呼ばれたのか、何故ダンが態々自分たちを呼んだのか。その意味を未だ理解できずにいた彼女達は警戒しつつも彼の周りに集まり、楽な姿勢で話を聞く。
「……で。改めて、ダン主任。私達を呼んだ理由は?」
「………。」
いつもなら呼ばずとも現れるダンなのだが、今回の場合彼は自分から彼女達FDXチームの四人を呼び出したという事で普段では絶対に行わない彼の行動に他のメンバーは無意識に警戒心を強くしていた。
ふらりと現れてはふらりと去っていく。お前のほうがオバケなんじゃないか、とリェータも過去になんどか思った事がある。
真剣な警戒心を立たせながら訊ねられたダンは一室の壁一面がガラス張りにされた場所に腰を落ち着けると間を置いて口を開いた。
「理由は簡単だよ。死人その1くん」
「クロウです。それかもしくはファントム1で」
ファントムというのは彼女達FDXチームのコールサインで、それも決めたのはダン本人だ。恐らく彼が話そうとした自慢話か何かの与太話がそれに通ずるのだろうと思えているが、クロウはあえてそれを口にせず冷静な態度で切り替えした。
「……じゃあファントム1。もう一度言おう、理由は簡単だよ。僕から君達へと言い渡す命令があるからさ」
「命令…?」
「そう。僕からというよりも本社からだけどね」
本人も渋々なのだろう、溜息と共に参ったという仕草をする彼は珍しく彼女達に共感の念を抱かせる。仕草自体には共感しないが、彼ほどの人間が渋々ながらも首を縦に振らなければいけないことというのは、それだけ上からの圧力かせざるえない事なのだろう。
「始めは僕もびっくりしたよ。まさか本社からの直々命令が来るなんて思っても無かったから」
「…で。それだけの重要な事を私達に…?」
「そうらしいね。丁寧に封筒で送られてきたから」
彼がそういうとポケットの中から一枚の開封済みの封筒を取り出し、人差し指と中指で起用に中に入っていた一枚の紙を取り出す。
ただ見せて抜いただけだというのにリェータやフランたちの目は封筒と中身の紙に釘付けになっており、その中に一体なんの命令が書かれているのかと興味心身且つ慎重に目を話さずに居た。
「で。これがその問題の紙だ」
三つ折にされた紙に息を飲む。本社から直接の命令ということはそれだけ重要なことだという事。一体どんな事が書かれているのだろうか。
そんなことを一心に考え、二人はごくりと生唾を飲み込む。元より覚悟は出来ている二人だが、こういった事例が過去にないのでいつになく真剣な眼差しとなっていた。
それを見て面白げな顔で見るダンは少し焦らしたようなやり方で紙を開こうとする。
だが、それが見ていたクロウの疑問に止まり彼女の中にひとつの疑問点を浮かばせた。
―――彼の性格を反映して行動を立てるなら、恐らく彼はこんな事をしない。
それが最初に考えた結果、頭の中で弾き出した答えのひとつだった。
クロウから見て、恐らくダンの行動は封を取ると何も考えずに適当に開けて適当に開く。そして適当に並ぶ字列を呼んでサラリというだろう。
なのに、彼は今焦らすように紙を開けようとしている。
何より、一番彼女が気になっていたのは封筒が既に切られていたという事だ。
(……まさか)
ダンは既に封を開けて中身を見ている。
行き着いた結果がそんな仕様も無いことだが、見方を変えればある意味重要な事だ。
つまり、ダンは中身を知りなにを言われたのか知っている。
恐らく彼の態度がいつもとほぼ変わりないところを見ると彼的にはさほど問題視する事ではないか、あるいはある程度問題視しているが隠せる範囲のことなのか。
いずれにしても、それを考えただけでクロウのこめかみには小さな汗が滲んでいた。
「では、読むね―――」
「ダン主任」
ならその前にそれだけでも確認するべだろう。
クロウは紙を広げて読み始めようとしたダンを止め、彼に有無を言わさず訊ねた。
「その中に書かれているのは…作戦命令では…ないですね?」
「………ああそうだよ」
「なら…転属命令ですか?」
「………そんな所かな」
紙を見合って答えるダンの姿に、薄々とだが二人も気づき始めている。
ならここまでくれば訊ねきるだけだ。クロウは態度と口調を崩さぬままダンへと問いただした。
「では教えてください。私達への命令を」
「もちろん。これから伝えるよ」
同じく態度を崩さないダンは散々焦らしていた紙をアッサリと開くと数秒も見ずにクロウたちのほうへと向けた。
紙にはイタリア語ではなく汎用性のある英語の文面が書かれており、遠目からでも彼女達は何が書かれているのかを見ることが出来るが、それよりも先にダンが予想通りサラリと日常の会話をするかのように書かれた文の意味を口にした。
「君たちには日本に行って貰うよ。
「「「………………………は!?」」」
「で。それから約半月は向こうに滞在してウチのところから潜り込ませた社員から、データを受け取る―――」
「ちょ、ちょっと待って!?」
「……何だい、死人その2君」
「………もうその辺りには突っ込まないけど…!けど!!」
「話が突然すぎて意味が分かりませんって…」
大声でダンの話を止めるリェータは先に言いたかったことをクロウに言われてしまうが、同じ事を思って居たと言うことで今回は賛同し首を激しく縦に振っていた。
「え。今の話から分からない?」
「なんでそうなったのかって経緯が知りたいんやけど…」
「ああ。そこ。向こうがやってたことで僕がOKした」
「………。」
「兎も角ッ…命令については詳しく言って下さい。でなければ私たち全員分からない事だらけです」
頭の中が混乱し始めるクロウだが冷静さを保ち淡々と語ろうとするダンに詳細な説明を頼むと、ああそこね、と軽口ひとつで今度はそうなった経緯と命令、つまり任務についての説明が始まる。
「んじゃ始めから。君達は明日から日本に行って貰うんだ。目的はとある場所に居るウチの社員からデータを貰う事。ただ、それと君達の機体の性能テストも兼ねて今回は半月って期間になったんだ。あと、その時にロールアウトするだろう装備の試験も」
「日本のところ聞き間違いじゃなかったか…」
「てか一日でどうやってイタリアから日本へ行けっちゅーねん?」
「そこは
そろそろダンの話に常識さが欲しくなってきたフランは頭を抱えて、「マヂかい…」と独り言を呟く。仮にダンの言葉通りなら、彼女達はかなり大変なやり方で日本に向かわなければならない事になるのだ。
それを想像したリェータも本気なのかと彼の顔を見て疑うが、残念ながら晴れ晴れとした顔にその余地はなかった。
「移動についてはまぁ…大方予想はついてましたので聞き流しますが…本題はここからです。私達が日本の何処に行くのですか」
「簡単だよ。僕らのような奴等が行くとすれば第一に挙がる場所…」
「………へ?」
「国立のIS専門育成機関。通称「IS学園」だよ。君たちにはそこに行くんだ」
刹那。
「パス。てかアタシ降りる」
と。子供の遊びのように挙手をして棄権宣言をするリェータにクロウとフランは不意に足を滑らせてずっこけてしまう。
「あれ。嫌なの?」
「嫌。」
「なんで?」
「嫌だから」
「えー」
「単語だけ並べて会話すな!!」
だがダンは一人不思議がった顔でリェータに訊ね、単語だけで返す彼女に彼も単語だけで返して会話をしていた。リェータ本人は嫌とそれにつける格助詞などで返答し、ダンもいたような言葉だけでそれに返す。
そして、あまりにシュールな光景に無意識に怒りを見せたフランがツッコミをいれ、その流れは断ち切られた。
「リェータ。そんな嫌とかいう理由で断れることじゃないんだぞ?」
「…嫌なのは嫌。アタシは行かないよ」
「本社からの命令や。従わんかい」
「それでも嫌なの」
「…なんで嫌なのよ」
クロウの問いに子供のように剥れる彼女は子供っぽい理由だというのは分かっているが、それでも嫌な理由を口を開いて話した。
「……嫌いなんだ。アタシは、ISのパイロットって奴が」
「…国家代表のこと?」
「そう。自分の力でもないのに、我が物顔で歩くアイツらの姿見てると虫唾が走る。それだけでもアタシは嫌だっていうのに、そんな奴等の巣に行けって?
―――冗談じゃない。そんな所に行くなら戦地に裸ひとつの方がマシよ」
強い言葉で断言して言うリェータにクロウとフランは呆れたように小さく息を吐く。
たとえや考え方が幼稚なのは分かりきった事だが、それでも彼女が嫌がる理由は十分理解できるし、彼女達も同感する余地はあった。
彼女達も女尊男卑主義やISの国家代表は毛嫌いしている。理由もリェータとさほど変わりは無い。
「………。」
それでも自分たちの立場上そうであっても従うべきではないか。
「それでもさ。私達は命令で動くしかないんだ」
「………。」
「クロウ…」
「私達の立場を…忘れたとは言わせないよ、リェータ」
「………。」
「正直。私も同感さ。あんな所行くなら、戦地に放り込まれたほうがどれだけマシか…ってね。
けど、私等はならずの傭兵じゃない。経緯どうあれ、私達は軍人。従うべきことには従う。それが私達の本分でしょ」
「………。」
「………嫌いなのは別に構わない事だ。別に僕もあそこ好きじゃないし」
誰だって同じ考えを持つわけが無い。
誰だって好きだと胸を張って言える筈が無い。
絶対に、その誰かは考えが違うはずだ。
その誰かが自分の周りに居る。自分と同じく、その場所が嫌いだという者達が居る。
だが、それでも今は耐えるべきときではないか。
自分の目の前に居る者達のように、耐えて
「けどこれは命令。君達に拒否する権利はないのさ」
「ッ………」
いつかを待つしか、の間違いではないか。
事実、彼女達に作戦を拒否する権利はない。
軍人として、そして彼のある種の私兵部隊としてそれはすべての始まりに知っていた事だ。
「それでも嫌というのなら、きっさの言葉通り君を裸で戦地に放り込もう。勿論服はサービスするけど後は自分でだ」
「………。」
「始めに僕は言った筈だ。君は死者になったんだ、二度と生き返ることはない、死ぬ事も無い死した人間として生きるんだ、ってね」
拳を強く握り、歯を軋ませるリェータはそれでもと喉の辺りまで出掛かり怒りと共に爆発させようとするが、それをギリギリのラインで抑え込んでいた。
彼女だって考えなしではない。クロウたちの言い分、ダンの言葉が正しいのは承知している。
しかし、それでも、と彼女の中に抑えられない言葉が過ぎり押さえ込む蓋を突き破ろうとしているのだ。そう長く耐えれることでもないし限界点も近い。
そんな時だ。
「そう。私達は死人。口聞くことも返す事もできない。残念だけどそれは事実」
「………。」
リェータの頭の上に手を置くクロウは優しい声で呟くが、その直後リェータの背筋は瞬時に凍りつく。
「けどね。誰もずっと耐えろなんて言っても無いさ。その時が来れば…思う存分殺ればいい」
虚ろな目で笑みを浮かべるクロウに、横から見ていたフランは息を飲み、ダンは目を合わせたくないため目線を逸らす。
一瞬の事で思考が硬直したが、直ぐに元の表情を取り戻した彼女を見て止まっていた体内時計が再度動き出すと、同時に息が止まっていたかのように深く息を吐いた。
「それに。別にアンタ一人じゃない私等全員なんだし、な?」
「………。」
「決心はついたかい?」
「……………。」
◇
特務艦”エギル”はかつてドイツの海軍が建造し多くの問題点から中止されてしまった試作潜水艦で問題は資材や資金、技術だけでなく建造時に発生した問題も含まれていた。
潜水艦の最大のアドバンテージ、静粛性が現存の中でも最下位に位置していたのだ。
原子力潜水艦として建造されたため、元より低い事は明らかだったがそれが建造時のトラブルなどで肥大化し、元の四倍近くも静粛性が低下してしまった。
結果、エギルの建造は中止。廃棄されることが決定したがイタリア政府を通じダニエル社、ひいてはダンがこれを確保。
建造当初とは違った運用目的とした艦に生まれ変わらせ、現存する新技術を惜しげもなく投入した特務艦が完成した。
「………。」
海風に吹かれ一人甲板の上で寝転がるリェータは目の前に無限に広がる夜空を見上げ一人耽っていた。
既存の潜水艦が円形であるのに対しエギルはジンベエザメのような形状が特徴で既存艦よりも高いペイロードを誇る。そのお陰もあり、艦には輸送ヘリなどが格納可能で現にエギルには数機の人員輸送ヘリ、IS搭載可能の輸送ヘリが配備されている。
別にそれで行けば良いのではと思うが、流石に国境だのなんだのと五月蝿いのだろう。
そんなことを考えつつも曇りない空を見上げていた彼女は手を上げて空を隠した。特に意味はないが、不意に行ったそれで視界の半分は自身の手に覆いかぶさり、やがて力を失った手は目蓋の上へと落ちて片目を塞いだ。
「―――空…綺麗だな」
今日も晴天の一日だったのか曇りひとつない夜空には満面の光る粒が散りばめられており、小波が艦の装甲に当たり気持ちのいい音をバックにして気を落ち着かせられる。
歳の割にはロマンチストなのか、時折艦の外に出てはこうして甲板の上に寝転がり晴天の空だったり満点の星空を眺めて考え事にふけたり、何も考えずに身体を休めたりすることがある。ただ、その場合はあまりの気持ちよさに熟睡してしまう事もあり、時折雨に晒されるというのもザラにあることだった。
幸い、今週一週間は晴れから曇りに続き、当分雨は訪れる事は無い。
そんな事を知ってか知らずか、リェータは一人夜の潮風に吹かれて倒れていた。
―――あの日もこんな夜空だったな。
不意に思い出した昔の出来事にリェータは誰の目も気にせず一人刻まれた思い出に振り返ろうとした。しかし、思い出したくないというのがあったのか直前で再生をやめると、それを一笑して再び頭のどこかへと放り込んだ。
「…まだあんな事………」
「あんな事ってどんな事だ?」
「………!」
何処かから聞こえる声に一瞬何処にいるんだ、と思っていたリェータは声と共に違和感のあった自分の頭の上を見上げる。
先ほどの黒い外套ではなく、イタリアのブティックで適当に買ってきた服を着こなすクロウが軽い挨拶をして彼女の上に立っていたのだ。
「準備できたってさ。直ぐに格納庫まで集合だ」
「……わかった」
間を置いて答える彼女に軽く息を吐く。不満はまだ残っているらしい。
しかしまだ何か言いたげなリェータを見て、思う事があったのかクロウは一応と思いまだ不満があるのか、と訊ねた。
すると、リェータはそうじゃないと答え淡々と語り始めた。
「……ぶっちゃけ、アタシが居て違和感ないのかな?」
「違和感…?」
「なんていうか…その……見た目の差っていうか…」
「…別に変わらないんじゃないか?女って背丈そんなモンだろ?」
「けどアタシ19だよ?もうハイスクールなんて卒業している歳だって」
「………不満まだあるのか」
ちなみに隊内での年齢の順列は一番年長にクロウが21。二番目に二十歳のレナ。そして同い年のリェータ、フランという順列になっている。しかもクロウに至ってはあと二ヶ月ほどで22になる。
「いや。もうそこは諦めてる。けど、歳で変に見られたくないってだけ」
「それをあきらめてないって言うんだけど…」
「……ま、諦めてないって言えば嘘だよ。そりゃね。けど…いつまでも子供みたいにブータラ言うつもりも無いよ」
潔い顔で言うと小さな呟きと共に身体を起こす。
冷たい夜風が肌を触り、潮風が鼻をほどよく刺激する。
たまにやっていたことだが、今ではこれがある意味習慣となっているのだ。本人もそれは分からないままだが無意識にそう感じていた事を気づかず、少し眠気のある顔は海風によって吹き飛ばされると欠伸を飛ばすために身体を大きく伸ばす。
「それに、クロウが言ったでしょ?その時が来れば思う存分って。そん時に憂さ晴らしさせてもらうよ」
「………ああ。そうしろそうしろ。それが一番だ」
冷たい夜風が艦橋へと吹き抜ける。
潮が混じった風は二人の全身を駆け抜けていき眠気に誘われていたリェータの頭は冷まされていく。
「装備の話だけど、やっぱブレードレールガンは許可下りなかった。まだ機密にしたいってさ」
「…やっぱし?」
「アレ自体試作段階だからまだ表に出したくないんでしょうに。その代わりといっちゃ難だけど前に使ってたコールドメタルソードは追加で下りたよ」
「ああ…前に使ったアレ?」
「アレは材質も明かされてるし問題になることもないからってさ」
「って事はアタシの機体、かなり軽くなるって事か」
「M950とコールドとバーストレールガン。んで新型装甲とブースターのオマケつき」
何よそれ、とあきれた声で返すリェータの隣を歩くクロウは仕方ないだろという顔で小さく溜息を吐いていた。
それはお互い様だ、と言いたいがそれでは話が面倒になりそうだと思ったのか口にせず直ぐに替えの台詞を用意し話しをつないだ。
「加えて新型のショットガンを申し訳程度に一丁とバイアネット付きのリボルバー二丁がついてきますってさ」
「アタシはそれの実験台になれ、と」
「そう言うことだね」
クロウの機体にも同様に装備換装がなされ、彼女の場合は銃火器を多く詰んだ中遠距離戦仕様の機体となっている。
普段から遠距離仕様のライフルなどを好む彼女は、それを知られてか元からか射程距離のある銃火器を試験させられることが多い。
今回の場合も類に漏れず、愛用する遠距離用ライフルをメインに試作型の対物型の大型ライフル。それよりも更に大型の大口径キャノン。汎用性の高そうなアサルトライフル。
その申し訳程度にM90アサルトマシンガンとコールドメタルナイフとが彼女の装備となった。
「もう艦内でフッティングは終わってる。後は持ち主がつけるだけ」
「早いなぁ…そんなに呆けてた?」
「いや。私達が帰ってきてから直ぐに取り掛かったらしいから。そんなに耽ってたのか?」
「………。」
遠まわしに歳とったか、などといわれた事に癇に障ったのか無言のまま鋭い目線で彼女へと睨みつける。当の本人は軽く笑ってごめんごめんと謝る程度で、恐らく反省など半分も思ってないのだろうというのが直ぐに分かった。
だが。そんな事も、自分の機体を見ればすぐに忘れるだろう。
子供のように興奮を抑えられないリェータはそんな事を考えて抑制剤の代わりにし、身体の底から湧き上がる熱を抑え込んでいた。
もう直ぐ自分の機体の姿をこの目で見られるというだけで彼女の気持ちは逸り、興奮し表情は無邪気な笑顔に変わり、歩く速度を速めていく。
今、彼女が最も好いている物。それが彼女が駆るISだ。
それは同時に、告死鳥伝説の真実にも繋がる。
告死鳥から啼く時に現れる四人の死人。
それが四機のISであるというのは実はこの時、リェータたちでさえも知らない話だった。
彼女達が駆る四機の機体。それらはいずれも名に「死」を意味するものが入っている。
その姿を見た者達が命を断つという意味が込められたかのように。
フランとレナの駆る第2.5世代試作機『ガーダイド』
そしてリェータとクロウの駆る同試作機、死した亡霊『ゲシュテルベン』
告死鳥が告げる死の宣告。それは彼女たちが行った事。
これはその伝説が世界をまたに駆ける都市伝説となる、その少し前の話―――
オマケ。
各主要キャラの簡易プロフィールとか原作の相似点とか。
元々が『告死鳥戦記』を元にしているので似ている奴等とか似てない子が居たりします。
ちなみにイメージCVについては完全こちらの独断です(オイ
FDXチーム。
原作とは違い、こちらではイタリア軍に所属するIS特殊部隊。
設立目的などは同じだか色々と違いはあります。
リェータ (イメージCV 水樹奈々)
原作にも登場した女主人公。
見た目は彼女の歳を少し若くして髪を短めにした感じ。
また性格も違い、こちらでは普通にぶっちゃける人。
歳も19という為かまだ幼げなところもある。
コールサインはファントム2。
使用機体はゲシュテルベン二号機。
主に接近戦を担当し武装もそれにあわせて接近戦重視になっている。
クロウ (イメージCV 伊藤静)
原作のヴェスナーのポジションを担当。
チーム内では彼女が年長。見た目はスパロボのクロウという事で髪がかなりボサボサのあの人。を髪を黒にしてみた感じ。また良くも悪くも中性的。
主にリェータやフランのストッパー担当で半ばリェータのお母さん的立場になりつつある。
但し怒る場合は静かに怒るのではなく笑っていない笑顔となる。
コールサインはファントム1。使用機体はゲシュテルベン一号機。
フラン (イメージCV 植田佳奈)
原作のジマーのポジション担当。しかし当の本人は日本とドイツのハーフで何故か関西弁を喋るが、これは祖母の影響から来ている。
年齢はリェータと同い年だが背丈は負けている。また同じ理由かしょっちゅう口喧嘩をしていることがあるが幸いかそこから物理には未だ発展していない。
冷静さを気取る性格だが、実際は穴が多くそこに漬け込まれやすい。そして逆ギレへと発展する。
コールサインはファントム4。使用機体はガーダイド三号機。
主に機密保持と補給などを担当するが本人は護身用に鎌を持っている。
レナ (イメージCV 沢城みゆき)
原作のオーニセのポジション。こちらも原作とはかなりの違いがある。
チームの中で出自が不明で本人も何処で生まれたのかさっぱり覚えていないが、別に気にはしていないらしい。年齢は二十歳。スタイルはチームの中では一番いい方。
普段から睡眠不足なのか食事と作戦の時以外は殆ど睡眠に当てており自室で安眠セットを使って爆睡している。
だが戦闘となると役割をキッチリとこなし頭の回転が速く、他の面々から別人扱いされる。
コールサインはファントム3。使用機体はガーダイド一号機。
主に対空などの防御、及び支援攻撃などを担当。
登場機体(もうしないと思うけど(汗))
ゲシュテルベン
機体名どおり元はドイツで開発されていた新量産型IS。
しかしトライアルには様々な事情から出されず更には代表候補の機体のトライアルにも不採用となる。
その後開発企業からルーマニアに渡り、後の開発に着手。その後ダニエル・インストゥルメンツ社に渡り改良。現在の姿となった。
原作よろしく過剰なまでのジェネレーター出力とハードポイントを持ち、装甲は既存の機体よりも低い。ちなみにハードポイントがあるのはISコアの容量をオーバーする事が多々あるのでその応急処置のひとつとしてが理由。尚、ハードポイントは機体からの任意でない限りは外れることは無い。
一号機には主に中遠距離を重視した武器が装備されることが多く、固定装備として遠距離用ライフルが装備されている。
対し二号機は近距離戦に重視した機体で新型の装甲やブースター、近接武装を装備する。
固定装備はブレードレールガンLとコールドメタルナイフ。
ガーダイド
ゲシュテルベンとは違いこちらはルーマニアで作られた機体。
米国との共同開発で米国で立案された新型の量産機開発計画で生まれた機体をカスタムしたもの。コアはその時持ち込まれたものでルーマニアがアメリカから取り引きしたもの。
オリジナルが持って居た機能などの一部がオミットされているがスペック自体は申し分なく拡張性も高い。しかしカスタマイズがゲシュテルベンと同じため装甲が犠牲になっているのが欠点だがオリジナルよりも軽量化、更には飛行能力が向上している。(逆にゲシュテルベンは低下している)
それもあってか背部にはウイングが付けられておりより悪魔的な姿となっている。
一号機は低下した装甲をハードポイントで取り付けた装甲版をつけることで補い接近戦での防御を担当するため武装はガトリング砲二門とミサイル、手持ちレールガンと最小限に止められている。
三号機は機密保持の為に使用する焼夷弾を装備し使わなくなった武器や装備などを焼却。弾切れの際はゲシュテルベンの二人に補給する。またフランの意向で護身用として専用の大鎌を持っている。
二号機は設立当時存在したが機体大破と搭乗者死亡に伴いその時のまま保管されている。(コアはそのまま三号機に移植された)